荒船と出水の師匠シリーズ
荒船と出水の師匠シリーズ・短編詰め
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嵐山と雨宿り
夏の某日。
良い天気でなおかつ非番だった私は、お気に入りの青いワンピースを来て街へと繰り出していた。
普段は殺伐とした戦闘訓練なんかに身を置いているが、一応れっきとした女子である私はたまの休日を謳歌していた。
「いやー、楽しかったー」
新しい服も買えたし、美味しいものも食べられたし!と上機嫌で本部へ戻る帰り道、ちょうど警戒区域の真ん中あたりに来た時にそれは起こった。
「ん?」
ぽつりと頬にあたった水滴に上空を見上げれば、先程まで雲1つなく晴れ渡っていた空にはいつの間にか白く大きな入道雲が広がっていた。
入道雲からぽつ、ぽつと降ってきた雨粒は、次第に量と大きさを増しながら降り注いできた。
「わわっ」
ざあ、と音を立てて迫る雨粒を避けるため、半壊して放棄されたカフェであったろう家屋へ逃げ込んだ。
「夕立かあ」
軒下で濡れてしまった髪を軽くタオルで拭く。
本部辺りの空は晴れている事から夕立と判断し、雨が過ぎ去るまで待機だなーと呟く。
お店の奥から木の椅子を引っ張り出し、軒先の下辺りに置いて座り込む。
「雨がやむまで、さっき買った本でも読むか」
バッグから本を取り出し、降り注ぐ雨をBGMに椅子に深く腰掛けて表紙をめくった。
◆
「あれ、蒼じゃないか」
「ん…?」
すっかり本に集中力を持っていかれていると、ばしゃりという水の跳ねる音のすぐ後、誰かから声をかけられた。
本から目を上げれば、赤い隊服、黒い髪。嵐山隊の隊長さんがすぐ目の前に現れていた。
「准」
「こんな所で何してるんだ?」
「雨宿り」
「奇遇だな、俺もちょっと雨宿りだ」
ばしゃばしゃ水を跳ね上げながらこちらへ近づいてきた准は、雨のせいか全体的にしっとりと濡れていて、髪の毛からは含み切れなかった水滴がぽたりと落ちた。
うーむ、水も滴る良い男とはこんな感じなのか…と、タオルを取り出して准に尋ねる。
「准、タオル使う?さっき使っちゃったからしっとりしてるけど」
「いや、いいよ。トリオン体だし、気持ちだけもらっておこう」
「そう?」
「ああ、ありがとう。それより蒼、隣いいかな」
「勿論どうぞ」
そう答えると、准は店の奥から同じ椅子を持って私の隣へ置き、ふうと一息吐いて椅子に座り込んだ。
「准が1人なんて珍しいね。他の子達は?」
「充や賢達は先に帰ったよ。俺は最終パトロール中でね」
「それで途中に雨に降られたのね」
「ああ、そんなところだ」
任務お疲れ様、と言えば、ああ、と准が返す。
依然ざあざあと降り注ぐ雨を見ながら、のんびりと会話する。
「蒼は今日は非番だろう?」
「うん、ちょっと街まで買い物行ってた。あの新しく出来たショッピングモールあるでしょ?」
「ああ、知ってる」
「美味しいもの食べたり、服と本買ったりして帰り道にこれですよ」
「災難だったなあ」
なんてとりとめも無い話をしていれば、夕立は静かに通り過ぎて行った。ぽつ、ぽつりと軒先から雫が垂れ、上空には晴れ渡る空が戻って来た。
「お、雨やんだな」
「ほんとだ」
「じゃ、帰ろうか。皆心配してるだろう」
「ん、そうだね」
荷物をまとめ、立ち上がると准がこちらに手を差し出した。
ん?と首をかしげると、准が笑って言う。
「荷物持つよ、重いだろ?」
「え、いいよ」
「うーん、こういう時は男に持たせておいて欲しいな」
「あ」
ひょい、と本の入った袋を持ってくれる准。
そのままにまりと笑われて、ほら、帰ろうと促される。
「准、ありがと」
「いいえ」
そうして2人で店を出て歩き出せば、雲ひとつない空から降り注いだ光が笑う准の髪できらりと輝いた。
