荒船と出水の師匠シリーズ
荒船と出水の師匠シリーズ・短編詰め
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風間さんに追われる
「蒼」
本部のラウンジでカフェオレ飲みつつのんびりしてたら、後ろから掛けられた声。
椅子にもたれたまま後ろを向けば、トリオン体の蒼也さんがスコーピオン片手に真後ろに立っていた。任務帰りかな。
「あれ、蒼也さん」
「少し付き合え」
「模擬戦ですか?良いですよー」
暇してたからすぐにOKの返事をし、じゃあブースにでも行くかと立ち上がったらテーブルの今まで手を置いていた部分にガスッと音を立てて深々とスコーピオンが突き刺さった。え。
「……えー、と…ブース行きますよね?」
「必要ない」
淡々とスコーピオンをテーブルから引き抜く蒼也さん。
あれ、なんだろう嫌な予感しかしないけど?
「今から1時間、全力でお前を追う」
「まじですか」
「10秒やるから逃げろ。…10、」
唐突に宣言し、そのままカウントを始めた蒼也さんに対し、テーブルの上に残ってたカフェオレのカップを引っ掴んで走り出す。
追われる理由が全くわからないけどこれはとにかく逃げた方が良さそうだ。
ぐいっと残りのカフェオレを喉に流し込み、空になったカップをゴミ箱へ放りつつトリオン体へと換装した。
◆
(うーん…何か気に障る事しちゃったかなあ)
あれから15分後。
角を曲がり、蒼也さんの視界から映らなくなった直後にカメレオンを起動して遠回りをし、ラウンジへ戻ってC級の模擬戦ブース内の1つへと潜り込んでいた。
ここならレーダーに映っても沢山の人がいるから問題は無い。木を隠すには森の中。
「あれ?ここ表示されてるけど誰もいないな…故障かな」
「!」
ブースを覗き込んできたC級隊員が呟く。
おっと訓練生にばれたか…人を呼ばれたらまずいな、とカメレオンを起動したままこっそり脇を通って通路へと戻る。
入ってきたのが蒼也さんじゃなくて良かった。仕方ない、今度どこに隠れようかな…と下のラウンジを見れば。
「…おっと」
蒼也さんが猛然とこちらへ向かってきていた。
うわータイミング悪いな…まあカメレオン起動してるし、一応距離取っておこう。
蒼也さんが階段へ差し掛かったのを見て、通路から飛び降りる。
「さて、蒼也さんがあの辺見てる間に逃げよ…」
そう小さく呟いて蒼也さんを見上げると…目があった気がした。
あれ、何でこっち見てるの?透明だぞ私。と疑問が出ると同時に蒼也さんが徐にスコーピオンを投げた。それはもう的確に私にめがけて。
瞬時に弧月を発動し、目の前に迫ったスコーピオンを弾く。
やばい、カメレオン解けた。
「…見つけたぞ」
「うわー、やっちゃった…」
瞬時に通路から飛び降りて追ってくる蒼也さんに対し、弧月を腰に差して走り出す。
いきなり現れた私とそれを猛追する蒼也さんを見て、集まっているC級達がざわざわと騒ぎ出した。
『あれA級の風間さんじゃないか?』
『うわ、本物だ』
『今いきなり現れたのって七草さん?』
『なにしてるんだ?』
「っちょっと通して、ね!」
もう見つかってしまっているのなら、出し惜しみなんてしない。
グラスホッパーを使ってC級を避けつつ出口へ向かい、そのまま通路の窓を弧月で切り裂いて外へ向かって飛び出す。ああ、これは後で鬼怒田さんに謝ろう。
びゅう、という風の音を聞きつつ落下する。
空中で姿勢を変え、飛び出してきた窓を見れば蒼也さんも当然の如く窓から飛び出してきたのが見えた。
「うん…だよねえ」
体勢を戻し、グラスホッパーを再度起動。
落下の途中で何度か軌道を変え、勢いを殺しつつ開いていた窓から中へ飛び込んだ。
「っ、なんだ!?」
「あ、諏訪さんごめんなさい!」
「蒼!?」
飛び込んだそこは喫煙室だった。
休憩中の諏訪さんに謝りつつ部屋を飛び出し、再びのカメレオンを起動して観葉植物の後ろにしゃがみ込む。
直後に再び諏訪さんの「風間までなんだ!」という叫び声が聞こえて、喫煙室の扉が勢いよく開いて蒼也さんが飛び出す。
「…」
そのまま行ってくれー、という願いも虚しく静かに蒼也さんが立ち止まる。
「…静かだな」
そのまま首だけで辺りを見回した蒼也さんは、レーダーを起動する。
あ、それはまずいぞ。この通路には私と蒼也さんしかいない。
「そこか」
蒼也さんのレーダーに気付いて身を翻した私の背後、ちょうど今まで居た場所に深々とスコーピオンが突き刺さる。
相変わらず良いカンしてるな!
