1期天才テラス組クリスマス
スカイブルーより綺麗な
三、ニ、一、点灯。
心の中でカウントダウンしながらスイッチを入れると、小さなライトは青い光を放って点滅し始めた。成功だね。設計図に大きく丸印をつける。
「キューちゃん、調子どう?」
「うわぁっ!?」
突然呼ばれて、思わず頓狂な声が出た。あれだけキュービックだと言っているのに全然変えようとしない、この呼び方をする人に心当たりは一人だけ。
「ノノハ!?まだ来ちゃダメ!」
「えっ?でもキューちゃん『試作品が出来たから、お昼を食べたら見に来て』って…」
「だからキュービック!」
ぐいぐいと背中を押して、半ば無理矢理ノノハを廊下に出す。そりゃあ誘ったのは僕だけど、僕にだって計画というものがあるんだ。
「僕が『いい』って言うまで中を見ないでよ!」
そう忠告して、僕は再び部屋の中へ。幸い、ノノハにはまだ見られていないようだ。一安心してライトの電源を切り、部屋の照明も消す。
「…よし。入っていいよ、ノノハ」
「それじゃ、お邪魔しまーす…って、部屋真っ暗だよ?」
「いいから、こっちに来て」
バタンと戸を閉め、今度はノノハの手を引っ張って暗闇の中にある椅子に座らせる。毎日使う研究室だ、家具の位置は照明無しでもわかる。
「それじゃあいくよ。三、ニ、一」
カチリ。
電源を入れる、と…
「うわぁ…っ!」
一気にライトアップするたくさんのツリー。その青い光の中で、感嘆の声を上げるノノハ。大成功だ。
…じつは、ノノハからクリスマス用の飾りを作ってほしいと頼まれた時に考えた計画。クリスマスパーティーは皆でやると言っていたし僕もそれで異論は無いけれど、ただひとつ。完成したら真っ先にパーティーの発案者のノノハに見せたい、そう思っていた。だから僕は今日、試作品のお披露目という名目でノノハを呼んだのだ。
ただし、あくまでも名目。本当に試作品を見せるだけならこんなふうに部屋を暗くしたりはしない。まぁ当の本人は気付いていないけどね。
「どう、気に入ってくれた?」
椅子に座って目線の高さがちょうど同じくらいのノノハに、ゆっくりと近づいて尋ねる。普段から機械のオカベ君を使わずにこのくらいの身長差なら、僕だって子ども扱いされないしカイトやギャモンにも負けないのにな。
…すると、突然。
腕をぐいっと引き寄せられて、気が付けば僕はノノハの膝の上。
「ノノハ!?降ろしてよ!」
無用心にオカベ君から降りていた僕がバカだった。いや、研究室は狭いからここでオカベ君に乗ることはそうそうないんだけど。
脱出しようともがいてみるものの、しっかりと腕でガードされている。さすがノノハ。
「そんなに暴れなくてもいいじゃない。ほら、すっごく綺麗だよ」
「…知ってる」
当然だよ、だってこの計画を立てたのは僕なんだから。だから、それだけの用件なら早く降ろしてほしい。いくら僕のほうが年下とはいえここまで露骨な子ども扱いは困る。そう思ってもう一度降りようとする、と。
「ありがとう、キューちゃん」
耳元で微かに聞こえた声。顔は動かさず目線を横に向けると、青い光がバックで淡く光って、凛として綺麗なノノハの横顔。
僕のほうは顔が熱いっていうのに。
「…キュービックだよ」
仕方ないから、もう少しこのままでいてあげよう。いつものように名前を訂正しながら僕は、やっぱり赤やオレンジのライトのほうがよかったかな、なんて考えるのだった。
fin.
2011/12/18 公開
三、ニ、一、点灯。
心の中でカウントダウンしながらスイッチを入れると、小さなライトは青い光を放って点滅し始めた。成功だね。設計図に大きく丸印をつける。
「キューちゃん、調子どう?」
「うわぁっ!?」
突然呼ばれて、思わず頓狂な声が出た。あれだけキュービックだと言っているのに全然変えようとしない、この呼び方をする人に心当たりは一人だけ。
「ノノハ!?まだ来ちゃダメ!」
「えっ?でもキューちゃん『試作品が出来たから、お昼を食べたら見に来て』って…」
「だからキュービック!」
ぐいぐいと背中を押して、半ば無理矢理ノノハを廊下に出す。そりゃあ誘ったのは僕だけど、僕にだって計画というものがあるんだ。
「僕が『いい』って言うまで中を見ないでよ!」
そう忠告して、僕は再び部屋の中へ。幸い、ノノハにはまだ見られていないようだ。一安心してライトの電源を切り、部屋の照明も消す。
「…よし。入っていいよ、ノノハ」
「それじゃ、お邪魔しまーす…って、部屋真っ暗だよ?」
「いいから、こっちに来て」
バタンと戸を閉め、今度はノノハの手を引っ張って暗闇の中にある椅子に座らせる。毎日使う研究室だ、家具の位置は照明無しでもわかる。
「それじゃあいくよ。三、ニ、一」
カチリ。
電源を入れる、と…
「うわぁ…っ!」
一気にライトアップするたくさんのツリー。その青い光の中で、感嘆の声を上げるノノハ。大成功だ。
…じつは、ノノハからクリスマス用の飾りを作ってほしいと頼まれた時に考えた計画。クリスマスパーティーは皆でやると言っていたし僕もそれで異論は無いけれど、ただひとつ。完成したら真っ先にパーティーの発案者のノノハに見せたい、そう思っていた。だから僕は今日、試作品のお披露目という名目でノノハを呼んだのだ。
ただし、あくまでも名目。本当に試作品を見せるだけならこんなふうに部屋を暗くしたりはしない。まぁ当の本人は気付いていないけどね。
「どう、気に入ってくれた?」
椅子に座って目線の高さがちょうど同じくらいのノノハに、ゆっくりと近づいて尋ねる。普段から機械のオカベ君を使わずにこのくらいの身長差なら、僕だって子ども扱いされないしカイトやギャモンにも負けないのにな。
…すると、突然。
腕をぐいっと引き寄せられて、気が付けば僕はノノハの膝の上。
「ノノハ!?降ろしてよ!」
無用心にオカベ君から降りていた僕がバカだった。いや、研究室は狭いからここでオカベ君に乗ることはそうそうないんだけど。
脱出しようともがいてみるものの、しっかりと腕でガードされている。さすがノノハ。
「そんなに暴れなくてもいいじゃない。ほら、すっごく綺麗だよ」
「…知ってる」
当然だよ、だってこの計画を立てたのは僕なんだから。だから、それだけの用件なら早く降ろしてほしい。いくら僕のほうが年下とはいえここまで露骨な子ども扱いは困る。そう思ってもう一度降りようとする、と。
「ありがとう、キューちゃん」
耳元で微かに聞こえた声。顔は動かさず目線を横に向けると、青い光がバックで淡く光って、凛として綺麗なノノハの横顔。
僕のほうは顔が熱いっていうのに。
「…キュービックだよ」
仕方ないから、もう少しこのままでいてあげよう。いつものように名前を訂正しながら僕は、やっぱり赤やオレンジのライトのほうがよかったかな、なんて考えるのだった。
fin.
2011/12/18 公開