荒船と出水の師匠シリーズ
荒船と出水の師匠シリーズ・短編詰め
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太刀川隊と一騒動
「やっと見つけたぞ!蒼!」
「蒼さん、こんにちはー」
「おー、出水くんと慶か。こんにちはー」
自販機の前で飲み物を吟味していた私の所へ慶が走ってやってきた。
その後ろからは出水くんがゆっくり歩いてくる。
だーっと走ってきた慶は、「どうしたの?」と聞こうと口を開いた私の肩をがっしりと掴んで勢いよく揺さぶり始めた。
「聞いてくれ!大変なんだ!」
「なになにまって目が回る」
「蒼!もうだめなんだ!レポート提出期限明日だった!」
「知らない自業自得でしょそれ」
がくがく揺さぶられて視界が回る、首が取れそうな錯覚に陥る。
べしべし慶の腕を叩けばようやく肩から手が外れ、ふらふらした私を後ろから出水くんが支えてくれた。
「大丈夫っすか」
「大丈夫じゃないよもう…出水くんありがと」
「いーえ」
「あー…時間がないなら慶はさっさと帰ってレポート纏めなよ」
若干出水くんに支えられ、揺れる頭を押さえながら言えば慶がきっぱりと言い切る。
「終わる気がしねえ。で、迅に言ったら蒼の所でなんとかなる未来が視えるって」
「うわー人に押し付けたなあ」
「なんとかしてくれ…!」
頼む!と手を合わせる慶。
いやー頼むと言われても、私はこの後荒船くんと模擬戦の予定なのだ。戦闘以外はダメ人間一直線の一つ上の幼馴染より、可愛い弟子との時間を大切にしたい。うん。
「よしわかった、慶」
「なんだ!」
「この後用事は?」
「ない!忍田さんにレポート仕上げなければ軟禁するって宣言されたし!」
「なら問題ないね。あとで1回、こっちに慶を任せた悠一を斬り倒してくれるなら手伝う」
「任せろ!」
勢いよく頷いた慶に、よしと頷き返す。ちょっと疲れるけど、サイドエフェクト使おう。
「そこの椅子座って、私の目を見て」
「おう」
自販機の横に置いてある椅子に慶を座らせ、その前に立つ。
普段とは逆に格子状の瞳を私が上から見下ろす。
「頼んだ」
「約束守ってね」
「ああ」
1つ頷いた慶と視線を絡ませる。
慶の瞳に映った私の瞳の色が、蒼から深紅へ染まった。
「、う」
「ああ、動かないで…」
私のサイドエフェクトは、超技能の一片にあたる。
目を合わせた相手の記憶を改竄したり、ちょっとした洗脳をかけたりすることが出来る、まあ所謂目を合わせた相手を石に変えるメデューサの亜種みたいなものだ。
普段この能力は、鬼怒田さんの所で保護した一般人の記憶処理などに使っている。
「…」
「…」
少しの間、敵味方を反転して認識させるのは1秒も目を合わせれば十分だけど、長い時間洗脳かけたり記憶を完全に消したりする時は長い時間目を合わせ続けなくてはいけないし、目を合わせている時に流れ込んでくる膨大な記憶から必要なものを取り出したり、書き換えたりとこれが面倒かつ疲れるのだ。
「ふう…これでいいかな」
今回、慶には『なんとしても今日中にレポートを完成させる』という簡単な洗脳をかけた。洗脳と言うか、使命感を植え付けたというか。
簡単と言っても今日中は掛かり続けてくれないと困るから、そこらへんちょっと弄ったけど。
「慶、気持ち悪いとかない?」
「ああ…さんきゅ、蒼」
目が赤く染まった慶が静かに言う。
記憶を消す時はなんとも無いのだけれど、洗脳をかけた時だけ相手の瞳が赤く染まる。
これは1分程で通常色に戻るけど、ランク戦とかで使っちゃうと操ったのが誰か1発でわかってしまうのが難点だ。
「出水悪いな、俺は先に戻る」
「はーい」
「頑張ってねー」
先程とは打って変わってしゃきっとした慶が、自室へ戻っていく。
角を曲がって慶の姿が見えなくなると、入れ替わりに慶がいた椅子に座り込んで目頭を押さえた。
「うー疲れた…」
「蒼さん、毎回すみません」
「出水くんが謝ることじゃないけど、全くだよもー」
「蒼さんさっき飲み物見てたでしょ?後で太刀川さんから必要経費で徴収しますんで、好きなの言って下さい」
「カルピスお願い」
「りょーかい」
ガタン、と音を立てて自販機がカルピスを吐き出す。
それを取り出した出水くんに差し出され、お礼を言って冷えたペットボトルを受け取った。
「はいどうぞ」
「ありがとー」
ぎゅりっとキャップを捻って外し、ぐっとカルピスを呷る。
独特の甘みが喉を通り過ぎる、うん美味しい。
ふうと一息吐いていると、自販機で自分の飲み物を買った出水くんが隣に座る。
「まったく、ちゃんとレポート書いて欲しいよ」
