荒船と出水の師匠シリーズ
荒船と出水の師匠シリーズ・短編詰め
name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
菊地原くんと相席
「あれ、今日は人多いな」
沢山の隊員達が集まり、ざわざわと騒がしいラウンジ。
何戦かの模擬戦を終えて休憩しようと来たものの、今日は休日とあってか普段は気を利かせてくれて開いていることが多い定位置のソファも含め、全てのテーブルが埋まっていた。
「座るところが…ない…」
ラウンジ内をぐるっと回ってみたが、開いているテーブルなどは見つからない。
いるのは入ったばかりのC級がほとんどなので、仲のいい隊員の所へ行って座らせてもらうなんてこともできない。
「うー…仕方ない」
休憩は諦めるかとラウンジを後にしようとすると、ポケットに入れてある携帯が震えてメッセージがきた事を告げる。
なんでしょ、と壁に寄りかかって携帯を開けば後輩である菊地原くんから短い文が届いていた。
『ぼくのところ、空いてますけど』
「ん?」
空いてるって、テーブルか。菊地原くんもラウンジの何処かに居るのだろうかときょろきょろとラウンジを見回すも、その姿は見えない。
「えーと、どこいるの?」
少し大きめの声でそう言えば、少ししてもう一度携帯がメッセージの着信を告げる。それを開けば、これまた菊地原くんから短い文。
『そこから見て一番右奥のテーブルです』
「わかった、ありがとう」
そう呟いて教えられた右奥のテーブル群へ行けば、隅っこの椅子に菊地原くんがこちらに背中を向けて座っているのが見えた。蒼也さんや歌川くんの姿は見えない。
「菊地原くんこんにちは。お邪魔してもいい?」
「どーぞ。呼んだのぼくですし」
後ろから声を掛ければ、菊地原くんは携帯をしまいながら席を分けてくれた。椅子を引き、菊地原くんと向い合せに座る。
「ありがとう、座るところなくて困ってたんだ」
「聞こえてました。あとでジュース奢ってくださいよ」
「もちろん」
菊地原くんのサイドエフェクト、強化聴力。
その力で広いラウンジの中で私の声を拾い、わざわざ連絡をくれたのだ。ひねくれたような言動も多いけれど、根は良い子なのだ。まあ、良い子だって知ってるのは元・風間隊である私や栞ちゃんを含め、現・風間隊の人達と、ほんの一握りくらいの人達だろうけれど。
「お菓子持ってきたんだ、好きなの食べて」
「なんでこんなに持ってきてるんですか、太りますよ」
「うッ」
「蒼さんが太らない様に、少し貰います」
「ありがと、」
袋いっぱいのお菓子をテーブルに置けば、それらに手を伸ばしてがさがさとかき分けて好きなものを取り出す菊地原くん。
「ここにいるなんて珍しいね?」
「任務帰りなんですよ。風間さんは上に報告しに行ってるので、ぼくが席とって待ってるんです」
「ああ、それで」
耳が良い彼がわざわざ喧噪の中に身を置くなんて珍しいなと思えば、そういう事か。自分の仲間には優しい彼だ、文句を言いつつも引き受けたのだろう。
「良い子だよねえ、菊地原くんも歌川くんも」
「なんですいきなり」
チョコレートバーの袋をやぶいた菊地原くんが怪訝そうに私を見た。対する私はキャンディをひとつ取り出し、口に放り込んで甘いそれを転がしながら口を開く。
「私と栞ちゃんが抜けても大丈夫で安心してるって話。たまに会うとやっぱり風間隊の話になるんだよね、あのままだったらどこまでランク上がっただろうとか」
「蒼さんが戻ってきてくれたら、風間隊がすぐ1位になれるんですけど」
「戻りたい気持ちもあるんだけどねー」
椅子に凭れかかると、左耳にある黒い雫を模したイヤカフが揺れる。それに触れる左手には葉を茂らせた細い枝を模したブレスレット。
