米花町魔法使譚
魔法使いさんおなまえへんかん
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「バッカねぇ、幸せになっちゃいけない人なんていないのよ」
ーピンポーン
こんな時間に誰だろう。時刻は夕暮れ時。コナンくんが来るには遅すぎるし、研二さんや陣平さんが来るにはまだ早い。うちインターホンないから付けるかあ…と思い「はーい」と言いながらドアを開けるとそこには学ランを着た高校生らしき男の子が立っている。こんな子知り合いにいたかと頭を巡らせる束の間、こんにちはと言われいつの間にか何も持っていなかった彼の手のひらには赤いバラがあった。ああ、そういえば最近知り合いになったなあと納得し、彼を私の家…館へと手招きをしたのだった。
「いやあ、忘れられたのかと思ってましたよ蒼空サン?」
「ごめん、半分忘れてた」
「…まじかよ…あ、前は名探偵いたから言えなかったけど自己紹介しますね」
「…黒羽快斗くんでしょ」
「へえ〜そこも魔法で調べあげたんですか?」
「…さあどうだと思う?」
「魔法で調べましたね絶対」
「そそんなハッタリ使わないよ…!!」
「…蒼空さんって嘘つくの下手なくせにポーカーフェイスは出来るんですね…」
「それ貶してんの!?!?」
「いいえ、褒めてますちゃーんとね」
「それ絶対嘘じゃん…………」
それから彼とは他愛のない話を沢山した。彼が怪盗をしている理由だとか、名探偵(=コナン君)は侮れない奴だとか。彼のお父さんは“黒羽盗一”という世界を股にした有名なマジシャンだったらしい。そのころ私は外とのかかわりを断っていたし、私がこうして普通に生活するようになったのも少し前だから、快斗くんから「俺のお父さんを知ってるか?」と聞かれて「知らない」と私が答えた後の快斗君の表情はすごかった。それから延々と1時間快斗くんのお父さんの話を聞かされた。そのお父さんが8年前のマジックの途中に突然亡くなったことも。表では不慮の事故死だとされているけど、実際は当時快斗くんのお父さんが追っていた伝説のビックジュエル“パンドラ”を狙う組織に殺されたということ。その時の彼の表情は泣きそうで、辛そうだった。……快斗くんの名前やコナン君・・・もとい新一くんの記憶だって魔法で調べた私だけど、家族についてのことはちゃんと記憶を探らないまま、聞いてあげるのが一番いいのだ。それは一番私がよく知っている。……私も経緯は違うとはいえ、祖父と祖母を殺されたから。でも私とは違った。快斗くんはお父さんの「仇」を取るべくこうしてビックジュエル“パンドラ”を探している。行動を起こしているのだ。…私は祖父や祖母が殺されたことに絶望し、悲観し、母や父のようには行動せず、ただただ世界とのかかわりを断ち、引き篭もっていただけだ。だから素直に凄いと思った。こうして世界に刃向かうことに。そうやってぼーっと思いを巡らせていたら、快斗くんの「蒼空さん……!」という声に気づかなかった。
「蒼空さん……!」
「ん・・・あぁ、ごめん、ぼーってしてたよね。話続けていいよ。」
「なんか思いつめた顔してますけど大丈夫ですか」
「んー、大丈夫だよ」
「大丈夫って言ってる割には泣きそうな顔ですけど」
「………なんできづいちゃうかなぁ。」
「だって蒼空さん嘘つくの苦手ですもん。顔に出てますしね。……そうやって胸に閉じ込めるよりこうして言葉にはいたほうがいいと思いますよ。まあ怪盗がいうものおかしいですけど」
「……そうやって行動を起こすことができるってことがただただ凄いって思ったの。……私はただ絶望して見つめることしかできなかったから。こうして今生きてるのは、死に際におばあちゃんとおじいちゃんに「生きろ」ってそう言われたから生きてるだけ。それが私がおばあちゃんとおじいちゃんにできる恩返しというか……ね。だから私も快斗くんみたいに行動を起こしていたら変わる未来はあったのかなぁって思っただけだよ。ごめんね。なんか押し付けてるみたいだ。」
