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朝礼のあと、今日の予定を確認する。10時から小林さま、次いで鷹野さま、次は…あ。お2人の名前を見つけてクスリと笑う。この仕事は続けて長く、多くの式を挙げてきた。その中には苦難もあり、感動もあり、多種多様で濃密。誰がどのような式をしてきたかも何となく覚えているものだ。けれどきっとこのお2人の式は忘れることはできないと断言できる。なにせ初めからインパクト続きなのだ。それを見届けられるのも、ウェディングプランナーの特権だろう。
「よろしくお願いシャース!」と運動部よろしく挨拶から始まったお2人は、同性だった。2人とも背は高く、細身の身体ながらもがっしりとした身体つき。
背の高い方はモデルと言われても通用しそうなほど、サングラス越しでも分かるくらい顔が整っていた。相手の方は毎回元気よく挨拶をしてくれて、ついつい笑顔になる。2人とも私の話に真剣に耳を傾けてくれて、なにか分からないことがあるとすぐに聞いてくれた。凄く素直な方たちなんだな、と少しの付き合いでも分かって。そしてそれはどんな形でも素直ということを知っていくこととなった。
「侑さん!こんなにオプションつけてたら料金かさむでしょ!」「いやや!せっかくの晴れ舞台やもん!派手にもてなしたいやん!」「限度があります!特に10段のケーキ入刀って!!1段で充分!」「…はあい」
「エスコートは夏にお願いしてもらおうかな…」「え、俺も夏っちゃんにエスコートしてもらいたい!」「ええ…治さんにお願いすれば良いじゃないですか。それかお義母さん」「何が悲しゅうて同じ顔と母親にエスコート頼まなあかんねん…。せや!2人で一緒にエスコートしてもらお!着替えもそんなかからんしお客さんまたせんやろ」「うーん。まあ夏がいいなら。ダメだった時はアランさんにお願いしましょう!」「ふはっ、アランくんは牧師ポジやろ」「フフー!」
「ウェルカムボードはお願いすることも出来るんや…どうする?」「結婚式の参加聞いてみたんですけど、その時に谷地さん…あ、高校の時のマネージャーが描いてくれるって言ってくれました!」「おー」
口喧嘩もするけどお互いに思うところを上手に擦り合わせてる。特に日向さまの方。宮さまはお金のことは置いといてとにかく賑やかな式にしたいみたいだけど、日向さまがうまく調整してくれている。それでも譲れないことがあってうまく話し合いが出来ない時でも次にきていただいた時には2人の意見としてまとまっていた。そんな2人が唯一噛み合うところがあったのだ。
「余興はどのようになさいますか?最近はこのようにお2人で踊ったり、映像を流すといった形もございます」
「ああ、それならやりたいことがあるんです」
「左様でございましたか。お聞きしてもよろしいでしょうか?」
顔を見合わせるとニッと笑って言った。
「「バレーをやりたいんです!」」
お2人は、バレーボールの選手だったそうだ。
そんなお2人が今、教会の壇上で牧師の格好をしたゲストさまを中心に向かい合っている。宮さまはアイボリー、日向さまは純白のタキシードに身を包んでいた。お互いの手を慈しむように恭しく持ち上げて薬指に指輪を通す。指輪を通されている時はどちらもくすぐったそうに微笑んでいた。交換が終わると、宮さまが肩に手を起き日向さまへ近づく。静かな約束が交わされた瞬間だった。
今度は披露宴。ビーチが一望できる広々としたテラス席へゲストを案内すると各々が外を見ながら笑っていた。それもそのはず。外にはビーチバレーのネットが貼られており、ボールも用意されていた。今日が晴れでいてくれてよかった。本当に。室内でも用意は合ったけれど、お2人の希望として一番強いものだったから叶えられてよかった。乾杯の音頭。お色直しの間に成長記録、馴れ初めなどをムービーで流す。慌しく見えないよう優雅に移動、指示出しを行う。お色直しが済んだことを確認して入場用の音楽を流すよう段取りを進めた。
扉が開くとゲストの方々がドッと笑う。手を繋いで反対の手を掲げた2人が着ていたものは大阪に所属していた頃のチームユニフォームだった。もちろん下はスーツだが、それはお揃いのグレースーツへ変わっていた。ケーキ入刀をして(結局ケーキはバレーボール型のケーキとなった)、ついに余興の番がくる。
ゲストの方々が促されるままに靴を脱いで立ち上がった。お色直しでなぜズボンまで変えたかというと、この為だそうだ。バレーをするならストレッチの効いたズボンの方が良いだろうと宮さまからの提案だった。どこまでもバレーが根元にある2人に感嘆の息を漏らしてしまったのは内緒。
新郎お2人の指名の下、コートに4名が立つ。3点先取で、買ったチームが豪華賞品を貰えるという算段だ。勝負に参加しないゲストはどのチームが勝つか事前に賭けてもらい、当たった方も同じく賞品を贈呈されることとなる。新郎新婦がブーケトスなどでバレーボールを使うはあったけれど、まさか披露宴の余興にビーチバレーボールをするとは、夢にも思ってなかった。
ゲストによる実況解説を聞きながらコートを見る。そこには本当に楽しそうにバレーをする2人がいた。スピードが速くて目が追いつかないけれど、彼らが笑顔であることだけは分かる。トスをあげて、アタックを決めて得点になると宮さまが飛びついてきた日向さまを抱き上げる。その光景が眩しくて、つい目を細めた。でも見逃す訳にはいかない。その幸せを浴びることが、私のウェディングプランナーとしての生きがいなのだから。宮さん、日向さん、おめでとう。末永くしあわせにね。
