Phi-Brain
君の幸せな旅を祈ろう
六月九日。今日は僕の誕生日だ。
しかし今目の前に広がる賑わいは、普段から√学園で巻き起こっているそれと大して変わらないように思える。
違うのはクロスフィールド学院に通うフリーセルやレイツェルも今だけは√学園の天才テラスにいることと、僕の皿には綺麗に取り分けられたケーキがあること。苺と生クリームのケーキはそれだけでも僕にとっては珍しいものだけど、僕の皿だけに乗せられたチョコレート製のプレートが更に特別感を出していた。
それでも顔を上げれば、いつも通り談笑しながらパズルに興じる皆の姿があって、テーブルの上にはケーキ以外にも多種多様なスイーツが並んでいる。POGにいる僕からすれば十分珍しい光景でも、皆にとってはきっと日常と変わらない光景。
僕の隣にいたカイトが苦笑混じりに言った。
「なんか、ごめんな。誕生日パーティーのはずなのに結局皆パズル三昧で」
僕の視線や仕草から読み取ったのだろうか、僕はそんなに分かりやすいのか。以前グレートヘンジの見える丘で彼の幼馴染みと話した時のことをなんとなく思い出して、ふっと笑みが零れる。
普段はカイトの方がパズルバカだ何だと言われているはずなのに、よりにもよってそのカイトがパズル三昧な現状を謝るだなんて、彼女が知ったら何と言うだろう。
「構わないよ。久しぶりに会えばそれぞれ話したいことも見せたいパズルもあるだろうし。それにお祝いなら、パーティーの最初に十分祝ってもらったからね」
「そっか。それなら良いんだけど」
「カイトこそ、あそこに混ざらなくていいのかい?」
フォークを持ったまま指差した先では、先程思い浮かべた彼女が必死にパズルと格闘していた。
その横で心配そうに気を揉んでいるのはアントワネット。ガリレオも口を出さずにはいられないのか、後ろから覗き込んであれこれ言っている。フリーセルは穏やかに微笑んで見守っているけれど、レイツェルはそんな皆の様子が可笑しいのか笑いを堪えている。
皆、その気になれば代わりに解いてみせることもできるのだが、誰もそれをしない。カイトもその輪を眺めて、少しだけ目を細めた。
「あぁ。ノノハが頼ってきたら解いてやるけど、自分なりに弄ってみるのも大切だろ」
「そうだね。それもパズルを解く一つのプロセスだ」
「俺たちは、今でこそ初めて見たパズルでも解けるけど…それも昔、ジンがいろんなパズルを紹介してくれて、たくさん悩んで考えたからじゃないかって思ったんだ。カラープレースタワーや円魔方陣、一工夫ある迷路なんかもな」
カイトは懐かしむように話すと、一呼吸置いて続ける。
「だから、ノノハも…今は解けないかもしれないけど、こうやってパズルに触れていけばいつかはパズルができるようになるかもしれないだろ?」
その名前を聞いて、思わずカイトと彼女を見比べる。ノノハさんはこちらの話題には気付いていない様子で、見当違いの箇所を動かしていた。
「…随分長い道のりになりそうだね」
「……」
カイトは否定も肯定もしない。が、ノノハさんを呆れたように見てから、ふいに真剣な声音で僕に質問を投げる。
「POGだったら…ルークだったら、どう育てる?」
「えっ?」
「あいつ…俺がどこかで違う選択をしていたら、パズルが解けるようになっていたかもしれねぇ。例えば、POGのソルヴァーとか…。もしそうだったら、ルークはどうすんのかと思ってさ」
カイトの見ている先で、今度はダ・ヴィンチがケーキを口に運びながらノノハさんの手元を見ている。その隙にイワシミズ君と呼ばれるメカが残りのケーキを貰おうとして、即座にエジソンに止められた。周囲の賑やかさにノノハさんの気が逸れつつある。
あの様子だけを見れば、カイトの話はいくら親友でもにわかには信じがたいと思うだろう。パズルの苦手な彼女にそんな可能性が秘められているとは考えにくい。
