BO-BOBO
恋する二人の戦い
今年もやってきた、女の子の聖戦の日。通称、バレンタインデー。
いつも眠気には勝てない私だけど、今日は緊張しているせいか普段より早く…つまりはランバダ様が起こしに来るより早く、目が覚めた。昨日のうちに作ったトリュフチョコが入っている箱を見つめながら、決意を新たにする。
…今年こそ、ランバダ様に『直接』チョコを渡すんだからっ!!
というのも、去年は部屋で寝ていたランバダ様の枕元にチョコを置いて逃げ帰ってくるという失態をおかしてしまったから。ランバダ様は私だと知っていたからなんとかなったものの、これじゃあバレンタインじゃなくクリスマスよ、恋人どころかサンタクロースじゃないの!と自分にツッコミを入れたことは言うまでもない。
だから、今年こそは!
すると、そこに聞こえたノックの音。続いて、ドア越しに届く声…いつも聞き慣れている、ランバダ様のそれだ。
「レム、起きてるか」
「はい!今日は珍しく早く目が覚めたんですよ!」
「…飯の準備はできてるから。先に食堂行ってるぞ」
「あっはい、わかりました!」
そして、足音は去っていく…。
「…あぁぁぁあっ!!」
思わず叫び声を上げてしまう。
そう、私は気付いてしまったのだ…さっきがチョコを渡す最高のタイミングだったということに!
もう何やってんの私、まだ寝ているふりをして部屋に入ってもらえば渡せたのに…。
でもまぁ、まだ朝だからね。聖戦は始まったばかり、勝負はこれからよね!
負けませんよ、ランバダ様。
…☆…
先ほど声をかけた部下の部屋から、重大なことに気付いたらしい声が食堂にまで響いた。
あのバカ、あんな大声出しやがって…何を考えているか丸分かりだ。
…アイツの反応からして、俺にチョコを渡すつもりなのは確実だ。
自意識過剰に聞こえるかもしれないが、本当にそう思うのだから仕方ない。去年も一応貰えたし、そもそもあれだけ毎日仕事中に寝たり書類間違えたりして手間かけさせやがって、それでいて何も無いはずがない。
と、とりあえず席を確保したところで他の隊長格の奴ら――宇治金TOKIO、コンバット、ルブバが来た。宇治金TOKIOは普段と同じ表情だが、ルブバは俺を見て少し意外そうに、そしてコンバットはニヤニヤと笑いを抑えきれない様子で。
「あれ?ランバダ様、今朝はレム様と一緒じゃないんですか?」
「もしかしてこの聖なる日に失恋か、そうかそうか残念だったなランバ」
ピキッ、と音が鳴って辺りが静まる。コンバットは清々しい笑顔のままで固まっていた。そして、真拳を向けていないのに呆然と固まった二人。
「…一瞬でコンバット様をポリゴンにするとは、さすがですね」
「まぁコンバットのは自業自得やし、同情の余地はあらへんけどな」
やや引きつった顔で感想を漏らすルブバの隣で、宇治金TOKIOはやや冷静に言った。まぁ、コイツとは付き合いが長いからな。どこまで踏み込めばポリゴンにされてしまうか、加減が分かっているのだろう。
二人は俺の向かいの席に着くと、周りに聞こえないようにそっと話を切り出した。
「…で、本当のところはどうなんや?今年こそ抹茶チョコは普及しとるんか!?」
「んなこと知るか!」
「ちょ、宇治金TOKIO様、本題はそっちじゃなくて!…ランバダ様、結局レム様とはどうなんですか」
「そうや、何かあったんか?ちなみにワイはルブバに便乗しただけやからな、ポリゴンにするならルブバはんだけでお願いしますわ!」
…やっぱりその話か。
