荒船と出水の師匠シリーズ
荒船と出水の師匠シリーズ・短編詰め
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迅とイルミネーション
「さむい」
「冬だもんなー」
悠一と2人、夜の街並みを歩く。さっきまで合同での防衛任務が入っていたのだけれど、その時に玉狛の近くにイルミネーションの綺麗なところがあると聞いたのでそこへ向かっている途中だった。
「なんか暖かいの飲みたい」
「ん、じゃあそこで何か買って行こう」
悠一が指差す先には、ライトの点いた小さな黄色い車。傍には立て看板がある。移動できるカフェのようだ。
「ココアあるかな」
「あるっぽいな」
おれのサイドエフェクトがそう言ってる、と言う悠一と一緒に移動販売の車に近づいていく。悠一の言った通りにあったココアをふたつ頼んで、お姉さんからココアを受け取る。お金は悠一が払ってくれた。
「デートですか?楽しんできてくださいね!」
「はーい」
「ありがとうございまーす」
にこにこしたお姉さんに手を振られて、愛想笑いをしながら車から離れていく。
「まあ、デートと言えばデートだよなあ」
「だねえ。ココアありがと」
「いーえ」
暖かいココアを両手で抱えて、2人並んで歩いていく。ふんわりしたクリームの乗ったココアを少しずつ飲みながら歩いていけば、公園へ続くレンガ造りの階段の上で悠一が立ち止まった。
「ここ?」
「いや、この先なんだけど。ここでちょっと待機な」
「ん」
悠一が言うなら待機しましょう、と2人で階段のはじっこに座って待機姿勢に入る。ココアを飲みながら少しだけ時間が過ぎて、隣に座る悠一が小さく口を開いた。
「蒼、最近無理してない?」
「仕事は多いけど、あんまり」
私はわりと弟子たちが気にかけてくれるから、最近は無理する事は少なくなっている。それより悠一の方が無理してるんじゃないの、と聞けば悠一はゆるく首を振った。
「いや、まだへいき」
「そっか」
数あるサイドエフェクトの中でも、悠一のは特に精神に負担が掛かるタイプのものだ。否が応でも未来は視えるし、良い未来から視たくない未来までもが視えてしまう。
ココアを飲んで、ふへーと溜め息を吐く悠一の背中をぽんぽん叩いた。
「たまには甘えて」
「ありがと」
私の言葉に悠一が笑う。
私も悠一には甘えさせてもらってますし、と呟いてココアを飲み込む。冷えた身体に暖かさがしみていく。
「…そろそろかな」
「ん、了解」
ひょい、と先に立ち上がった悠一に手を引かれて立ち上がる。コートについたゴミをぱしぱし叩いて前を向けば、丁度目の前にある公園の入口にあるアーチがぱっとライトアップされた。
「わ」
それに目を取られれば、こちら側から向こう側に、流れるように光が灯っていく。雪を模した白い電飾を纏う大木、鳥や動物の形をした光る置物、公園の花壇には花の様に敷かれた色とりどりの光。悠一はこのタイミングを待っていたのか。
「うわ、綺麗!」
「行こうか、階段気を付けてな」
「了解っ」
悠一は浮かれる私に苦笑しながら、一緒に階段を下りていく。公園内は矢印があり、ちいさなコースを歩けるようになっているらしい。
「どこから行くの?」
「ここからだよ」
笑う悠一に先導されて、コースの入り口へとやってくる。点灯したばかりで人が少ないので、ゆっくり楽しめるだろう。
「蒼」
「なーに?」
「せっかくだから、本当のデートっぽくいきたいな」
振り返った悠一が私に手を伸ばす。さっそく甘えてくれたらしい事に笑って、悠一のほうへ近づいて差し出された手を握った。
「もちろん」
「ありがと」
冷たい夜風にさらされて赤く染まった頬で、悠一がにへ、と嬉しそうに笑った。
それから軽く手を引かれて、一緒に歩き出す。
「行こうか」
「うん」
せっかく甘えてくれたんだし、散々甘やかしてやろうと心に決めて、一緒に光のアーチをくぐった。
イルミネーション
悠一と光の楽園へ
(わ、ボーダー本部がある!)