だけど、カイトの口振りはいたって真面目だ。まるで見てきたかのように。
おそらく本当に、比喩でも何でもなくカイトは「見た」のだ。過去を変えていればあり得たかもしれない現在を。
そして「現在」を変えれば、それは未来に繋がる。
「そうだね…カイトよりは合理的に進めるかな」
「おい、俺よりって何だよ」
「当然のことじゃないか、POGはこれまで何年もソルヴァーを育ててきたんだから。それに、依頼者の望み通りのパズルを作るのが本来のPOGのギヴァーだからね、彼女に合わせた難易度のパズルを作るさ」
「あぁ…そう言われればそうだな」
「でも、」
視界の中心でダ・ヴィンチがノノハさんの手ごとパズルを両手に包み込んだ。フリーセルが思わず立ち上がり、ガリレオが怒鳴り、レイツェルがついに笑う。
「…でも、今ここにいるノノハさんは、ずっとカイトを追いかけて、カイトを近くで見てきたノノハさんだ。だから、カイトが思う通りにすればいい。僕の方法じゃなくカイトの方法に、彼女はついて行くだろうから」
彼女がパズルを壊すことはなかったものの、周囲はもう落ち着いて解き直すことが難しいくらいに騒がしい。
でも、今はそれがきっと楽しいのだろう。結局パズルは解けていないけれど、目の前にはカイトの大切にしたいきらめきが溢れている。もちろんそれは僕にとっても宝物のような瞬間だ。
「そっか…うん。そうだな。ノノハなら、きっと」
カイトが何かを決意したように頷く。それが未来へ向かうことだと感じて、僕はそっとポケットの中を探った。
誕生日は祝ってもらう日だと言われるけれど、同時に今の幸せに感謝する日でもある。だからこの機会に、僕はカイトに渡したい物があった。
「カイト」
「ん?」
「これ、もう一度作ってみたんだ」
取り出したのは組み木パズルのピース。幼い頃カイトに向けて作った、あの球体のパズル。
僕とカイトが戦った神のパズルで崩壊を遅らせるのに使われ、手元に残っていたのは僕たちの名前を彫った一つのピースだけ。それも「TO KAITO FROM ROOK」と彫ってあるのにオルペウスの腕輪から解放されて以来僕が預かっているという、一見すればあべこべな状況になっていた。だから今回、爆発で壊れたものも含めた残りのピースを作り直してきたわけだ。
現存する一つのピースだけでも、仮にそれが無かったとしても、僕たちの思い出や絆は無くなったりしない。分かっていて、それでも渡したかったのは――
「このピース、前より少しだけ改良したんだ」
「お、そういえば…飾りが付いてる?」
カイトが大きいピースに嵌め込まれた白い石を不思議そうに撫でる。それは光を反射して、白の中に一筋だけ青を見せた。
「ムーンストーン。ヨーロッパでは旅人の石って言われているそうだ」
「旅人?」
「あぁ。今すぐにとはいかなくても…考えているんだろう?」
カイトの瞳が揺れる。カイトにこれからのことを詳しく聞いたことはなかったけれど、僕の予想は当たったらしい。
ジンはかつて愚者のパズルに挑む一方で、パズルの楽しさを広める活動もしていた。ジンを尊敬していて、パズルが好きで、パズルが楽しくて仕方ないカイトなら…ジンの志を受け継ぎパズルの楽しさを直接伝えていく道も、少なからず考えているだろう。
もちろんカイトがPOGに入ってくれたらこれほど心強いことはないのだけれど、それを僕が強制することはできない。POGの管理官としても、そしてカイトの親友としても。決めるのは、カイトだ。
「…やっぱルークには敵わねぇな」
カイトは照れくさそうに笑うと、パズルのピースを一つずつ丁寧に組んでいく。ちらりと皆の方を見て、誰もこちらに注目していないことを確かめてから、小さな声で話し出す。
「ジンと約束しただろう?パズルを作るって。ジンと一緒に解く、パズルを」
