荒船と出水の師匠シリーズ
荒船と出水の師匠シリーズ・短編詰め
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諏訪さんが危機を救う
「あれ、こんな道あったっけか」
大学の帰り、本部へ向かう街中で見覚えの無い路地を見つけた。
時間もあるので大通りから一本横の路地へひょいと踏み込めば、日差しが遮られて暗くなった。ひんやりした空気が頬を撫でる。
「今まで見落としてたのかなあ」
人通りがほぼないその道を、辺りを見回しながら進んでいく。
うーん、この道どこに出るんだろうなどと考えながら道を進む。知らない道があるという事はネイバーが市街地に出た時の避難や応戦に支障があるかもしれないので、細かく頭に入れておいた方がいい。
「…ん、」
路地をすいすい進んで、曲がり角を右へ。
行こうとして進もうとした足を押し留めて静かに停止した。
「…」
曲がり角の先には、見るからに柄の悪そうな男の人が数人、道端に積まれた木箱なんかの上に座ったりして屯していた。
ただじゃ通れなさそうだし、仕方ない、引き返すか。
「おっと」
面倒ごとに巻き込まれるのはいただけない、と踵を返せば私が入ってきたほうの路地からもう1人、あ、屯してる人達の仲間だなって解る感じの男が入ってきた。
「しまった」
意図せず挟み撃ちにされた。
が、とりあえずスルー出来ないかと何事も無かったように装ってその男の横を擦り抜けようと道の端による。
「…よお、ねえちゃん。こんなところで何してんだ?」
「ああ、道を1本間違えてしまったようでして」
「ほーお、それじゃ俺が案内してやるよ」
駄目だった道を塞がれた。
なんだこの鼻ピアスを筆頭とした顔面ピアスまみれな男は。
ファッションなのか。最近の危なげ男子系ファッションなのか。私にはさっぱり理解ができない。
「困ったな、通していただけませんか」
「いやだね」
じりじりとこちらへ近づいてくる男に対し、考えを巡らせる。
相手は今の所1人、このまま下がり続ければ4人。顔面ピアスまみれでも一般人だからボーダーの株を下げるような真似は出来ないし、やっても後の処理が面倒。
「…仕方ないな」
となれば、残るはサイドエフェクト使って穏便に行こう。
疲れるからあんまり使いたくないけど、のんびりしている場合じゃない。
近づいてくる男と目を合わせようと前を向いた。目が合う寸前、対峙する男の後ろから声が掛かった。
「オイ、何してる」
「ああ?」
「…、諏訪さん」
「あ?蒼か」
顔面ピアス男の肩に手を置いて静止を掛けたのは諏訪さんだった。男と対峙しているのが私だと認識した諏訪さんは、ぐい、と男の襟首を引き寄せて凄んだ。
「あー、ハジメマシテ。ボーダーのモンですけど、…うちの蒼に何かご用事で?」
「はっ!?あ、いや…!」
「用がねえならさっさと失せろ」
突き放す様に男の襟首を放した諏訪さんが、大通りの方へ逃げる男を横目で見つつ私へ近づいてくる。助かった。
「オイ蒼、怪我してねえか」
「大丈夫です。諏訪さん来てくれたので助かりました」
「一瞬、目が赤かった」
「サイドエフェクト使う寸前でしたので」
そう伝えれば、ああ、と諏訪さんが納得したように頷く。
咥えたままの煙草から昇る白い煙が揺れた。
あれ、そういえばいつもの隊服ではないし、片手には本屋のものと思しき紙袋を手にしている。
「諏訪さん今日は非番なんですか?」
「まーな。だけどまさか帰りに覗いた路地で蒼が絡まれてるとは思ってもみなかったがな」
「この道知らなかったので探索しに入ったらこんな目に」
「お前なあ…、女なんだからちっとは気をつけろよ」
「今度は気をつけます。それにしても、助けに来てくれた諏訪さん格好良かったですよー」
