荒船と出水の師匠シリーズ
荒船と出水の師匠シリーズ・短編詰め
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太刀川ととある日の晩御飯
ピンポーン。
部屋にある掛け時計が午後6時を指して少し経ったころ、私の部屋に来訪者を告げるチャイムが鳴った。
「はーい?」
『蒼、俺ー』
「慶?」
鍵を解錠して扉を開けると、目の前には幼馴染でひとつ年上の太刀川慶が立っていた。なにやら半透明のビニール袋に入ったいくつかの箱を右手に提げている。私服だし、笑顔なところを見ると今日は忍田さんに追われているわけではなさそうだ。
「どしたの?」
「晩飯まだだろ?フライドチキン買ってきたから食おうぜ」
「お、珍しいね。いただこう」
入って、と慶を部屋の中に招き入れると彼の後ろをチキンのいい香りが漂う。ちょうど晩御飯どうしようかなと考えていたところだったので助かった。
「それ置いたら先に手を洗ってきてね」
「おー」
私がキッチンへ向かって冷蔵庫からお茶を取り出す傍ら、後ろのリビングでは慶がフライドチキンの箱をテーブルに置いて洗面台の方へ消えて行く。
「慶さん、お茶持ってってくれる?」
「はいよ」
冷凍庫から取り出した氷をいくつか放り込んで、お茶を注いだグラスを戻ってきた慶に渡せば、それを受け取ってリビングの方へ行った。私もお皿やらお手拭きを持って慶の後を追う。
「いくつかサイドメニューも買ってきたけど、蒼なんか食いたいもんある?」
「何があるー?」
席に着けば、慶がビニール袋からいくつかの紙袋を取り出した。その中からは、ビスケット、ポテト、コールスローなどが次々と出てくる。
「お、コールスロー食べる!」
「蒼これ好きなんだっけ」
「うん。特にここのは大好き」
じゃあやろう、と慶がコールスローの入ったカップを私の前に置いてくれた。お礼を言いながらそれを受け取って、ポテトを持ってきた大きめの皿にざらっと出した。まだ暖かいのでレンチンする必要はなさそうだ。
ポテトやらビスケットやらをお皿に盛っていると、慶は持ってきたお皿にチキンを出してくれる。
「あ、それ今CMでやってるやつ?」
「そうそう、うまそうだから買って来た」
この前CMで見た、さくさくの衣を売りにしたチキンだと気付けば慶が笑って頷き、冷めないうちに食べちゃおうと二人で手を合わせた。
「「いただきます」」
袖が邪魔にならないように軽く腕まくりをして、チキンを持つ。大きく口を開いて齧りつけば、さすが売りにしてるだけあって衣はざくりといい音を立てた。そこから更に噛み締めれば、旨味をふんだんに含んだ肉汁が溢れて口に広がった。
「んん、おいしー!」
「だな」
これは当たりだねなんて言いながらチキンを齧る。ざくざく1ピース食べたところで軽く手を拭き、お茶を一口飲んでからコールスローへ取り掛かる。
付属のスプーンをビニールから取り出して、コールスローの蓋を開けるとふわりとドレッシングの香りが空気に溶けた。
「俺はビスケットにするか」
「ビスケットもおいしいよねー」
慶がさくふわのビスケットの上にメープルシロップをたらりとかけるのを見ながら、コールスローを軽くかき混ぜて掬い、口の中へ。
「んー!」
口の中に広がるドレッシングのほどよい酸味と、ざくざくしたキャベツやニンジン、玉ねぎの歯ごたえ。噛めば噛むほど広がる旨味にこれこれ、と一人頷けば慶が楽しげに笑う。
「うまそうだな」
「うん、おいしい…!」
幸せいっぱいでコールスローを頬張る私を見ながら、慶はビスケットに噛り付き、指に垂れるメープルシロップをべろりと舌で舐め取った。
「ん、あま…」
「そうだ、なんでわざわざチキン買ってきてくれたの?出水くんたちと食べればいいのに」
「あー、出水たちの方が一足早かったんだよ」
「同じの買ってきたってこと?」
「そ、唯我に食わせてみようっつって米屋と買い込んで来たんだと。タイミングが悪かったんだよなー」
「それでこっちに来たのか」
「ああ」