「そうですか?行動を起こすのも起こさないのも人それぞれだと思いますよ。俺は行動を起こしたから、こうして怪盗として生きてますけど、俺には絶望する暇なんてなかったんだと思います。ただ「やる」という選択肢しか与えられなかったんだと。…だって怪盗キッドとファントム・レディの血を引くサラブレットですからね。…いいですか蒼空さん。こんなガキンチョに言われるのもなんですけど、蒼空さん、あなたがそう選択をしたのなら正しいんですよ。誰に何を言われようが「私の選択肢は正しかった!」と胸を張って生きればいいじゃないですか。おじいさんもおばあさんもあなたにそうして贖罪を背負ってまで生きて欲しくないと思ってますよ。きっと。・・・それに最近あなたは行動を起こしている。あなたが行動を起こしたから救われた命は沢山あるんじゃないですか。まあ、悔しいですけど俺もそのうちの一人ですよ。魔法使いサン?」
ーそう快斗くんに言われて気づいたことがある。長年こんなことを考えていたのが馬鹿馬鹿しかったのだと。
「…本当にガキンチョに何言われてるんだろうねわたし…お年寄りに説教するなんていい度胸だよ本当にもう……!」
「…スッキリしましたか?」
「…とってもね!あ、快斗くん…またこんな独り言みたいな事聞いてくれる…?私なかなかこんなこと誰にも言えなくてさあ…」
「ええ、いいですよ。ただし条件があります」
「なーに条件って」
「1日1回でいいから俺に魔法見せてください、なにかマジックに役立ちそうなんで」
「…お安いご用さまっかせて!あ、玄関の開く音した…もうこんな時間か。どうする快斗くんご飯食べていく?」
「いや、なんか高校生と話してた蒼空さんってなんか怪しまれるからやめとくよ」
「そっか、またいつでもおいでね、今日はありがとう!」
「…ではまたお嬢さん、またいつか月下の淡い光のもとでお会いしましょう…」
そうして彼は私の手の甲にキスをして景光さんがリビングに来る前に私の前からいなくなった。最初に来た時に私に渡した赤い薔薇を残して。
_______________
(ただいまー、あれ、誰かさっきまでここにいたのか?)
(おかえりヒロさん、いたよ)
(そいつどうやって帰ったんだ?すれ違わなかったけど?)
(目の前で消えた)
(消えた…!?!?忍者なのか…!?!)
(いや、怪盗)
(怪盗…!??…お前外出禁止な!!!)
(…なんで!!!)
(怪盗と優雅にお茶する奴がいるか!…あとで秀一もよんで説教だな)
(…それだけはやだー!!!)
それからヒロさんによって呼ばれた赤井さんとヒロさんによって蒼空ちゃんは説教をくらいましたとさ。
ーピンポーン
こんな時間に誰だろう。時刻は夕暮れ時。コナンくんが来るには遅すぎるし、研二さんや陣平さんが来るにはまだ早い。うちインターホンないから付けるかあ…と思い「はーい」と言いながらドアを開けるとそこには学ランを着た高校生らしき男の子が立っている。こんな子知り合いにいたかと頭を巡らせる束の間、こんにちはと言われいつの間にか何も持っていなかった彼の手のひらには赤いバラがあった。ああ、そういえば最近知り合いになったなあと納得し、彼を私の家…館へと手招きをしたのだった。
「いやあ、忘れられたのかと思ってましたよ蒼空サン?」
「ごめん、半分忘れてた」
「…まじかよ…あ、前は名探偵いたから言えなかったけど自己紹介しますね」
「…黒羽快斗くんでしょ」
「へえ〜そこも魔法で調べあげたんですか?」
「…さあどうだと思う?」
「魔法で調べましたね絶対」
「そそんなハッタリ使わないよ…!!」
「…蒼空さんって嘘つくの下手なくせにポーカーフェイスは出来るんですね…」
「それ貶してんの!?!?」
「いいえ、褒めてますちゃーんとね」
「それ絶対嘘じゃん…………」
それから彼とは他愛のない話を沢山した。彼が怪盗をしている理由だとか、名探偵(=コナン君)は侮れない奴だとか。彼のお父さんは“黒羽盗一”という世界を股にした有名なマジシャンだったらしい。そのころ私は外とのかかわりを断っていたし、私がこうして普通に生活するようになったのも少し前だから、快斗くんから「俺のお父さんを知ってるか?」と聞かれて「知らない」と私が答えた後の快斗君の表情はすごかった。それから延々と1時間快斗くんのお父さんの話を聞かされた。そのお父さんが8年前のマジックの途中に突然亡くなったことも。表では不慮の事故死だとされているけど、実際は当時快斗くんのお父さんが追っていた伝説のビックジュエル“パンドラ”を狙う組織に殺されたということ。その時の彼の表情は泣きそうで、辛そうだった。……快斗くんの名前やコナン君・・・もとい新一くんの記憶だって魔法で調べた私だけど、家族についてのことはちゃんと記憶を探らないまま、聞いてあげるのが一番いいのだ。それは一番私がよく知っている。……私も経緯は違うとはいえ、祖父と祖母を殺されたから。でも私とは違った。快斗くんはお父さんの「仇」を取るべくこうしてビックジュエル“パンドラ”を探している。行動を起こしているのだ。…私は祖父や祖母が殺されたことに絶望し、悲観し、母や父のようには行動せず、ただただ世界とのかかわりを断ち、引き篭もっていただけだ。だから素直に凄いと思った。こうして世界に刃向かうことに。そうやってぼーっと思いを巡らせていたら、快斗くんの「蒼空さん……!」という声に気づかなかった。
