荒船と出水の師匠シリーズ
荒船と出水の師匠シリーズ・短編詰め
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歌川くんと菊地原くんの喧嘩
蒼也さんに頼まれた書類を持っていくついでに、手土産持って風間隊の作戦室にやって来た。鈴鳴の近くに出来た洋菓子店のケーキと書類を片手に持って、手早く風間隊のパスコードを入力する。
「こんにち、は…?」
静かに開いた扉の先、待ち構えているだろう歌川くんと菊地原くんへ挨拶しようと開いた口は、語尾が疑問系になってしまった。まって、思ってた光景と違う。
「えーと…お取込み中かな」
首を傾げる私の視線の先には、ベイルアウト用のベッドルームで睨み合う歌川くんと菊地原くんの姿があった。え、珍しい、喧嘩してる。
「蒼さんこんにちは。すみません、いま手が離せなくて」
「蒼さん、適当に座っててもらえますか」
「了解、待ってる」
ケーキの箱と書類をテーブルに置いて、ソファに座り込んで2人を見遣る。珍しく喧嘩しているのだ、下手に邪魔したらいけないだろうと見守る事にした。
「………」
「……」
(…律儀だ)
私が来たからか、換装している2人は睨み合ったまま口元を一切動かさない。ということは、秘匿通信でなにかしらの言い争いでもしているんだろう。
(この2人が喧嘩するなんて、よっぽどの事だよなあ)
言い方が悪くて人を怒らせやすい菊地原くんだけど、間違ったことは言わないし。一緒に居る歌川くんは温厚で、菊地原くん相手に基本的には呆れはせど怒る事はない。
その2人が感情剥き出しで言い争っているのは(聞こえないから多分だけど)いつぶりだろうか。風間隊の結成直後くらいか。
(あの頃はよく衝突してたしなー)
お互いがお互いの事を知る前だったからな、と回想に耽っていたら睨みあっていた歌川くんと菊地原くんがこちらを向いた。
「「蒼さん!」」
「わっ、なに?」
突然大きな声で呼ばれたことにびっくりしていれば、ずんずん近寄ってきた2人が口を開く。
「ぼくと歌川、どっちが好きですか」
「え、どっちも大好きだけど」
「それじゃ駄目です、はっきり決めて下さい」
「ええー?」
非常に困る質問をされて眉を下げるが、眼前の2人は引く気配を見せない。だけどどっちかなんて選べないし、どうしたものか。
「困ったな、好きなとこ挙げていくんじゃだめ?」
「……今回はそれでいい?」
「ああ」
睨み合いながら頷いた2人が私の両脇に座り込むのを見ながら、2人の好きなとこを考える。好きなとこ、言い出したは良いけどいっぱいあるんだよなあ。
「菊地原くんはぶっきらぼうだけど優しいし、よく私の事気にかけてくれるとこが好き」
「えー、普通の事じゃないですか」
「体調悪かったり、気分が悪かったりすると隠しててもすぐ気付いて来てくれるでしょ?普通でも嬉しい」
そういうの1番鋭いのが菊地原くんだもの、と言えば菊地原くんは溜息をついて続きを促した。
「…ほかは?」
「まっすぐ前を見据えてる顔が好き」
「へえ」
一緒に風間隊に所属してたときはもちろん、いまでもたまに見れる真剣な目が格好良いのだ。なんていうのかな、普段とのギャップにぐっとする感じ。
「あとは髪の毛縛ってる時の顔が好き、一瞬真剣な顔がちらっと見えるのが格好良い」
「、そうですか」
菊地原くんが頷いて「じゃあ、歌川は?」と促してきたので歌川くんの好きな所も挙げていく。
「歌川くんもすごく優しいし、私の話をよく聞いてくれるのが好き」
「はい」
歌川くんは、私が精神的に沈んでいる時に現れて話を聞いてくれることが多い。迷惑かけちゃうのに、ぜんぜんそんなこと無いみたいにしてくれるところとか。
「私がうだうだ言ってるのに、文句ひとつ言わずに背中を撫でてくれるとこが好き」
「蒼さんが困ってるの、見過ごす訳にはいきませんからね」
笑う歌川くんに、他の好きな所も挙げていく。
「背中がおっきくて、頼れるとこが好き」
「…ありがとうございます」
私の言葉を真剣に聞いていた2人が、そっと顔を見合わせたのが見えた。こんな所でいいのかなと思ったけれど、せっかくだからと続きを挙げていくことにした。
