荒船と出水の師匠シリーズ
荒船と出水の師匠シリーズ・短編詰め
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唯我くんに絡まれる
SOS,SOS.
ただいま太刀川隊作戦室前の廊下にて、唯我くんによる唯我くんの為の唯我くんの演説を聞かされている最中です。
「――…で、あるからして!このぼくの存在によりA級1位という位に更に箔がつくんですよ!」
「そうなんだー」
変に否定すると面倒なので適当に頷いているけれど、10分を過ぎようとしても唯我くんは大仰な身振り手振りで演説をやめる気配がない。これ普段聞いてくれる人がいないから、珍しく話を聞いてくれる人に対して弾けてるのかなあ。
「ねえ唯我くん、普段きみの話聞いてくれる人はいないの?」
「グサッ!!蒼さん、いまぼくの心には大きな傷がつきましたよ!」
「ああごめん、話の続き聞かせて?」
「続きですか!そうですね、このぼくの素晴らしい――…」
いやあ面倒くさい。正直言って唯我くんは嫌いじゃないけれど、この話を聞いてる時間は嫌いだ。有意義じゃない。
そもそも人を呼んどいてここに居なかった慶が悪い。あいつが全ての元凶だ。唯我くんはなぜか締め出されていたし、早く帰って来ないかなあ。
「それでですね、このぼくのお蔭で蒼さんみたいなS級の人にも引けをとらぶぎゃっ」
適当に頷いて流していたら、唐突に唯我くんが悲鳴を上げて吹っ飛んだ。良い飛びっぷりだなあ、と思いながら廊下に突っ伏す唯我くんを見れば、後ろから掛けられた声。
「唯我てめえ、蒼さんに迷惑かけてんじゃねえぞ」
振り返れば、唯我くんを蹴り飛ばしたであろう右足を降ろす出水くんが居た。
「あー、出水くん待ってたよ」
「すみません蒼さん、太刀川さんすぐ来ますんで中入って待っててください」
私に謝った出水くんは、手早くパスコードを入力して扉を開けて私を中へと促した。その後ろから復活した唯我くんが半泣きで出水くんに訴える。
「出水先輩!蹴るなんて酷いですよ!」
「うるせえ、さっさと蒼さんにお茶とお菓子用意しろ」
「横暴だ!弁護士を呼んでくれ!!」
「蒼さんは中どーぞ」
「うん、お邪魔します」
「おい唯我、来ねえと閉めちまうぞ」
ぎゃあぎゃあ騒ぐ唯我くんを放置して、出水くんに促されて作戦室へとお邪魔する。後ろから唯我くんが滑り込んできて、静かに扉は閉まった。
『なんで唯我くん締め出されてたの?』
『たぶん柚宇さんだと思いますよ、ゲームの邪魔とかでパスコードも変えたみたいです』
『ああー』
『その柚宇さんはおれと太刀川さんにパス教えて、オペレーター会議に行っちゃいましたけどね』
秘匿通信で持っていた疑問をぶつければ、出水くんが普段のことのように答えてくれた。
「蒼さんはそこ座って待っててください」
「了解」
ソファに促されて腰を下ろせば、ちょいちょい出水くんに急かされながら唯我くんがお茶を持ってきてくれる。
「どうぞ蒼さん」
「ありがとう」
「まったく、このぼくにお茶を淹れさせるなんて…」
ぶつくさ言う唯我くんからお茶とお菓子を受け取れば、出水くんが私の隣に腰を下ろしながら言う。
「そういえば、さっき蒼さんにも引けを取らないとか何とか言ってたけど、お前蒼さんに1回でも勝ったことあんのかよ」
「ひ、引き分けは1回ありましたよね!?」
「あったね」
「え、まじで?」
唯我くんが行った言葉に、出水くんが驚いて私を見た。淹れてもらったお茶をひとくち飲みながら頷く。
「私だけ飛び道具禁止で、鉛弾の重りを両手足にくっつけてやった時に相手してもらった」
「……それで引き分け…」
たっぷり驚いた出水くんが「そのハンデで…」と白けた視線を唯我くんに送るが、対する唯我くんは自信たっぷりに答える。
「いやあ、どんな勝負でも引き分けは引き分けですし!?」
「そうねー」
どや顔で言いきった唯我くんに頷きつつお茶菓子に手を伸ばす。あらこれ美味しい、ともちもちした大福を頬張っていれば出水くんがため息を零しながら呟いた。
「蒼さん、こいつの記憶弄っちゃえばいいのに」
「えー?」
「変な自信になるから消せません?流石に怒られますかね」
「あ、黙っとけば平気だと思うよ」
