荒船と出水の師匠シリーズ
荒船と出水の師匠シリーズ・短編詰め
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18歳組が迎えに来る
「ねえお姉さん、いま暇?」
玉狛支部に顔を出した帰り、本部へ向かって街中を歩いているといかにも軽薄そうな男に絡まれた。
「暇じゃないですごめんなさい」
「ちょっとだけ付き合ってよー!お茶奢らせて?」
「急いでいるので他の人をあたってください」
「いやいや本当にちょっとでいいんだって!なにもしないし!」
まっすぐ歩く私の周りをうろうろしながら男がついてくる。人通りも多いから適当にあしらえば次のターゲットに移るだろうと思っていたのに、男は長い間私についてくる。ひまか。ひまなんだろうな。
「あれ、おねーさんこっちいくの?」
人通りない方に進んじゃうなんて意外と大胆ー?なんて笑う男を無視して本部へ向かう。仕方ないだろう向かっているのは警戒区域なんだから。
「ねー、危ないとは思わないの?」
「…」
警戒区域ぎりぎり、立ち入り禁止の柵が見えた。本当だったらここから少し西にある警戒区域の入口、ボーダー通路へ向かう所だけど後ろの男が面倒だからフェンスを乗り越えて入っちゃおう。
「…ちょっと」
高い柵を越えるために換装しようとポケットの中にあるトリガーへ伸ばした手を横から掴まれて、その手の主へ抗議の視線を投げた。無論、その手の主はさっきからついてくる男だ。しつこい。
「離して」
「いいじゃん、もうここなら叫んでも助けに来ないでしょ?俺とこうするつもりじゃなかったの?」
「え、頭大丈夫?」
にやついた男が手を離す気配はない。早いとこ換装して撒こうと溜め息を吐いたと同時に男の左頬にぴっと赤い筋が入った。その直後にバガッという着弾音。そして更に男のつま先ギリギリに威嚇射撃が2発、地面に突き刺さってアスファルトを穿った。
「ひっ!?」
衝撃に手を離して倒れ込んだ男を他所に弾丸の飛んできたほうを振り返れば、近くの屋根に人影が7人。鋭い視線でこちらを見下ろしている。
「蒼さん、大丈夫ですか」
「遅ェから迎えに来てやったぞ」
そう言いながら屋根から飛び越えて下に降りてくる人影は2人。村上くんと影浦くんだ。このあと模擬戦する予定のこの子達は、男に絡まれながら歩いている間に送った『変なのに付き纏われてるから遅れるかも』という連絡でわざわざ迎えに来てくれたらしい。
「大丈夫だよ、迎えに来てくれてありがとう」
「連絡が遅い」
2人にそう告げると、屋根の上から吐き捨てるような声が降ってくる。怒っていることを隠すこともしないこの声は荒船くんだ。
「荒船、お前ホント蒼さんの事になると厳しいよなー」
「大事にしてるからねえ」
「うっせえ」
穂刈くんと当真くん、そして荒船くんのスナイパー組の後ろから、北添くんと犬飼くんが呆れたように荒船くんを見ている。
18歳組のみんなで迎えに来てくれたのかと思っていたら、後ろに放置しっぱなしの男が倒れ込んだまま血の滲む頬を押さえて叫びだした。
「ぼっ、ボーダーが一般市民に危害を加えるなんて許されないぞ!」
「あ?」
私の方を向いていた影浦くんが髪をがしがし掻いて、ゆらっと男の方へ顔と足を向ける。大股で近づいた彼が、男の前にしゃがみ込んで心底憐れむような口ぶりでゆっくりと言った。
「お前さ、この状況わかって言ってんだったら随分イイ度胸してんな」
「は?」
疑問の声を上げた男に、屋根の上から5人が降りてきて私を庇うように前に立った。荒船くんの視線で下がるように示され、大人しく従えば一見その凶暴にしか見えない顔立ちの彼らが男を囲んでゆっくりと口を開いた。
「まあなんだ、余計な事を喋られても困るからよォ」
「大事な先輩を傷つけようとしたんだ、ただで帰す訳にはいかない」
「こんな警戒区域のギリギリにいたら、引き摺り込んで殺しても『勝手に入った一般人が近界民に連れ去られた』で隠蔽出来るぞ」
「助けなんて来ない、ここなら」
「さっきお前がそう言ったろ?忘れた?」