付き合せて悪いな、とばつの悪そうな顔をして言う慶に対して横に首を振った。買い込んで来た、という表現を使ったなら二人は結構な量を買ってきたのだろう。食べ盛りの男子高校生がいるのにそこで一緒に食べてこないなら、チキンは相当な量だったはずだ。
「というかそっちでは食べてこなかったの?」
出水くんのことだ、ちゃんと慶の分も買ってきていたはずだろうと言えば慶が頷く。
「4ピース食って、あとはお前等で食えって逃げてきた」
「それでもまだ入るのか」
成人男子凄いな、私なんか3ピース食べられればお腹いっぱいなのにと呟けば、慶がゆるく首を振った。
「いや、さっすがにこんだけの量は食えねえ」
入ってあと2、3個だなーと言う慶が見ているのは、未開封のチキンの入っている箱。
慶も太刀川隊のメンバー分は買ってきていたのだけれど、さすがに2人には多い量だ。
「どうすんのこれ」
ざくざくコールスローを食べながら聞けば、慶がお手拭で手を拭いて、携帯を取り出しながら言う。
「暇してそうなやつ呼ぶか?」
「だれかいたかな、暇してそうな人…」
スプーンを咥えたまま同じように携帯を引っ張り出す。電源ボタンを押そうとした瞬間、ピコンと通知音がした。
『実力派エリートはお呼びかな?』
「お。悠一来るかも」
「迅が?」
未来視で見たのか、こういう時は便利だなと笑う慶をよそに、悠一に返信する。
『お呼びー。私の部屋まで来れる?』
『ちょうど城戸さんに呼ばれてたからすぐに行けるよ』
『了解、待ってる』
「すぐ来るって」
「じゃあ冷めないうちに食わせてやれるな」
携帯をテーブルの上に置いて慶に言えば、チキンが冷めなくて良かったと笑う。
悠一が来るなら追加のグラスやらお皿やらが必要だな、と立ち上がってキッチンへ向かう。
「蒼ー、お茶おかわりー」
「はいはい」
後ろから飛んできた注文に返事をして、冷蔵庫から麦茶の入ったポットを取り出す。それから悠一の分のお皿と氷を放りこんだグラスを引っさげてリビングへ戻って、麦茶を慶に渡した。
「はいどうぞ」
「さんきゅ」
空になったグラスになみなみと麦茶をそそぐ慶を見ていれば、ピンポーンと部屋に軽やかな音が響き渡った。
「迅か」
「ほんとに早かった」
迎えに行ってくる、と再び立ち上がって玄関へ向かう。扉を開けば目の前に悠一が立っていた。
「や。実力派エリート現着しました」
「いらっしゃーい」
「はいこれ手土産」
「わーいありがと」
中に入ってきた悠一に差し出された紙袋。受け取った重さと音からしてクッキーかビスケットかな。悠一のことだ、一緒に食べようと持ってきてくれたのだろう。
「先に手ぇ洗っておいで」
「りょーかい」
靴を脱いだ悠一を洗面台に送り出してリビングへ戻ると、ポテトを摘まんでいた慶がこちらを見て、私の持っている紙袋に目をとめた。
「なんだそれ?」
「お土産だって。多分お菓子だからあとで食べよ」
「おー、いいな」
席に戻って座り込み、とりあえずこれは横に置いておこうと紙袋を置けば手を洗い終えた悠一がやってきた。
「や、太刀川さん久し振り」
「ほんとに久し振りだな、迅。このあと暇なら模擬戦しようぜ」
「模擬戦しようとしたら太刀川さんが忍田さんに捕まるよ。なにか出してない書類あるんでしょ?おれのサイドエフェクトがそう言ってる」
「やべ、心当たりがある」
「はい悠一、お茶どうぞ」
「お、蒼ありがと」
わいわい話す二人の横で、悠一のグラスにお茶を注いで差し出す。それを見た慶が未開封のチキンの箱をテーブルの上にどんと置いて言った。
「さあ迅、好きなだけ食え。そして忍田さんには何も言うな」
「はは、いただきまーす」
ぱしっと手を合わせた悠一が箱からチキンを引っ張り出してかじりつく。さくさくチキンを齧る悠一を見て、慶と二人で再びチキンを手に取る。まだまだチキンは山のようにあるのだ。
悠一と言う新たな戦力を得ても余るようならば、それは悠一にお土産で持たせてしまおうと思いながらチキンに齧りついた。
とある日の晩御飯
チキン祭開催中
(もうだめお腹いっぱい)
(しばらくチキンはいいわ…)
(ねえこれお土産に貰ってっていい?)
