1期天才テラス組クリスマス

リアルな君を表に出して

いつものように小鳥さんたちとお喋りしていると、扉を開ける音が控えめに響いた。振り返ってみれば珍しいお客さん。学校ではお昼に毎日会うけれど、この第二美術室で会うのは久しぶりのこと。

「あっ、ノノハー」

嬉しくて声が少し高くなる。そんなアナの気持ちがわかる小鳥さんたちは、じゃあまた今度ね、と言葉を残して飛び立った。

「あ…ごめん、邪魔しちゃった?」
「ううん。それより、どうしたの?」

小鳥さんの言葉がわからないノノハは申し訳なさそうに謝る。思うに小鳥さんたちは気を使ってアナとノノハを二人きりにしてくれただけだから、本当は謝る必要なんて無いんだな。そんな律儀な彼女に用件を尋ねると、返ってきたのは素敵な提案。

「クリスマスの日、食堂第一テラスでパーティーしようと思うんだけど…アナに部屋の飾り付けを考えてほしくて」

お願い!とストレートに頼み込むノノハ。それだけでノノハの本気が十分伝わってきてアナもわくわくする、けれど。

「どうしてー?」
「え?」
「どうしてアナなの?アナは今、描きかけの絵があるんだな」

体を横にぐーっと傾けて、アナよりずっと背の低い彼女の顔を覗き込む。アナが思うに、ノノハがアナに頼んだ理由は決まっている。だから少しだけノノハを困らせてみたくなるんだな。「アナは美術が得意だから」とか「アナのデザインは綺麗だから」とか、そんなありきたりな理由じゃアナは動かないよ?
どう答えるのか期待半分、でもじつは不安半分でノノハを見つめている、と。

「…アナは大切な仲間だから、かな」
「大切?」

アナの予想外の答え。思わずオウム返しに尋ねると、ノノハはにっこり笑う。

「うん。そりゃあ不思議なところはあるけど…でも、そこも含めてアナは大切な仲間だよ」

心からの笑顔。純粋な好意。ノノハの持つ温かいイメージが、アナに伝わってくる。

…本当はずっと、絵に没頭できる一人の時間が好きだった。お互いに素直な言葉を打ち明けられる、動物たちとの時間が好きだった。
逆に表面だけ取り繕って嘘つきな、人間との時間は苦手だった。作品の題材として第三者の視点から見る人間は平気だけど、アナ自身が関わるのは苦手だった。
だけど、今は。

「…わかった、アナも協力する♪」

今は、アナを信頼してくれる誰かさんのために頑張ってみてもいいかな。

「本当!?…あ、でも描きかけの絵は?」
「それは後回し。本当はちょっとスランプだったかも」

…なーんて、実際はちゃんと絵筆が進んでいるけれど。思うにアナは、まっすぐ向かってきてくれる彼女にだけはつい甘くなっちゃうのかも。

「それじゃアナ、よろしくね。引き受けてくれてありがとう!」

ノノハはお礼の言葉を述べて美術室を後にする。彼女が向かうのはやっぱりカイトのところかな。もしそうならカイトがちょっと羨ましいかも、と心の片隅で考える。

「…頑張るんだな」

パーティーの飾りも、それ以外も。
うーんと大きく伸びをして、早速湧き出たアイデアを書き留めるべくそばにあった鉛筆とスケッチブックを手に取った。



fin.2011/12/09 公開
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