「でもね、とにかく2人とも格好良いんだよ。一緒に戦ってる時の目も格好良いし、連携の合間にお互いをちらっと見る仕草も好き。あとは蒼也さんに甘やかされてるのを見るのも好き、ここじゃないと見れない顔見せてくれるし。それから、」
「あー…あの、蒼さん」
「なに?」
それからね、と続けようと思った所で歌川くんからストップがかかった。首を傾げれば、手のひらで口元を押さえた歌川くんがうろうろと視線を彷徨わせている。耳が赤い。
「すみません、思ったより照れるので、その辺りで止めてもらって良いですか…」
「左に同じ…」
歌川くんの言葉に続いて、私の右側から賛同する菊地原くんの声が聞こえてくる。ちらりと見れば、菊地原くんはうつむいて表情が見えなかった。同じように口元を押さえているのは見えるけれど。
「えー。まだ2人の好きなところ挙げられるよ?歌川くんの笑顔とか、菊地原くんのおっきな手とか」
喋りながら、うつむいたままの菊地原くんの髪の毛をそっと割る。歌川くんは思いっきり照れてるのはわかったけれど、菊地原くんも照れてるのだろうかと見た彼の耳は真っ赤だった。それが見えた瞬間に、菊地原くんが私の手から逃げながら早口で文句を言ってくる。
「蒼さんもういいんでそれ以上喋らないで下さい」
「あらひどい」
先に聞いてきたくせにと思ったけれど、喧嘩も終息したようなので今回は追及しないでおくことにする。力尽きたようにぼすっと膝の上に倒れ込んで来た菊地原くんの頭を撫でて、ついでにソファにぐったりもたれている歌川くんの頭も腕を伸ばして撫でておく。
「ふふ」
かわいいやつらめと動かない2人をひとしきり撫でていたら、蒼也さんと歌歩ちゃんが戻って来きた。慌てて飛び起きた2人ががしゃがしゃと騒がしくお茶の準備を始めるのを、その姿を不思議がる蒼也さんと歌歩ちゃんにあとで話してやろうとにんまりと笑ってお茶の用意を手伝うためにキッチンへと足を向けた。
歌川くんと菊地原くんの喧嘩を仲裁する
手段は問わず!
(いやしかし、珍しい物をみた)
考えていた喧嘩の内容はなんだったか
蒼也さんに頼まれた書類を持っていくついでに、手土産持って風間隊の作戦室にやって来た。鈴鳴の近くに出来た洋菓子店のケーキと書類を片手に持って、手早く風間隊のパスコードを入力する。
「こんにち、は…?」
静かに開いた扉の先、待ち構えているだろう歌川くんと菊地原くんへ挨拶しようと開いた口は、語尾が疑問系になってしまった。まって、思ってた光景と違う。
「えーと…お取込み中かな」
首を傾げる私の視線の先には、ベイルアウト用のベッドルームで睨み合う歌川くんと菊地原くんの姿があった。え、珍しい、喧嘩してる。
「蒼さんこんにちは。すみません、いま手が離せなくて」
「蒼さん、適当に座っててもらえますか」
「了解、待ってる」
ケーキの箱と書類をテーブルに置いて、ソファに座り込んで2人を見遣る。珍しく喧嘩しているのだ、下手に邪魔したらいけないだろうと見守る事にした。
「………」
「……」
(…律儀だ)
私が来たからか、換装している2人は睨み合ったまま口元を一切動かさない。ということは、秘匿通信でなにかしらの言い争いでもしているんだろう。
(この2人が喧嘩するなんて、よっぽどの事だよなあ)
言い方が悪くて人を怒らせやすい菊地原くんだけど、間違ったことは言わないし。一緒に居る歌川くんは温厚で、菊地原くん相手に基本的には呆れはせど怒る事はない。
その2人が感情剥き出しで言い争っているのは(聞こえないから多分だけど)いつぶりだろうか。風間隊の結成直後くらいか。
(あの頃はよく衝突してたしなー)
お互いがお互いの事を知る前だったからな、と回想に耽っていたら睨みあっていた歌川くんと菊地原くんがこちらを向いた。
「「蒼さん!」」
「わっ、なに?」
突然大きな声で呼ばれたことにびっくりしていれば、ずんずん近寄ってきた2人が口を開く。
「ぼくと歌川、どっちが好きですか」
「え、どっちも大好きだけど」
「それじゃ駄目です、はっきり決めて下さい」