「蒼空さん……!」
「ん・・・あぁ、ごめん、ぼーってしてたよね。話続けていいよ。」
「なんか思いつめた顔してますけど大丈夫ですか」
「んー、大丈夫だよ」
「大丈夫って言ってる割には泣きそうな顔ですけど」
「………なんできづいちゃうかなぁ。」
「だって蒼空さん嘘つくの苦手ですもん。顔に出てますしね。……そうやって胸に閉じ込めるよりこうして言葉にはいたほうがいいと思いますよ。まあ怪盗がいうものおかしいですけど」
「……そうやって行動を起こすことができるってことがただただ凄いって思ったの。……私はただ絶望して見つめることしかできなかったから。こうして今生きてるのは、死に際におばあちゃんとおじいちゃんに「生きろ」ってそう言われたから生きてるだけ。それが私がおばあちゃんとおじいちゃんにできる恩返しというか……ね。だから私も快斗くんみたいに行動を起こしていたら変わる未来はあったのかなぁって思っただけだよ。ごめんね。なんか押し付けてるみたいだ。」
「そうですか?行動を起こすのも起こさないのも人それぞれだと思いますよ。俺は行動を起こしたから、こうして怪盗として生きてますけど、俺には絶望する暇なんてなかったんだと思います。ただ「やる」という選択肢しか与えられなかったんだと。…だって怪盗キッドとファントム・レディの血を引くサラブレットですからね。…いいですか蒼空さん。こんなガキンチョに言われるのもなんですけど、蒼空さん、あなたがそう選択をしたのなら正しいんですよ。誰に何を言われようが「私の選択肢は正しかった!」と胸を張って生きればいいじゃないですか。おじいさんもおばあさんもあなたにそうして贖罪を背負ってまで生きて欲しくないと思ってますよ。きっと。・・・それに最近あなたは行動を起こしている。あなたが行動を起こしたから救われた命は沢山あるんじゃないですか。まあ、悔しいですけど俺もそのうちの一人ですよ。魔法使いサン?」
ーそう快斗くんに言われて気づいたことがある。長年こんなことを考えていたのが馬鹿馬鹿しかったのだと。
「…本当にガキンチョに何言われてるんだろうねわたし…お年寄りに説教するなんていい度胸だよ本当にもう……!」
「…スッキリしましたか?」
「…とってもね!あ、快斗くん…またこんな独り言みたいな事聞いてくれる…?私なかなかこんなこと誰にも言えなくてさあ…」
「ええ、いいですよ。ただし条件があります」
「なーに条件って」
「1日1回でいいから俺に魔法見せてください、なにかマジックに役立ちそうなんで」
「…お安いご用さまっかせて!あ、玄関の開く音した…もうこんな時間か。どうする快斗くんご飯食べていく?」
「いや、なんか高校生と話してた蒼空さんってなんか怪しまれるからやめとくよ」
「そっか、またいつでもおいでね、今日はありがとう!」
「…ではまたお嬢さん、またいつか月下の淡い光のもとでお会いしましょう…」
そうして彼は私の手の甲にキスをして景光さんがリビングに来る前に私の前からいなくなった。最初に来た時に私に渡した赤い薔薇を残して。
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(ただいまー、あれ、誰かさっきまでここにいたのか?)
(おかえりヒロさん、いたよ)
(そいつどうやって帰ったんだ?すれ違わなかったけど?)
(目の前で消えた)
(消えた…!?!?忍者なのか…!?!)
(いや、怪盗)
(怪盗…!??…お前外出禁止な!!!)
(…なんで!!!)
(怪盗と優雅にお茶する奴がいるか!…あとで秀一もよんで説教だな)
(…それだけはやだー!!!)
それからヒロさんによって呼ばれた赤井さんとヒロさんによって蒼空ちゃんは説教をくらいましたとさ。
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