encounter
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01
____あれは夢なのか。
私が探偵になる前の幼い頃の記憶。薄らぼんやりと思い出せない記憶。
でも、確かに記憶の片隅には存在する…そんな不思議な記憶が私にはある。
寂れた教会に一人で立ち寄った日のことだった。
今日も裾が随分とくたびれたジーンズのポケットに手を突っ込み、寒さに身を縮めながら教会の入り口をくぐると、見慣れない少女を発見した。少女は私に気がつくと、ふんわりと微笑みを浮かべた。
『あなた……この辺りに、住んでいるの?』
「……はい、そうです」
応えた私の顔を、少女はしばらく無言で見つめると、ふにゃりとはにかんだ。
少女は私と同じくらいの年齢に見える。白い髪の毛に白いワンピース、白い靴を履いたその姿は、教会という場所も相まってさながら天使のように見えた。席を立ちこちらに近づいてくる彼女の顔をよく見ると、顔立ちはアジア系のようで、その見慣れない美しさに私は素直に魅入ってしまった。
『…私は旅人なの。今日は父さんにお祈りを捧げてるの』
私の隣に立った少女が開口一番に放った言葉に、私は様々な思考を巡らせたが、実に情報量の少ない曖昧な自己紹介だと思った。何かしらの暗号なのか、はたまた本当に旅人なのか。父親は亡くなったのだろうか。
『っふふ、よく分からないって顔ね』
「……はい」
『…父親は死んでいないわ。……生きてもいない。それは私も同じだけれど』
意味深な言葉を連ねる少女に、私は思考するのを辞めた。考えても無駄だと思ったのだ。しばらく続く沈黙の中、私はふと少女の横顔をじっと眺めた。
「……あなたは神の使いですか?」
大真面目に、珍しくも妄言を吐く私に、少女は目を見開いた。その瞳は赤く、爛々と光り揺れている。
『…なぜ?』
「あなたはアルビノのようです。髪の毛もまつ毛も白く、瞳の色はレッド。血液の色が透けて見えるアルビノの特徴の通りです」
私はちらりと少女の着ているワンピースを見た。
「白い服を好んで着ているようです。白い生き物は東方の国で神の使いとされています。そして先ほどの言葉、死んでもないが生きてもいない…」
__まるで、神の使いとして生まれてきたかのようです。
私がそう口を開いた瞬間、頬に暖かい感触が降った。
視界には白い髪の毛と、伏せられた長いまつげ、ほんのり赤く染まった頬がある。
私の頬から唇を離した少女は、真っすぐ私の目を見つめた。
「あなたとはまた会うことになるから。……愛してる」
少女はとびきりの優しい瞳で私を見つめた後、私が言葉を発する前にくるりと背を向け、教会の外へと歩いていった。
私はどういうことなのか聞きたくて、追いかけようとした。
彼女は私のことを知っているのだろうか。
彼女の言葉はどれも不可解なことばかりなのだ。
彼女の背に手を伸ばすも、空を切る。
急な強い眠気に襲われ、視界がぼんやりと霞み、思わず私はしゃがみ込んだ。重い瞼が落ちる寸前に視界に映ったのは、白い大きな翼が生えた、少女の後姿だった。
____あれは夢なのか。
私が探偵になる前の幼い頃の記憶。薄らぼんやりと思い出せない記憶。
でも、確かに記憶の片隅には存在する…そんな不思議な記憶が私にはある。
寂れた教会に一人で立ち寄った日のことだった。
今日も裾が随分とくたびれたジーンズのポケットに手を突っ込み、寒さに身を縮めながら教会の入り口をくぐると、見慣れない少女を発見した。少女は私に気がつくと、ふんわりと微笑みを浮かべた。
『あなた……この辺りに、住んでいるの?』
「……はい、そうです」
応えた私の顔を、少女はしばらく無言で見つめると、ふにゃりとはにかんだ。
少女は私と同じくらいの年齢に見える。白い髪の毛に白いワンピース、白い靴を履いたその姿は、教会という場所も相まってさながら天使のように見えた。席を立ちこちらに近づいてくる彼女の顔をよく見ると、顔立ちはアジア系のようで、その見慣れない美しさに私は素直に魅入ってしまった。
『…私は旅人なの。今日は父さんにお祈りを捧げてるの』
私の隣に立った少女が開口一番に放った言葉に、私は様々な思考を巡らせたが、実に情報量の少ない曖昧な自己紹介だと思った。何かしらの暗号なのか、はたまた本当に旅人なのか。父親は亡くなったのだろうか。
『っふふ、よく分からないって顔ね』
「……はい」
『…父親は死んでいないわ。……生きてもいない。それは私も同じだけれど』
意味深な言葉を連ねる少女に、私は思考するのを辞めた。考えても無駄だと思ったのだ。しばらく続く沈黙の中、私はふと少女の横顔をじっと眺めた。
「……あなたは神の使いですか?」
大真面目に、珍しくも妄言を吐く私に、少女は目を見開いた。その瞳は赤く、爛々と光り揺れている。
『…なぜ?』
「あなたはアルビノのようです。髪の毛もまつ毛も白く、瞳の色はレッド。血液の色が透けて見えるアルビノの特徴の通りです」
私はちらりと少女の着ているワンピースを見た。
「白い服を好んで着ているようです。白い生き物は東方の国で神の使いとされています。そして先ほどの言葉、死んでもないが生きてもいない…」
__まるで、神の使いとして生まれてきたかのようです。
私がそう口を開いた瞬間、頬に暖かい感触が降った。
視界には白い髪の毛と、伏せられた長いまつげ、ほんのり赤く染まった頬がある。
私の頬から唇を離した少女は、真っすぐ私の目を見つめた。
「あなたとはまた会うことになるから。……愛してる」
少女はとびきりの優しい瞳で私を見つめた後、私が言葉を発する前にくるりと背を向け、教会の外へと歩いていった。
私はどういうことなのか聞きたくて、追いかけようとした。
彼女は私のことを知っているのだろうか。
彼女の言葉はどれも不可解なことばかりなのだ。
彼女の背に手を伸ばすも、空を切る。
急な強い眠気に襲われ、視界がぼんやりと霞み、思わず私はしゃがみ込んだ。重い瞼が落ちる寸前に視界に映ったのは、白い大きな翼が生えた、少女の後姿だった。
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