荒船と出水の師匠シリーズ
荒船と出水の師匠シリーズ・短編詰め
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嵐山に元気をもらう
なんだか最近仕事が多くて、ちょっと精神的にも肉体的にも疲れが出始めたのを感じていた。ちょっと仮眠しようかなあ、と人通りの少ない廊下を歩いていたら自販機の横にある長椅子に赤い隊服が見えた。
「じゅーん」
「お、蒼か!」
「いま少し時間ある?忙しい?」
ボーダー内外で1番良く知られている赤い隊服は、嵐山隊のものだ。座っていたのが19歳という同期の隊長だったので、声を掛けて近づいた。
「時間はあるけど、どうしたんだ?」
「ちょっと元気分けて」
いろいろ疲れてて、とお願いすれば准はにかっと笑って自分の隣を叩いた。
「いいぞ!ほら隣に座ってくれ!」
「ありがと」
笑顔と元気の塊みたいな准のそばで、少しだけ元気をもらって行こうと彼の隣に腰を下ろす。足を伸ばして深く息を吐けば、准は横からひとつの缶を取り出してきた。
「そうだ蒼、これ飲まないか?」
「カフェオレ?准のじゃないの?」
もらえないよ、と言えば准は笑いながらもうひとつの缶を取り出した。それをつまんだ指先で振りながら、私に見せる。
「俺のはこっち。当たりが出たんだけど、持て余していてな」
「ん、わかったもらう。ありがと」
「ああ」
差し出されたカフェオレを受け取れば、准はにこにこ笑って頷いた。かしゃかしゃ振って、かこりとプルタブを開けて缶を呷る。まだ冷たいカフェオレが喉を通って行けば、少しは気分が晴れた気がした。
「ん、おいしい…」
「それで、今日はどうしたんだ?」
「ちょっとお疲れでして」
最近、入隊希望者が多いでしょと言えば、察してくれたらしい准が頷いた。准は准で入隊した人達の説明会やらなんやらの仕事をしているからだ。
「蒼の仕事は負担が大きいからなあ」
「准だって仕事の合間に入隊した子たちの面倒見たりしてるじゃない。同じようなもんよ」
希望者が多いのは良いことだけど、その仕事を割り振れる人が限定されているのが痛い。自分たちにしか出来ないと解っているけれど、負担が増えれば必然的に疲労がたまってくる。
「あー、日帰りで良いから温泉行きたいな…」
癒されたい…と天井を仰ぎながら呻けば、准がごそごそと動いた。なにしてるの?と視線を送れば、ちょうどこちらを向いた准と目があった。
「そんな蒼に、丁度良いのがあるぞ」
「なに?」
にっかり笑った准が取り出したのは、1枚の紙切れだった。首を傾げた私に、准が紙切れを手渡してくる。受け取った紙切れを見てみれば、それはわりと近くに出来たリゾート施設の無料宿泊券だった。
「!すごい、ペアだしちょっと良い部屋確約でスパやマッサージも利用可能…これどうしたの?」
なんだこの特典盛り沢山な贅沢チケットは…と准を見れば、准はにんまり笑って答えてくれた。
「テレビの番組で行った時に貰って、家族で行ったんだが1枚多くて余っていたんだ。使わないのも勿体無いし、貰ってくれないか?」
「え、いいの?」
「ああ。蒼が使ってくれれば嬉しい」
「ありがとう!」
やったー!とチケットを掲げて喜べば、准も嬉しそうに笑った。せっかくのペアチケットだから蓮を誘ってみようかな。あとで三輪隊のスケジュール聞いてみよう。
「あ」
「ん?」
はたと動きを止めた私に、准が首を傾げた。
「准、明日の予定は?」
「明日?明日は1日休みだから、家で過ごすつもりだが」
「ほんと」
准の答えにそれは良かったと頷く。准にお返しするのにちょうどいいのがあった。腰のポケットにしまい込んであった紙を取り出して、准に手渡す。
「じゃあ、私からはこれをあげる」
「なんだ?」
2つ折りに畳んであった紙を開いて、それに准が目を通している間に説明する。
「明日の夜に上層部の人達が御飯の予約を取ってたんだけど、悠一の予知で見たら駄目になっちゃうらしくて誰かと行きなさいってもらったんだ」
海鮮が有名なお店だし、コースだけどお金も払ってあるらしいから行ってきなよと言えば准がじわじわ笑顔になっていくのが見えた。
「ありがとう、家族で行かせてもらうよ」
「うん。城戸さんたちの予約だから、ちゃんと防音の個室になってるはずだよ。ファンの人達に見つかっても来れないし、裏から出して貰えるから、安心してゆっくりしてきて」
「ああ。蒼、ありがとう!」
「私もありがとう」
思いがけない幸せの交換ににこにこする。さて、元気も幸せも貰ったし、そろそろ行こうかな。今からちょっと仮眠して、ご飯食べたら夜勤だ。
「じゃあそろそろいくね。准、元気ありがと」
「ああ、蒼の役に立てたなら良かった」
長椅子から立ち上がって、准から貰った紙を大事にポケットにしまい込む。
「准も楽しんできて。またね!」
「ああ!」
准と手を振り交わして、仮眠室へと足を向ける。ちょっと話しただけだけど、しっかり准に元気もらっちゃったなとにまにましながら廊下を進んでいった。
幸せ交換会
准に元気をもらう
(蓮、休み合わせて温泉いこ!)
