荒船と出水の師匠シリーズ
荒船と出水の師匠シリーズ・短編詰め
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佐鳥くんとお届け物
「あ!蒼さん、こんにちは!」
「こんにちは佐鳥くん。今日も元気だねえ」
「佐鳥は今日も明日も元気ですよー!」
本部内の廊下を歩いていれば、前からいつも元気いっぱいの嵐山隊の佐鳥くんが小走りで近づいてきた。制服姿なのでちょうど学校が終わって本部に来たばかりの所のようだ。
「それどこまで持っていくんですか?佐鳥が手伝いますよ!」
「ちょうど嵐山隊の作戦室までだよ。じゃあ、これお願いしてもいいかな?」
「もちろん!」
私が持っていた両手いっぱいに抱えた書類の束とバスケットを見て、佐鳥くんは手伝いを申し出てくれたので、ありがたくバスケットをお願いすると、受け取った佐鳥くんは不思議そうな顔をした。
「あれ、思ったより軽いですね」
「バスケットが嵩張って見えるだけだからね」
「なんだ、じゃあそっちも佐鳥にお任せください!」
「あ」
ひょいと私の手から書類の束を取り上げる佐鳥くんがにんまりと笑う。
手持無沙汰になった両手がちょっとだけ宙を彷徨ったけど、せっかくの好意だ、ありがたく受け取っておこう。
「ありがとう」
「いえいえ!蒼さんはもっと佐鳥を頼っても良いですからね!」
にこにこ笑う佐鳥くんに癒される。
うーん、嵐山隊の皆は笑顔が良い。唯一、木虎ちゃんだけは私に剥き出しの対抗心を隠そうともしないから笑顔なんて到底見れないだろうけれど。
というかあの子が笑顔なんて見せる相手がいるのだろうか。
「ねえ佐鳥くん」
「はいはいなんでしょう」
「佐鳥くんは木虎ちゃんの笑顔見た事ある?」
「ないです!」
嵐山隊の作戦室に向かって歩きながら聞けば、隣に並んで歩いていた佐鳥くんがスパンと言い切った。隣に並ぶと佐鳥くんて結構背が高いなあ、やっぱり男の子だなあ。ではなくて。同じ隊なのに笑顔を見た事ないとは。
「いっつも『先輩なんだからしっかりして下さい』とか、『ちゃんと仕事して下さい』って怒られるんですよね!」
「…佐鳥くんも大変だねえ」
「憎たらしい後輩なんですよねー。あっでもでもちゃんと可愛い所とかあるんですよ!」
「お、どんな?」
「あれは初めて見たときは我が目を疑ったんですけどね?実は…」
なんだかんだ可愛い後輩らしい木虎ちゃんの話で盛り上がっていれば、嵐山隊の作戦室なんてすぐやってくる。
けれど、そのまま作戦室に入らないで少し手前の横道に逸れれば佐鳥くんが首を傾げたけれど、口の前で静かにするようジェスチャーして手招きすれば、そっと人気のない通路に入ってくる。
「蒼さん、どうしました?」
「ちょっと寄り道。バスケット貸してくれる?」
「あ、はいどうぞ」
「ありがと」
受け取ったバスケットを開けば、中からふわりとバターの良い香りが広がる。
バスケットを覗き込んだ佐鳥くんが嬉しそうな声を上げた。
「クッキーだ!」
「当たりー」
私は突発的に大量のお菓子が作りたくなって衝動に任せて作りまくったそれらを普段お世話になってる人に渡し歩く為にクッキー達をバスケットに詰めていたのだ。
道行く忍田さん達にも配り歩いていたらついでにと書類の束を渡されたのだけれど、どうせ嵐山隊にも配る予定だったから了承したのだ。
そのせいで大荷物になったけれど、佐鳥くんがいたから助かった。
「手作りですか!」
「そう、味は一応保障するよー」
6個ずつ包装して詰めてある中から、1つだけ青い包装のものを取り出す。
