荒船と出水の師匠シリーズ
荒船と出水の師匠シリーズ・短編詰め
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荒船師弟とカレー会
「あ、いたいた」
ランク戦ロビーの一角にあるソファに座っていた彼を見つけて、そちらに足をすすめた。
「あーらふーねくん」
「蒼さん?」
どうしました?と隊服姿の荒船くんが振り返る。みれば、隣に村上くんも座っていた。テーブルの上には色々書かれた紙片が見えるし、どうやら2人でランク戦の反省会をしていたみたいだ。
「蒼さん、こんにちは」
「村上くんこんにちは。…ねえ2人とも、今夜ってなにか予定ある?」
「4時まで防衛任務ですが、その後はないです」
「村上くんは?」
「オレも特には」
どうしたんです?と首を傾げる2人に、良かった!と笑顔になる。
「今夜、ご飯食べにおいで!」
◆
「サラダよし、飲み物よし」
火にかけられた鍋がコトコトと静かに音を立てている。中身が焦げないようにおたまでかき混ぜつつ、用意し忘れたものが無いか確認していた。
「あっしまったデザートがない」
ゼリーでも買っておけばよかったかな、と後悔したときピンポーンとチャイムの音が鳴った。その音にぱっと顔をあげて、鍋の火を止めて玄関へ向かう。
「はいはーい」
しゅん、と扉が開けば私服姿の荒船くんと村上くんが立っていた。流石、時間ぴったりだと笑みがこぼしながら2人を部屋の中へ入るように促す。
「いらっしゃい、入って入って」
「お邪魔します」
「お邪魔します。蒼さん、これお土産です」
「わ、ありがとう」
村上くんが差し出した紙袋を受け取る。見た事の無い紙袋だな、何が入ってるんだろうと首を傾げれば村上くんが口を開く。
「鈴鳴支部の近くに出来た洋菓子屋さんがあって、そこのケーキをいくつか買ってきました」
「そうなの、ありがとう!」
新しいお店のケーキはとても気になるし、デザートが無くて困っていたから、丁度良かった。男子高校生の食欲は結構なものだし。
「荷物は適当なところに置いていいよー」
「はい」
リビングに2人を放りこんで、私はキッチンへ急ぐ。とりあえず冷蔵庫へケーキの箱を仕舞い込んだ。そんなに長く入れておくわけでもないから、クリームが硬くなることもないだろう。
「蒼さん」
「んー?」
「なにか手伝えますか?」
「ああ、とりあえず先に手を洗っておいで。そしたらお鍋運んでほしいかな」
「了解。鋼、いくぞ」
「ああ」
キッチンに顔を出した荒船くんにそう言えば、軽く頷いて村上くんを連れて洗面台の方へ歩いていった。村上くんが来るのは初めてだけど、荒船くんは何回か来ているから大体の構造は知ってるのだ。
「さて」
その間に鍋敷きやらお皿やらお箸やらをテーブルに運んでいく。次に何種類かのドレッシングとサラダを運んでいれば、洗面台から2人が戻ってきた。
「鍋ってこれですか?」
「あ、それそれ。鍋敷きはもうここにあるから持ってきてくれる?重いから気をつけて」
「はい」
荒船くんが鍋の両脇にある取っ手を指先でちょいちょい突いて温度を確かめた後、そっと鍋を持ち上げてリビングまでやってきた。村上くんはその後ろをそわそわしながらついてくる。
「いいにおいがする」
「カレーは好き?」
「はい」
目を細めて笑う村上くんに癒される。戦っている時のような真剣な表情をしてない彼は、すごく可愛い。対する荒船くんはいつもだいたい格好いい。
「荒船くんありがと」
「いえ。鋼はそっちな」
「ああ」
荒船くんはいつも呼んだ時に座っている、もはや定位置といっても良い席に座り、村上くんには出水くんの定位置を勧めた。
