米花町魔法使譚
魔法使いさんおなまえへんかん
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「あのね、こんなことがあったんだよ」
「おっじゃましまーす!あれ?今日はおまえだけか?」
「おう。そうだけど。」
「蒼空ちゃん居ないの珍しいな」
「あー…それ墓参りだよ。おばあさんとおじいさんの」
「…お盆だもんな…今の時期。」
いつもなら家から外へ出ないここの家主が今日は外へ赴き、「電車に乗って出掛けてくるね。」と言って早朝から出掛けてしまった。まあ俺はその理由を知っているんだけどな。彼女は夏が嫌いだ。暑いのもそうだし、ジメジメと湿気が高いのも嫌いらしい。そして夏は彼女の愛していた祖父と祖母が亡くなった季節でもある。一緒に住んでいた数年前、いつもは酔おうとはしない酒に酔った彼女から一度だけおばあさんとおじいさんの話を聞いたことがある。
ーとても優しい祖父と祖母でした。貴族や王様に無理難題を押し付けられてもなお、みんなのためだと思って笑顔で答えてたんです。でもある時、祖父と祖母が指示に従わないことがありました。それから命を狙われるようになって逃げてたんですが、用事で家を抜けて帰ってきた時、いつも「おかえり」という声がするのに返ってこなかったんです。不審に思って家に入ると血塗れの祖父と祖母がいました。きっと貴族たちが、私たちの居場所を特定して殺しに来たんだと思います。私が駆け寄ると祖母と祖父はもう死ぬ手前でした。そしてこう言ったんです。「…蒼空。私たちはこういう運命だったから殺されたんだ。運命を恨んではいけないよ。…私たち生きたいように生きたんだ。私たちは幸せだったよ。お前に出会えて…。」と笑顔で言ったんです。…私はその2人が息絶えていくのを見ていくことしかできませんでした。未然に防げたらこんなことはなかったはずなのに。それから私は「死」と言うものが嫌いなんです。と。彼女はそう俺に話してくれた。あんな顔を見たのは、いつも以上に弱音を吐いた彼女は初めてだった。彼女はこう話してくれたことを覚えてないと思う。だって酒に酔ったら記憶を忘れる体質だから。
「ま、そういうことだから今日アイツが帰ってきたら笑顔で出迎えてやれよ」
「ツッコまれそうだけどな俺ら居たら」
「いつもの事じゃねえか」
「だって休暇だから仕方ないじゃーん!」
「研二うざ」
「ひでえな景光」
東都から電車に揺られて2時間程度。東京のはずれの山奥の薄汚れた教会に私の祖父と祖母が眠っている。彼らが亡くなった後、私がこの場所に移したのだ。この教会がある場所は人間が入れるような場所ではないから人には見つかることはないんだけど、万が一のために人に見つからないように魔法をかけて姿を隠している。時代が経てば経つほどこの教会もボロくなってきた。そろそろ立て直さなければいけないと思う。キィー…となるドアを開け、中へ入ると毎年変わらずホコリ臭くなっていた。でも少しホコリが被っていない箇所があった。…たぶん父さんか母さんがここを訪れたのだろう。父さんや母さんにはもう随分と会っていない。顔も忘れた。どんな顔だったかなと思い浮かべ、毎年のように掃除をして、花束を手向ける。そして今年1年の報告をする。こんなことやあんなことがあっただとか2人に語りかけるのだ。当然返事なんて返っては来ないけど、見守ってくれてる気がするから。
「あのね、おばあちゃん、おじいちゃん。まだあなた達みたいに人助けるの辞めれてないんだ。あと魔法使いって事結構自分でばらしてるんだ。でもね、後悔はしてないよ。これが運命で私が生きたいように生きてるだけだからね。だから、おばあちゃん、おじいちゃん、私のこと天国で見守ってね。また一年後に来るね。またね。」そう言って扉を閉じた。またこの教会は私がいなくなると姿を消す。そうしてひっそりとまた一年後私が来るのを待ちわびるのだ。
「ただいまー。」とドアを開け、我が家へ帰るとヒロさんの他に男物の靴が2足並んでいた。そしてリビングからくる「おかえりー!」と言う声。間違いなく萩原さんと松田さんだ。本当に休暇の日になると懲りないでここへやって来る。
「蒼空ちゃんお邪魔してるよ〜!」
「よお、元気か蒼空」
「我が家のようにくつろがないでください二人とも」
「まーまいいじゃん、献上品も持ってきたことだし…な、松田?」
「ほれ」
「これは…百貨店限定の並ばなきゃ買えないクッキー…」
「朝から並んでやったんだ感謝しろよ」
「男二人で並ぶの勇気いったわ〜」
「ありがとうふたりともすき…」
「そんな簡単に好きって言うもんじゃないぞ〜蒼空、ほら紅茶」
「ヒロさん気が利く…もっとすきだ」
「ありがとな〜よし食べようか」
「自分が好きって言われたら嬉しがるのにな」
「翠川って結構嫉妬深けえな」
「男の嫉妬ってこえーな」
「怖いわ〜」
「うるせえよ!外野2人!」
こうやって雑談しながら食べるクッキーはとても美味しかったです。
______________________
(今日は蒼空が食べたいヤツ晩御飯に作るぜ)
(わーい!ヒロさん太っ腹〜!)
(ヒュー!ヒュー!)
