だって今日は俺たち日和
そこは、誰もが集う夢の場所。
温かな空気に包まれ、ゆっくりと体を休め、ひとときの憩いを味わう。
遊ぶ場所もあれば食事を楽しむ場所もある、まさに夢のような施設といえば、そう―――
スーパー銭湯である。
みどりとモチに挟まれ、その前まで連れてこられたクロトガは、何故こんなことになったのかと、今日の流れを思い出していた……。
***
いつものようにバイトを終えたボーイ三人は、ぞろぞろと船から下り、商会の中にある更衣室へと向かっていく。
その足取りは重いが、気持ちは軽い。なんせ苛烈なシフトのおかげで、今日もたっぷり稼げたわけなのだから。
とはいえ、彼らの表情に疲労は色濃く、すっかりバテているのが見てとれた。
「バケツ二つでどうやってバクダン狙うんだよ……」
クロトガは余ったスペシャルパウチをやれやれと外し、
「でもおれ、ヒッセン持てて楽しかったなぁ」
モチはスペボウをレプリカに被り直し、
「てかさーあのブキ編成でグリル来るとか辛すぎね?」
みどりがツナギを脱ぎ、ロッカーに突っ込む。
「ヒカリバエの時はまだ良かったけどな……もうバケツ持ちたくねえ」
クロトガはスペボウを脱ぐと、ダテコンタクトをさっさと入れ直した。
「やっぱチャーなきゃダメだな。いっそスコープこねえかな……」
「いやシャケでスコープ持ちたいとかいうのクロトガくんくらいでしょ……絶対おかしいって……」
みどりがいかにもドン引きと言いたげな顔をしてから、
「俺がチャー苦手だから持ってくれるのは助かるけどさ~……あ、そういえばローラーあるシフトって次?」
「だな……あ、パブロあるからオレ不参加な」
「ええー!!!」
「そういえばさ~」
一足先に着替え終えたモチが、二人の着替えが終わるのを待ちながら、ふと思い出したように言う。
「クロトガくん、スペシャルがハイプレだとちょっとだけテンション高いよねえ~」
モチにそう言われ、クロトガはジャケットを羽織りながら、ちょっと顔をしかめた。
「……悪いか?」
「ううん?好きなんだな~と思って」
モチは悪気のない顔でそう言って、首を傾げてみせる。
「へえ~クロトガくんハイプレ好きなんだ~覚えとこ~」
にやにやと笑うみどりを、クロトガは赤い瞳で睨んだ。
「忘れろ。今すぐ忘れろ」
「否定しないんだ~、あっ蹴らないで暴力反対!!」
「おれは、どのスペシャルでもいいんだけどさ~、こう……」
じゃれ合う二人をよそに、モチは体の前で、わちゃわちゃと手を動かす。
「フクの隙間に、こう、パウチを詰めて……四つぐらい持っていきたいなって……」
「わかる」
「それはわかる。めっちゃわかる」
クロトガもみどりも同意し、モチは「だよねえ~」とのんびりうなずいた。
「パウチもだけどさー、インクタンクの容量もっと欲しくない?特にヒカリバエのときとかインク回復してる暇ないって」
「それはちゃんとインク管理しろ」
「クロトガくん相変わらず俺にだけ冷たくない!?なんで!?」
「あーあーウルセェウルセェ」
喋りながら、二人も着替え終える。それを見て、待っていたモチはぱっと顔を輝かせた。
「わーい、一緒に報酬貰いにいこ~」
「……先に行ってても良かったんだぞ」
クロトガが少し遠慮がちに言うと、モチはへらりと笑ってみせた。
「おれが待ってたかったから気にしないで~。またカプセル落としちゃうかもだし……」
「ん……わかった、また手伝ってやるよ」
「今日もいっぱい貰ったもんな!報酬で何買おっかな~」
三人がぞろぞろと更衣室から出ると、
『やあ、キミたち。お疲れさま』
木彫りの彫像から声がして、三人は横並びになるように、その前に立った。
この謎の仕事場……もとい、ホワイトで健全で、ナイスが飛び交う良い職場を取り仕切る、クマサンからの音声だ。
『報酬を渡すついでに、ちょっと頼まれてくれないか』
「どうしたの?」
「なになに?なんかあった?クマサン」
「……」
『実はね……』