これは私が後で食べようと別にしておいたものだ。
「佐鳥くんは手伝ってくれたから、特別ね」
そこから1つ大きなバタークッキーを取り出すと、佐鳥くんはそれをきらきらした目で見つめた。
「はい、あーん」
「あーん!」
佐鳥くんの両手は書類で塞がっているので、ひょいとクッキーを口元へ持っていけば、ぱくりと佐鳥くんがクッキーに食いつく。おお、あーんしてくれた。
そして幸せそうにもぐもぐと租借して、きらきらした目で口を開いた。
「…美味しい!蒼さん、これすごく美味しいです!」
「それは良かった」
うわあ、これ本当に美味しいです!と連呼する佐鳥くん。
作った側からすれば、美味しいと言って貰えるのはとても嬉しい。
ということで、特別にもう1枚あげることにした。うん、可愛い後輩には弱いもんさ。
「佐鳥くんすごい喜んでくれるから、もう1枚あげよう」
「ほんとですか!」
「ほんとほんと。今度はチョコチップね」
「いただきます!」
取り出したもう1枚のクッキーを再び佐鳥くんの口元へ運ぶ。
さくりと音を立ててクッキーを口に含むにこにこした佐鳥くんを見てこちらも口角が緩む。うう、可愛いなあ。
「…ご馳走様でした!」
クッキーを嚥下した佐鳥くんが、口の端についた欠片を舐め取りながら言う。
「ほんと美味しかったです!」
「喜んでもらえてなにより。さて、作戦室いこっか」
「はい!」
バスケットを抱えなおして脇道から出ると、後に続いて佐鳥くんも出てくる。
そのまま少し歩けば、作戦室は目の前だ。
「では、ご褒美クッキーの事は皆には秘密ね」
「りょーかい!」
扉の前で顔を見合わせて微笑み、作戦室へと足を踏み入れた。
嵐山隊までお届け物!
佐鳥くんがお手伝い!
(佐鳥と蒼さんが来ましたよー!)
(准、皆にクッキー焼いてきたよー)
(本当か!ありがとう!)
「あ!蒼さん、こんにちは!」
「こんにちは佐鳥くん。今日も元気だねえ」
「佐鳥は今日も明日も元気ですよー!」
本部内の廊下を歩いていれば、前からいつも元気いっぱいの嵐山隊の佐鳥くんが小走りで近づいてきた。制服姿なのでちょうど学校が終わって本部に来たばかりの所のようだ。
「それどこまで持っていくんですか?佐鳥が手伝いますよ!」
「ちょうど嵐山隊の作戦室までだよ。じゃあ、これお願いしてもいいかな?」
「もちろん!」
私が持っていた両手いっぱいに抱えた書類の束とバスケットを見て、佐鳥くんは手伝いを申し出てくれたので、ありがたくバスケットをお願いすると、受け取った佐鳥くんは不思議そうな顔をした。
「あれ、思ったより軽いですね」
「バスケットが嵩張って見えるだけだからね」
「なんだ、じゃあそっちも佐鳥にお任せください!」
「あ」
ひょいと私の手から書類の束を取り上げる佐鳥くんがにんまりと笑う。
手持無沙汰になった両手がちょっとだけ宙を彷徨ったけど、せっかくの好意だ、ありがたく受け取っておこう。
「ありがとう」
「いえいえ!蒼さんはもっと佐鳥を頼っても良いですからね!」
にこにこ笑う佐鳥くんに癒される。
うーん、嵐山隊の皆は笑顔が良い。唯一、木虎ちゃんだけは私に剥き出しの対抗心を隠そうともしないから笑顔なんて到底見れないだろうけれど。
というかあの子が笑顔なんて見せる相手がいるのだろうか。
「ねえ佐鳥くん」
「はいはいなんでしょう」
「佐鳥くんは木虎ちゃんの笑顔見た事ある?」
「ないです!」
