Phi-Brain

Supernova

超新星。
光を放つ星が急激にその明るさを増し、場合によっては太陽と同じくらいにまで眩しく輝く現象。

神のパズルの中で偶然の邂逅を果たした幼馴染みにも、今の私は輝いて見えるかな。



神のパズルを解くPOGのソルヴァーとしてここに来た旨を伝えると、カイトは素直に驚きの表情を浮かべた。さっきまでカイトと対峙していた、カイトに雰囲気が似た女の子もカイトと同じ表情をしている。それは突然私が現れた驚きもあるけれど、それだけじゃない。カイトが旅立った頃の私はパズルができなかったのに、今ではPOGからパズルの解放を任されるほどにまでなっていたから。
ここだけの話、私だってカイトを追いかけたくて頑張ったのだ。天才たちに比べれば私の道は遠回りだけど、こうして追いかけた先でカイトは待っていて、私との約束を守ってくれた。それが嬉しくて、私はパズルを一緒に解こうと話を持ちかける。
そもそもこれは一人では解けないパズル。それでも一人で来たのは、大切な仲間を巻き込んで犠牲を出さないためであり、二人以上いないと発動しない仕掛けなら今回はそれだけを調べて引き下がるつもりだったから。
…でも、偶然カイトに会えたのなら話は別。せっかくだから一緒にパズルがしたい。神のパズルは危険な代物だけど、カイトが一緒ならこんなに心強いことはない。
早速カイトに協力を仰ぐと、対峙していた女の子が止めに入る。改めて見ると、カイトが旅に出た時一緒にいた女の子だ。名前は確か、レイツェル。ジンさんとカイトとレイツェル、三人で一緒に旅立ったはずなのにどうして三人がバラバラになってしまったのかなんて、私には分からない。だけど、これは勝ち負けにこだわっていたら解けないパズルだということは、事前にPOGから聞いていた。このままじゃいけない。そう思って、私はレイツェルに向けて説得する。旅を通して私が得た思いを。
それに、どうせなら皆で解きたい。

「パズルタイムの始まりよ!」

お決まりのセリフを告げると、瞳の奥で星雲がきらめく感覚。大丈夫、楽しもう。



待ち望んでいたパズルタイムに意気込んだ、その時。
神のパズルの建物の中に光の粒が降り注ぐ。白く眩しく輝く光の中に、今いるパズルが、そして私の姿が、包まれていく。

「えっ、あれ!?」

動揺している間にも、光はどんどん強まる。強まって、私の輪郭がぼやけていく。
その中で時折見えた、驚いたままのカイトとレイツェル。カイトたちの周りはそのままで、光の粒は私とパズルだけを飲み込んでいく。
そこまで確認した瞬間、悟った。



超新星。
その実態は、星の最期。
化学反応でエネルギーを作り出す一方で反応後の屑が貯まっていった結果、バランスが崩れて耐え切れなくなり、爆発した光だ。

パズルとしては完璧に作られたこの陣取りパズルの塔は、時間という概念を巻き込んだことで綻びが生じやすくなっていた。本来の過去と違う選択をしてどこかを変えたら、辻褄が合うように他の過去も連動して変わっていく。
そうして生まれたこの「時の迷路」の綻びが、きっと私。
様々な過去の可能性によっていくつもの反応を起こした「時の迷路」は、綻びとしての私をカイトたちの前に露呈するほど崩れていて、きっともうすぐ…
カイトたちにとって本来の過去ではない部分が、消失していく。
それはこの塔のパネルが二人の過去に連動していないただの陣取りパズルになるという意味であり、「本来の過去にはいない私」が消失するという意味。





ねぇ、カイト。
POGのソルヴァーになった私は、憧れていた太陽にはなれなかったけれど。
せめて、カイトと同じくらい輝けていたかな。

願わくば、私の光がカイトの探し求めている答えになれますように。





ふいに。
私を取り巻く光の向こうから、カイトの声が聞こえる。

「ノノハ!
いつか絶対、二人でパズル解こうな!!」

超新星。
崩壊し爆発した星の残骸は、新しい星が誕生するもとになる。

これから消える私にカイトがしてくれた新しい約束は、きっと新しい星に繋がる。



fin.

(題名は1期OPの歌詞から。)

2017/03/20 公開
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