(カメレオン解いたら絶対に狙い撃ちされるからしばらくこのまま!かつ迅速に、逃げる!)
レーダーを見つつ追いかけてくる蒼也さんに対し、このまま逃げっぱなしだと本当に狩られると思い、思いっきり迎撃に適した場所を頭の中で検索し、そして浮かんだ一つの場所へ向け全速力で足を動かした。
◆
「よし到着!」
本部内で蒼也さんの迎撃に適し、かつ派手に暴れても他の隊員達に迷惑をかけない場所。
「ここなら何とか凌げるはず…!」
ボーダー本部内で一番大きく、かつ他の隊員に迷惑のかからない部屋。
10フロアぶち抜きのこのスナイパー練習場なら、いくら暴れてもスナイパーの的になるくらいで問題はない。
カメレオンを解除し、入れ替わりに腰に差しっぱなしにしていた弧月を引き抜く。
幸い広い練習場には一人も隊員はおらず、好都合とばかりに的が置いてあるエリアへと飛び込んだ。
「…迎撃するつもりか。逃げろと言ったろう」
遅れて飛び込んできた蒼也さんは、静かにスコーピオンを構えながら言った。
「いやー…逃げるにしてもやっぱり理由きいとこうかと思いまして」
「まあ、だろうな」
「じゃあ何で私を追いかける事になったか説明してくださいよ…!」
私の居る方へ近づき、じりじりと対峙する蒼也さんに聞けば、蒼也さんはあっさりと教えてくれた。
「単なる興味だ」
「…え、はい?」
「楽しそうだったからな」
「まじですか」
楽しそうだとかいう理由で私を追い掛け回したのか…と脱力する。
「まあ、一人だけだとカメレオンで逃げられると踏んで菊地原達にも応援を頼んだがな」
「…あー、それでC級ブースに居た時にばれたんですか」
蒼也さんのチームの一員である菊地原くんの強化聴力であれば、私の息遣いですら容易にわかったことだろう。
そう言えばブースの並んでる通路に青い隊服が居たような気がする。顔は確認しなかったけど、たぶんそれが菊地原くんだったんだろう。
「…ん?」
あれ、さっき蒼也さん「菊地原達」って言わなかったか。
そう疑問が浮かんでくるのとほぼ同時に視界の端の端、左の方の空間が揺らめいた。
「う、ッ!」
瞬時に足元にグラスホッパーを出し、滑らせるように足を伸ばして発動させ、垂直に跳ね上がる。
避け切れなかった右足にスコーピオンが命中し、爪先を削り飛ばした。
「チッ、爪先だけですか」
「ああ、もう!歌川くんもか!」
おそらくカメレオンで隠れていたのだろう、歌川くんが私の横から奇襲を掛けてきた。削り取られた爪先からトリオンが漏れる。
これ以上奇襲攻撃を受けないよう、グラスホッパーで空中高くに留まりながら相手の出方を見る。ここなら透明化を解除してグラスホッパーを使わないと来れない距離だ。
「ちょっと蒼也さん、チームで来るとか何なんですか酷くないですか。それにこれ、判定基準はなんなんですか」
「判断基準は行動不能だ、あと最初から一人などとは言っていない」
「言ってないですけどチームで来るとも聞いてないですよ、コレ完全に狩りに来てるじゃないですか」
ぽんぽん跳ねながら蒼也さんに文句を言えば、蒼也さんは相変わらずの無表情で言った。
「何が悪い。蒼を相手にすれば、丁度良い訓練にもなるだろう」
「蒼也さん開き直ったなー!もう、どうせその辺に菊地原くんもいるんでしょ?全員まとめて行動不能にしてやる!」
「望む所だ、やってみろ」
スコーピオンを構え直した蒼也さんに、私の背後に回り込む様に動き出す歌川くん。透明だけど二人の間をカバーするように菊地原くんが動いている筈。
「狩り返してやる…メテオラ!」
菊地原くんの強化聴力をリンクさせているのであれば、キャパを超える爆音で混乱させてやればいい。
弧月を腰に差し直し、両手でメテオラを生成。私の周りへ思いっきりばら撒いた。
まだ時間は20分ほどある。それまで逃げ切ってやる!
追われる
狩られる前に狩り返せ!
(逃げ切ったー!)