夕立に降られる
君と雨宿り
(荷物ありがとう)
(どういたしまして)
夏の某日。
良い天気でなおかつ非番だった私は、お気に入りの青いワンピースを来て街へと繰り出していた。
普段は殺伐とした戦闘訓練なんかに身を置いているが、一応れっきとした女子である私はたまの休日を謳歌していた。
「いやー、楽しかったー」
新しい服も買えたし、美味しいものも食べられたし!と上機嫌で本部へ戻る帰り道、ちょうど警戒区域の真ん中あたりに来た時にそれは起こった。
「ん?」
ぽつりと頬にあたった水滴に上空を見上げれば、先程まで雲1つなく晴れ渡っていた空にはいつの間にか白く大きな入道雲が広がっていた。
入道雲からぽつ、ぽつと降ってきた雨粒は、次第に量と大きさを増しながら降り注いできた。
「わわっ」
ざあ、と音を立てて迫る雨粒を避けるため、半壊して放棄されたカフェであったろう家屋へ逃げ込んだ。
「夕立かあ」
軒下で濡れてしまった髪を軽くタオルで拭く。
本部辺りの空は晴れている事から夕立と判断し、雨が過ぎ去るまで待機だなーと呟く。
お店の奥から木の椅子を引っ張り出し、軒先の下辺りに置いて座り込む。
「雨がやむまで、さっき買った本でも読むか」
バッグから本を取り出し、降り注ぐ雨をBGMに椅子に深く腰掛けて表紙をめくった。
◆
「あれ、蒼じゃないか」
「ん…?」
すっかり本に集中力を持っていかれていると、ばしゃりという水の跳ねる音のすぐ後、誰かから声をかけられた。
本から目を上げれば、赤い隊服、黒い髪。嵐山隊の隊長さんがすぐ目の前に現れていた。
「准」
「こんな所で何してるんだ?」
「雨宿り」
「奇遇だな、俺もちょっと雨宿りだ」
ばしゃばしゃ水を跳ね上げながらこちらへ近づいてきた准は、雨のせいか全体的にしっとりと濡れていて、髪の毛からは含み切れなかった水滴がぽたりと落ちた。
うーむ、水も滴る良い男とはこんな感じなのか…と、タオルを取り出して准に尋ねる。
「准、タオル使う?さっき使っちゃったからしっとりしてるけど」
「いや、いいよ。トリオン体だし、気持ちだけもらっておこう」
「そう?」
「ああ、ありがとう。それより蒼、隣いいかな」
「勿論どうぞ」
そう答えると、准は店の奥から同じ椅子を持って私の隣へ置き、ふうと一息吐いて椅子に座り込んだ。
「准が1人なんて珍しいね。他の子達は?」
「充や賢達は先に帰ったよ。俺は最終パトロール中でね」
「それで途中に雨に降られたのね」
「ああ、そんなところだ」
任務お疲れ様、と言えば、ああ、と准が返す。
依然ざあざあと降り注ぐ雨を見ながら、のんびりと会話する。
「蒼は今日は非番だろう?」
「うん、ちょっと街まで買い物行ってた。あの新しく出来たショッピングモールあるでしょ?」
「ああ、知ってる」
「美味しいもの食べたり、服と本買ったりして帰り道にこれですよ」
「災難だったなあ」
なんてとりとめも無い話をしていれば、夕立は静かに通り過ぎて行った。ぽつ、ぽつりと軒先から雫が垂れ、上空には晴れ渡る空が戻って来た。
「お、雨やんだな」
「ほんとだ」
「じゃ、帰ろうか。皆心配してるだろう」
「ん、そうだね」
荷物をまとめ、立ち上がると准がこちらに手を差し出した。
ん?と首をかしげると、准が笑って言う。
「荷物持つよ、重いだろ?」
「え、いいよ」
「うーん、こういう時は男に持たせておいて欲しいな」
「あ」
ひょい、と本の入った袋を持ってくれる准。
そのままにまりと笑われて、ほら、帰ろうと促される。
「准、ありがと」
「いいえ」
そうして2人で店を出て歩き出せば、雲ひとつない空から降り注いだ光が笑う准の髪できらりと輝いた。
夕立に降られる
君と雨宿り
(荷物ありがとう)
(どういたしまして)