「そうだね」
「…それが完成したら、行くつもりだ」
「完成、か…」
かちり、とピースが嵌まる音がわずかに聞こえる。一度解いたことのある形だからか迷うこともほとんどないまま、カイトの手の中では球体が出来上がっていた。
ギヴァーにとってパズルは「作って終わり」ではない。どんなに難しいパズルでも作ったからには理解してほしい、解いてもらいたいものだ。解いてもらってこそ、パズルは完成する。
だが、ジンと約束したパズルの場合はどうだろう。一緒に解くことを望んだソルヴァーは、もうこの世にはいない。
「だからさ、ルーク」
僕のパズルを完成させたカイトは再び顔を上げると、賑わいの中心を見つめたまま、穏やかに言葉を紡ぐ。
「俺が作った後…パズルがちゃんと『完成』するように、サポートしてやってくれよ」
誰を、とは明言しなかった。けれどカイトの横顔を見る限り、カイトの中でソルヴァーは既に決まっているように思えた。
そしてまだ見ぬパズルが解かれる時、それを作った本人はおそらく彼女のそばにいないことも。
だけどそれは決して悪いことではなくて、彼女がパズルを解いて彼に追いついた時…パズルが本当の意味で「完成」した時、初めて二人の旅は始まるのだということ。
「もちろんだよ、カイト。パズルとソルヴァーの管理は、POGの専門だからね」
願わくば親友と彼の大切な人の旅が、充実したものであるように。
ファイ・ブレインに最も近付いたカイトだ、その力を狙う者が今後現れないとは限らないけれど…それでもノノハさんがそばにいることで、二人の身が安全であるように。
いつか見た明るい光の未来を信じて、どこまでも行けるように。
約束という名の光栄な誕生日プレゼントを胸の奥へ大切にしまいながら、僕は二人の幸せを祈らずにはいられなかった。
fin.
6月の誕生石:ムーンストーン
2019/06/09 公開
六月九日。今日は僕の誕生日だ。
しかし今目の前に広がる賑わいは、普段から√学園で巻き起こっているそれと大して変わらないように思える。
違うのはクロスフィールド学院に通うフリーセルやレイツェルも今だけは√学園の天才テラスにいることと、僕の皿には綺麗に取り分けられたケーキがあること。苺と生クリームのケーキはそれだけでも僕にとっては珍しいものだけど、僕の皿だけに乗せられたチョコレート製のプレートが更に特別感を出していた。
それでも顔を上げれば、いつも通り談笑しながらパズルに興じる皆の姿があって、テーブルの上にはケーキ以外にも多種多様なスイーツが並んでいる。POGにいる僕からすれば十分珍しい光景でも、皆にとってはきっと日常と変わらない光景。
僕の隣にいたカイトが苦笑混じりに言った。
「なんか、ごめんな。誕生日パーティーのはずなのに結局皆パズル三昧で」
僕の視線や仕草から読み取ったのだろうか、僕はそんなに分かりやすいのか。以前グレートヘンジの見える丘で彼の幼馴染みと話した時のことをなんとなく思い出して、ふっと笑みが零れる。
普段はカイトの方がパズルバカだ何だと言われているはずなのに、よりにもよってそのカイトがパズル三昧な現状を謝るだなんて、彼女が知ったら何と言うだろう。
「構わないよ。久しぶりに会えばそれぞれ話したいことも見せたいパズルもあるだろうし。それにお祝いなら、パーティーの最初に十分祝ってもらったからね」
「そっか。それなら良いんだけど」
「カイトこそ、あそこに混ざらなくていいのかい?」
フォークを持ったまま指差した先では、先程思い浮かべた彼女が必死にパズルと格闘していた。
その横で心配そうに気を揉んでいるのはアントワネット。ガリレオも口を出さずにはいられないのか、後ろから覗き込んであれこれ言っている。フリーセルは穏やかに微笑んで見守っているけれど、レイツェルはそんな皆の様子が可笑しいのか笑いを堪えている。