(チッ、次は仕留める)
(えっ次あるんですか)
「蒼」
本部のラウンジでカフェオレ飲みつつのんびりしてたら、後ろから掛けられた声。
椅子にもたれたまま後ろを向けば、トリオン体の蒼也さんがスコーピオン片手に真後ろに立っていた。任務帰りかな。
「あれ、蒼也さん」
「少し付き合え」
「模擬戦ですか?良いですよー」
暇してたからすぐにOKの返事をし、じゃあブースにでも行くかと立ち上がったらテーブルの今まで手を置いていた部分にガスッと音を立てて深々とスコーピオンが突き刺さった。え。
「……えー、と…ブース行きますよね?」
「必要ない」
淡々とスコーピオンをテーブルから引き抜く蒼也さん。
あれ、なんだろう嫌な予感しかしないけど?
「今から1時間、全力でお前を追う」
「まじですか」
「10秒やるから逃げろ。…10、」
唐突に宣言し、そのままカウントを始めた蒼也さんに対し、テーブルの上に残ってたカフェオレのカップを引っ掴んで走り出す。
追われる理由が全くわからないけどこれはとにかく逃げた方が良さそうだ。
ぐいっと残りのカフェオレを喉に流し込み、空になったカップをゴミ箱へ放りつつトリオン体へと換装した。
◆
(うーん…何か気に障る事しちゃったかなあ)
あれから15分後。
角を曲がり、蒼也さんの視界から映らなくなった直後にカメレオンを起動して遠回りをし、ラウンジへ戻ってC級の模擬戦ブース内の1つへと潜り込んでいた。
ここならレーダーに映っても沢山の人がいるから問題は無い。木を隠すには森の中。
「あれ?ここ表示されてるけど誰もいないな…故障かな」
「!」
ブースを覗き込んできたC級隊員が呟く。
おっと訓練生にばれたか…人を呼ばれたらまずいな、とカメレオンを起動したままこっそり脇を通って通路へと戻る。
入ってきたのが蒼也さんじゃなくて良かった。仕方ない、今度どこに隠れようかな…と下のラウンジを見れば。
「…おっと」
蒼也さんが猛然とこちらへ向かってきていた。
うわータイミング悪いな…まあカメレオン起動してるし、一応距離取っておこう。
蒼也さんが階段へ差し掛かったのを見て、通路から飛び降りる。
「さて、蒼也さんがあの辺見てる間に逃げよ…」
そう小さく呟いて蒼也さんを見上げると…目があった気がした。
あれ、何でこっち見てるの?透明だぞ私。と疑問が出ると同時に蒼也さんが徐にスコーピオンを投げた。それはもう的確に私にめがけて。
瞬時に弧月を発動し、目の前に迫ったスコーピオンを弾く。
やばい、カメレオン解けた。
「…見つけたぞ」
「うわー、やっちゃった…」
瞬時に通路から飛び降りて追ってくる蒼也さんに対し、弧月を腰に差して走り出す。
いきなり現れた私とそれを猛追する蒼也さんを見て、集まっているC級達がざわざわと騒ぎ出した。
『あれA級の風間さんじゃないか?』
『うわ、本物だ』
『今いきなり現れたのって七草さん?』
『なにしてるんだ?』
「っちょっと通して、ね!」
もう見つかってしまっているのなら、出し惜しみなんてしない。
グラスホッパーを使ってC級を避けつつ出口へ向かい、そのまま通路の窓を弧月で切り裂いて外へ向かって飛び出す。ああ、これは後で鬼怒田さんに謝ろう。
びゅう、という風の音を聞きつつ落下する。
空中で姿勢を変え、飛び出してきた窓を見れば蒼也さんも当然の如く窓から飛び出してきたのが見えた。
「うん…だよねえ」
体勢を戻し、グラスホッパーを再度起動。
落下の途中で何度か軌道を変え、勢いを殺しつつ開いていた窓から中へ飛び込んだ。
「っ、なんだ!?」
「あ、諏訪さんごめんなさい!」
「蒼!?」
飛び込んだそこは喫煙室だった。
休憩中の諏訪さんに謝りつつ部屋を飛び出し、再びのカメレオンを起動して観葉植物の後ろにしゃがみ込む。
直後に再び諏訪さんの「風間までなんだ!」という叫び声が聞こえて、喫煙室の扉が勢いよく開いて蒼也さんが飛び出す。
「…」
そのまま行ってくれー、という願いも虚しく静かに蒼也さんが立ち止まる。
「…静かだな」
そのまま首だけで辺りを見回した蒼也さんは、レーダーを起動する。
あ、それはまずいぞ。この通路には私と蒼也さんしかいない。
「そこか」
蒼也さんのレーダーに気付いて身を翻した私の背後、ちょうど今まで居た場所に深々とスコーピオンが突き刺さる。
相変わらず良いカンしてるな!
