はじめからわかりきってたことじゃないですか




「ー別れよう。」



そう彼から言われた時、私はうまく笑えていただろうか。
彼は一般人の私と違ってFBIという日本でいう警察という立場にいた。私がどうして彼と付き合っていたなんて私だって奇跡だと思うが、彼に別れを告げられるのをどこかいつも覚悟していたような気がする。冒頭でも言ったように彼は、私たち一般人という枠には当てはまらない。彼の隣にはいつも「死」というものが隣り合わせでいる。私はそれを理解していたつもりだった。でも彼から別れようと告げられた時、私は「理解している」と勘違いをしていたのである。どこか別れるという覚悟を背負って来たのにいざ言われるとそんなことが崩れ落ちて彼に八つ当たりをしてしまった。「はじめからわかりきってたことですよ。終わりがあることぐらい。」なんて最低な言葉なんだろう。そんな言葉を聞いてもなお、彼は無表情だった。


それから彼とは連絡をしてないない。だって彼は死んでしまったから。そう、あの彼が「ボウヤ」と慕っていた少年から聞いた。彼が私に別れを告げたのは彼なりのひとつの区切りであったのかもしれない。

「ー蒼空」

無表情の彼が愛しく緩めた表情で私の名前を呼ぶ声も。
もう聞くことなんて出来ない。別れる時に涙なんてひとつも垂らさなかったのに彼が死んで私は初めて泣いた。


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コナンくんに会わせたいひとが居ると言われて記された住所を辿っていくとかの有名な工藤優作夫妻が住んでいるという立派な豪邸にたどり着いた。


「コナンくん、こんなところに私を呼んでどうしたの？」


「えへへ〜蒼空さんに会わせたいひとが居てね！昴さん、入っていいよ！！」


コナンくんに"昴さん"と呼ばれた彼は私の知り合いでも親戚でも友達でもなくただ赤の他人だった。名前は沖矢昴と言って、東都大学に通っている、大学生らしい。


「コナンくん私こんな人知らないよ？？」


そう問いかけるとコナンくんは「蒼空さんがよく知っている人だよ」と言う。


「こんにちは」


「え、あ、こんにちは。はじめまして。蒼空です。苗字は…」

と言いかけたその時。昴さんからピッという音が聞こえて私がよく知っている声が聞こえた。


「…彼方蒼空だろう？」


「っ…あ…かいさん？でもあなたは沖矢昴さんじゃ…」


「ではこうしたら信じてくれるか？」


と、顔に手をかけるとビリビリと沖矢昴の顔が剥がれて出てきたのは死んだはずの人だった。


「どうして…？コナンくんから死んだって…」


「えーっとね、蒼空さん、話せば長くなるんだけど、割愛すると表面上は死ななきゃ赤井さんは生きていけなかったんだ！だから今は別人になってるの！」


「…そっか…、でも私たち別れましたよね、どうしてまた私に会うんですか？私たちはもう…」


「別れたさ。でも俺は生憎欲しいものは手に入れたくなる主義でね。もう一度俺と付き合って欲しくてボウヤに君を連れてくるように頼んだんだ。」


「…私は赤井さんに酷いことを言いました…。」


「…あんなの気にしないさ。俺だって君を沢山傷つけたからな50/50だな。…もう一度、俺の隣で笑ってくれるか」


それは彼なりの「付き合ってください」という言葉なのだろう。プロポーズにも聞こえそうな言葉だ。


「っ…はい！」


こうしてまた私たちは奇跡的にもう一度よりを戻すことにしたのである。

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(ねえ、僕忘れ去られてない？)

(すまん、ボウヤ忘れていた)

(…っごめんね！見苦しいところ見せて！)

(蒼空さんはいいけど絶対赤井さんわざとでしょ…)

(フッ…どうだかな)