「えっ!」
さらっと記憶を弄れる宣言をした私に、唯我くんがベイルアウト用のベッドルームまでダッシュで引っ込んだ。
「べべべ弁護士を!!」
「此処じゃ呼べねえなあ」
がたがた震える唯我くんに、ソファから立ち上がった出水くんが悪い顔をして笑う。そのままじりじりと近づいていく出水くんを見ながら大福を咀嚼する。ああこれほんとおいしい、とぎゃあぎゃあ騒ぐ2人を見ていたら作戦室の扉が開いた。
「お、蒼来てたか」
「おや慶さん、先に言う事があるんじゃない?約束は10分前ですよ」
「悪かった、申し訳ない」
のそりと入って来た慶が誠意のかけらもないような謝罪をして、出水くんの大福をひょいとつまんで口の中に放り込む。「お、うまいな」と満足げに頷いた所で、自分の大福が食べられた事に気付いた出水くんが駆け寄ってきた。
「あー!太刀川さんそれおれの!」
「なんだ、出水のだったか。悪いな」
「助けて下さい蒼さんと出水先輩が酷いんです!!」
「唯我はうるせえ」
ばたばた駆け寄ってきた唯我くんを一蹴して、慶が首を傾げた。
「で、なにしてんだ」
「唯我が蒼さんに引き分けたっつー記憶を消そうと」
「え、なに唯我お前蒼と引き分けた事あんの?」
首を傾げてこちらを見た慶に頷く。出水くんは唯我くんを離して、慶に食べられた大福を補填しに憤慨しながらキッチンへと向かって行った。
「飛び道具禁止で両手足に鉛弾くっつけてね」
「なんだそれ面白そうだな」
ぱあっと表情が明るくなった慶が、隣に立つ唯我くんの袖口を引っ張った。
「俺とも1回やろうぜ、ほら準備しろ」
「ええっ!?いやほら太刀川さん蒼さんと用事があったんじゃないでしたっけ!?」
「蒼はもうちっと待っててくれ、あとで飯奢るから」
「いーよ、出水くんとお喋りしてるから」
「そんなっ!!」
絶望の表情でずりずり引き摺られていく唯我くんを見送って、やってきた出水くんと一緒にモニター越しにばたばた騒ぐ2人を生暖かい目で見守ることにした。
唯我くんに絡まれる
彼の長い偉大なお話を聞き流す
(最近、学校の近くに新しい店がオープンしたんですよ)
(お、じゃあそこ連れてってもらおっか)
唯我くんに絡まれるお話を!と言っていた方がいたもので。
SOS,SOS.
ただいま太刀川隊作戦室前の廊下にて、唯我くんによる唯我くんの為の唯我くんの演説を聞かされている最中です。
「――…で、あるからして!このぼくの存在によりA級1位という位に更に箔がつくんですよ!」
「そうなんだー」
変に否定すると面倒なので適当に頷いているけれど、10分を過ぎようとしても唯我くんは大仰な身振り手振りで演説をやめる気配がない。これ普段聞いてくれる人がいないから、珍しく話を聞いてくれる人に対して弾けてるのかなあ。
「ねえ唯我くん、普段きみの話聞いてくれる人はいないの?」
「グサッ!!蒼さん、いまぼくの心には大きな傷がつきましたよ!」
「ああごめん、話の続き聞かせて?」
「続きですか!そうですね、このぼくの素晴らしい――…」
いやあ面倒くさい。正直言って唯我くんは嫌いじゃないけれど、この話を聞いてる時間は嫌いだ。有意義じゃない。
そもそも人を呼んどいてここに居なかった慶が悪い。あいつが全ての元凶だ。唯我くんはなぜか締め出されていたし、早く帰って来ないかなあ。
「それでですね、このぼくのお蔭で蒼さんみたいなS級の人にも引けをとらぶぎゃっ」
適当に頷いて流していたら、唐突に唯我くんが悲鳴を上げて吹っ飛んだ。良い飛びっぷりだなあ、と思いながら廊下に突っ伏す唯我くんを見れば、後ろから掛けられた声。
「唯我てめえ、蒼さんに迷惑かけてんじゃねえぞ」
振り返れば、唯我くんを蹴り飛ばしたであろう右足を降ろす出水くんが居た。
「あー、出水くん待ってたよ」
「すみません蒼さん、太刀川さんすぐ来ますんで中入って待っててください」
私に謝った出水くんは、手早くパスコードを入力して扉を開けて私を中へと促した。その後ろから復活した唯我くんが半泣きで出水くんに訴える。
「出水先輩!蹴るなんて酷いですよ!」
「うるせえ、さっさと蒼さんにお茶とお菓子用意しろ」
「横暴だ!弁護士を呼んでくれ!!」
「蒼さんは中どーぞ」
「うん、お邪魔します」