部下に責任転嫁する宇治金TOKIOをポリゴンにしたい気持ちをなんとか抑えて、ぶっきらぼうに答える。
「…さっき起こしてきた。勝算はある」
「おぉ、ホンマかいな!内定おめでとさん!」
「いやいや待ってくださいランバダ様、起こしに行った時に貰わなかったんですか!?」
「あぁ」
「なんでなん!?言えばええやないか!」
「そんな催促みたいな真似できるかよ。それに、普通に貰うのはなんか…負けた気がする」
そこまで話したところで、廊下を走るせわしない音が聞こえた。続いて、バタン、とドアが勢いよく開く音。
目を向けるとそこにいたのは予想通り、小さな箱を大事そうに抱えた、噂の彼女。
「…ルブバ、後片付けは頼む」
俺は小声でそう言い残すと、ドア近くで突っ立ったままのレムには目もくれずに食堂を出た。
…今日はコイツの思い通りになんか、動いてやらない。
さっさと負けを認めろよな、レム。
…☆…
うぅ、何なのよもう…。
ランバダ様が出て行ったドアのほうを見つめて、がっくりと肩を落とす。朝の意気込みはもうすっかり消えてしまっていた。
それもそのはず、今日に限ってランバダ様は冷たい。それになんだか避けられている。
急いで身支度を済ませて食堂へ行っても、話しかける前にランバダ様は出て行ってしまうし、ルブバや宇治金TOKIOに理由を訊いても苦笑いで返された。
そして、朝食が終わって仕事をしている今も。
「あ、あの…ランバダ様、ちょっといいですか…?」
「…仕事に関することなら」
「う…じゃあ後でいいです…」
気まずい沈黙。
かれこれ五回はこのやりとりを繰り返している。根っからの仕事人間なのは今に始まったことじゃないけれど、そしてそのマジメさに毎回ミスをカバーしてもらっている身だけど、さすがに今日は困るのだ。
しかし彼は全く気付かず、いつも通り『仕事中に話しかけるな』オーラを放っているように見える。触れてもポリゴンにはならないけれど、機嫌が悪くなるのは容易に予想が付く。
「あっ、部屋に書類忘れた…ちょっと取ってくる」
そう言って、また離れていく彼。どうすればいいか分からなくなって途方に暮れたその時、ルブバと宇治金TOKIOが口を開いた。
「…レム様、追いかけないんですか」
「そうや。ランバダ様、あぁ見えて待っとるはずやで」
「でも、行ったところでまた避けられるのがオチだし…」
「いいから早く!!」
どうやら二人には何か思うところがあるらしい。その剣幕に圧倒されて、半ば無理やり彼の部屋まで向かうと…
…いた。目的の書類を持ったまま、何やら考え込んでいるランバダ様が。
もう、こうなったらヤケクソよ!
今日は負けるわけにはいかないんだから!
「ランバダ様!チョコレート、受け取ってください!!」
必死の思いでそう言って顔を上げると、ようやくこちらに目を向けたランバダ様は…
笑顔だ。
それはもう、意地の悪そうな。
「ら、ランバダ様?」
おそるおそる、彼の名前を呼ぶ。
長年一緒に仕事をしてきたからわかる。今の笑顔は、勝利を確信したときの笑顔。最後にどう仕留めるか考えているときの笑顔。
つまりは、危険信号。
「何だ、これ」
「えっと…トリュフチョコです」
「そうじゃなくて。…箱に入ってんじゃねぇか」
えっ?
言われた意味が理解できなくて彼を見ると、ニヤリと口角を上げたランバダ様。
そして。
「…食わせたいんだろ?俺に、『直接』」
え!!?
それって…それって!?
俗に言う「あーん」って奴ですか!?
