BO-BOBO
どっちが好き?
「ランバダ様は…仕事と私、どちらが好きですかっ!?」
突然そんなことを言われて、さすがの俺でも正直少し驚いた。
その言葉を発した俺の部下――もといレムをちらりと見ると、彼女は真っ赤な顔をして俺の返事を待っている。きっとコイツも言うのは恥ずかしかったのだろう、なんて推測してひそかに優越感を覚えた。
それにしても、比べるものが違うだろうが。人と物事を比較することはできないわけだし、俺にとってはどちらも大切なものだ。レムがいないのは物足りないが、戦闘は相手を屈辱的に倒せるのが面白いし、デスクワークも案外嫌いじゃない。
呆れつつもレムがこの質問をした理由が気になって、こちらも質問で返すことにする。
「…どうして突然そんなことを?」
「いいから答えてください!」
レムは自分で質問したくせに早く不安から解放されたいのか、突っぱねてきた。なんか今日はやけに強気だな。その分コイツも覚悟して尋ねてきたからだろうが。
さて、どう答えようか。
本音を言えば、仕事なんかよりはコイツのほうが断然優勢に決まっている。戦闘は相手がかかってきたら応じるが、力を使わず屈服させられるのであればそれに越したことはない。デスクワークは時間を見つけていつでもできる。一方、レムは24時間常に一緒というわけにもいかないし、時々一緒にいてもコイツだけ夢の中へ旅立っていることもある。そういう意味で、レムと過ごす時間は貴重で大切だ。
だが、そう素直に答えるのは面白くない。レム自身はきっと自分が選ばれることを望んでいると思うが…だからといってそれを言ってやるのは負けたみたいで俺のプライドが許さない。
それに、期待を裏切ったらコイツはどんな顔をするのか…泣くのか、怒るのか、それを見てみたいとも思う。いっつも寝てばかりでよく見る表情は笑顔か寝顔か…そんなところだからまぁ、たまには他の表情もさせてみたい。悪趣味?気のせいだろ。
「ランバダ様、どちらですか…?」
「…じゃあ、仕事」
俺がそう言うと、彼女は一瞬だけ、時間が止まったように動きを止めた。
あれ、やっぱりショックだったか。一応冗談のつもりで言ったんだが…言い方も無愛想だったし、誤解させたかもしれない。
今の言葉を撤回しようと口を開いた、その時。
「そ…そう、ですよねっ。ランバダ様は仕事第一でしたもんね!あははっ…」
…レムの作り笑顔。無理をして笑っていることくらい、すぐにわかった。
まったく…悲しいなら素直にそう言え。どうしてそう一人で感情を溜め込むんだ。というか、真に受けてんじゃねぇよ。本当は違うってことくらい、少し考えればわかるだろ。
なんだか無性に苛ついて、俺は彼女に質問を投げ掛けた。
「そういうお前はどうなんだ?」
「え?」
「その…睡眠と俺、だったら」
「睡眠です!!」
おい、即答かよ!?
さっき本音を言わなかった俺がこんなことを言うのはあれだが…正直グサッと胸の奥が抉られた。
しかも彼女の表情を見る限り、それは本音のようだ。さっきの仕返しとか、そういうのではなくて。仕返しのつもりだったらどれほど良かったことか。
確かにレムは四六時中寝ているような奴で、下手をすれば俺と過ごす時間よりも睡眠時間のほうが多いが…でも、そこは嘘でも俺って言えよ!毎回毎回起こしてやって世話焼いてんだろ!ったく、ポリゴンにされたいのか!
「…だけど、」
ふとレムの声が聞こえて、俺は彼女に目を向けた。苛立ちから睨む形になったはずなのに、彼女はにっこりと笑う。
そして。
「私はランバダ様と一緒にお昼寝するのが、いちばん好きです」
ふわりと囁くようなトーンで言われて、攻撃的な気持ちが一気に霧散してしまった。仕方ない、今日のところは見逃してやる。
こんなのは俺のキャラじゃないが…レムの付け足した言葉が、以外にもすごく嬉しかったから。
目の前で油断しているレムを片手で抱き寄せて、お返しに言ってやる。
「…俺も、」
「え?」
「俺も、お前と一緒に仕事をするのが…いちばん好きだ」
fin.