この2つは亡くなった私の両親が遺した形見であり、現時点で私以外の適合者が居ない黒トリガーだ。
「その2人が蒼さん以外を選ばないのは、蒼さんに死んでほしくないからでしょ」
「うん、それはわかってる」
黒トリガーを入手しているから風間隊で過ごした日々は短かったけれど、戻りたくなるくらいにはあそこで過ごした日々が楽しかったし、充実していた。
まあ、いまも風間隊にはだいぶお世話になっているんだけれど。
「蒼さんが居なくてもぼくたちは強いんで。そのうち1位になっちゃいますから楽しみにしててください」
「うん、楽しみにしてる」
「…蒼さんの居場所もちゃんとありますから、寂しくなったらいつでも戻ってきて良いんですよ」
「ありがと」
寂しくなった私の心を読んだ菊地原くんが優しい言葉を掛けてくれる。それに笑いながら頷けば、菊地原くんがあ、と短い声を上げる。
「ん?」
「風間さんたち、帰ってきた」
「ほんと?」
振り返れば、確かにこちらに向かって歩いてくる蒼也さんと歌川くん、それと歌歩ちゃん。まだ遠いけれど、さすが強化聴覚。
「さて、私はもうちょい模擬戦してきましょうかな」
「えー、行っちゃうんですか」
「3人来たら椅子も足りないでしょ」
「歌川に立たせておけばいいのに」
テーブルの周りには椅子は4脚しかないのだ。このままでは誰かが余ってしまう。不満げな声を上げる菊地原くんに笑いかけ、お菓子をいくつか袋から取り出す。
「ふふ、そういう訳にはいかないよ。はいこれ、皆で食べてね」
取り出したお菓子を菊地原くんに渡す。
まだちょっと不満げな彼は、しぶしぶといったふうにお菓子を受け取った。
「…わかりました」
「相席してくれてありがと。また今度遊びに行くよ」
「、はい」
ひとつ頷いた彼に手を振って、また今度お土産でも持って風間隊の隊室に遊びに行ってあげようと心に決めながら模擬戦の為にラウンジを抜け出した。
相席
菊地原くんと風間隊の話
(という事で早くも来ました。シュークリーム食べましょー)
(その日の内だとは思わなかったです)
「あれ、今日は人多いな」
沢山の隊員達が集まり、ざわざわと騒がしいラウンジ。
何戦かの模擬戦を終えて休憩しようと来たものの、今日は休日とあってか普段は気を利かせてくれて開いていることが多い定位置のソファも含め、全てのテーブルが埋まっていた。
「座るところが…ない…」
ラウンジ内をぐるっと回ってみたが、開いているテーブルなどは見つからない。
いるのは入ったばかりのC級がほとんどなので、仲のいい隊員の所へ行って座らせてもらうなんてこともできない。
「うー…仕方ない」
休憩は諦めるかとラウンジを後にしようとすると、ポケットに入れてある携帯が震えてメッセージがきた事を告げる。
なんでしょ、と壁に寄りかかって携帯を開けば後輩である菊地原くんから短い文が届いていた。
『ぼくのところ、空いてますけど』
「ん?」
空いてるって、テーブルか。菊地原くんもラウンジの何処かに居るのだろうかときょろきょろとラウンジを見回すも、その姿は見えない。
「えーと、どこいるの?」
少し大きめの声でそう言えば、少ししてもう一度携帯がメッセージの着信を告げる。それを開けば、これまた菊地原くんから短い文。
『そこから見て一番右奥のテーブルです』
「わかった、ありがとう」
そう呟いて教えられた右奥のテーブル群へ行けば、隅っこの椅子に菊地原くんがこちらに背中を向けて座っているのが見えた。蒼也さんや歌川くんの姿は見えない。
「菊地原くんこんにちは。お邪魔してもいい?」
「どーぞ。呼んだのぼくですし」
後ろから声を掛ければ、菊地原くんは携帯をしまいながら席を分けてくれた。椅子を引き、菊地原くんと向い合せに座る。
「ありがとう、座るところなくて困ってたんだ」
「聞こえてました。あとでジュース奢ってくださいよ」