その真意を理解した途端、顔に熱が集まる。心臓がばくばくと煩くなる。
…けれど、逆らうことはできなくて。
ココアパウダーのかかったトリュフチョコを一粒持ち、ゆっくりと彼の口へ近付けていく。ドキドキと緊張して手は震えるし顔は熱いし心臓は煩い。おまけに指が近付くにつれてランバダ様の周りの空気感や息遣いが感じられて、一層くらくらしそうになる。
ランバダ様も自分から食べにくるつもりはないらしく、こちらを見ながら楽しそうに笑みを浮かべている。もうランバダ様の方から来てくれればこんな恥ずかしさもすぐ終わるのに!とは思うけれど、それを口に出せばまたチョコレートごと拒否されてしまいそうだ。朝からタイミングを見計らって掴み損ねて、ようやく回ってきたチャンスを台無しにする勇気なんて持ち合わせていない。
羞恥で涙目になりながらも手を伸ばす。あと十センチ、あと五センチ、あと一センチ…
結局、ちゃんと口に入ったかどうか見届ける前に私の意識が飛んだ。
…☆…
おい、何だこの仕打ちは。
予想した軌道を大幅にずれて俺の頬をかすめたトリュフは、そのまま床に転がった。
そして俺の腕の中には、極度の緊張で気を失ったレム。決して俺が抱きついたとかじゃなく、コイツが勝手に倒れてきたのだ。ご丁寧にも後ろに倒れず、こっちに倒れてきやがって。
…まぁ、おかげで受け止めることができたが。後頭部を強打しなかったことを感謝しろ、バカ。
そこまで考えて、ふと床に転がったトリュフに目をやる。昨日掃除したばかりだし、何よりレムから貰った物を捨てるのは忍びない。
相変わらず俺に寄りかかったままの彼女をそっとベッドに寝かせてから、床のトリュフを拾い、そのまま口へ運ぶ。三秒ルールだ、三秒以上経っているが。
「…甘ぇ」
柔らかく溶けるそれは、そのままでも十分甘い…けれど。
さっきの光景がそこに甘さを加えていることは間違いない事実だろう。
さっきの、真っ赤になって恥ずかしがるレムがすごく可愛い、だなんて。
「…絶対教えてやらねぇよ、バーカ」
気を失っているのに幸せそうなレムに呟いて、俺は箱に入った残りのチョコレートへ手を伸ばした。
どうやら聖戦は、俺の勝利みたいだな。
…ちなみにこの後、仕事場に戻った俺はルブバと宇治金TOKIOから頬のココアパウダーを指摘され、何があったかしつこく訊かれたのだが…
それは、また別の話。
fin.
(ややSなランバダと振り回される素直なレム。実は前サイトから移した時にドキドキ感をプラスしました。意地悪なランバダ様もいいよね!)
2012/02/14 公開
今年もやってきた、女の子の聖戦の日。通称、バレンタインデー。
いつも眠気には勝てない私だけど、今日は緊張しているせいか普段より早く…つまりはランバダ様が起こしに来るより早く、目が覚めた。昨日のうちに作ったトリュフチョコが入っている箱を見つめながら、決意を新たにする。
…今年こそ、ランバダ様に『直接』チョコを渡すんだからっ!!
というのも、去年は部屋で寝ていたランバダ様の枕元にチョコを置いて逃げ帰ってくるという失態をおかしてしまったから。ランバダ様は私だと知っていたからなんとかなったものの、これじゃあバレンタインじゃなくクリスマスよ、恋人どころかサンタクロースじゃないの!と自分にツッコミを入れたことは言うまでもない。
だから、今年こそは!
すると、そこに聞こえたノックの音。続いて、ドア越しに届く声…いつも聞き慣れている、ランバダ様のそれだ。
「レム、起きてるか」
「はい!今日は珍しく早く目が覚めたんですよ!」
「…飯の準備はできてるから。先に食堂行ってるぞ」
「あっはい、わかりました!」
そして、足音は去っていく…。
「…あぁぁぁあっ!!」
思わず叫び声を上げてしまう。
そう、私は気付いてしまったのだ…さっきがチョコを渡す最高のタイミングだったということに!
もう何やってんの私、まだ寝ているふりをして部屋に入ってもらえば渡せたのに…。
でもまぁ、まだ朝だからね。聖戦は始まったばかり、勝負はこれからよね!