いそいそと座る村上くんと荒船くんの前にお茶の入ったグラスとサラダの取り皿、あとは何も入っていないカレー皿を置いていった。
「ご飯とカレーは好きなだけどうぞ」
最後に炊飯器をまるごとテーブル横まで持ってきて、ぱかりと開く。ほわりと漂った白い湯気に2人の顔が輝く。荒船くんにしゃもじを手渡せば、手際よく白米をお皿に乗せてから目を輝かせている村上くんにしゃもじを渡した。
「…作りすぎじゃないですか」
「いろいろありまして」
カレーの入った鍋の蓋を開けて、中にいっぱい詰まったカレーを見て荒船くんが呟く言葉に苦笑する。
昨日から煮込んだカレーは、本当は慶と出水くんが食べにくる予定だったのだけれど、急に任務が入ったとかで来れなくなったのだ。たぶん後でごねる。
「どうぞ、蒼さん」
「お、ありがと」
お皿にご飯をよそった村上くんがしゃもじを渡してくれる。それを受け取って、自分のお皿にもご飯をよそっていく。
荒船くんはたっぷりカレーをご飯の上にかけて、村上くんにおたまを渡していた。
「無くなるくらいおかわりしてくれて良いからね」
最後に白いご飯にカレーをたっぷりかけて「むしろおかわりして」と言っておく。1人じゃ食べきれないし、美味しく食べてもらえた方がいい。
待っていてくれた荒船くんと村上くんにお礼を言って、3人で軽く手を合わせる。
「いただきます」
「「いただきます」」
そういうのが早いか否か、2人ともスプーンを掴んでカレーを食べ始めた。スプーンいっぱいに掬ったカレーを大きく開けた口に入れ、もぐもぐ咀嚼した2人が口々に言ってくる。
「うまい」
「すごく美味しいです」
「ありがと」
美味しそうに食べる姿は、作った側からすればとても嬉しい。によによしながら同じようにカレーを掬い、口の中に放り込んだ。
「んん、なかなか」
さすが昨日から煮込んだだけあったとひとつ頷いて、私もカレーを食べることに没頭する事にした。
しばらくすれば、用意したサラダからカレー、ご飯はそれはもう綺麗になくなった。ついでにデザートのケーキまで食べきった男子高校生2人の食欲は恐るべしとしか言いようがない。
「ご馳走様でした」
「美味しかったです」
「よかった」
かたりと食器を置いた2人が言う言葉に笑う。本当に全部なくなるとは思っていなかったけれど、私としては美味しく食べてもらえて大満足だ。
「蒼さん、片付けくらいはさせて下さい」
「いいの?」
「ご馳走してくれたお礼にでも」
「わー、ありがとう」
後片付けまでしてくれた荒船くんと村上くんは、リビングに戻ってくるや、もう少しランク戦していくとの事で荷物を纏めだした。もう帰っちゃうのか。
「もうちょっとゆっくりしていけばいいのに」
「蒼さん、急ぎの書類があるとか言ってませんでしたっけ」
「あー、そんなこと言ってましたね」
食事中の話題でそんなのを話したな、と思い出す。それを覚えていたらしい2人が気を使ってくれたのか。それなら、さっさと終わらせてしまおうと頷いた。
「蒼さん、ご馳走様でした」
「お邪魔しました」
「うん、今日はありがとう。また作りすぎたら来てくれると嬉しい」
「「はい」」
頭を下げて出て行く荒船くんと村上くんを玄関まで送り、気を付けて帰ってねーと手を振った。
扉が閉まり、よし、今日の晩御飯会は大成功に終わったと拳を握った。まずはカレーの香りがする室内を換気して、それからホットミルクでも飲もうとリビングへ向かう。それから書類を片付けよう。
カレーを食べられなかった慶と出水くんがごねにごねて、山盛りのコロッケを作る事になるのはまた別のお話。
荒船師弟とカレーを食す
恐るべし男子高校生の食欲
(次はお好み焼き会でもするか)