(終わってみれば本当にラブラブイチャイチャしてるだけ。)
2011/03/29 公開
「ランバダ様は…仕事と私、どちらが好きですかっ!?」
突然そんなことを言われて、さすがの俺でも正直少し驚いた。
その言葉を発した俺の部下――もといレムをちらりと見ると、彼女は真っ赤な顔をして俺の返事を待っている。きっとコイツも言うのは恥ずかしかったのだろう、なんて推測してひそかに優越感を覚えた。
それにしても、比べるものが違うだろうが。人と物事を比較することはできないわけだし、俺にとってはどちらも大切なものだ。レムがいないのは物足りないが、戦闘は相手を屈辱的に倒せるのが面白いし、デスクワークも案外嫌いじゃない。
呆れつつもレムがこの質問をした理由が気になって、こちらも質問で返すことにする。
「…どうして突然そんなことを?」
「いいから答えてください!」
レムは自分で質問したくせに早く不安から解放されたいのか、突っぱねてきた。なんか今日はやけに強気だな。その分コイツも覚悟して尋ねてきたからだろうが。
さて、どう答えようか。
本音を言えば、仕事なんかよりはコイツのほうが断然優勢に決まっている。戦闘は相手がかかってきたら応じるが、力を使わず屈服させられるのであればそれに越したことはない。デスクワークは時間を見つけていつでもできる。一方、レムは24時間常に一緒というわけにもいかないし、時々一緒にいてもコイツだけ夢の中へ旅立っていることもある。そういう意味で、レムと過ごす時間は貴重で大切だ。
だが、そう素直に答えるのは面白くない。レム自身はきっと自分が選ばれることを望んでいると思うが…だからといってそれを言ってやるのは負けたみたいで俺のプライドが許さない。
それに、期待を裏切ったらコイツはどんな顔をするのか…泣くのか、怒るのか、それを見てみたいとも思う。いっつも寝てばかりでよく見る表情は笑顔か寝顔か…そんなところだからまぁ、たまには他の表情もさせてみたい。悪趣味?気のせいだろ。
「ランバダ様、どちらですか…?」
「…じゃあ、仕事」
俺がそう言うと、彼女は一瞬だけ、時間が止まったように動きを止めた。
あれ、やっぱりショックだったか。一応冗談のつもりで言ったんだが…言い方も無愛想だったし、誤解させたかもしれない。
今の言葉を撤回しようと口を開いた、その時。
「そ…そう、ですよねっ。ランバダ様は仕事第一でしたもんね!あははっ…」
…レムの作り笑顔。無理をして笑っていることくらい、すぐにわかった。
まったく…悲しいなら素直にそう言え。どうしてそう一人で感情を溜め込むんだ。というか、真に受けてんじゃねぇよ。本当は違うってことくらい、少し考えればわかるだろ。
なんだか無性に苛ついて、俺は彼女に質問を投げ掛けた。
「そういうお前はどうなんだ?」
「え?」
「その…睡眠と俺、だったら」
「睡眠です!!」
おい、即答かよ!?
さっき本音を言わなかった俺がこんなことを言うのはあれだが…正直グサッと胸の奥が抉られた。
しかも彼女の表情を見る限り、それは本音のようだ。さっきの仕返しとか、そういうのではなくて。仕返しのつもりだったらどれほど良かったことか。
確かにレムは四六時中寝ているような奴で、下手をすれば俺と過ごす時間よりも睡眠時間のほうが多いが…でも、そこは嘘でも俺って言えよ!毎回毎回起こしてやって世話焼いてんだろ!ったく、ポリゴンにされたいのか!
「…だけど、」
ふとレムの声が聞こえて、俺は彼女に目を向けた。苛立ちから睨む形になったはずなのに、彼女はにっこりと笑う。
そして。
「私はランバダ様と一緒にお昼寝するのが、いちばん好きです」
ふわりと囁くようなトーンで言われて、攻撃的な気持ちが一気に霧散してしまった。仕方ない、今日のところは見逃してやる。
こんなのは俺のキャラじゃないが…レムの付け足した言葉が、以外にもすごく嬉しかったから。
目の前で油断しているレムを片手で抱き寄せて、お返しに言ってやる。
「…俺も、」
「え?」
「俺も、お前と一緒に仕事をするのが…いちばん好きだ」
fin.
(終わってみれば本当にラブラブイチャイチャしてるだけ。)
2011/03/29 公開
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