負けませんよ、ランバダ様。
…☆…
先ほど声をかけた部下の部屋から、重大なことに気付いたらしい声が食堂にまで響いた。
あのバカ、あんな大声出しやがって…何を考えているか丸分かりだ。
…アイツの反応からして、俺にチョコを渡すつもりなのは確実だ。
自意識過剰に聞こえるかもしれないが、本当にそう思うのだから仕方ない。去年も一応貰えたし、そもそもあれだけ毎日仕事中に寝たり書類間違えたりして手間かけさせやがって、それでいて何も無いはずがない。
と、とりあえず席を確保したところで他の隊長格の奴ら――宇治金TOKIO、コンバット、ルブバが来た。宇治金TOKIOは普段と同じ表情だが、ルブバは俺を見て少し意外そうに、そしてコンバットはニヤニヤと笑いを抑えきれない様子で。
「あれ?ランバダ様、今朝はレム様と一緒じゃないんですか?」
「もしかしてこの聖なる日に失恋か、そうかそうか残念だったなランバ」
ピキッ、と音が鳴って辺りが静まる。コンバットは清々しい笑顔のままで固まっていた。そして、真拳を向けていないのに呆然と固まった二人。
「…一瞬でコンバット様をポリゴンにするとは、さすがですね」
「まぁコンバットのは自業自得やし、同情の余地はあらへんけどな」
やや引きつった顔で感想を漏らすルブバの隣で、宇治金TOKIOはやや冷静に言った。まぁ、コイツとは付き合いが長いからな。どこまで踏み込めばポリゴンにされてしまうか、加減が分かっているのだろう。
二人は俺の向かいの席に着くと、周りに聞こえないようにそっと話を切り出した。
「…で、本当のところはどうなんや?今年こそ抹茶チョコは普及しとるんか!?」
「んなこと知るか!」
「ちょ、宇治金TOKIO様、本題はそっちじゃなくて!…ランバダ様、結局レム様とはどうなんですか」
「そうや、何かあったんか?ちなみにワイはルブバに便乗しただけやからな、ポリゴンにするならルブバはんだけでお願いしますわ!」
…やっぱりその話か。
部下に責任転嫁する宇治金TOKIOをポリゴンにしたい気持ちをなんとか抑えて、ぶっきらぼうに答える。
「…さっき起こしてきた。勝算はある」
「おぉ、ホンマかいな!内定おめでとさん!」
「いやいや待ってくださいランバダ様、起こしに行った時に貰わなかったんですか!?」
「あぁ」
「なんでなん!?言えばええやないか!」
「そんな催促みたいな真似できるかよ。それに、普通に貰うのはなんか…負けた気がする」
そこまで話したところで、廊下を走るせわしない音が聞こえた。続いて、バタン、とドアが勢いよく開く音。
目を向けるとそこにいたのは予想通り、小さな箱を大事そうに抱えた、噂の彼女。
「…ルブバ、後片付けは頼む」
俺は小声でそう言い残すと、ドア近くで突っ立ったままのレムには目もくれずに食堂を出た。
…今日はコイツの思い通りになんか、動いてやらない。
さっさと負けを認めろよな、レム。
…☆…
うぅ、何なのよもう…。
ランバダ様が出て行ったドアのほうを見つめて、がっくりと肩を落とす。朝の意気込みはもうすっかり消えてしまっていた。
それもそのはず、今日に限ってランバダ様は冷たい。それになんだか避けられている。
急いで身支度を済ませて食堂へ行っても、話しかける前にランバダ様は出て行ってしまうし、ルブバや宇治金TOKIOに理由を訊いても苦笑いで返された。
そして、朝食が終わって仕事をしている今も。
「あ、あの…ランバダ様、ちょっといいですか…?」
「…仕事に関することなら」
「う…じゃあ後でいいです…」
気まずい沈黙。
かれこれ五回はこのやりとりを繰り返している。根っからの仕事人間なのは今に始まったことじゃないけれど、そしてそのマジメさに毎回ミスをカバーしてもらっている身だけど、さすがに今日は困るのだ。
しかし彼は全く気付かず、いつも通り『仕事中に話しかけるな』オーラを放っているように見える。触れてもポリゴンにはならないけれど、機嫌が悪くなるのは容易に予想が付く。
「あっ、部屋に書類忘れた…ちょっと取ってくる」
そう言って、また離れていく彼。どうすればいいか分からなくなって途方に暮れたその時、ルブバと宇治金TOKIOが口を開いた。
「…レム様、追いかけないんですか」
「そうや。ランバダ様、あぁ見えて待っとるはずやで」
「でも、行ったところでまた避けられるのがオチだし…」
「いいから早く!!」
どうやら二人には何か思うところがあるらしい。その剣幕に圧倒されて、半ば無理やり彼の部屋まで向かうと…
…いた。目的の書類を持ったまま、何やら考え込んでいるランバダ様が。
もう、こうなったらヤケクソよ!
