米花町魔法使譚
魔法使いさんおなまえへんかん
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「おねーさん久しぶりだね!」
そう目の前の少年に話しかけられた時にはもう私は終わっていたのかもしれない。
小さい頃から手から火を出せることだって箒ひとつで空を飛ぶことだってできた私。それは私の家系が魔法使いの家系だったからだ。魔法使いは物語で主人公の助けるものとして、または敵対者として出ることもしばしばあった。いずれにせよ人知を超えた力を持つため、物語の転換地点として大きな役割を果たすことが多い。
私たち魔法使いは迫害や欲望を満たす対象になった。少し昔の時代では悪の根源が=魔法使いにあるとして意味もなく裁判や拷問にかけられ、多くの人々が殺された。欲望を満たす時だってそうだ。従わなければ殺され、従えば良いように酷使された。私の祖父や祖母はもういない。魔法使いは不老不死である。老いることは無いし心臓を刺されない限りは死なない。でもそんなヤツらのために祖父や祖母は殺された。死に際の祖父や祖母の顔は私の目に今でも焼き付いて離れないのだ。私の父や母は「敵をとってくる」そう言って私の前から姿を消した。父や母が生きているかすら私にはわからない。私が生まれて、もう数百年もたつ。それなのに私の両親は未だに行方不明だ。私はこうして学んだのである。魔法使いは表に出てはいけないのだと。簡単に世界をも変える力を自分自身はもっているのだと。そう言い聞かせていたつもりだった。
事の始まりは私の乗ったバスがジャックされたことだった。日頃から魔法使いであることを隠していた私は魔法に頼ろうとせず、車を交通手段として使っていた。だが、その日は運悪く点検の日であり、渋々バスに乗ることを決めたのである。一番後ろの窓側に乗った私はいかにもニット帽を深く被りマスクをつけた隣の男の隣に座っていた。携帯電話を犯人たちに回収され、やることもなく途方に暮れていると隣の男とあともう1人の女が犯人グループに呼ばれて犯人にすり替えられようとしていた。トンネルに差し掛かると犯人は次々と少年たちと外国人の女の人に倒され、事態は収束したと思ったのだが…犯人グループの1人の女が声を上げたことで状況が変わる。実は彼女のしていた腕時計が起爆装置になっており、バスの急停止の影響で作動してしまったらしい。
「ー爆発まであと、30秒もない!」
そう告げられバスの乗客たちは一目散に逃げ出した。勇敢な少年たちも逃げ出したのだが自分も出入口に差し掛かったところであたりを見ていると、少年たちと一緒にいたフードをかぶった子が1人座っているではないか。そしてその子を助けようとまた少年が戻ってくる。
ーあと10秒か。私たち魔法使いは表舞台に出てはいけない。人々に自分の事を知られてはいけない。私はそれでも目の前にある奪われるべきではない命を捨ててはいられないのだ。
「さあ、外へ出よう?こんな所へいては行けない」
フードを被った子どもは何か言いたげだったがそんなこと聞いている余裕はない。2人の手を引き、素早く魔法を唱える。バスが爆発する1秒前、私と子供二人は間一髪でバスからの脱出に成功したのだった。
爆風が落ち着いたあと、暫くして未だにこっちに不思議そうな目を向ける2人に大丈夫かと聞くと眼鏡をかけた少年がおねーさんが助けてくれたから大丈夫だと言ってきた。よかったと安堵を漏らした私に、彼は「おねーさんは何者なの?」と聞かれた。
「さあ?その頭脳で解き明かしてみて?小さな探偵くん?」
彼の探るような目は私の姿を見透かしているようだった。あれから、私は逃げるようにしてあの場をあとにした。事情聴取なんて受けたくなんてなかったし、私が表舞台に出ることは許されない。からその時だけは魔法を使って自分の家に帰った。あの眼鏡の少年にはもう会わないだろうなんて意気込んでた自分が馬鹿だった。
そして冒頭にもどる。久しぶりに街へ繰り出したらこれだ。わたしもつくづく運がついていないと思う。このまま無視して立ち去ろうか、そう考えもしたが「ねえー!お姉さんとぼくお茶したいなぁ!!」なんて彼に手を掴まれたことであっけなく終わったのである。
「ご注文はなにになさいますか?」
「アイスコーヒーとボクは?」
「オレンジジュースで!」
にこにこした表情を店員に向け、その店員が去っていくとすぐに表情を変えて私の方を見てきた。
「おねーさん、久しぶりだね?僕ほんと探したんだよ??」
ー少年がそんな目をギラギラさせて聞く事じゃないでしょうに。
「はぁ…参ったなぁ、久しぶりだね小さな探偵くん…」
「おねーさん、やっと喋ってくれたね!僕江戸川コナンって言うんだ!よろしくね!」
「はあ…彼方蒼空だよ…よろしくねコナンくん」
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「じゃあさー、蒼空さんは何者なの?」
それからコナンくんの話を聞きっぱなしで30分が経過するといきなりコナンくんが話を切り出してきた。というかいつの間にか名前呼びじゃないか。コナンくんは小学生1年生らしいがとても小学一年生とは思えない。私が魔法使いと知ったら?どうなる?一か八か彼の正体を暴いてみようか。
「ねえ、じゃあコナンくんちょっと来て欲しい場所があるんだけど」
そう言って喫茶店をあとにした私はコナンくんを連れて私の家へ連れ出した。家へ行けば誰にも私の秘密は知られないしもし、彼が私の秘密を知ったとしても、ばらすような子ではないと私が判断したからだ。え?こんなのでいいって?私が判断したから大丈夫…だ。
「蒼空さん結構大きい家に住んでるんだねー」
「そうだよ、さあ中へ入って」
「おじゃましまーすっ!」
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「えっと質問に答えたいんだけど…」
「いいよ、でもわざわざ自分の家に案内したってことはそれぐらい知られたくない秘密なんだよねー?」
「うんそうだよさあ君はこれを見てどう思うかな」
ーーーーーー。呪文を唱えるとコナンくんは驚いて「は?」と声を漏らし子供ぶるのを忘れていた。
「ーうん、分かったよ君が小学一年生に見えない理由が」
「それはさっきの呪文が教えてくれたの?」
「うん、工藤新一くん、東の高校生探偵で黒ずくめ?の男に毒薬を飲まされて気づけば小学生1年生になってた…でどう?」
「…すげえな魔法使い」
「それが素の姿ってことかー、、」
「そうだよ蒼空さん。俺は工藤新一だ、まあよろしくな」
「改めてよろしくだね新一くん」
「まさか蒼空さんが魔法使いとはなー、、」
「言っとくけどこのことは他言はしないでね!まあコナンくんだって色々秘密抱えてるから言わないと思うんだけどね~?」
「コンニャロ……まあ俺と関わったってことを後悔させてやるぐらい助けてもらうからな!」
「やだなー…魔法使いは表舞台に立っちゃいけないんだけど、、」
「そんなこと知らねーよバーロー!」
これが江戸川コナンくんもとい工藤新一くんとの出会いだ。
(はい、アイスコーヒー)
(え?)
(いや小学生ぶってたからオレンジジュース頼んだんでしょ)
(…ありがと)
(よろしい)