太刀川さんとチキン食べたい
ピンポーン。
部屋にある掛け時計が午後6時を指して少し経ったころ、私の部屋に来訪者を告げるチャイムが鳴った。
「はーい?」
『蒼、俺ー』
「慶?」
鍵を解錠して扉を開けると、目の前には幼馴染でひとつ年上の太刀川慶が立っていた。なにやら半透明のビニール袋に入ったいくつかの箱を右手に提げている。私服だし、笑顔なところを見ると今日は忍田さんに追われているわけではなさそうだ。
「どしたの?」
「晩飯まだだろ?フライドチキン買ってきたから食おうぜ」
「お、珍しいね。いただこう」
入って、と慶を部屋の中に招き入れると彼の後ろをチキンのいい香りが漂う。ちょうど晩御飯どうしようかなと考えていたところだったので助かった。
「それ置いたら先に手を洗ってきてね」
「おー」
私がキッチンへ向かって冷蔵庫からお茶を取り出す傍ら、後ろのリビングでは慶がフライドチキンの箱をテーブルに置いて洗面台の方へ消えて行く。
「慶さん、お茶持ってってくれる?」
「はいよ」
冷凍庫から取り出した氷をいくつか放り込んで、お茶を注いだグラスを戻ってきた慶に渡せば、それを受け取ってリビングの方へ行った。私もお皿やらお手拭きを持って慶の後を追う。
「いくつかサイドメニューも買ってきたけど、蒼なんか食いたいもんある?」
「何があるー?」
席に着けば、慶がビニール袋からいくつかの紙袋を取り出した。その中からは、ビスケット、ポテト、コールスローなどが次々と出てくる。
「お、コールスロー食べる!」
「蒼これ好きなんだっけ」
「うん。特にここのは大好き」
じゃあやろう、と慶がコールスローの入ったカップを私の前に置いてくれた。お礼を言いながらそれを受け取って、ポテトを持ってきた大きめの皿にざらっと出した。まだ暖かいのでレンチンする必要はなさそうだ。
ポテトやらビスケットやらをお皿に盛っていると、慶は持ってきたお皿にチキンを出してくれる。
「あ、それ今CMでやってるやつ?」
「そうそう、うまそうだから買って来た」
この前CMで見た、さくさくの衣を売りにしたチキンだと気付けば慶が笑って頷き、冷めないうちに食べちゃおうと二人で手を合わせた。
「「いただきます」」
袖が邪魔にならないように軽く腕まくりをして、チキンを持つ。大きく口を開いて齧りつけば、さすが売りにしてるだけあって衣はざくりといい音を立てた。そこから更に噛み締めれば、旨味をふんだんに含んだ肉汁が溢れて口に広がった。
「んん、おいしー!」
「だな」
これは当たりだねなんて言いながらチキンを齧る。ざくざく1ピース食べたところで軽く手を拭き、お茶を一口飲んでからコールスローへ取り掛かる。
付属のスプーンをビニールから取り出して、コールスローの蓋を開けるとふわりとドレッシングの香りが空気に溶けた。
「俺はビスケットにするか」
「ビスケットもおいしいよねー」
慶がさくふわのビスケットの上にメープルシロップをたらりとかけるのを見ながら、コールスローを軽くかき混ぜて掬い、口の中へ。
「んー!」
口の中に広がるドレッシングのほどよい酸味と、ざくざくしたキャベツやニンジン、玉ねぎの歯ごたえ。噛めば噛むほど広がる旨味にこれこれ、と一人頷けば慶が楽しげに笑う。
「うまそうだな」
「うん、おいしい…!」
幸せいっぱいでコールスローを頬張る私を見ながら、慶はビスケットに噛り付き、指に垂れるメープルシロップをべろりと舌で舐め取った。
「ん、あま…」
「そうだ、なんでわざわざチキン買ってきてくれたの?出水くんたちと食べればいいのに」
「あー、出水たちの方が一足早かったんだよ」
「同じの買ってきたってこと?」
「そ、唯我に食わせてみようっつって米屋と買い込んで来たんだと。タイミングが悪かったんだよなー」
「それでこっちに来たのか」
「ああ」
付き合せて悪いな、とばつの悪そうな顔をして言う慶に対して横に首を振った。買い込んで来た、という表現を使ったなら二人は結構な量を買ってきたのだろう。食べ盛りの男子高校生がいるのにそこで一緒に食べてこないなら、チキンは相当な量だったはずだ。