「ええー?」
非常に困る質問をされて眉を下げるが、眼前の2人は引く気配を見せない。だけどどっちかなんて選べないし、どうしたものか。
「困ったな、好きなとこ挙げていくんじゃだめ?」
「……今回はそれでいい?」
「ああ」
睨み合いながら頷いた2人が私の両脇に座り込むのを見ながら、2人の好きなとこを考える。好きなとこ、言い出したは良いけどいっぱいあるんだよなあ。
「菊地原くんはぶっきらぼうだけど優しいし、よく私の事気にかけてくれるとこが好き」
「えー、普通の事じゃないですか」
「体調悪かったり、気分が悪かったりすると隠しててもすぐ気付いて来てくれるでしょ?普通でも嬉しい」
そういうの1番鋭いのが菊地原くんだもの、と言えば菊地原くんは溜息をついて続きを促した。
「…ほかは?」
「まっすぐ前を見据えてる顔が好き」
「へえ」
一緒に風間隊に所属してたときはもちろん、いまでもたまに見れる真剣な目が格好良いのだ。なんていうのかな、普段とのギャップにぐっとする感じ。
「あとは髪の毛縛ってる時の顔が好き、一瞬真剣な顔がちらっと見えるのが格好良い」
「、そうですか」
菊地原くんが頷いて「じゃあ、歌川は?」と促してきたので歌川くんの好きな所も挙げていく。
「歌川くんもすごく優しいし、私の話をよく聞いてくれるのが好き」
「はい」
歌川くんは、私が精神的に沈んでいる時に現れて話を聞いてくれることが多い。迷惑かけちゃうのに、ぜんぜんそんなこと無いみたいにしてくれるところとか。
「私がうだうだ言ってるのに、文句ひとつ言わずに背中を撫でてくれるとこが好き」
「蒼さんが困ってるの、見過ごす訳にはいきませんからね」
笑う歌川くんに、他の好きな所も挙げていく。
「背中がおっきくて、頼れるとこが好き」
「…ありがとうございます」
私の言葉を真剣に聞いていた2人が、そっと顔を見合わせたのが見えた。こんな所でいいのかなと思ったけれど、せっかくだからと続きを挙げていくことにした。
「でもね、とにかく2人とも格好良いんだよ。一緒に戦ってる時の目も格好良いし、連携の合間にお互いをちらっと見る仕草も好き。あとは蒼也さんに甘やかされてるのを見るのも好き、ここじゃないと見れない顔見せてくれるし。それから、」
「あー…あの、蒼さん」
「なに?」
それからね、と続けようと思った所で歌川くんからストップがかかった。首を傾げれば、手のひらで口元を押さえた歌川くんがうろうろと視線を彷徨わせている。耳が赤い。
「すみません、思ったより照れるので、その辺りで止めてもらって良いですか…」
「左に同じ…」
歌川くんの言葉に続いて、私の右側から賛同する菊地原くんの声が聞こえてくる。ちらりと見れば、菊地原くんはうつむいて表情が見えなかった。同じように口元を押さえているのは見えるけれど。
「えー。まだ2人の好きなところ挙げられるよ?歌川くんの笑顔とか、菊地原くんのおっきな手とか」
喋りながら、うつむいたままの菊地原くんの髪の毛をそっと割る。歌川くんは思いっきり照れてるのはわかったけれど、菊地原くんも照れてるのだろうかと見た彼の耳は真っ赤だった。それが見えた瞬間に、菊地原くんが私の手から逃げながら早口で文句を言ってくる。
「蒼さんもういいんでそれ以上喋らないで下さい」
「あらひどい」
先に聞いてきたくせにと思ったけれど、喧嘩も終息したようなので今回は追及しないでおくことにする。力尽きたようにぼすっと膝の上に倒れ込んで来た菊地原くんの頭を撫でて、ついでにソファにぐったりもたれている歌川くんの頭も腕を伸ばして撫でておく。
「ふふ」
かわいいやつらめと動かない2人をひとしきり撫でていたら、蒼也さんと歌歩ちゃんが戻って来きた。慌てて飛び起きた2人ががしゃがしゃと騒がしくお茶の準備を始めるのを、その姿を不思議がる蒼也さんと歌歩ちゃんにあとで話してやろうとにんまりと笑ってお茶の用意を手伝うためにキッチンへと足を向けた。
歌川くんと菊地原くんの喧嘩を仲裁する
手段は問わず!
(いやしかし、珍しい物をみた)
考えていた喧嘩の内容はなんだったか