最近ごはんのお話が多いねという独り言。
(多分、お腹空いてる時に書いてるからだろうけど)
「あ、いたいた」
ランク戦ロビーの一角にあるソファに座っていた彼を見つけて、そちらに足をすすめた。
「あーらふーねくん」
「蒼さん?」
どうしました?と隊服姿の荒船くんが振り返る。みれば、隣に村上くんも座っていた。テーブルの上には色々書かれた紙片が見えるし、どうやら2人でランク戦の反省会をしていたみたいだ。
「蒼さん、こんにちは」
「村上くんこんにちは。…ねえ2人とも、今夜ってなにか予定ある?」
「4時まで防衛任務ですが、その後はないです」
「村上くんは?」
「オレも特には」
どうしたんです?と首を傾げる2人に、良かった!と笑顔になる。
「今夜、ご飯食べにおいで!」
◆
「サラダよし、飲み物よし」
火にかけられた鍋がコトコトと静かに音を立てている。中身が焦げないようにおたまでかき混ぜつつ、用意し忘れたものが無いか確認していた。
「あっしまったデザートがない」
ゼリーでも買っておけばよかったかな、と後悔したときピンポーンとチャイムの音が鳴った。その音にぱっと顔をあげて、鍋の火を止めて玄関へ向かう。
「はいはーい」
しゅん、と扉が開けば私服姿の荒船くんと村上くんが立っていた。流石、時間ぴったりだと笑みがこぼしながら2人を部屋の中へ入るように促す。
「いらっしゃい、入って入って」
「お邪魔します」
「お邪魔します。蒼さん、これお土産です」
「わ、ありがとう」
村上くんが差し出した紙袋を受け取る。見た事の無い紙袋だな、何が入ってるんだろうと首を傾げれば村上くんが口を開く。
「鈴鳴支部の近くに出来た洋菓子屋さんがあって、そこのケーキをいくつか買ってきました」
「そうなの、ありがとう!」
新しいお店のケーキはとても気になるし、デザートが無くて困っていたから、丁度良かった。男子高校生の食欲は結構なものだし。
「荷物は適当なところに置いていいよー」
「はい」
リビングに2人を放りこんで、私はキッチンへ急ぐ。とりあえず冷蔵庫へケーキの箱を仕舞い込んだ。そんなに長く入れておくわけでもないから、クリームが硬くなることもないだろう。
「蒼さん」
「んー?」
「なにか手伝えますか?」
「ああ、とりあえず先に手を洗っておいで。そしたらお鍋運んでほしいかな」
「了解。鋼、いくぞ」
「ああ」
キッチンに顔を出した荒船くんにそう言えば、軽く頷いて村上くんを連れて洗面台の方へ歩いていった。村上くんが来るのは初めてだけど、荒船くんは何回か来ているから大体の構造は知ってるのだ。
「さて」
その間に鍋敷きやらお皿やらお箸やらをテーブルに運んでいく。次に何種類かのドレッシングとサラダを運んでいれば、洗面台から2人が戻ってきた。
「鍋ってこれですか?」
「あ、それそれ。鍋敷きはもうここにあるから持ってきてくれる?重いから気をつけて」
「はい」
荒船くんが鍋の両脇にある取っ手を指先でちょいちょい突いて温度を確かめた後、そっと鍋を持ち上げてリビングまでやってきた。村上くんはその後ろをそわそわしながらついてくる。
「いいにおいがする」
「カレーは好き?」
「はい」
目を細めて笑う村上くんに癒される。戦っている時のような真剣な表情をしてない彼は、すごく可愛い。対する荒船くんはいつもだいたい格好いい。
「荒船くんありがと」
「いえ。鋼はそっちな」
「ああ」
荒船くんはいつも呼んだ時に座っている、もはや定位置といっても良い席に座り、村上くんには出水くんの定位置を勧めた。
いそいそと座る村上くんと荒船くんの前にお茶の入ったグラスとサラダの取り皿、あとは何も入っていないカレー皿を置いていった。
