BO-BOBO

Restart day

ズキズキ、いや、バキバキと表現したほうが正確だろうか。全身の痛みによって目が覚めた俺は、どうやら先程の戦闘で気絶したらしい。

「気付きましたか?ランバダ様」

懐かしい声がして顔を向けると、壁のほうにいた彼女が駆け寄ってくる。

「…レム」
「あっ起き上がらなくていいです!怪我してるんですから横になっててください!」

痛みに耐えつつ何とか上半身を起こしたところで、すぐに彼女によってまた寝かせられた。気遣いを嬉しいと思う気持ちが半分、気遣われるなんて情けないと思う気持ちが半分。しかしレムはそんな俺の心情などお構いなしで、ニコニコしながら隣に座る。百年前と変わらない白い肌、毛先が外側に跳ねた髪。思えばハンペンやジェダと同時に覚醒した時、コイツだけはまだコールドスリープ装置の中にいたんだっけか…すごく久しぶりに見た気がするのはそのせいか。
レムは身振り手振りを交えながら、現状を報告し始める。

「さっき、外にいたルブバと話したんですけどね、と言っても壁を挟んでなんですけど。連絡用のシャボン玉を飛ばして隊員の状況を確認してみるって言ってました」
「そうか」
「それで、私とランバダ様のシャボン玉もしっかり返しておきました!」
「…それ、壁を挟んで声が通るんだから俺とレムのは必要ないんじゃないか…?」
「あ、そう言われれば確かに…」

あからさまに落ち込むレム。そこまでへこむほどのミスじゃないだろうに、というか寝ながら書類を記入して読めない字を書いたり書類によだれを垂らしたり百年前のほうがもっとひどいミスをしていただろ。そんなことを考えて、ふと目を向けると、レムはいつのまにか再び笑顔に戻っている。少しして俺の視線に気付いたらしいレムは、柔らかく微笑んだまま、言葉を放つ。

「私、嬉しいんです。こうやってまた、ランバダ様と話せて」

顔に熱が集まっていくのが分かって、思わず顔を背ける。俺が返した言葉は、我ながらひどくお節介なものだった。

「さっき闘った…ボーボボとかいう奴。お前はアイツについていかなくてよかったのか」

認めたくはないが、アイツは強い。百年前、三大権力者の一人と呼ばれたこの俺でもかなわないほどに。
そして何より、アイツはレムの心を溶かした。正確には、レムの心に巣食う闇を具現化して、よく分からないオレンジのトゲトゲに食わせるという理不尽極まりない方法だが。
俺にはできなかったことを、アイツらはいとも簡単にやってのけた。
しかし、彼女は相も変わらず穏やかに笑う。

「いいんです」
「でも、…俺は敗れた。今だったら、反逆にはならねぇぞ」
「私が決めたことだからいいんです!」
「…っ、何故?」

意固地なレムを久しぶりに見て、思わず怯んだ。それを隠すように理由を尋ねると、彼女は少し考えてから、結論を出す。

「分かりません」
「…は?」
「ランバダ様と一緒にいたかったから、一緒にいる。…それだけじゃ、ダメですか?」

そんな事、訊かれても。
困り果てた俺は、意地の悪い質問を投げかけることにした。

「俺がアイツに再戦を挑むことになったら?」
「構いません。一緒に闘います」
「それ以前に、敵を倒せなかったことに関して、罰を受けることになっても?」
「私も一緒に受けます」
「…仕事中に寝てた場合、容赦なく叩き起こすが?」
「う、それはお手柔らかにお願いします…」
「おいおい、何だよそれ」

予想はしていたが、つい吹き出してしまう。
本当にコイツは、百年前から変わってねぇな。

レムの反応に和みながら天を見ていると、ひとつ、またひとつと仲間の無事を伝えるシャボン玉が飛んでくるのが視界に入った。



fin.

(旧毛狩り隊編でレムがボーボボの仲間になりそうなフラグを立てておきながら結局そうならなかったのは、ランバダを放っておけなかったからだと思う。つまりはランレム。)

2014/03/04 公開
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