皆、その気になれば代わりに解いてみせることもできるのだが、誰もそれをしない。カイトもその輪を眺めて、少しだけ目を細めた。
「あぁ。ノノハが頼ってきたら解いてやるけど、自分なりに弄ってみるのも大切だろ」
「そうだね。それもパズルを解く一つのプロセスだ」
「俺たちは、今でこそ初めて見たパズルでも解けるけど…それも昔、ジンがいろんなパズルを紹介してくれて、たくさん悩んで考えたからじゃないかって思ったんだ。カラープレースタワーや円魔方陣、一工夫ある迷路なんかもな」
カイトは懐かしむように話すと、一呼吸置いて続ける。
「だから、ノノハも…今は解けないかもしれないけど、こうやってパズルに触れていけばいつかはパズルができるようになるかもしれないだろ?」
その名前を聞いて、思わずカイトと彼女を見比べる。ノノハさんはこちらの話題には気付いていない様子で、見当違いの箇所を動かしていた。
「…随分長い道のりになりそうだね」
「……」
カイトは否定も肯定もしない。が、ノノハさんを呆れたように見てから、ふいに真剣な声音で僕に質問を投げる。
「POGだったら…ルークだったら、どう育てる?」
「えっ?」
「あいつ…俺がどこかで違う選択をしていたら、パズルが解けるようになっていたかもしれねぇ。例えば、POGのソルヴァーとか…。もしそうだったら、ルークはどうすんのかと思ってさ」
カイトの見ている先で、今度はダ・ヴィンチがケーキを口に運びながらノノハさんの手元を見ている。その隙にイワシミズ君と呼ばれるメカが残りのケーキを貰おうとして、即座にエジソンに止められた。周囲の賑やかさにノノハさんの気が逸れつつある。
あの様子だけを見れば、カイトの話はいくら親友でもにわかには信じがたいと思うだろう。パズルの苦手な彼女にそんな可能性が秘められているとは考えにくい。
だけど、カイトの口振りはいたって真面目だ。まるで見てきたかのように。
おそらく本当に、比喩でも何でもなくカイトは「見た」のだ。過去を変えていればあり得たかもしれない現在を。
そして「現在」を変えれば、それは未来に繋がる。
「そうだね…カイトよりは合理的に進めるかな」
「おい、俺よりって何だよ」
「当然のことじゃないか、POGはこれまで何年もソルヴァーを育ててきたんだから。それに、依頼者の望み通りのパズルを作るのが本来のPOGのギヴァーだからね、彼女に合わせた難易度のパズルを作るさ」
「あぁ…そう言われればそうだな」
「でも、」
視界の中心でダ・ヴィンチがノノハさんの手ごとパズルを両手に包み込んだ。フリーセルが思わず立ち上がり、ガリレオが怒鳴り、レイツェルがついに笑う。
「…でも、今ここにいるノノハさんは、ずっとカイトを追いかけて、カイトを近くで見てきたノノハさんだ。だから、カイトが思う通りにすればいい。僕の方法じゃなくカイトの方法に、彼女はついて行くだろうから」
彼女がパズルを壊すことはなかったものの、周囲はもう落ち着いて解き直すことが難しいくらいに騒がしい。
でも、今はそれがきっと楽しいのだろう。結局パズルは解けていないけれど、目の前にはカイトの大切にしたいきらめきが溢れている。もちろんそれは僕にとっても宝物のような瞬間だ。
「そっか…うん。そうだな。ノノハなら、きっと」
カイトが何かを決意したように頷く。それが未来へ向かうことだと感じて、僕はそっとポケットの中を探った。
誕生日は祝ってもらう日だと言われるけれど、同時に今の幸せに感謝する日でもある。だからこの機会に、僕はカイトに渡したい物があった。
「カイト」
「ん?」
「これ、もう一度作ってみたんだ」
取り出したのは組み木パズルのピース。幼い頃カイトに向けて作った、あの球体のパズル。