「ご飯とカレーは好きなだけどうぞ」
最後に炊飯器をまるごとテーブル横まで持ってきて、ぱかりと開く。ほわりと漂った白い湯気に2人の顔が輝く。荒船くんにしゃもじを手渡せば、手際よく白米をお皿に乗せてから目を輝かせている村上くんにしゃもじを渡した。
「…作りすぎじゃないですか」
「いろいろありまして」
カレーの入った鍋の蓋を開けて、中にいっぱい詰まったカレーを見て荒船くんが呟く言葉に苦笑する。
昨日から煮込んだカレーは、本当は慶と出水くんが食べにくる予定だったのだけれど、急に任務が入ったとかで来れなくなったのだ。たぶん後でごねる。
「どうぞ、蒼さん」
「お、ありがと」
お皿にご飯をよそった村上くんがしゃもじを渡してくれる。それを受け取って、自分のお皿にもご飯をよそっていく。
荒船くんはたっぷりカレーをご飯の上にかけて、村上くんにおたまを渡していた。
「無くなるくらいおかわりしてくれて良いからね」
最後に白いご飯にカレーをたっぷりかけて「むしろおかわりして」と言っておく。1人じゃ食べきれないし、美味しく食べてもらえた方がいい。
待っていてくれた荒船くんと村上くんにお礼を言って、3人で軽く手を合わせる。
「いただきます」
「「いただきます」」
そういうのが早いか否か、2人ともスプーンを掴んでカレーを食べ始めた。スプーンいっぱいに掬ったカレーを大きく開けた口に入れ、もぐもぐ咀嚼した2人が口々に言ってくる。
「うまい」
「すごく美味しいです」
「ありがと」
美味しそうに食べる姿は、作った側からすればとても嬉しい。によによしながら同じようにカレーを掬い、口の中に放り込んだ。
「んん、なかなか」
さすが昨日から煮込んだだけあったとひとつ頷いて、私もカレーを食べることに没頭する事にした。
しばらくすれば、用意したサラダからカレー、ご飯はそれはもう綺麗になくなった。ついでにデザートのケーキまで食べきった男子高校生2人の食欲は恐るべしとしか言いようがない。
「ご馳走様でした」
「美味しかったです」
「よかった」
かたりと食器を置いた2人が言う言葉に笑う。本当に全部なくなるとは思っていなかったけれど、私としては美味しく食べてもらえて大満足だ。
「蒼さん、片付けくらいはさせて下さい」
「いいの?」
「ご馳走してくれたお礼にでも」
「わー、ありがとう」
後片付けまでしてくれた荒船くんと村上くんは、リビングに戻ってくるや、もう少しランク戦していくとの事で荷物を纏めだした。もう帰っちゃうのか。
「もうちょっとゆっくりしていけばいいのに」
「蒼さん、急ぎの書類があるとか言ってませんでしたっけ」
「あー、そんなこと言ってましたね」
食事中の話題でそんなのを話したな、と思い出す。それを覚えていたらしい2人が気を使ってくれたのか。それなら、さっさと終わらせてしまおうと頷いた。
「蒼さん、ご馳走様でした」
「お邪魔しました」
「うん、今日はありがとう。また作りすぎたら来てくれると嬉しい」
「「はい」」
頭を下げて出て行く荒船くんと村上くんを玄関まで送り、気を付けて帰ってねーと手を振った。
扉が閉まり、よし、今日の晩御飯会は大成功に終わったと拳を握った。まずはカレーの香りがする室内を換気して、それからホットミルクでも飲もうとリビングへ向かう。それから書類を片付けよう。
カレーを食べられなかった慶と出水くんがごねにごねて、山盛りのコロッケを作る事になるのはまた別のお話。
荒船師弟とカレーを食す
恐るべし男子高校生の食欲
(次はお好み焼き会でもするか)
最近ごはんのお話が多いねという独り言。
(多分、お腹空いてる時に書いてるからだろうけど)