荒船と出水の師匠シリーズ
荒船と出水の師匠シリーズ・短編詰め
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歌川くんと怖い夢
本部の廊下をのろのろと進んできた蒼は、風間隊の作戦室のインターホンを押した。
「あれ、蒼さん。風間さんは今いないですよ」
「蒼也さんじゃなくてもいいんだ。ちょっとお邪魔してもいいかな…」
「勿論どうぞ。今、飲み物用意しますね」
「ありがとう」
顔を出したのは歌川くんで、蒼也さんの不在を告げられる。
それでも中へ入れてくれた歌川くんに誘導され、定位置のソファへ座り込んだ。
どうやら三上ちゃんも菊地原くんも出払っているようで、作戦室の中には歌川くんしかいなかった。
「どうぞ」
「ありがとう歌川くん」
遅れてやってきた歌川くんが私にジャスミンティを淹れてくれたので、受け取って1口飲み込む。
ジャスミンの香りが鼻を抜け、ふうと一息つくと歌川くんは私の正面のソファに座り込んだ。
「それで…元気ないですけど、どうしたんですか」
「…聞いてくれる?」
「ええ」
わざわざ私が安心するようにジャスミンティまで入れてくれる歌川くんに、やってきた理由を零す。
蒼也さんなら鼻で笑うかもしれないけれど、歌川くんはしっかり聞いてくれるはずだ。
「笑われちゃうかもしれないけど、怖い夢見たんだよ…」
「夢ですか」
聞き返す歌川くんにそうと頷き、ジャスミンティをもう1口飲んでから続ける。
「見た事ないネイバーに風間隊の皆がやられちゃって…敵のトリガーで緊急脱出できなくて…私は次々に斃れていく皆を見てるしかなくて、」
夢だと解ってるんだけど、遠征隊なんて常に死と隣り合わせだからやけにリアルで怖くて、みんなが居なくなっちゃうんじゃないかって心配になって来てしまった…。と零せば、言い切った後に意図せず涙がひとつこぼれた。
「うぐ、まってごめん泣くつもりはなかった…」
ひとつ、またひとつと零れる涙を袖で拭えば、いつの間にか歌川くんが私の目の前にしゃがんで目線を合わせていた。
「、うたがわくん」
近くなった距離にびっくりしていると、両手を広げた歌川くんにぎゅうと抱きしめられた。
さらにびっくりして、涙が止まった。
「大丈夫です」
「っえ、ちょ、あの」
「オレたちは強いですから」
おろおろする私に、歌川くんが静かに言う。
その間、歌川くんの左手は私の背中を安心させるようにゆっくりと撫でた。
「風間隊の強さは、蒼さんも良く知っているでしょう?」
「、知ってる…」
「オレも、菊地原も、風間さんも…誰1人として、簡単に死ぬつもりはありません」
「…うん」
ぎゅう、と抱きしめてくる歌川くんの厚い胸板から、どく、どく、と心臓の音が、生命の鼓動が伝わってくる。ああ、歌川くんは、生きている。ちゃんと私のそばに居る。ちゃんと、手が届く。
「安心して下さい、大丈夫です。…オレたちは、生きています」
「うん…ありがとう」
大丈夫、大丈夫です。そう繰り返す歌川くんの腕は、しっかりと私を抱きしめている。暖かい。
歌川くんが言葉を零す度に、私の中で燻っていた不安が消えて行く。
ありがとう、歌川くん。抱きしめられたまま、最後に1つ零れ落ちた涙を隠す様に歌川くんの胸に顔をうずめた。
怖い夢
歌川くんに護られる
(あまり溜め込み過ぎないで下さい)
(もう大丈夫…ありがとう、)
.
本部の廊下をのろのろと進んできた蒼は、風間隊の作戦室のインターホンを押した。
「あれ、蒼さん。風間さんは今いないですよ」
「蒼也さんじゃなくてもいいんだ。ちょっとお邪魔してもいいかな…」
「勿論どうぞ。今、飲み物用意しますね」
「ありがとう」
顔を出したのは歌川くんで、蒼也さんの不在を告げられる。
それでも中へ入れてくれた歌川くんに誘導され、定位置のソファへ座り込んだ。
どうやら三上ちゃんも菊地原くんも出払っているようで、作戦室の中には歌川くんしかいなかった。
「どうぞ」
「ありがとう歌川くん」
遅れてやってきた歌川くんが私にジャスミンティを淹れてくれたので、受け取って1口飲み込む。
ジャスミンの香りが鼻を抜け、ふうと一息つくと歌川くんは私の正面のソファに座り込んだ。
「それで…元気ないですけど、どうしたんですか」
「…聞いてくれる?」
「ええ」
わざわざ私が安心するようにジャスミンティまで入れてくれる歌川くんに、やってきた理由を零す。
蒼也さんなら鼻で笑うかもしれないけれど、歌川くんはしっかり聞いてくれるはずだ。
「笑われちゃうかもしれないけど、怖い夢見たんだよ…」
「夢ですか」
聞き返す歌川くんにそうと頷き、ジャスミンティをもう1口飲んでから続ける。
「見た事ないネイバーに風間隊の皆がやられちゃって…敵のトリガーで緊急脱出できなくて…私は次々に斃れていく皆を見てるしかなくて、」
夢だと解ってるんだけど、遠征隊なんて常に死と隣り合わせだからやけにリアルで怖くて、みんなが居なくなっちゃうんじゃないかって心配になって来てしまった…。と零せば、言い切った後に意図せず涙がひとつこぼれた。
「うぐ、まってごめん泣くつもりはなかった…」
ひとつ、またひとつと零れる涙を袖で拭えば、いつの間にか歌川くんが私の目の前にしゃがんで目線を合わせていた。
「、うたがわくん」
近くなった距離にびっくりしていると、両手を広げた歌川くんにぎゅうと抱きしめられた。
さらにびっくりして、涙が止まった。
「大丈夫です」
「っえ、ちょ、あの」
「オレたちは強いですから」
おろおろする私に、歌川くんが静かに言う。
その間、歌川くんの左手は私の背中を安心させるようにゆっくりと撫でた。
「風間隊の強さは、蒼さんも良く知っているでしょう?」
「、知ってる…」
「オレも、菊地原も、風間さんも…誰1人として、簡単に死ぬつもりはありません」
「…うん」
ぎゅう、と抱きしめてくる歌川くんの厚い胸板から、どく、どく、と心臓の音が、生命の鼓動が伝わってくる。ああ、歌川くんは、生きている。ちゃんと私のそばに居る。ちゃんと、手が届く。
「安心して下さい、大丈夫です。…オレたちは、生きています」
「うん…ありがとう」
大丈夫、大丈夫です。そう繰り返す歌川くんの腕は、しっかりと私を抱きしめている。暖かい。
歌川くんが言葉を零す度に、私の中で燻っていた不安が消えて行く。
ありがとう、歌川くん。抱きしめられたまま、最後に1つ零れ落ちた涙を隠す様に歌川くんの胸に顔をうずめた。
怖い夢
歌川くんに護られる
(あまり溜め込み過ぎないで下さい)
(もう大丈夫…ありがとう、)
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