今日は負けるわけにはいかないんだから!
「ランバダ様!チョコレート、受け取ってください!!」
必死の思いでそう言って顔を上げると、ようやくこちらに目を向けたランバダ様は…
笑顔だ。
それはもう、意地の悪そうな。
「ら、ランバダ様?」
おそるおそる、彼の名前を呼ぶ。
長年一緒に仕事をしてきたからわかる。今の笑顔は、勝利を確信したときの笑顔。最後にどう仕留めるか考えているときの笑顔。
つまりは、危険信号。
「何だ、これ」
「えっと…トリュフチョコです」
「そうじゃなくて。…箱に入ってんじゃねぇか」
えっ?
言われた意味が理解できなくて彼を見ると、ニヤリと口角を上げたランバダ様。
そして。
「…食わせたいんだろ?俺に、『直接』」
え!!?
それって…それって!?
俗に言う「あーん」って奴ですか!?
その真意を理解した途端、顔に熱が集まる。心臓がばくばくと煩くなる。
…けれど、逆らうことはできなくて。
ココアパウダーのかかったトリュフチョコを一粒持ち、ゆっくりと彼の口へ近付けていく。ドキドキと緊張して手は震えるし顔は熱いし心臓は煩い。おまけに指が近付くにつれてランバダ様の周りの空気感や息遣いが感じられて、一層くらくらしそうになる。
ランバダ様も自分から食べにくるつもりはないらしく、こちらを見ながら楽しそうに笑みを浮かべている。もうランバダ様の方から来てくれればこんな恥ずかしさもすぐ終わるのに!とは思うけれど、それを口に出せばまたチョコレートごと拒否されてしまいそうだ。朝からタイミングを見計らって掴み損ねて、ようやく回ってきたチャンスを台無しにする勇気なんて持ち合わせていない。
羞恥で涙目になりながらも手を伸ばす。あと十センチ、あと五センチ、あと一センチ…
結局、ちゃんと口に入ったかどうか見届ける前に私の意識が飛んだ。
…☆…
おい、何だこの仕打ちは。
予想した軌道を大幅にずれて俺の頬をかすめたトリュフは、そのまま床に転がった。
そして俺の腕の中には、極度の緊張で気を失ったレム。決して俺が抱きついたとかじゃなく、コイツが勝手に倒れてきたのだ。ご丁寧にも後ろに倒れず、こっちに倒れてきやがって。
…まぁ、おかげで受け止めることができたが。後頭部を強打しなかったことを感謝しろ、バカ。
そこまで考えて、ふと床に転がったトリュフに目をやる。昨日掃除したばかりだし、何よりレムから貰った物を捨てるのは忍びない。
相変わらず俺に寄りかかったままの彼女をそっとベッドに寝かせてから、床のトリュフを拾い、そのまま口へ運ぶ。三秒ルールだ、三秒以上経っているが。
「…甘ぇ」
柔らかく溶けるそれは、そのままでも十分甘い…けれど。
さっきの光景がそこに甘さを加えていることは間違いない事実だろう。
さっきの、真っ赤になって恥ずかしがるレムがすごく可愛い、だなんて。
「…絶対教えてやらねぇよ、バーカ」
気を失っているのに幸せそうなレムに呟いて、俺は箱に入った残りのチョコレートへ手を伸ばした。
どうやら聖戦は、俺の勝利みたいだな。
…ちなみにこの後、仕事場に戻った俺はルブバと宇治金TOKIOから頬のココアパウダーを指摘され、何があったかしつこく訊かれたのだが…
それは、また別の話。
fin.
(ややSなランバダと振り回される素直なレム。実は前サイトから移した時にドキドキ感をプラスしました。意地悪なランバダ様もいいよね!)
2012/02/14 公開
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