「ほんとですよねー」
「出水くんの飲み物も必要経費にいれときなよ、私が許す」
「そうします」
2人でだらだら話していれば、そこへ国近ちゃんが通りかかった。国近ちゃんは私達の姿を見つけると、とことこ寄ってきた。
「あれ~、いずみんと蒼さんだー」
「国近ちゃんだー。久しぶりー」
「柚宇さん」
「お久しぶりです~、隣良いですか?」
「もちろんどうぞー」
では!と国近ちゃんも3人掛けの椅子の端に座った。これで私は出水くんと国近ちゃんにはさまれる格好となる。
両手に華ならぬ両手に太刀川隊状態。さっきは慶もいたし、唯我くんを見つけたら太刀川隊コンプだ。
「あ、国近ちゃん何か飲む?必要経費にねじ込むから出水くんに買ってもらいな」
「ありがとうございますー!いずみん、紅茶あるー?」
「はいはいえーと、ミルクティーでいいっすか?」
「いいよ~。じゃあ私からはこれどうぞー、るいるいから貰ったんですー」
「わーいありがとー」
「いずみんもどうぞー」
「あざっす」
国近ちゃんは諏訪隊オペレーターの小佐野ちゃんから貰ったという、彼女がいつも口にしている棒付き飴を取り出し、2本ずつ私と出水くんに手渡してくれた。やさしい。けどこれ確か豊胸効果があるやつだったような気がするけど、出水くん食べるのかこれ。そして国近ちゃんはそれ以上大きくするつもりなのか。そんな事を考えていれば国近ちゃんが首を傾げながら口を開いた。
「2人でなんの話をしてたんです?」
「太刀川さんが他人に迷惑かけずにしっかりレポート書いてくれないかなって話ですよ」
「あー、無理っぽい話ですね~」
「だよねー」
飲み物を飲みながらのんびり話していれば、荒船くんと模擬戦する予定時間が迫ってきている事に気付いた。
空になったペットボトルをゴミ箱に入れて立ち上がる。
「ごめんね、私これから荒船くんと模擬戦なんだ。行かなくては」
「あ、おれも休憩したら行くんで、おれとも模擬戦してくださいよ」
「勿論良いよー。ではお先に!」
「「頑張ってくださいね~」」
「ありがとー!」
別れを告げ、歩き出すと後ろから優しい声が飛んでくる。
手を振ってくれる2人の後輩に笑顔で手を振り返し、荒船くんとの待ち合わせ場所へと足を進めた。
太刀川隊とひと騒動
隊長様から泣きつかれる
(慶さん終わったー?)
(終わった、けど、頭パンクしそう…)
(これに懲りたらちゃんとやっておきなよね)
「やっと見つけたぞ!蒼!」
「蒼さん、こんにちはー」
「おー、出水くんと慶か。こんにちはー」
自販機の前で飲み物を吟味していた私の所へ慶が走ってやってきた。
その後ろからは出水くんがゆっくり歩いてくる。
だーっと走ってきた慶は、「どうしたの?」と聞こうと口を開いた私の肩をがっしりと掴んで勢いよく揺さぶり始めた。
「聞いてくれ!大変なんだ!」
「なになにまって目が回る」
「蒼!もうだめなんだ!レポート提出期限明日だった!」
「知らない自業自得でしょそれ」
がくがく揺さぶられて視界が回る、首が取れそうな錯覚に陥る。
べしべし慶の腕を叩けばようやく肩から手が外れ、ふらふらした私を後ろから出水くんが支えてくれた。
「大丈夫っすか」
「大丈夫じゃないよもう…出水くんありがと」
「いーえ」
「あー…時間がないなら慶はさっさと帰ってレポート纏めなよ」
若干出水くんに支えられ、揺れる頭を押さえながら言えば慶がきっぱりと言い切る。
「終わる気がしねえ。で、迅に言ったら蒼の所でなんとかなる未来が視えるって」
「うわー人に押し付けたなあ」
「なんとかしてくれ…!」
頼む!と手を合わせる慶。
いやー頼むと言われても、私はこの後荒船くんと模擬戦の予定なのだ。戦闘以外はダメ人間一直線の一つ上の幼馴染より、可愛い弟子との時間を大切にしたい。うん。
「よしわかった、慶」
「なんだ!」
「この後用事は?」
「ない!忍田さんにレポート仕上げなければ軟禁するって宣言されたし!」
「なら問題ないね。あとで1回、こっちに慶を任せた悠一を斬り倒してくれるなら手伝う」
「任せろ!」
勢いよく頷いた慶に、よしと頷き返す。ちょっと疲れるけど、サイドエフェクト使おう。
「そこの椅子座って、私の目を見て」
「おう」
自販機の横に置いてある椅子に慶を座らせ、その前に立つ。
普段とは逆に格子状の瞳を私が上から見下ろす。
「頼んだ」
「約束守ってね」
「ああ」
1つ頷いた慶と視線を絡ませる。
慶の瞳に映った私の瞳の色が、蒼から深紅へ染まった。
「、う」
「ああ、動かないで…」
私のサイドエフェクトは、超技能の一片にあたる。