当真くん、村上くん、荒船くん、穂刈くん、犬飼くんの順番で脅しの言葉を掛けられた男は、今更大変な場所に来てしまったと悟って震えだした。北添くんと後ろから見てたけど怖いわ本当にこの人達。影浦くんと荒船くんなんか思いっきり威嚇してるし。影浦くんがしゅるっと手にスコーピオンを発動したけれど、生身の相手を傷つけはしないだろうと口出しはしなかった。北添くんも同じことを思っているんだろう、黙ったままだ。
「さて、どっから掻っ捌かれたい?」
「っや、やめろ…!」
「恨むならこの人について来ちまった手前を恨むんだな」
悪い笑顔で男の顔に刃を近づける影浦くんに続き、銃型トリガーの銃口を犬飼くんがぐりっと押し付け、荒船くん、当真くん、穂刈くんがイーグレットの銃口を男の頭に方々からゴツリと押し付ける。ついでにイーグレットで殴るのは良いかと目で聞いてきた荒船くんには無言で首を横に振った。首折れるだろ。
最後に村上くんがすらっと抜いた弧月の切っ先を男の喉元に向けると、恐怖のキャパを超えたらしい男が引き攣った声を上げて仰け反った。
「っひ、…!」
「あ?」
「あーあ」
「ありゃ、気絶しちまったなァ」
「何だよ根性ねえな」
「脅しすぎたか」
「まあ、楽になった。あとあとの処理が」
そのままばたりと道路に仰向けになって気絶した男に対して、影浦くんたちが口々に言うなか、イーグレットを担ぎ直した穂刈くんが男の右足を持って私の方へ引きずってくる。
結局のところ、私が記憶の処理をしなければ言い触らされて大事になってしまうからな。
「気絶してても平気ですか、記憶の処理」
「こっちの方が楽だよ、ありがと」
さっさと処理をしてしまおうと私の前にぺっと投げ捨てられた男の頭の方へしゃがみ込んでサイドエフェクトを発動させる。
そのまま手早く私に関わっている間の記憶を辿ってすっぱり消して、目を擦りながら立ち上がった。
「終わったよ、お待たせ」
「お疲れ様です」
「蒼さーん、目ぇ擦っちゃだめっすよ」
目に傷がついちゃいますよ、なんて北添くんの横に居た当真くんに静止をかけられる私をよそに村上くんたちは男をどうするか話し合っている。
「この男、このまま置いておいたら流石に不味いか」
「あ?別によくね?」
「いやー、駄目じゃね?」
「ここだと不審すぎるだろう、個人的には構わないが」
「じゃあオレが適当な所に転がしてきてやるよ」
そう言った当真くんが男の腕を持って、よいせーと気の抜けた掛け声を付けながら男を俵担ぎにした。ちょっと離れてればいいだろ?という当真くんに荒船くんが頷き、当真くんは路地へと消えて行った。
なんだかんだ当真くんは世話焼きさんだ。冬島さんがいるからな…と遠い目をした私の肩を影浦くんがぺしぺし叩いた。
「ホラ、さっさと帰って模擬戦しようぜ。こいつらとやっても勝ち目は決まってるようなモンだし、蒼サン居ねえとつまんねえんだよ」
「あ、了解」
「オイ待て今の聞き捨てならねえな」
「同感だ、今日はオレが勝ち越させてもらう」
「あ?やれるもんならやってみろよ」
火花を散らしだした荒船くんと村上くん、そして2人の刺さるような視線を受けながら影浦くんが挑発的に笑う。
「血の気多いねえ」
「蒼さんもでしょう、血の気が多いのは」
「否定はできない」
その後ろで穂刈くんとその様子を見守っていれば、痺れを切らしたらしい荒船くんがこちらを向いた。
「蒼さん、先に戻ってカゲと戦っててもいいですか」
「あ、じゃあ面白そうだし俺も先に戻りまーす」
「了解、頑張ってねー」
「はい」
「穂刈は蒼さんと帰ってこい、いいな」
「ゾエもな」
「「了解」」
北添くんと穂刈くんが頷いたのを見た荒船くんは、ばちばち火花を散らしながら村上くんと影浦くんを引き連れてフェンスを越え、早足に遠ざかっていった。その後をひょいひょいと犬飼くんが付いていく。
「さて、私たちも帰りましょ」
「はい」
「はーい」
ぎゃあぎゃあ言いながら遠ざかる4人に笑みをこぼしながら今度こそトリガーを起動して、穂刈くん、北添くんの2人と共に警戒区域の中へと踏み込んだ。
18歳組に助けられる
猛犬注意!