嵐山隊の作戦室に向かって歩きながら聞けば、隣に並んで歩いていた佐鳥くんがスパンと言い切った。隣に並ぶと佐鳥くんて結構背が高いなあ、やっぱり男の子だなあ。ではなくて。同じ隊なのに笑顔を見た事ないとは。
「いっつも『先輩なんだからしっかりして下さい』とか、『ちゃんと仕事して下さい』って怒られるんですよね!」
「…佐鳥くんも大変だねえ」
「憎たらしい後輩なんですよねー。あっでもでもちゃんと可愛い所とかあるんですよ!」
「お、どんな?」
「あれは初めて見たときは我が目を疑ったんですけどね?実は…」
なんだかんだ可愛い後輩らしい木虎ちゃんの話で盛り上がっていれば、嵐山隊の作戦室なんてすぐやってくる。
けれど、そのまま作戦室に入らないで少し手前の横道に逸れれば佐鳥くんが首を傾げたけれど、口の前で静かにするようジェスチャーして手招きすれば、そっと人気のない通路に入ってくる。
「蒼さん、どうしました?」
「ちょっと寄り道。バスケット貸してくれる?」
「あ、はいどうぞ」
「ありがと」
受け取ったバスケットを開けば、中からふわりとバターの良い香りが広がる。
バスケットを覗き込んだ佐鳥くんが嬉しそうな声を上げた。
「クッキーだ!」
「当たりー」
私は突発的に大量のお菓子が作りたくなって衝動に任せて作りまくったそれらを普段お世話になってる人に渡し歩く為にクッキー達をバスケットに詰めていたのだ。
道行く忍田さん達にも配り歩いていたらついでにと書類の束を渡されたのだけれど、どうせ嵐山隊にも配る予定だったから了承したのだ。
そのせいで大荷物になったけれど、佐鳥くんがいたから助かった。
「手作りですか!」
「そう、味は一応保障するよー」
6個ずつ包装して詰めてある中から、1つだけ青い包装のものを取り出す。
これは私が後で食べようと別にしておいたものだ。
「佐鳥くんは手伝ってくれたから、特別ね」
そこから1つ大きなバタークッキーを取り出すと、佐鳥くんはそれをきらきらした目で見つめた。
「はい、あーん」
「あーん!」
佐鳥くんの両手は書類で塞がっているので、ひょいとクッキーを口元へ持っていけば、ぱくりと佐鳥くんがクッキーに食いつく。おお、あーんしてくれた。
そして幸せそうにもぐもぐと租借して、きらきらした目で口を開いた。
「…美味しい!蒼さん、これすごく美味しいです!」
「それは良かった」
うわあ、これ本当に美味しいです!と連呼する佐鳥くん。
作った側からすれば、美味しいと言って貰えるのはとても嬉しい。
ということで、特別にもう1枚あげることにした。うん、可愛い後輩には弱いもんさ。
「佐鳥くんすごい喜んでくれるから、もう1枚あげよう」
「ほんとですか!」
「ほんとほんと。今度はチョコチップね」
「いただきます!」
取り出したもう1枚のクッキーを再び佐鳥くんの口元へ運ぶ。
さくりと音を立ててクッキーを口に含むにこにこした佐鳥くんを見てこちらも口角が緩む。うう、可愛いなあ。
「…ご馳走様でした!」
クッキーを嚥下した佐鳥くんが、口の端についた欠片を舐め取りながら言う。
「ほんと美味しかったです!」
「喜んでもらえてなにより。さて、作戦室いこっか」
「はい!」
バスケットを抱えなおして脇道から出ると、後に続いて佐鳥くんも出てくる。
そのまま少し歩けば、作戦室は目の前だ。
「では、ご褒美クッキーの事は皆には秘密ね」
「りょーかい!」
扉の前で顔を見合わせて微笑み、作戦室へと足を踏み入れた。
嵐山隊までお届け物!
佐鳥くんがお手伝い!
(佐鳥と蒼さんが来ましたよー!)
(准、皆にクッキー焼いてきたよー)
(本当か!ありがとう!)