(あら、いいわね)
なんだか最近仕事が多くて、ちょっと精神的にも肉体的にも疲れが出始めたのを感じていた。ちょっと仮眠しようかなあ、と人通りの少ない廊下を歩いていたら自販機の横にある長椅子に赤い隊服が見えた。
「じゅーん」
「お、蒼か!」
「いま少し時間ある?忙しい?」
ボーダー内外で1番良く知られている赤い隊服は、嵐山隊のものだ。座っていたのが19歳という同期の隊長だったので、声を掛けて近づいた。
「時間はあるけど、どうしたんだ?」
「ちょっと元気分けて」
いろいろ疲れてて、とお願いすれば准はにかっと笑って自分の隣を叩いた。
「いいぞ!ほら隣に座ってくれ!」
「ありがと」
笑顔と元気の塊みたいな准のそばで、少しだけ元気をもらって行こうと彼の隣に腰を下ろす。足を伸ばして深く息を吐けば、准は横からひとつの缶を取り出してきた。
「そうだ蒼、これ飲まないか?」
「カフェオレ?准のじゃないの?」
もらえないよ、と言えば准は笑いながらもうひとつの缶を取り出した。それをつまんだ指先で振りながら、私に見せる。
「俺のはこっち。当たりが出たんだけど、持て余していてな」
「ん、わかったもらう。ありがと」
「ああ」
差し出されたカフェオレを受け取れば、准はにこにこ笑って頷いた。かしゃかしゃ振って、かこりとプルタブを開けて缶を呷る。まだ冷たいカフェオレが喉を通って行けば、少しは気分が晴れた気がした。
「ん、おいしい…」
「それで、今日はどうしたんだ?」
「ちょっとお疲れでして」
最近、入隊希望者が多いでしょと言えば、察してくれたらしい准が頷いた。准は准で入隊した人達の説明会やらなんやらの仕事をしているからだ。
「蒼の仕事は負担が大きいからなあ」
「准だって仕事の合間に入隊した子たちの面倒見たりしてるじゃない。同じようなもんよ」
希望者が多いのは良いことだけど、その仕事を割り振れる人が限定されているのが痛い。自分たちにしか出来ないと解っているけれど、負担が増えれば必然的に疲労がたまってくる。
「あー、日帰りで良いから温泉行きたいな…」
癒されたい…と天井を仰ぎながら呻けば、准がごそごそと動いた。なにしてるの?と視線を送れば、ちょうどこちらを向いた准と目があった。
「そんな蒼に、丁度良いのがあるぞ」
「なに?」
にっかり笑った准が取り出したのは、1枚の紙切れだった。首を傾げた私に、准が紙切れを手渡してくる。受け取った紙切れを見てみれば、それはわりと近くに出来たリゾート施設の無料宿泊券だった。
「!すごい、ペアだしちょっと良い部屋確約でスパやマッサージも利用可能…これどうしたの?」
なんだこの特典盛り沢山な贅沢チケットは…と准を見れば、准はにんまり笑って答えてくれた。
「テレビの番組で行った時に貰って、家族で行ったんだが1枚多くて余っていたんだ。使わないのも勿体無いし、貰ってくれないか?」
「え、いいの?」
「ああ。蒼が使ってくれれば嬉しい」
「ありがとう!」
やったー!とチケットを掲げて喜べば、准も嬉しそうに笑った。せっかくのペアチケットだから蓮を誘ってみようかな。あとで三輪隊のスケジュール聞いてみよう。
「あ」
「ん?」
はたと動きを止めた私に、准が首を傾げた。
「准、明日の予定は?」
「明日?明日は1日休みだから、家で過ごすつもりだが」
「ほんと」
准の答えにそれは良かったと頷く。准にお返しするのにちょうどいいのがあった。腰のポケットにしまい込んであった紙を取り出して、准に手渡す。
「じゃあ、私からはこれをあげる」
「なんだ?」
2つ折りに畳んであった紙を開いて、それに准が目を通している間に説明する。
「明日の夜に上層部の人達が御飯の予約を取ってたんだけど、悠一の予知で見たら駄目になっちゃうらしくて誰かと行きなさいってもらったんだ」
海鮮が有名なお店だし、コースだけどお金も払ってあるらしいから行ってきなよと言えば准がじわじわ笑顔になっていくのが見えた。
「ありがとう、家族で行かせてもらうよ」
「うん。城戸さんたちの予約だから、ちゃんと防音の個室になってるはずだよ。ファンの人達に見つかっても来れないし、裏から出して貰えるから、安心してゆっくりしてきて」
「ああ。蒼、ありがとう!」
「私もありがとう」
思いがけない幸せの交換ににこにこする。さて、元気も幸せも貰ったし、そろそろ行こうかな。今からちょっと仮眠して、ご飯食べたら夜勤だ。
「じゃあそろそろいくね。准、元気ありがと」
「ああ、蒼の役に立てたなら良かった」
長椅子から立ち上がって、准から貰った紙を大事にポケットにしまい込む。
「准も楽しんできて。またね!」
「ああ!」
准と手を振り交わして、仮眠室へと足を向ける。ちょっと話しただけだけど、しっかり准に元気もらっちゃったなとにまにましながら廊下を進んでいった。
幸せ交換会
准に元気をもらう
(蓮、休み合わせて温泉いこ!)
(あら、いいわね)