(あれ、まだこんなトコいたんすか)
(当真くんお帰りー)
(こういう事があった、実は)
(ほんと血の気多いよねー)
(ああなるほど)
18歳組に夢を詰め込んだ
急遽ゾエさんと犬飼くんを詰め込んだのは内緒だ
「ねえお姉さん、いま暇?」
玉狛支部に顔を出した帰り、本部へ向かって街中を歩いているといかにも軽薄そうな男に絡まれた。
「暇じゃないですごめんなさい」
「ちょっとだけ付き合ってよー!お茶奢らせて?」
「急いでいるので他の人をあたってください」
「いやいや本当にちょっとでいいんだって!なにもしないし!」
まっすぐ歩く私の周りをうろうろしながら男がついてくる。人通りも多いから適当にあしらえば次のターゲットに移るだろうと思っていたのに、男は長い間私についてくる。ひまか。ひまなんだろうな。
「あれ、おねーさんこっちいくの?」
人通りない方に進んじゃうなんて意外と大胆ー?なんて笑う男を無視して本部へ向かう。仕方ないだろう向かっているのは警戒区域なんだから。
「ねー、危ないとは思わないの?」
「…」
警戒区域ぎりぎり、立ち入り禁止の柵が見えた。本当だったらここから少し西にある警戒区域の入口、ボーダー通路へ向かう所だけど後ろの男が面倒だからフェンスを乗り越えて入っちゃおう。
「…ちょっと」
高い柵を越えるために換装しようとポケットの中にあるトリガーへ伸ばした手を横から掴まれて、その手の主へ抗議の視線を投げた。無論、その手の主はさっきからついてくる男だ。しつこい。
「離して」
「いいじゃん、もうここなら叫んでも助けに来ないでしょ?俺とこうするつもりじゃなかったの?」
「え、頭大丈夫?」
にやついた男が手を離す気配はない。早いとこ換装して撒こうと溜め息を吐いたと同時に男の左頬にぴっと赤い筋が入った。その直後にバガッという着弾音。そして更に男のつま先ギリギリに威嚇射撃が2発、地面に突き刺さってアスファルトを穿った。
「ひっ!?」
衝撃に手を離して倒れ込んだ男を他所に弾丸の飛んできたほうを振り返れば、近くの屋根に人影が7人。鋭い視線でこちらを見下ろしている。
「蒼さん、大丈夫ですか」
「遅ェから迎えに来てやったぞ」
そう言いながら屋根から飛び越えて下に降りてくる人影は2人。村上くんと影浦くんだ。このあと模擬戦する予定のこの子達は、男に絡まれながら歩いている間に送った『変なのに付き纏われてるから遅れるかも』という連絡でわざわざ迎えに来てくれたらしい。
「大丈夫だよ、迎えに来てくれてありがとう」
「連絡が遅い」
2人にそう告げると、屋根の上から吐き捨てるような声が降ってくる。怒っていることを隠すこともしないこの声は荒船くんだ。
「荒船、お前ホント蒼さんの事になると厳しいよなー」
「大事にしてるからねえ」
「うっせえ」
穂刈くんと当真くん、そして荒船くんのスナイパー組の後ろから、北添くんと犬飼くんが呆れたように荒船くんを見ている。
18歳組のみんなで迎えに来てくれたのかと思っていたら、後ろに放置しっぱなしの男が倒れ込んだまま血の滲む頬を押さえて叫びだした。
「ぼっ、ボーダーが一般市民に危害を加えるなんて許されないぞ!」
「あ?」
私の方を向いていた影浦くんが髪をがしがし掻いて、ゆらっと男の方へ顔と足を向ける。大股で近づいた彼が、男の前にしゃがみ込んで心底憐れむような口ぶりでゆっくりと言った。
「お前さ、この状況わかって言ってんだったら随分イイ度胸してんな」
「は?」
疑問の声を上げた男に、屋根の上から5人が降りてきて私を庇うように前に立った。荒船くんの視線で下がるように示され、大人しく従えば一見その凶暴にしか見えない顔立ちの彼らが男を囲んでゆっくりと口を開いた。
「まあなんだ、余計な事を喋られても困るからよォ」
「大事な先輩を傷つけようとしたんだ、ただで帰す訳にはいかない」
「こんな警戒区域のギリギリにいたら、引き摺り込んで殺しても『勝手に入った一般人が近界民に連れ去られた』で隠蔽出来るぞ」
「助けなんて来ない、ここなら」
「さっきお前がそう言ったろ?忘れた?」