「だろう」
ふん、敬えというような態度の諏訪さんに笑みがこぼれる。
せっかく助けてもらったんだし、お礼させてもらおう。
「格好良いお兄さん、助けてくれたお礼にお茶でもどうでしょう」
「それどっちかっつーと俺側の台詞じゃねえの?」
「言っててそんな気もしました」
なんて言葉のやりとりをしながら、諏訪さんに目で示されて路地から脱出する。少しぶりに浴びた日光はそよ風になびく街路樹の葉をきらきらと光らせていた。
「で、珈琲奢らせてくれます?」
「いいけどよ、お前この後用事ねえの?」
「買い物は済ませたのであとは基地に帰るだけです」
ほら、と両手で本やらお菓子やらが入ったバッグを掲げる様に見せれば、ふらっと近づいた諏訪さんが私の手からバッグをひょいと取り上げた。
「あ、何するんです」
「持っててやるよ、重いだろ」
「…諏訪さんて見た目によらず良い男ですよね」
「見た目も格好良いだろうが」
「あーハイ」
「オイ」
取り上げられたバッグは諏訪さんが持っていた袋たちと一緒に持ってしまったのでしばらく返っては来ないだろう。申し訳ないけれど、お任せする事にした。
「ありがとうございます」
「別に大した事じゃねえだろ」
そう言って諏訪さんが先に歩き出す。
やっさしいな諏訪さんはーなんて笑っていれば、ついてこない事に気付いた諏訪さんが振り向いてぶっきらぼうに言う。
「蒼何してんだ、置いてくぞ」
「あ、待ってください」
「ついでに基地まで送ってやるから、珈琲良いの奢れよ」
「了解、諏訪さん」
諏訪さんに並んで歩き出せば、わざわざ私に歩調を合わせてくれる事や、自転車などの危険から遠ざけるような動きに気づいて笑みがこぼれた。つくづく、諏訪さんは優しいなあ。
優しさのかたまり
諏訪さんに助けられる
(さ、お好きなものをどうぞー)
(気前良いな、蒼)
(諏訪さんより稼いでるので)
(生意気言ったのはこの口か?あ?)
(いひゃい)
「あれ、こんな道あったっけか」
大学の帰り、本部へ向かう街中で見覚えの無い路地を見つけた。
時間もあるので大通りから一本横の路地へひょいと踏み込めば、日差しが遮られて暗くなった。ひんやりした空気が頬を撫でる。
「今まで見落としてたのかなあ」
人通りがほぼないその道を、辺りを見回しながら進んでいく。
うーん、この道どこに出るんだろうなどと考えながら道を進む。知らない道があるという事はネイバーが市街地に出た時の避難や応戦に支障があるかもしれないので、細かく頭に入れておいた方がいい。
「…ん、」
路地をすいすい進んで、曲がり角を右へ。
行こうとして進もうとした足を押し留めて静かに停止した。
「…」
曲がり角の先には、見るからに柄の悪そうな男の人が数人、道端に積まれた木箱なんかの上に座ったりして屯していた。
ただじゃ通れなさそうだし、仕方ない、引き返すか。
「おっと」
面倒ごとに巻き込まれるのはいただけない、と踵を返せば私が入ってきたほうの路地からもう1人、あ、屯してる人達の仲間だなって解る感じの男が入ってきた。
「しまった」
意図せず挟み撃ちにされた。
が、とりあえずスルー出来ないかと何事も無かったように装ってその男の横を擦り抜けようと道の端による。
「…よお、ねえちゃん。こんなところで何してんだ?」
「ああ、道を1本間違えてしまったようでして」
「ほーお、それじゃ俺が案内してやるよ」
駄目だった道を塞がれた。
なんだこの鼻ピアスを筆頭とした顔面ピアスまみれな男は。
ファッションなのか。最近の危なげ男子系ファッションなのか。私にはさっぱり理解ができない。
「困ったな、通していただけませんか」
「いやだね」
じりじりとこちらへ近づいてくる男に対し、考えを巡らせる。
