Phi-Brain
チョコレートは手作りで!
とうとう今年もやってきてしまった…ノノハチョコの時期が。
一年の中で今日ほど憂鬱な日はない。ノノハは確実にチョコを手作りして持ってくるだろうし、しかも今年はギャモンやアナやキュービックにも渡すつもりでいるから例年より大量のはずだ。そのぶんアナたちに食べてもらえばいいと思うかもしれないが、少なくとも一個は食べないとノノハの機嫌を損ねてしまう。
家に持ち帰って捨てる?いやいや、いくらノノハチョコでもそこまで酷い扱いするわけねぇだろ。拒否反応が出るとはいえ、あれはノノハが心を込めて作ったものだ。それを捨てるのは、温かい心を秘めたパズルを難しいからと言って投げ出すのと同じ。俺はそんなことは絶対にしない。
そんなよくわからないポリシーもあって、要するに俺はノノハチョコからは逃れられない運命にある。
しかし、今年は違った。
いや、ノノハが大量のチョコを作ってきて、天才テラスで皿の上に広げたところまでは予想通りだったのだが…
「はい、カイトにはこれ!」
そう言ってノノハが渡してきたのは皿の上のノノハチョコではなく、ピンクと黒のおしゃれな箱に入ったチョコ。
手作りというより既製品のような、そんな感じだ。まぁノノハスイーツ自体、見栄えはすごく立派だが…今受け取ったものは、皿の上のものとはデザインが違う。
「おい、なんでカイトにだけ別のチョコなんだよ」
「だってカイト、私の作ったチョコだと食べないでしょ?大丈夫、ギャモン君が今食べてるのはちゃんと手作りだから!」
「そ、そうか…」
不満げに尋ねたギャモンも、ノノハの返答を聞くと黙ってチョコを食べる作業に戻った。顔がほんのり赤いのはお約束だ。
しかし今のノノハの言葉からすると…これは本当に手作りじゃなく既製品なのか?確かに普段ノノハスイーツを勧められた時のような不快感や鳥肌は一切起こらない。
「…うん、バレンタインにチョコってベタだけど悪くないね」
「だからその上から目線はやめようよ、キューちゃん…」
生意気な発言のキュービックにノノハは口調こそ呆れ気味のそれだが、表情は相変わらず笑顔のまま。今年はチョコをたくさん広げても食べてくれる人がいるからか、ノノハの機嫌も上々。俺に手作りのものを食べさせるのは本当に諦めたようだ。
仕方ねぇ、食べてやるか。
箱の中からチョコを取り、口に含む。
ぱくっ、もぐもぐ…
すると、いつのまにか隣に来ていたアナが箱の中を覗き込んで、一言。
「アナが思うにこれ、ノノハが作ったチョコだよね?」
「…あ、やっぱりバレた?」
ごっくん。
………
………
…何ぃぃぃぃいっ!?
気付いた瞬間に食道から込み上げてくる、異様な何か。猛烈な吐き気が襲ってくるのに吐き出せず、うずくまって悶絶する。
「ノノハスイーツ、すごくおいしいのに…」
「でもカイトはノノハスイーツだと意識しなければちゃんと食べられることが証明された。いいデータが取れたよ」
「うん。それにカイトが自発的に食べてくれただけで私は幸せだよ」
「若干騙された感があるけどな…。本当、どこまでバカなんだか」
意識が吹き飛ぶ寸前、四人のそんな会話が聞こえた。
fin.
2012/02/14 公開
とうとう今年もやってきてしまった…ノノハチョコの時期が。
一年の中で今日ほど憂鬱な日はない。ノノハは確実にチョコを手作りして持ってくるだろうし、しかも今年はギャモンやアナやキュービックにも渡すつもりでいるから例年より大量のはずだ。そのぶんアナたちに食べてもらえばいいと思うかもしれないが、少なくとも一個は食べないとノノハの機嫌を損ねてしまう。
家に持ち帰って捨てる?いやいや、いくらノノハチョコでもそこまで酷い扱いするわけねぇだろ。拒否反応が出るとはいえ、あれはノノハが心を込めて作ったものだ。それを捨てるのは、温かい心を秘めたパズルを難しいからと言って投げ出すのと同じ。俺はそんなことは絶対にしない。
そんなよくわからないポリシーもあって、要するに俺はノノハチョコからは逃れられない運命にある。
しかし、今年は違った。
いや、ノノハが大量のチョコを作ってきて、天才テラスで皿の上に広げたところまでは予想通りだったのだが…
「はい、カイトにはこれ!」
そう言ってノノハが渡してきたのは皿の上のノノハチョコではなく、ピンクと黒のおしゃれな箱に入ったチョコ。
手作りというより既製品のような、そんな感じだ。まぁノノハスイーツ自体、見栄えはすごく立派だが…今受け取ったものは、皿の上のものとはデザインが違う。
「おい、なんでカイトにだけ別のチョコなんだよ」
「だってカイト、私の作ったチョコだと食べないでしょ?大丈夫、ギャモン君が今食べてるのはちゃんと手作りだから!」
「そ、そうか…」
不満げに尋ねたギャモンも、ノノハの返答を聞くと黙ってチョコを食べる作業に戻った。顔がほんのり赤いのはお約束だ。
しかし今のノノハの言葉からすると…これは本当に手作りじゃなく既製品なのか?確かに普段ノノハスイーツを勧められた時のような不快感や鳥肌は一切起こらない。
「…うん、バレンタインにチョコってベタだけど悪くないね」
「だからその上から目線はやめようよ、キューちゃん…」
生意気な発言のキュービックにノノハは口調こそ呆れ気味のそれだが、表情は相変わらず笑顔のまま。今年はチョコをたくさん広げても食べてくれる人がいるからか、ノノハの機嫌も上々。俺に手作りのものを食べさせるのは本当に諦めたようだ。
仕方ねぇ、食べてやるか。
箱の中からチョコを取り、口に含む。
ぱくっ、もぐもぐ…
すると、いつのまにか隣に来ていたアナが箱の中を覗き込んで、一言。
「アナが思うにこれ、ノノハが作ったチョコだよね?」
「…あ、やっぱりバレた?」
ごっくん。
………
………
…何ぃぃぃぃいっ!?
気付いた瞬間に食道から込み上げてくる、異様な何か。猛烈な吐き気が襲ってくるのに吐き出せず、うずくまって悶絶する。
「ノノハスイーツ、すごくおいしいのに…」
「でもカイトはノノハスイーツだと意識しなければちゃんと食べられることが証明された。いいデータが取れたよ」
「うん。それにカイトが自発的に食べてくれただけで私は幸せだよ」
「若干騙された感があるけどな…。本当、どこまでバカなんだか」
意識が吹き飛ぶ寸前、四人のそんな会話が聞こえた。
fin.
2012/02/14 公開
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