僕とカイトが戦った神のパズルで崩壊を遅らせるのに使われ、手元に残っていたのは僕たちの名前を彫った一つのピースだけ。それも「TO KAITO FROM ROOK」と彫ってあるのにオルペウスの腕輪から解放されて以来僕が預かっているという、一見すればあべこべな状況になっていた。だから今回、爆発で壊れたものも含めた残りのピースを作り直してきたわけだ。
現存する一つのピースだけでも、仮にそれが無かったとしても、僕たちの思い出や絆は無くなったりしない。分かっていて、それでも渡したかったのは――
「このピース、前より少しだけ改良したんだ」
「お、そういえば…飾りが付いてる?」
カイトが大きいピースに嵌め込まれた白い石を不思議そうに撫でる。それは光を反射して、白の中に一筋だけ青を見せた。
「ムーンストーン。ヨーロッパでは旅人の石って言われているそうだ」
「旅人?」
「あぁ。今すぐにとはいかなくても…考えているんだろう?」
カイトの瞳が揺れる。カイトにこれからのことを詳しく聞いたことはなかったけれど、僕の予想は当たったらしい。
ジンはかつて愚者のパズルに挑む一方で、パズルの楽しさを広める活動もしていた。ジンを尊敬していて、パズルが好きで、パズルが楽しくて仕方ないカイトなら…ジンの志を受け継ぎパズルの楽しさを直接伝えていく道も、少なからず考えているだろう。
もちろんカイトがPOGに入ってくれたらこれほど心強いことはないのだけれど、それを僕が強制することはできない。POGの管理官としても、そしてカイトの親友としても。決めるのは、カイトだ。
「…やっぱルークには敵わねぇな」
カイトは照れくさそうに笑うと、パズルのピースを一つずつ丁寧に組んでいく。ちらりと皆の方を見て、誰もこちらに注目していないことを確かめてから、小さな声で話し出す。
「ジンと約束しただろう?パズルを作るって。ジンと一緒に解く、パズルを」
「そうだね」
「…それが完成したら、行くつもりだ」
「完成、か…」
かちり、とピースが嵌まる音がわずかに聞こえる。一度解いたことのある形だからか迷うこともほとんどないまま、カイトの手の中では球体が出来上がっていた。
ギヴァーにとってパズルは「作って終わり」ではない。どんなに難しいパズルでも作ったからには理解してほしい、解いてもらいたいものだ。解いてもらってこそ、パズルは完成する。
だが、ジンと約束したパズルの場合はどうだろう。一緒に解くことを望んだソルヴァーは、もうこの世にはいない。
「だからさ、ルーク」
僕のパズルを完成させたカイトは再び顔を上げると、賑わいの中心を見つめたまま、穏やかに言葉を紡ぐ。
「俺が作った後…パズルがちゃんと『完成』するように、サポートしてやってくれよ」
誰を、とは明言しなかった。けれどカイトの横顔を見る限り、カイトの中でソルヴァーは既に決まっているように思えた。
そしてまだ見ぬパズルが解かれる時、それを作った本人はおそらく彼女のそばにいないことも。
だけどそれは決して悪いことではなくて、彼女がパズルを解いて彼に追いついた時…パズルが本当の意味で「完成」した時、初めて二人の旅は始まるのだということ。
「もちろんだよ、カイト。パズルとソルヴァーの管理は、POGの専門だからね」
願わくば親友と彼の大切な人の旅が、充実したものであるように。
ファイ・ブレインに最も近付いたカイトだ、その力を狙う者が今後現れないとは限らないけれど…それでもノノハさんがそばにいることで、二人の身が安全であるように。
いつか見た明るい光の未来を信じて、どこまでも行けるように。
約束という名の光栄な誕生日プレゼントを胸の奥へ大切にしまいながら、僕は二人の幸せを祈らずにはいられなかった。
fin.
6月の誕生石:ムーンストーン
2019/06/09 公開
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