相手は今の所1人、このまま下がり続ければ4人。顔面ピアスまみれでも一般人だからボーダーの株を下げるような真似は出来ないし、やっても後の処理が面倒。
「…仕方ないな」
となれば、残るはサイドエフェクト使って穏便に行こう。
疲れるからあんまり使いたくないけど、のんびりしている場合じゃない。
近づいてくる男と目を合わせようと前を向いた。目が合う寸前、対峙する男の後ろから声が掛かった。
「オイ、何してる」
「ああ?」
「…、諏訪さん」
「あ?蒼か」
顔面ピアス男の肩に手を置いて静止を掛けたのは諏訪さんだった。男と対峙しているのが私だと認識した諏訪さんは、ぐい、と男の襟首を引き寄せて凄んだ。
「あー、ハジメマシテ。ボーダーのモンですけど、…うちの蒼に何かご用事で?」
「はっ!?あ、いや…!」
「用がねえならさっさと失せろ」
突き放す様に男の襟首を放した諏訪さんが、大通りの方へ逃げる男を横目で見つつ私へ近づいてくる。助かった。
「オイ蒼、怪我してねえか」
「大丈夫です。諏訪さん来てくれたので助かりました」
「一瞬、目が赤かった」
「サイドエフェクト使う寸前でしたので」
そう伝えれば、ああ、と諏訪さんが納得したように頷く。
咥えたままの煙草から昇る白い煙が揺れた。
あれ、そういえばいつもの隊服ではないし、片手には本屋のものと思しき紙袋を手にしている。
「諏訪さん今日は非番なんですか?」
「まーな。だけどまさか帰りに覗いた路地で蒼が絡まれてるとは思ってもみなかったがな」
「この道知らなかったので探索しに入ったらこんな目に」
「お前なあ…、女なんだからちっとは気をつけろよ」
「今度は気をつけます。それにしても、助けに来てくれた諏訪さん格好良かったですよー」
「だろう」
ふん、敬えというような態度の諏訪さんに笑みがこぼれる。
せっかく助けてもらったんだし、お礼させてもらおう。
「格好良いお兄さん、助けてくれたお礼にお茶でもどうでしょう」
「それどっちかっつーと俺側の台詞じゃねえの?」
「言っててそんな気もしました」
なんて言葉のやりとりをしながら、諏訪さんに目で示されて路地から脱出する。少しぶりに浴びた日光はそよ風になびく街路樹の葉をきらきらと光らせていた。
「で、珈琲奢らせてくれます?」
「いいけどよ、お前この後用事ねえの?」
「買い物は済ませたのであとは基地に帰るだけです」
ほら、と両手で本やらお菓子やらが入ったバッグを掲げる様に見せれば、ふらっと近づいた諏訪さんが私の手からバッグをひょいと取り上げた。
「あ、何するんです」
「持っててやるよ、重いだろ」
「…諏訪さんて見た目によらず良い男ですよね」
「見た目も格好良いだろうが」
「あーハイ」
「オイ」
取り上げられたバッグは諏訪さんが持っていた袋たちと一緒に持ってしまったのでしばらく返っては来ないだろう。申し訳ないけれど、お任せする事にした。
「ありがとうございます」
「別に大した事じゃねえだろ」
そう言って諏訪さんが先に歩き出す。
やっさしいな諏訪さんはーなんて笑っていれば、ついてこない事に気付いた諏訪さんが振り向いてぶっきらぼうに言う。
「蒼何してんだ、置いてくぞ」
「あ、待ってください」
「ついでに基地まで送ってやるから、珈琲良いの奢れよ」
「了解、諏訪さん」
諏訪さんに並んで歩き出せば、わざわざ私に歩調を合わせてくれる事や、自転車などの危険から遠ざけるような動きに気づいて笑みがこぼれた。つくづく、諏訪さんは優しいなあ。
優しさのかたまり
諏訪さんに助けられる
(さ、お好きなものをどうぞー)
(気前良いな、蒼)
(諏訪さんより稼いでるので)
(生意気言ったのはこの口か?あ?)
(いひゃい)