「よろしくお願いシャース!」と運動部よろしく挨拶から始まったお2人は、同性だった。2人とも背は高く、細身の身体ながらもがっしりとした身体つき。
背の高い方はモデルと言われても通用しそうなほど、サングラス越しでも分かるくらい顔が整っていた。相手の方は毎回元気よく挨拶をしてくれて、ついつい笑顔になる。2人とも私の話に真剣に耳を傾けてくれて、なにか分からないことがあるとすぐに聞いてくれた。凄く素直な方たちなんだな、と少しの付き合いでも分かって。そしてそれはどんな形でも素直ということを知っていくこととなった。
「侑さん!こんなにオプションつけてたら料金かさむでしょ!」「いやや!せっかくの晴れ舞台やもん!派手にもてなしたいやん!」「限度があります!特に10段のケーキ入刀って!!1段で充分!」「…はあい」
「エスコートは夏にお願いしてもらおうかな…」「え、俺も夏っちゃんにエスコートしてもらいたい!」「ええ…治さんにお願いすれば良いじゃないですか。それかお義母さん」「何が悲しゅうて同じ顔と母親にエスコート頼まなあかんねん…。せや!2人で一緒にエスコートしてもらお!着替えもそんなかからんしお客さんまたせんやろ」「うーん。まあ夏がいいなら。ダメだった時はアランさんにお願いしましょう!」「ふはっ、アランくんは牧師ポジやろ」「フフー!」
「ウェルカムボードはお願いすることも出来るんや…どうする?」「結婚式の参加聞いてみたんですけど、その時に谷地さん…あ、高校の時のマネージャーが描いてくれるって言ってくれました!」「おー」
口喧嘩もするけどお互いに思うところを上手に擦り合わせてる。特に日向さまの方。宮さまはお金のことは置いといてとにかく賑やかな式にしたいみたいだけど、日向さまがうまく調整してくれている。それでも譲れないことがあってうまく話し合いが出来ない時でも次にきていただいた時には2人の意見としてまとまっていた。そんな2人が唯一噛み合うところがあったのだ。
「余興はどのようになさいますか?最近はこのようにお2人で踊ったり、映像を流すといった形もございます」
「ああ、それならやりたいことがあるんです」
「左様でございましたか。お聞きしてもよろしいでしょうか?」
顔を見合わせるとニッと笑って言った。
「「バレーをやりたいんです!」」
お2人は、バレーボールの選手だったそうだ。
そんなお2人が今、教会の壇上で牧師の格好をしたゲストさまを中心に向かい合っている。宮さまはアイボリー、日向さまは純白のタキシードに身を包んでいた。お互いの手を慈しむように恭しく持ち上げて薬指に指輪を通す。指輪を通されている時はどちらもくすぐったそうに微笑んでいた。交換が終わると、宮さまが肩に手を起き日向さまへ近づく。静かな約束が交わされた瞬間だった。
今度は披露宴。ビーチが一望できる広々としたテラス席へゲストを案内すると各々が外を見ながら笑っていた。それもそのはず。外にはビーチバレーのネットが貼られており、ボールも用意されていた。今日が晴れでいてくれてよかった。本当に。室内でも用意は合ったけれど、お2人の希望として一番強いものだったから叶えられてよかった。乾杯の音頭。お色直しの間に成長記録、馴れ初めなどをムービーで流す。慌しく見えないよう優雅に移動、指示出しを行う。お色直しが済んだことを確認して入場用の音楽を流すよう段取りを進めた。
扉が開くとゲストの方々がドッと笑う。手を繋いで反対の手を掲げた2人が着ていたものは大阪に所属していた頃のチームユニフォームだった。もちろん下はスーツだが、それはお揃いのグレースーツへ変わっていた。ケーキ入刀をして(結局ケーキはバレーボール型のケーキとなった)、ついに余興の番がくる。
ゲストの方々が促されるままに靴を脱いで立ち上がった。お色直しでなぜズボンまで変えたかというと、この為だそうだ。バレーをするならストレッチの効いたズボンの方が良いだろうと宮さまからの提案だった。どこまでもバレーが根元にある2人に感嘆の息を漏らしてしまったのは内緒。
新郎お2人の指名の下、コートに4名が立つ。3点先取で、買ったチームが豪華賞品を貰えるという算段だ。勝負に参加しないゲストはどのチームが勝つか事前に賭けてもらい、当たった方も同じく賞品を贈呈されることとなる。新郎新婦がブーケトスなどでバレーボールを使うはあったけれど、まさか披露宴の余興にビーチバレーボールをするとは、夢にも思ってなかった。
ゲストによる実況解説を聞きながらコートを見る。そこには本当に楽しそうにバレーをする2人がいた。スピードが速くて目が追いつかないけれど、彼らが笑顔であることだけは分かる。トスをあげて、アタックを決めて得点になると宮さまが飛びついてきた日向さまを抱き上げる。その光景が眩しくて、つい目を細めた。でも見逃す訳にはいかない。その幸せを浴びることが、私のウェディングプランナーとしての生きがいなのだから。宮さん、日向さん、おめでとう。末永くしあわせにね。
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