「もちろん」
菊地原くんのサイドエフェクト、強化聴力。
その力で広いラウンジの中で私の声を拾い、わざわざ連絡をくれたのだ。ひねくれたような言動も多いけれど、根は良い子なのだ。まあ、良い子だって知ってるのは元・風間隊である私や栞ちゃんを含め、現・風間隊の人達と、ほんの一握りくらいの人達だろうけれど。
「お菓子持ってきたんだ、好きなの食べて」
「なんでこんなに持ってきてるんですか、太りますよ」
「うッ」
「蒼さんが太らない様に、少し貰います」
「ありがと、」
袋いっぱいのお菓子をテーブルに置けば、それらに手を伸ばしてがさがさとかき分けて好きなものを取り出す菊地原くん。
「ここにいるなんて珍しいね?」
「任務帰りなんですよ。風間さんは上に報告しに行ってるので、ぼくが席とって待ってるんです」
「ああ、それで」
耳が良い彼がわざわざ喧噪の中に身を置くなんて珍しいなと思えば、そういう事か。自分の仲間には優しい彼だ、文句を言いつつも引き受けたのだろう。
「良い子だよねえ、菊地原くんも歌川くんも」
「なんですいきなり」
チョコレートバーの袋をやぶいた菊地原くんが怪訝そうに私を見た。対する私はキャンディをひとつ取り出し、口に放り込んで甘いそれを転がしながら口を開く。
「私と栞ちゃんが抜けても大丈夫で安心してるって話。たまに会うとやっぱり風間隊の話になるんだよね、あのままだったらどこまでランク上がっただろうとか」
「蒼さんが戻ってきてくれたら、風間隊がすぐ1位になれるんですけど」
「戻りたい気持ちもあるんだけどねー」
椅子に凭れかかると、左耳にある黒い雫を模したイヤカフが揺れる。それに触れる左手には葉を茂らせた細い枝を模したブレスレット。
この2つは亡くなった私の両親が遺した形見であり、現時点で私以外の適合者が居ない黒トリガーだ。
「その2人が蒼さん以外を選ばないのは、蒼さんに死んでほしくないからでしょ」
「うん、それはわかってる」
黒トリガーを入手しているから風間隊で過ごした日々は短かったけれど、戻りたくなるくらいにはあそこで過ごした日々が楽しかったし、充実していた。
まあ、いまも風間隊にはだいぶお世話になっているんだけれど。
「蒼さんが居なくてもぼくたちは強いんで。そのうち1位になっちゃいますから楽しみにしててください」
「うん、楽しみにしてる」
「…蒼さんの居場所もちゃんとありますから、寂しくなったらいつでも戻ってきて良いんですよ」
「ありがと」
寂しくなった私の心を読んだ菊地原くんが優しい言葉を掛けてくれる。それに笑いながら頷けば、菊地原くんがあ、と短い声を上げる。
「ん?」
「風間さんたち、帰ってきた」
「ほんと?」
振り返れば、確かにこちらに向かって歩いてくる蒼也さんと歌川くん、それと歌歩ちゃん。まだ遠いけれど、さすが強化聴覚。
「さて、私はもうちょい模擬戦してきましょうかな」
「えー、行っちゃうんですか」
「3人来たら椅子も足りないでしょ」
「歌川に立たせておけばいいのに」
テーブルの周りには椅子は4脚しかないのだ。このままでは誰かが余ってしまう。不満げな声を上げる菊地原くんに笑いかけ、お菓子をいくつか袋から取り出す。
「ふふ、そういう訳にはいかないよ。はいこれ、皆で食べてね」
取り出したお菓子を菊地原くんに渡す。
まだちょっと不満げな彼は、しぶしぶといったふうにお菓子を受け取った。
「…わかりました」
「相席してくれてありがと。また今度遊びに行くよ」
「、はい」
ひとつ頷いた彼に手を振って、また今度お土産でも持って風間隊の隊室に遊びに行ってあげようと心に決めながら模擬戦の為にラウンジを抜け出した。
相席
菊地原くんと風間隊の話
(という事で早くも来ました。シュークリーム食べましょー)
(その日の内だとは思わなかったです)