(でかい冷奴にしか見えないけどなー)
「さむい」
「冬だもんなー」
悠一と2人、夜の街並みを歩く。さっきまで合同での防衛任務が入っていたのだけれど、その時に玉狛の近くにイルミネーションの綺麗なところがあると聞いたのでそこへ向かっている途中だった。
「なんか暖かいの飲みたい」
「ん、じゃあそこで何か買って行こう」
悠一が指差す先には、ライトの点いた小さな黄色い車。傍には立て看板がある。移動できるカフェのようだ。
「ココアあるかな」
「あるっぽいな」
おれのサイドエフェクトがそう言ってる、と言う悠一と一緒に移動販売の車に近づいていく。悠一の言った通りにあったココアをふたつ頼んで、お姉さんからココアを受け取る。お金は悠一が払ってくれた。
「デートですか?楽しんできてくださいね!」
「はーい」
「ありがとうございまーす」
にこにこしたお姉さんに手を振られて、愛想笑いをしながら車から離れていく。
「まあ、デートと言えばデートだよなあ」
「だねえ。ココアありがと」
「いーえ」
暖かいココアを両手で抱えて、2人並んで歩いていく。ふんわりしたクリームの乗ったココアを少しずつ飲みながら歩いていけば、公園へ続くレンガ造りの階段の上で悠一が立ち止まった。
「ここ?」
「いや、この先なんだけど。ここでちょっと待機な」
「ん」
悠一が言うなら待機しましょう、と2人で階段のはじっこに座って待機姿勢に入る。ココアを飲みながら少しだけ時間が過ぎて、隣に座る悠一が小さく口を開いた。
「蒼、最近無理してない?」
「仕事は多いけど、あんまり」
私はわりと弟子たちが気にかけてくれるから、最近は無理する事は少なくなっている。それより悠一の方が無理してるんじゃないの、と聞けば悠一はゆるく首を振った。
「いや、まだへいき」
「そっか」
数あるサイドエフェクトの中でも、悠一のは特に精神に負担が掛かるタイプのものだ。否が応でも未来は視えるし、良い未来から視たくない未来までもが視えてしまう。
ココアを飲んで、ふへーと溜め息を吐く悠一の背中をぽんぽん叩いた。
「たまには甘えて」
「ありがと」
私の言葉に悠一が笑う。
私も悠一には甘えさせてもらってますし、と呟いてココアを飲み込む。冷えた身体に暖かさがしみていく。
「…そろそろかな」
「ん、了解」
ひょい、と先に立ち上がった悠一に手を引かれて立ち上がる。コートについたゴミをぱしぱし叩いて前を向けば、丁度目の前にある公園の入口にあるアーチがぱっとライトアップされた。
「わ」
それに目を取られれば、こちら側から向こう側に、流れるように光が灯っていく。雪を模した白い電飾を纏う大木、鳥や動物の形をした光る置物、公園の花壇には花の様に敷かれた色とりどりの光。悠一はこのタイミングを待っていたのか。
「うわ、綺麗!」
「行こうか、階段気を付けてな」
「了解っ」
悠一は浮かれる私に苦笑しながら、一緒に階段を下りていく。公園内は矢印があり、ちいさなコースを歩けるようになっているらしい。
「どこから行くの?」
「ここからだよ」
笑う悠一に先導されて、コースの入り口へとやってくる。点灯したばかりで人が少ないので、ゆっくり楽しめるだろう。
「蒼」
「なーに?」
「せっかくだから、本当のデートっぽくいきたいな」
振り返った悠一が私に手を伸ばす。さっそく甘えてくれたらしい事に笑って、悠一のほうへ近づいて差し出された手を握った。
「もちろん」
「ありがと」
冷たい夜風にさらされて赤く染まった頬で、悠一がにへ、と嬉しそうに笑った。
それから軽く手を引かれて、一緒に歩き出す。
「行こうか」
「うん」
せっかく甘えてくれたんだし、散々甘やかしてやろうと心に決めて、一緒に光のアーチをくぐった。
イルミネーション
悠一と光の楽園へ
(わ、ボーダー本部がある!)
(でかい冷奴にしか見えないけどなー)