Phi-Brain
それは平和な朝のこと
「カイト、早くしないと学校遅刻するよ!」
そう言われてまだ眠い目を開けた俺の視界には、見覚えのある青いサングラスをかけたノノハがいた。
「朝からうるせーよ…って、なっ!?」
予想外の出来事に俺は即座に飛び起きる。
ノノハが部屋にいること自体は、俺にとっては普通のことだ。寝過ごしそうな時はよく起こしに来るし、時には助っ人で呼ばれた朝練を終わらせてわざわざ戻って来たこともあるくらいだから。
ただ違うのは…
「なんで俺のサングラスをノノハがかけてんだよ…!」
「あぁこれ?今日の占いで『ラッキーアイテムはサングラス』って言ってたからさぁ、一日貸して?」
ノノハはそう言うと、顔の前で手を合わせて小首をかしげる。ポニーテールがさらりと揺れて、思わずどきりとした。
占いとかラッキーアイテムとか、くだらねぇ。いつもの俺ならそう思う、はずなのに。
「勝手にしろ」
口をついて出たのは、そんな言葉。
ぶっきらぼうな言い方になっちまったが、そこはさすが幼馴染み。全く意に介さず、一気に笑顔になった。たかがサングラスでそんなに嬉しいのかよ。
思わずくすっと笑いそうになった、次の瞬間。
「そうだ、カイトの今日のラッキーアイテムは腕時計だって!ってことで、はい」
その言葉と共に差し出されたのは、いつもノノハが左腕に付けている腕時計。ピンク色の、見るからに女子が付けるような奴。
「はぁ!?いらねぇよ!」
「えぇー、これ付けてればキューちゃんから実験用の腕輪を付けられることも無いかもよ?」
「必要ねぇ」
「ギャモン君との早食い対決にも勝てるはず!」
「実力で勝つからいい」
「それじゃあ、えーっと…」
まだ何かくだらない理由を考えている様子のノノハ。これじゃ埒が開かない。そう判断した俺は、昨日から床に置きっぱなしのブックバンドを掴んで部屋を出た。主要な教科は揃っているから、束ねてある教科書やノートもそのままでいいだろう。
「あっ、カイト!?」
慌てて追いかけてくる足音。
振り返りはしない、けれど、決して嫌いじゃない。
そんな何でもない朝のやりとり。
fin.
2011/11/10 公開
「カイト、早くしないと学校遅刻するよ!」
そう言われてまだ眠い目を開けた俺の視界には、見覚えのある青いサングラスをかけたノノハがいた。
「朝からうるせーよ…って、なっ!?」
予想外の出来事に俺は即座に飛び起きる。
ノノハが部屋にいること自体は、俺にとっては普通のことだ。寝過ごしそうな時はよく起こしに来るし、時には助っ人で呼ばれた朝練を終わらせてわざわざ戻って来たこともあるくらいだから。
ただ違うのは…
「なんで俺のサングラスをノノハがかけてんだよ…!」
「あぁこれ?今日の占いで『ラッキーアイテムはサングラス』って言ってたからさぁ、一日貸して?」
ノノハはそう言うと、顔の前で手を合わせて小首をかしげる。ポニーテールがさらりと揺れて、思わずどきりとした。
占いとかラッキーアイテムとか、くだらねぇ。いつもの俺ならそう思う、はずなのに。
「勝手にしろ」
口をついて出たのは、そんな言葉。
ぶっきらぼうな言い方になっちまったが、そこはさすが幼馴染み。全く意に介さず、一気に笑顔になった。たかがサングラスでそんなに嬉しいのかよ。
思わずくすっと笑いそうになった、次の瞬間。
「そうだ、カイトの今日のラッキーアイテムは腕時計だって!ってことで、はい」
その言葉と共に差し出されたのは、いつもノノハが左腕に付けている腕時計。ピンク色の、見るからに女子が付けるような奴。
「はぁ!?いらねぇよ!」
「えぇー、これ付けてればキューちゃんから実験用の腕輪を付けられることも無いかもよ?」
「必要ねぇ」
「ギャモン君との早食い対決にも勝てるはず!」
「実力で勝つからいい」
「それじゃあ、えーっと…」
まだ何かくだらない理由を考えている様子のノノハ。これじゃ埒が開かない。そう判断した俺は、昨日から床に置きっぱなしのブックバンドを掴んで部屋を出た。主要な教科は揃っているから、束ねてある教科書やノートもそのままでいいだろう。
「あっ、カイト!?」
慌てて追いかけてくる足音。
振り返りはしない、けれど、決して嫌いじゃない。
そんな何でもない朝のやりとり。
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2011/11/10 公開
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