1期天才テラス組クリスマス
クールの裏に隠した素直
道端の木々が少しずつ葉を落とし、涼しかった風も冷たく感じる季節。俺も長袖を着て登校するようになったし、ノノハが着る制服もいつのまにか衣替えが終わった。そうこうしているうちにもうすっかり冬だ。
「あっ!カイト、見て見て!」
隣に座っていたノノハが突然声を上げた。その目線はバスの外に釘付けになっている。俺もつられて窓の外に目をやると、規則的に点滅する電飾、それに緑と赤のリボン。クリスマスの装いになった店があちらこちらに見られる。
あぁ、もうすぐクリスマスか。
ノノハは相変わらず目を輝かせて外を見ている。こういうイベントにわくわくするところは昔から変わらないんだよな。それこそ、√幼稚園の頃から…。
「そういえばカイト、幼稚園の頃にヘアゴムくれたよね。クリスマスプレゼントって」
「!…覚えてたのかよ」
びっくりした。俺が今考えていたことをコイツがいきなり話したから。
そんな俺の動揺を知ってか知らずか、笑顔のままで話を続けるノノハ。
「で、マドカさんにすぐ見つかったんだっけ」
「それはノノハが一人で髪を結べなかったせいだろ。マドカ先生に結んでもらうー、って勝手に…」
「あれ、そうだっけ?」
「あぁ」
あの時の恥ずかしさは忘れもしない。秘密だってちゃんと言ったのに、ノノハの奴!
そんなことがあって以来、俺がノノハに何かをプレゼントすることは少なくなってしまったのだけれど。
「…でも、私は嬉しかったな」
「え?」
「嬉しくて、すぐに付けたかったから、マドカさんに頼んじゃったのかも」
そう言って、にこりと微笑む。幼い頃から見慣れた笑顔のはずなのに、とくん、と心臓の鼓動が大きくなった気がした。
…たまには、何か贈ってやってもいいかもな。最近は賢者のパズルの件もあって何かと危ない目に遭わせてしまったから、そのお詫びって名目でもいいだろう。
「あー、その、ノノハ。クリスマスって何か予定入ってるか?」
「特に無いかなぁ…クリスマスはどの部活も休みにするみたいだし」
よし、それなら大丈夫。
あくまで平静を装いながら肝心の言葉を言おうとした、瞬間。
「そうだ!食堂の第一テラスでクリスマスパーティーしようよ!」
「…は?」
ノノハの予想外の発言に、俺の口からは間の抜けたような声が出た。
一方のノノハは良いことを思いついたと言わんばかりのウキウキした表情。嫌な予感がする…。
「…メンバーは?」
「いつもの五人だよ。私とカイトとギャモン君、キューちゃん、アナ!どう、楽しそうでしょ?」
「マジかよ…」
思わずうなだれる。別にアイツらと過ごす時間は嫌いじゃないけれど…だけど!何もクリスマスまで五人で過ごさなくてもいいだろ!
「あ、カイト今『またノノハスイーツがたくさん作られる…』とか思ったでしょ」
ピントのずれた指摘。いや、俺の中での争点はそこじゃねぇんだけどな…確かにノノハスイーツだらけのパーティーはなるべく遠慮したいが。…なんてことを考えていると、俺の無言の反応を図星と捉えたらしいノノハは釘を差すように一言。
「全員参加だからねっ」
「…はいはい」
まぁ仕方ないか。ノノハも楽しそうだし。
満足気に再び外に目を向ける彼女を横目で確認しながら、俺はクリスマスに何を贈ろうか考えるのだった。
fin.
2011/12/01 公開
道端の木々が少しずつ葉を落とし、涼しかった風も冷たく感じる季節。俺も長袖を着て登校するようになったし、ノノハが着る制服もいつのまにか衣替えが終わった。そうこうしているうちにもうすっかり冬だ。
「あっ!カイト、見て見て!」
隣に座っていたノノハが突然声を上げた。その目線はバスの外に釘付けになっている。俺もつられて窓の外に目をやると、規則的に点滅する電飾、それに緑と赤のリボン。クリスマスの装いになった店があちらこちらに見られる。
あぁ、もうすぐクリスマスか。
ノノハは相変わらず目を輝かせて外を見ている。こういうイベントにわくわくするところは昔から変わらないんだよな。それこそ、√幼稚園の頃から…。
「そういえばカイト、幼稚園の頃にヘアゴムくれたよね。クリスマスプレゼントって」
「!…覚えてたのかよ」
びっくりした。俺が今考えていたことをコイツがいきなり話したから。
そんな俺の動揺を知ってか知らずか、笑顔のままで話を続けるノノハ。
「で、マドカさんにすぐ見つかったんだっけ」
「それはノノハが一人で髪を結べなかったせいだろ。マドカ先生に結んでもらうー、って勝手に…」
「あれ、そうだっけ?」
「あぁ」
あの時の恥ずかしさは忘れもしない。秘密だってちゃんと言ったのに、ノノハの奴!
そんなことがあって以来、俺がノノハに何かをプレゼントすることは少なくなってしまったのだけれど。
「…でも、私は嬉しかったな」
「え?」
「嬉しくて、すぐに付けたかったから、マドカさんに頼んじゃったのかも」
そう言って、にこりと微笑む。幼い頃から見慣れた笑顔のはずなのに、とくん、と心臓の鼓動が大きくなった気がした。
…たまには、何か贈ってやってもいいかもな。最近は賢者のパズルの件もあって何かと危ない目に遭わせてしまったから、そのお詫びって名目でもいいだろう。
「あー、その、ノノハ。クリスマスって何か予定入ってるか?」
「特に無いかなぁ…クリスマスはどの部活も休みにするみたいだし」
よし、それなら大丈夫。
あくまで平静を装いながら肝心の言葉を言おうとした、瞬間。
「そうだ!食堂の第一テラスでクリスマスパーティーしようよ!」
「…は?」
ノノハの予想外の発言に、俺の口からは間の抜けたような声が出た。
一方のノノハは良いことを思いついたと言わんばかりのウキウキした表情。嫌な予感がする…。
「…メンバーは?」
「いつもの五人だよ。私とカイトとギャモン君、キューちゃん、アナ!どう、楽しそうでしょ?」
「マジかよ…」
思わずうなだれる。別にアイツらと過ごす時間は嫌いじゃないけれど…だけど!何もクリスマスまで五人で過ごさなくてもいいだろ!
「あ、カイト今『またノノハスイーツがたくさん作られる…』とか思ったでしょ」
ピントのずれた指摘。いや、俺の中での争点はそこじゃねぇんだけどな…確かにノノハスイーツだらけのパーティーはなるべく遠慮したいが。…なんてことを考えていると、俺の無言の反応を図星と捉えたらしいノノハは釘を差すように一言。
「全員参加だからねっ」
「…はいはい」
まぁ仕方ないか。ノノハも楽しそうだし。
満足気に再び外に目を向ける彼女を横目で確認しながら、俺はクリスマスに何を贈ろうか考えるのだった。
fin.
2011/12/01 公開
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