「おい唯我、来ねえと閉めちまうぞ」
ぎゃあぎゃあ騒ぐ唯我くんを放置して、出水くんに促されて作戦室へとお邪魔する。後ろから唯我くんが滑り込んできて、静かに扉は閉まった。
『なんで唯我くん締め出されてたの?』
『たぶん柚宇さんだと思いますよ、ゲームの邪魔とかでパスコードも変えたみたいです』
『ああー』
『その柚宇さんはおれと太刀川さんにパス教えて、オペレーター会議に行っちゃいましたけどね』
秘匿通信で持っていた疑問をぶつければ、出水くんが普段のことのように答えてくれた。
「蒼さんはそこ座って待っててください」
「了解」
ソファに促されて腰を下ろせば、ちょいちょい出水くんに急かされながら唯我くんがお茶を持ってきてくれる。
「どうぞ蒼さん」
「ありがとう」
「まったく、このぼくにお茶を淹れさせるなんて…」
ぶつくさ言う唯我くんからお茶とお菓子を受け取れば、出水くんが私の隣に腰を下ろしながら言う。
「そういえば、さっき蒼さんにも引けを取らないとか何とか言ってたけど、お前蒼さんに1回でも勝ったことあんのかよ」
「ひ、引き分けは1回ありましたよね!?」
「あったね」
「え、まじで?」
唯我くんが行った言葉に、出水くんが驚いて私を見た。淹れてもらったお茶をひとくち飲みながら頷く。
「私だけ飛び道具禁止で、鉛弾の重りを両手足にくっつけてやった時に相手してもらった」
「……それで引き分け…」
たっぷり驚いた出水くんが「そのハンデで…」と白けた視線を唯我くんに送るが、対する唯我くんは自信たっぷりに答える。
「いやあ、どんな勝負でも引き分けは引き分けですし!?」
「そうねー」
どや顔で言いきった唯我くんに頷きつつお茶菓子に手を伸ばす。あらこれ美味しい、ともちもちした大福を頬張っていれば出水くんがため息を零しながら呟いた。
「蒼さん、こいつの記憶弄っちゃえばいいのに」
「えー?」
「変な自信になるから消せません?流石に怒られますかね」
「あ、黙っとけば平気だと思うよ」
「えっ!」
さらっと記憶を弄れる宣言をした私に、唯我くんがベイルアウト用のベッドルームまでダッシュで引っ込んだ。
「べべべ弁護士を!!」
「此処じゃ呼べねえなあ」
がたがた震える唯我くんに、ソファから立ち上がった出水くんが悪い顔をして笑う。そのままじりじりと近づいていく出水くんを見ながら大福を咀嚼する。ああこれほんとおいしい、とぎゃあぎゃあ騒ぐ2人を見ていたら作戦室の扉が開いた。
「お、蒼来てたか」
「おや慶さん、先に言う事があるんじゃない?約束は10分前ですよ」
「悪かった、申し訳ない」
のそりと入って来た慶が誠意のかけらもないような謝罪をして、出水くんの大福をひょいとつまんで口の中に放り込む。「お、うまいな」と満足げに頷いた所で、自分の大福が食べられた事に気付いた出水くんが駆け寄ってきた。
「あー!太刀川さんそれおれの!」
「なんだ、出水のだったか。悪いな」
「助けて下さい蒼さんと出水先輩が酷いんです!!」
「唯我はうるせえ」
ばたばた駆け寄ってきた唯我くんを一蹴して、慶が首を傾げた。
「で、なにしてんだ」
「唯我が蒼さんに引き分けたっつー記憶を消そうと」
「え、なに唯我お前蒼と引き分けた事あんの?」
首を傾げてこちらを見た慶に頷く。出水くんは唯我くんを離して、慶に食べられた大福を補填しに憤慨しながらキッチンへと向かって行った。
「飛び道具禁止で両手足に鉛弾くっつけてね」
「なんだそれ面白そうだな」
ぱあっと表情が明るくなった慶が、隣に立つ唯我くんの袖口を引っ張った。
「俺とも1回やろうぜ、ほら準備しろ」
「ええっ!?いやほら太刀川さん蒼さんと用事があったんじゃないでしたっけ!?」
「蒼はもうちっと待っててくれ、あとで飯奢るから」
「いーよ、出水くんとお喋りしてるから」
「そんなっ!!」
絶望の表情でずりずり引き摺られていく唯我くんを見送って、やってきた出水くんと一緒にモニター越しにばたばた騒ぐ2人を生暖かい目で見守ることにした。
唯我くんに絡まれる
彼の長い偉大なお話を聞き流す
(最近、学校の近くに新しい店がオープンしたんですよ)
(お、じゃあそこ連れてってもらおっか)
唯我くんに絡まれるお話を!と言っていた方がいたもので。