(カメレオン解いたら絶対に狙い撃ちされるからしばらくこのまま!かつ迅速に、逃げる!)
レーダーを見つつ追いかけてくる蒼也さんに対し、このまま逃げっぱなしだと本当に狩られると思い、思いっきり迎撃に適した場所を頭の中で検索し、そして浮かんだ一つの場所へ向け全速力で足を動かした。
◆
「よし到着!」
本部内で蒼也さんの迎撃に適し、かつ派手に暴れても他の隊員達に迷惑をかけない場所。
「ここなら何とか凌げるはず…!」
ボーダー本部内で一番大きく、かつ他の隊員に迷惑のかからない部屋。
10フロアぶち抜きのこのスナイパー練習場なら、いくら暴れてもスナイパーの的になるくらいで問題はない。
カメレオンを解除し、入れ替わりに腰に差しっぱなしにしていた弧月を引き抜く。
幸い広い練習場には一人も隊員はおらず、好都合とばかりに的が置いてあるエリアへと飛び込んだ。
「…迎撃するつもりか。逃げろと言ったろう」
遅れて飛び込んできた蒼也さんは、静かにスコーピオンを構えながら言った。
「いやー…逃げるにしてもやっぱり理由きいとこうかと思いまして」
「まあ、だろうな」
「じゃあ何で私を追いかける事になったか説明してくださいよ…!」
私の居る方へ近づき、じりじりと対峙する蒼也さんに聞けば、蒼也さんはあっさりと教えてくれた。
「単なる興味だ」
「…え、はい?」
「楽しそうだったからな」
「まじですか」
楽しそうだとかいう理由で私を追い掛け回したのか…と脱力する。
「まあ、一人だけだとカメレオンで逃げられると踏んで菊地原達にも応援を頼んだがな」
「…あー、それでC級ブースに居た時にばれたんですか」
蒼也さんのチームの一員である菊地原くんの強化聴力であれば、私の息遣いですら容易にわかったことだろう。
そう言えばブースの並んでる通路に青い隊服が居たような気がする。顔は確認しなかったけど、たぶんそれが菊地原くんだったんだろう。
「…ん?」
あれ、さっき蒼也さん「菊地原達」って言わなかったか。
そう疑問が浮かんでくるのとほぼ同時に視界の端の端、左の方の空間が揺らめいた。
「う、ッ!」
瞬時に足元にグラスホッパーを出し、滑らせるように足を伸ばして発動させ、垂直に跳ね上がる。
避け切れなかった右足にスコーピオンが命中し、爪先を削り飛ばした。
「チッ、爪先だけですか」
「ああ、もう!歌川くんもか!」
おそらくカメレオンで隠れていたのだろう、歌川くんが私の横から奇襲を掛けてきた。削り取られた爪先からトリオンが漏れる。
これ以上奇襲攻撃を受けないよう、グラスホッパーで空中高くに留まりながら相手の出方を見る。ここなら透明化を解除してグラスホッパーを使わないと来れない距離だ。
「ちょっと蒼也さん、チームで来るとか何なんですか酷くないですか。それにこれ、判定基準はなんなんですか」
「判断基準は行動不能だ、あと最初から一人などとは言っていない」
「言ってないですけどチームで来るとも聞いてないですよ、コレ完全に狩りに来てるじゃないですか」
ぽんぽん跳ねながら蒼也さんに文句を言えば、蒼也さんは相変わらずの無表情で言った。
「何が悪い。蒼を相手にすれば、丁度良い訓練にもなるだろう」
「蒼也さん開き直ったなー!もう、どうせその辺に菊地原くんもいるんでしょ?全員まとめて行動不能にしてやる!」
「望む所だ、やってみろ」
スコーピオンを構え直した蒼也さんに、私の背後に回り込む様に動き出す歌川くん。透明だけど二人の間をカバーするように菊地原くんが動いている筈。
「狩り返してやる…メテオラ!」
菊地原くんの強化聴力をリンクさせているのであれば、キャパを超える爆音で混乱させてやればいい。
弧月を腰に差し直し、両手でメテオラを生成。私の周りへ思いっきりばら撒いた。
まだ時間は20分ほどある。それまで逃げ切ってやる!
追われる
狩られる前に狩り返せ!
(逃げ切ったー!)
(チッ、次は仕留める)
(えっ次あるんですか)