当真くん、村上くん、荒船くん、穂刈くん、犬飼くんの順番で脅しの言葉を掛けられた男は、今更大変な場所に来てしまったと悟って震えだした。北添くんと後ろから見てたけど怖いわ本当にこの人達。影浦くんと荒船くんなんか思いっきり威嚇してるし。影浦くんがしゅるっと手にスコーピオンを発動したけれど、生身の相手を傷つけはしないだろうと口出しはしなかった。北添くんも同じことを思っているんだろう、黙ったままだ。
「さて、どっから掻っ捌かれたい?」
「っや、やめろ…!」
「恨むならこの人について来ちまった手前を恨むんだな」
悪い笑顔で男の顔に刃を近づける影浦くんに続き、銃型トリガーの銃口を犬飼くんがぐりっと押し付け、荒船くん、当真くん、穂刈くんがイーグレットの銃口を男の頭に方々からゴツリと押し付ける。ついでにイーグレットで殴るのは良いかと目で聞いてきた荒船くんには無言で首を横に振った。首折れるだろ。
最後に村上くんがすらっと抜いた弧月の切っ先を男の喉元に向けると、恐怖のキャパを超えたらしい男が引き攣った声を上げて仰け反った。
「っひ、…!」
「あ?」
「あーあ」
「ありゃ、気絶しちまったなァ」
「何だよ根性ねえな」
「脅しすぎたか」
「まあ、楽になった。あとあとの処理が」
そのままばたりと道路に仰向けになって気絶した男に対して、影浦くんたちが口々に言うなか、イーグレットを担ぎ直した穂刈くんが男の右足を持って私の方へ引きずってくる。
結局のところ、私が記憶の処理をしなければ言い触らされて大事になってしまうからな。
「気絶してても平気ですか、記憶の処理」
「こっちの方が楽だよ、ありがと」
さっさと処理をしてしまおうと私の前にぺっと投げ捨てられた男の頭の方へしゃがみ込んでサイドエフェクトを発動させる。
そのまま手早く私に関わっている間の記憶を辿ってすっぱり消して、目を擦りながら立ち上がった。
「終わったよ、お待たせ」
「お疲れ様です」
「蒼さーん、目ぇ擦っちゃだめっすよ」
目に傷がついちゃいますよ、なんて北添くんの横に居た当真くんに静止をかけられる私をよそに村上くんたちは男をどうするか話し合っている。
「この男、このまま置いておいたら流石に不味いか」
「あ?別によくね?」
「いやー、駄目じゃね?」
「ここだと不審すぎるだろう、個人的には構わないが」
「じゃあオレが適当な所に転がしてきてやるよ」
そう言った当真くんが男の腕を持って、よいせーと気の抜けた掛け声を付けながら男を俵担ぎにした。ちょっと離れてればいいだろ?という当真くんに荒船くんが頷き、当真くんは路地へと消えて行った。
なんだかんだ当真くんは世話焼きさんだ。冬島さんがいるからな…と遠い目をした私の肩を影浦くんがぺしぺし叩いた。
「ホラ、さっさと帰って模擬戦しようぜ。こいつらとやっても勝ち目は決まってるようなモンだし、蒼サン居ねえとつまんねえんだよ」
「あ、了解」
「オイ待て今の聞き捨てならねえな」
「同感だ、今日はオレが勝ち越させてもらう」
「あ?やれるもんならやってみろよ」
火花を散らしだした荒船くんと村上くん、そして2人の刺さるような視線を受けながら影浦くんが挑発的に笑う。
「血の気多いねえ」
「蒼さんもでしょう、血の気が多いのは」
「否定はできない」
その後ろで穂刈くんとその様子を見守っていれば、痺れを切らしたらしい荒船くんがこちらを向いた。
「蒼さん、先に戻ってカゲと戦っててもいいですか」
「あ、じゃあ面白そうだし俺も先に戻りまーす」
「了解、頑張ってねー」
「はい」
「穂刈は蒼さんと帰ってこい、いいな」
「ゾエもな」
「「了解」」
北添くんと穂刈くんが頷いたのを見た荒船くんは、ばちばち火花を散らしながら村上くんと影浦くんを引き連れてフェンスを越え、早足に遠ざかっていった。その後をひょいひょいと犬飼くんが付いていく。
「さて、私たちも帰りましょ」
「はい」
「はーい」
ぎゃあぎゃあ言いながら遠ざかる4人に笑みをこぼしながら今度こそトリガーを起動して、穂刈くん、北添くんの2人と共に警戒区域の中へと踏み込んだ。
18歳組に助けられる
猛犬注意!
(あれ、まだこんなトコいたんすか)
(当真くんお帰りー)
(こういう事があった、実は)
(ほんと血の気多いよねー)
(ああなるほど)
18歳組に夢を詰め込んだ
急遽ゾエさんと犬飼くんを詰め込んだのは内緒だ