BO-BOBO

スケッチブックの思い出

久しぶりにスケッチブックを開くと、そこには以前描いた仲間たちの姿が変わらずに残っていた。写実的なものではなく、黒い鉛筆でそれぞれの輪郭をデフォルメして描いた絵だけど、それだけの情報でもじゅうぶんどれが誰か判別できるほど個性豊かな仲間たちだ。

「ビュティお姉ちゃん、何見てるの?」

懐かしい気持ちになって見ていると、そこにやってきたのは最近の旅で加わった新たな仲間。

「あ、ポコミちゃん。これはね、一年前に描いた絵なんだ」

そう言ってスケッチブックを見せると、彼女は興味津々にそれを眺めた。

「ねぇねぇ、これってお兄ちゃん?」
「うん。天の助君が落書きしちゃったんだけどね…」

皆が騒いでいる中、天の助君がこっそりと赤いクレヨンで描いたのは小さなハートマーク。気付いたへっくんは怒って天の助君を追いかけていったっけ。

「これはパッチンだよね☆色が違うけど、これもプルルンの落書き?」

ポコミちゃんが指差したのは、青いクレヨンで描かれた首領パッチ君。その絵の中では彼だけが少し大きく、そして斜めから描いたのがわかるくらい不自然に曲がっている。

「あぁ…これは首領パッチ君が自分で描いちゃったんだ」
「え、そうなの?」
「首領パッチ君を描こうとした時に皆が集まってきたから…『なんで俺は後回しなんだよ!』って。その時に破天荒さんも悪ノリしちゃって」

ボーボボから伸びた鼻毛と、それを掴む破天荒さんの腕のあたりを指差す。その部分だけは緑のクレヨンで付け足されていて、一年経った今でもすぐに付け足された落書きだとわかった。
あの時は確か、この様子を見かねたお兄ちゃんが二人を制止させて…。
ボーボボは珍しくふざけないで、「よく描けているな」なんて言って微笑んでいたんだよね。
そんな思い出話をしていると、ふいにポコミちゃんはにっこり笑う。

「ビュティお姉ちゃんの描く絵、大好き☆ねぇ、ポコミのことも描いて♪」
「うん、いいよ」

そもそもこのスケッチブックを出したのは、もう一度皆を描くつもりだったから。
一年前より少し成長した仲間と新しい仲間。この旅の思い出も全部、描いて残しておきたかったのだ。

…あっ、そうだ。
良いことを思いついた私は、まだ何も描いてないページを一枚、丁寧に切り離した。

「ね、ポコミちゃんも一緒に描いてみよう?」

私はそう言うと、切り取った白い紙をポコミちゃんに渡す。さすがに驚いた様子だったけれど、それでも彼女はすぐに笑顔になった。

「ありがとう、ビュティお姉ちゃん!」

元気なお礼の言葉に、私はにっこりと笑みを返して一緒に色鉛筆を広げる。

「まずはパッチンでしょ♪それからボーボボに、プルルンに…」

ポコミちゃんは周りにいる仲間たちのことを順番に、とても楽しそうに描いていく。
思えば彼女はアカデミー出身で、そこを出てからも「ボーボボは敵だ」と教え込まれたり、誤解が解けて私たちの仲間になった後も積極的に戦闘に加わったりしている。戦いばかりの毎日だったから、彼女にとってこういう遊びは久しぶりなのかもしれない。
そんなことを考えていると、ふいにポコミちゃんの手が止まった。

「…どうしたの?」

私が気になって声をかけると、彼女は寂しそうな表情をして、言った。

「…ナメっちも、描いていい?」

今はもう敵になってしまった彼。ポコミちゃんが誰よりも慕っていた、かつての仲間。
きっと、彼女はまだ信じているのだろう。
ナメ郎君がまた仲間になってくれることを。また一緒に旅ができることを。

「…そうだね、ナメ郎君のことも描こっか」
「ほんと!?」

安心したかのようにパッと笑顔になるポコミちゃんを見て、私はナメ郎君がまた戻ってきてくれるよう、心の中で願った。



fin.

(ビュティの絵はアニメのED「キライチューン」で描いていたものを、そしてポコミが描く絵は真説の最後の戦いで使う技「ポコミのらくがき☆大砲波」をイメージしています。前サイトの旧拍手お礼なので公開日や収納日は不明。)
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