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試合が始まり程なく気づく。

かなちゃんの構えがいつもより良い。

腰が下がってない。

筋トレの効果？

でもそんな急に…

あっ、まさか…袴だから？




和装は動きにくいとか苦しいとか言うけど、

身体に無駄な力を入れなくても

帯や帯板が腰や背骨を支え

内臓を正しい位置に納めてくれる。

美しい姿勢でいられる。

着物の力の借り方を知ってるかなちゃんにとっては

これ以上ない一番の戦闘服なんだ。

ずっと一緒に練習してきたのに

試合で初めて知る面があるなんて。






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今のところほとんど差はついてない。

練習でも二人のレベルは同じくらいだった。

どうなるか全く察しがつかない。




“ おおえやまー ” バッ




机くん、“ おおえ ” 抜いた！

ちゃんと狙ってた！




机くんは誰よりもみんなのことを分析してきた。

千早が “ ちは ” にムキになるように、

かなちゃんが “ おおえ ” に拘ることを知ってる。

情報からの駆け引きー…。

机くんの強みこそ、私が盗むべきところだ。




かなちゃん、

チラチラと気にしてる札があるけど何だろう。

………！

そうか…。

小式部内侍（こしきぶのないし）の “ おおえ ” が出たから

和泉式部（いずみしきぶ）の “ あらざ ” をチェックしてるんだ。

この二人が母娘（おやこ）だから…。




特定の札に意識が行って他の札に甘くなる。

きっとこれも机くんの計算の内だ。

かなちゃんの流れを尽く切った。

凄い…。




在原業平（“ ちは ”）が詠まれたら中納言行平（“ たち ”）、

清少納言（“ よを ”）なら清原元輔（“ ちぎりき ”）と紫式部（“ め ”）。

歌の意味と背景を大切にする

かなちゃんならではの繋がり。






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