(ゴチになるわ)
(お前ら2人は強制に帰らせるからな)
「おっじゃましまーす!あれ?今日はおまえだけか?」
「おう。そうだけど。」
「蒼空ちゃん居ないの珍しいな」
「あー…それ墓参りだよ。おばあさんとおじいさんの」
「…お盆だもんな…今の時期。」
いつもなら家から外へ出ないここの家主が今日は外へ赴き、「電車に乗って出掛けてくるね。」と言って早朝から出掛けてしまった。まあ俺はその理由を知っているんだけどな。彼女は夏が嫌いだ。暑いのもそうだし、ジメジメと湿気が高いのも嫌いらしい。そして夏は彼女の愛していた祖父と祖母が亡くなった季節でもある。一緒に住んでいた数年前、いつもは酔おうとはしない酒に酔った彼女から一度だけおばあさんとおじいさんの話を聞いたことがある。
ーとても優しい祖父と祖母でした。貴族や王様に無理難題を押し付けられてもなお、みんなのためだと思って笑顔で答えてたんです。でもある時、祖父と祖母が指示に従わないことがありました。それから命を狙われるようになって逃げてたんですが、用事で家を抜けて帰ってきた時、いつも「おかえり」という声がするのに返ってこなかったんです。不審に思って家に入ると血塗れの祖父と祖母がいました。きっと貴族たちが、私たちの居場所を特定して殺しに来たんだと思います。私が駆け寄ると祖母と祖父はもう死ぬ手前でした。そしてこう言ったんです。「…蒼空。私たちはこういう運命だったから殺されたんだ。運命を恨んではいけないよ。…私たち生きたいように生きたんだ。私たちは幸せだったよ。お前に出会えて…。」と笑顔で言ったんです。…私はその2人が息絶えていくのを見ていくことしかできませんでした。未然に防げたらこんなことはなかったはずなのに。それから私は「死」と言うものが嫌いなんです。と。彼女はそう俺に話してくれた。あんな顔を見たのは、いつも以上に弱音を吐いた彼女は初めてだった。彼女はこう話してくれたことを覚えてないと思う。だって酒に酔ったら記憶を忘れる体質だから。
「ま、そういうことだから今日アイツが帰ってきたら笑顔で出迎えてやれよ」
「ツッコまれそうだけどな俺ら居たら」
「いつもの事じゃねえか」
「だって休暇だから仕方ないじゃーん!」
「研二うざ」
「ひでえな景光」
東都から電車に揺られて2時間程度。東京のはずれの山奥の薄汚れた教会に私の祖父と祖母が眠っている。彼らが亡くなった後、私がこの場所に移したのだ。この教会がある場所は人間が入れるような場所ではないから人には見つかることはないんだけど、万が一のために人に見つからないように魔法をかけて姿を隠している。時代が経てば経つほどこの教会もボロくなってきた。そろそろ立て直さなければいけないと思う。キィー…となるドアを開け、中へ入ると毎年変わらずホコリ臭くなっていた。でも少しホコリが被っていない箇所があった。…たぶん父さんか母さんがここを訪れたのだろう。父さんや母さんにはもう随分と会っていない。顔も忘れた。どんな顔だったかなと思い浮かべ、毎年のように掃除をして、花束を手向ける。そして今年1年の報告をする。こんなことやあんなことがあっただとか2人に語りかけるのだ。当然返事なんて返っては来ないけど、見守ってくれてる気がするから。
「あのね、おばあちゃん、おじいちゃん。まだあなた達みたいに人助けるの辞めれてないんだ。あと魔法使いって事結構自分でばらしてるんだ。でもね、後悔はしてないよ。これが運命で私が生きたいように生きてるだけだからね。だから、おばあちゃん、おじいちゃん、私のこと天国で見守ってね。また一年後に来るね。またね。」そう言って扉を閉じた。またこの教会は私がいなくなると姿を消す。そうしてひっそりとまた一年後私が来るのを待ちわびるのだ。
「ただいまー。」とドアを開け、我が家へ帰るとヒロさんの他に男物の靴が2足並んでいた。そしてリビングからくる「おかえりー!」と言う声。間違いなく萩原さんと松田さんだ。本当に休暇の日になると懲りないでここへやって来る。
「蒼空ちゃんお邪魔してるよ〜!」
「よお、元気か蒼空」
「我が家のようにくつろがないでください二人とも」
「まーまいいじゃん、献上品も持ってきたことだし…な、松田?」
「ほれ」
「これは…百貨店限定の並ばなきゃ買えないクッキー…」
「朝から並んでやったんだ感謝しろよ」
「男二人で並ぶの勇気いったわ〜」
「ありがとうふたりともすき…」
「そんな簡単に好きって言うもんじゃないぞ〜蒼空、ほら紅茶」
「ヒロさん気が利く…もっとすきだ」
「ありがとな〜よし食べようか」
「自分が好きって言われたら嬉しがるのにな」
「翠川って結構嫉妬深けえな」
「男の嫉妬ってこえーな」
「怖いわ〜」
「うるせえよ!外野2人!」
こうやって雑談しながら食べるクッキーはとても美味しかったです。
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(今日は蒼空が食べたいヤツ晩御飯に作るぜ)
(わーい!ヒロさん太っ腹〜!)
(ヒュー!ヒュー!)
(ゴチになるわ)
(お前ら2人は強制に帰らせるからな)