「というかそっちでは食べてこなかったの?」
出水くんのことだ、ちゃんと慶の分も買ってきていたはずだろうと言えば慶が頷く。
「4ピース食って、あとはお前等で食えって逃げてきた」
「それでもまだ入るのか」
成人男子凄いな、私なんか3ピース食べられればお腹いっぱいなのにと呟けば、慶がゆるく首を振った。
「いや、さっすがにこんだけの量は食えねえ」
入ってあと2、3個だなーと言う慶が見ているのは、未開封のチキンの入っている箱。
慶も太刀川隊のメンバー分は買ってきていたのだけれど、さすがに2人には多い量だ。
「どうすんのこれ」
ざくざくコールスローを食べながら聞けば、慶がお手拭で手を拭いて、携帯を取り出しながら言う。
「暇してそうなやつ呼ぶか?」
「だれかいたかな、暇してそうな人…」
スプーンを咥えたまま同じように携帯を引っ張り出す。電源ボタンを押そうとした瞬間、ピコンと通知音がした。
『実力派エリートはお呼びかな?』
「お。悠一来るかも」
「迅が?」
未来視で見たのか、こういう時は便利だなと笑う慶をよそに、悠一に返信する。
『お呼びー。私の部屋まで来れる?』
『ちょうど城戸さんに呼ばれてたからすぐに行けるよ』
『了解、待ってる』
「すぐ来るって」
「じゃあ冷めないうちに食わせてやれるな」
携帯をテーブルの上に置いて慶に言えば、チキンが冷めなくて良かったと笑う。
悠一が来るなら追加のグラスやらお皿やらが必要だな、と立ち上がってキッチンへ向かう。
「蒼ー、お茶おかわりー」
「はいはい」
後ろから飛んできた注文に返事をして、冷蔵庫から麦茶の入ったポットを取り出す。それから悠一の分のお皿と氷を放りこんだグラスを引っさげてリビングへ戻って、麦茶を慶に渡した。
「はいどうぞ」
「さんきゅ」
空になったグラスになみなみと麦茶をそそぐ慶を見ていれば、ピンポーンと部屋に軽やかな音が響き渡った。
「迅か」
「ほんとに早かった」
迎えに行ってくる、と再び立ち上がって玄関へ向かう。扉を開けば目の前に悠一が立っていた。
「や。実力派エリート現着しました」
「いらっしゃーい」
「はいこれ手土産」
「わーいありがと」
中に入ってきた悠一に差し出された紙袋。受け取った重さと音からしてクッキーかビスケットかな。悠一のことだ、一緒に食べようと持ってきてくれたのだろう。
「先に手ぇ洗っておいで」
「りょーかい」
靴を脱いだ悠一を洗面台に送り出してリビングへ戻ると、ポテトを摘まんでいた慶がこちらを見て、私の持っている紙袋に目をとめた。
「なんだそれ?」
「お土産だって。多分お菓子だからあとで食べよ」
「おー、いいな」
席に戻って座り込み、とりあえずこれは横に置いておこうと紙袋を置けば手を洗い終えた悠一がやってきた。
「や、太刀川さん久し振り」
「ほんとに久し振りだな、迅。このあと暇なら模擬戦しようぜ」
「模擬戦しようとしたら太刀川さんが忍田さんに捕まるよ。なにか出してない書類あるんでしょ?おれのサイドエフェクトがそう言ってる」
「やべ、心当たりがある」
「はい悠一、お茶どうぞ」
「お、蒼ありがと」
わいわい話す二人の横で、悠一のグラスにお茶を注いで差し出す。それを見た慶が未開封のチキンの箱をテーブルの上にどんと置いて言った。
「さあ迅、好きなだけ食え。そして忍田さんには何も言うな」
「はは、いただきまーす」
ぱしっと手を合わせた悠一が箱からチキンを引っ張り出してかじりつく。さくさくチキンを齧る悠一を見て、慶と二人で再びチキンを手に取る。まだまだチキンは山のようにあるのだ。
悠一と言う新たな戦力を得ても余るようならば、それは悠一にお土産で持たせてしまおうと思いながらチキンに齧りついた。
とある日の晩御飯
チキン祭開催中
(もうだめお腹いっぱい)
(しばらくチキンはいいわ…)
(ねえこれお土産に貰ってっていい?)
太刀川さんとチキン食べたい