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新の部屋の本棚、

辞書とか勉強関係ばっかり。

グラビア写真集とかあったら

ちょっと面白いのになー。




普段中々隙が無いから

たまにはからかってやりたい。


気を奮い立たせて本棚の隅から隅まで

じっくりと目を通していく。







あ、百人一首の本だ。


なになに、百首の現代訳？



ふと先日かなちゃんが言ってたことを思い出す。

新の様子が変だって相談したら、

かなちゃんお得意の歌で返ってきて。

後で調べようとして、忘れてた。

えっと、

《しのぶれど》《みちのくの》《かくとだに》

だったよね。









” しのぶれど 色に出でにけり わが恋は
ものや思ふと 人の問ふまで ”

《 心に秘めてきたけれど、
顔や表情に出てしまっていたようだ。
「恋ですか？」と人に尋ねられる程に。 》




” 陸奥の しのぶもぢずり 誰ゆゑに
乱れそめにし われならなくに ”

《 陸奥で織られる
「しのぶもじずり」の模様のように、
乱れる私の心はいったい誰のせいでしょう。
あなたのせいですよ。》




” かくとだに えやは伊吹の さしも草
さしも知らじな 燃ゆる思ひを ”

《 お慕いしているとだけでも
あなたに伝えたいのですが言えません。
伊吹山のさしも草ではないけれど、
それ程までとはご存知ないでしょう。
燃えるこの想いを。 》






…………………。




え、これって、全部恋の歌だよね？






恋！？




誰が！？


新が！？




新が恋！？


誰に！？




心が波立ち騒いで落ち着かなくなり

全身がぽっぽと熱を帯びてきた。





…歌の意味をそのまま捉えると、

その相手は私ということになる。




…………………。




いやいやいやいやいやいや！！



無いでしょ！




新にとって私は妹みたいな感じだと思う。

わがまま聞いてくれて、世話焼いてくれて。

仲良くなったのは新が東京来てからだけど、

物心着く前から顔合わせてて

お互い記憶に無いけど

一緒にお風呂入ったこともあるらしいし！




かなちゃんは歌の意味深く考える人だからなあ〜。

そのまんまの現代訳なんて当てにならない！

うん、ならないならない。



どきまぎして動転した心を

そういうことで無理矢理納得させた。




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