目を合わせた相手の記憶を改竄したり、ちょっとした洗脳をかけたりすることが出来る、まあ所謂目を合わせた相手を石に変えるメデューサの亜種みたいなものだ。
普段この能力は、鬼怒田さんの所で保護した一般人の記憶処理などに使っている。
「…」
「…」
少しの間、敵味方を反転して認識させるのは1秒も目を合わせれば十分だけど、長い時間洗脳かけたり記憶を完全に消したりする時は長い時間目を合わせ続けなくてはいけないし、目を合わせている時に流れ込んでくる膨大な記憶から必要なものを取り出したり、書き換えたりとこれが面倒かつ疲れるのだ。
「ふう…これでいいかな」
今回、慶には『なんとしても今日中にレポートを完成させる』という簡単な洗脳をかけた。洗脳と言うか、使命感を植え付けたというか。
簡単と言っても今日中は掛かり続けてくれないと困るから、そこらへんちょっと弄ったけど。
「慶、気持ち悪いとかない?」
「ああ…さんきゅ、蒼」
目が赤く染まった慶が静かに言う。
記憶を消す時はなんとも無いのだけれど、洗脳をかけた時だけ相手の瞳が赤く染まる。
これは1分程で通常色に戻るけど、ランク戦とかで使っちゃうと操ったのが誰か1発でわかってしまうのが難点だ。
「出水悪いな、俺は先に戻る」
「はーい」
「頑張ってねー」
先程とは打って変わってしゃきっとした慶が、自室へ戻っていく。
角を曲がって慶の姿が見えなくなると、入れ替わりに慶がいた椅子に座り込んで目頭を押さえた。
「うー疲れた…」
「蒼さん、毎回すみません」
「出水くんが謝ることじゃないけど、全くだよもー」
「蒼さんさっき飲み物見てたでしょ?後で太刀川さんから必要経費で徴収しますんで、好きなの言って下さい」
「カルピスお願い」
「りょーかい」
ガタン、と音を立てて自販機がカルピスを吐き出す。
それを取り出した出水くんに差し出され、お礼を言って冷えたペットボトルを受け取った。
「はいどうぞ」
「ありがとー」
ぎゅりっとキャップを捻って外し、ぐっとカルピスを呷る。
独特の甘みが喉を通り過ぎる、うん美味しい。
ふうと一息吐いていると、自販機で自分の飲み物を買った出水くんが隣に座る。
「まったく、ちゃんとレポート書いて欲しいよ」
「ほんとですよねー」
「出水くんの飲み物も必要経費にいれときなよ、私が許す」
「そうします」
2人でだらだら話していれば、そこへ国近ちゃんが通りかかった。国近ちゃんは私達の姿を見つけると、とことこ寄ってきた。
「あれ~、いずみんと蒼さんだー」
「国近ちゃんだー。久しぶりー」
「柚宇さん」
「お久しぶりです~、隣良いですか?」
「もちろんどうぞー」
では!と国近ちゃんも3人掛けの椅子の端に座った。これで私は出水くんと国近ちゃんにはさまれる格好となる。
両手に華ならぬ両手に太刀川隊状態。さっきは慶もいたし、唯我くんを見つけたら太刀川隊コンプだ。
「あ、国近ちゃん何か飲む?必要経費にねじ込むから出水くんに買ってもらいな」
「ありがとうございますー!いずみん、紅茶あるー?」
「はいはいえーと、ミルクティーでいいっすか?」
「いいよ~。じゃあ私からはこれどうぞー、るいるいから貰ったんですー」
「わーいありがとー」
「いずみんもどうぞー」
「あざっす」
国近ちゃんは諏訪隊オペレーターの小佐野ちゃんから貰ったという、彼女がいつも口にしている棒付き飴を取り出し、2本ずつ私と出水くんに手渡してくれた。やさしい。けどこれ確か豊胸効果があるやつだったような気がするけど、出水くん食べるのかこれ。そして国近ちゃんはそれ以上大きくするつもりなのか。そんな事を考えていれば国近ちゃんが首を傾げながら口を開いた。
「2人でなんの話をしてたんです?」
「太刀川さんが他人に迷惑かけずにしっかりレポート書いてくれないかなって話ですよ」
「あー、無理っぽい話ですね~」
「だよねー」
飲み物を飲みながらのんびり話していれば、荒船くんと模擬戦する予定時間が迫ってきている事に気付いた。
空になったペットボトルをゴミ箱に入れて立ち上がる。
「ごめんね、私これから荒船くんと模擬戦なんだ。行かなくては」
「あ、おれも休憩したら行くんで、おれとも模擬戦してくださいよ」
「勿論良いよー。ではお先に!」
「「頑張ってくださいね~」」
「ありがとー!」
別れを告げ、歩き出すと後ろから優しい声が飛んでくる。
手を振ってくれる2人の後輩に笑顔で手を振り返し、荒船くんとの待ち合わせ場所へと足を進めた。
太刀川隊とひと騒動
隊長様から泣きつかれる
(慶さん終わったー?)
(終わった、けど、頭パンクしそう…)
(これに懲りたらちゃんとやっておきなよね)