クマサンの話し始めた内容に、ボーイ三人はそれぞれ、思い思いの表情を浮かべた。
***
「オレは行かねえぞ」
「えーーーーーーー!!!!!!!!」
クマサンから貰った『スーパー銭湯・クマサン』のチケットを握りしめたまま、みどりはショックだと言わんばかりの表情で叫ぶ。
「うるせえぞ緑頭……」
「だ、だってさー!せっかくクマサンがチケット三枚くれたんだし……クロトガくんも一緒に行こうって!」
みどりは両手でぐいぐいクロトガの腕を引っ張る。が、クロトガは微動だにしない。
モチも手伝って……ではなく、仲間に混ざろうと腕を引っ張るが、やはりクロトガは動かなかった。
「あのクマサンが開いたスーパー銭湯なんて、怪しいにもほどがあんだろ……」
「ええ~、でも楽しそうだよ」
モチのポケットからは、クマサンから渡されたスーパー銭湯のパンフレットが覗いている。
銭湯はもちろん、サウナ、休憩どころ、レストラン、プール(イカ用)、ゲームセンター、などなど……ちょっとしたレジャー施設並のラインナップが書かれていたのは、さっき三人で見たばかりだ。
いったいいつの間にこんなの建てたんだ。いや本当に。
「最近オープンしたって話だしさ、建物も綺麗だって言ってたじゃん!」
「オレはそういう話をしてるんじゃなくてだな……」
「いつもバイト終わったらハイ解散!ってなってるしさ!」
言葉の合間合間にも、みどりはぐいーっとクロトガの腕を引っ張る。
「俺はもうちょっとクロトガくんと遊びたいんだって~!」
「あのなぁ……」
駄々をこねる子供のような動きをするみどりに、クロトガは呆れたような視線を向けた。
「オレは遊びでバイトやってるわけじゃねえんだぞ」
「じゃあバイト終わったし遊んでください!!!」
「やだ」
「俺もやだーーー!!!!!」
最早みどりはなりふり構わないつもりらしく、クロトガの腕にしっかりとしがみついている。こいつ最近遠慮無くなってきたなぁと思いながら、クロトガは黙ってみどりを引き剥がそうとした。
それを楽しそうに眺めていたモチだったが、ふと思いついたような顔で、
「もしかしてクロトガくん、お風呂嫌い?」
「……いや、そういうわけじゃねえけど……」
そう言われて、クロトガはちょっと眉をしかめた。
「嫌いなら無理しなくてもいいよ~、お風呂はおれとみどりくんで行ってくるし……」
「いやちゃっかり風呂以外行くの確定にすんな」
「あ、ばれた?」
えへへ、とモチが頭をかいていると、みどりが勢いに任せろといわんばかりに、
「カラオケもあるって!!!!!」
「いや行かねえっつってんだろ……」
クロトガは溜め息を吐いてから、やがてバツが悪そうな表情をしてみせる。
「……入れねえんだよ」
「え?」
「入れないって、何が?」
「……風呂」
クロトガの言葉に、みどりとモチは顔を見合わせる。
「でもタッ……インクリングでも入れるようになってるって、クマサン言ってたじゃん?」
「おぼれたりしないから大丈夫だよ~」
「いや、そうじゃなくてだな……」
何故か励ますように言う二人に対して、クロトガは言いづらそうにしながら、
「……タトゥー入れてんだよ、体に」
「「タトゥー」」
みどりとモチは思わず呟く―――と、同時にわっと顔を輝かせた。
「えっ、めっちゃイカしてんじゃん!!どこに入れてんの、見たことないけど!!」
「わー!どんなのどんなの?」
目を輝かせて食いつく二人に対し、クロトガはちょっと目を丸くしてから、軽く唇を尖らせる。
「……サメモチーフのやつ……腰んとこに入れてる」
「「わー!!!」」
「…………」
引き続きテンションの上がるボーイ二人に、クロトガはほんのちょっとだけ、照れくさそうな表情を見せた。
「いいなー!!えってかマジで見たことないんだけど!」
「基本インナー脱がねえからな……あんま見せるもんでもねえし」
「あ、でもそっか……」
みどりと一緒に盛り上がっていたモチが、はっと気付いたような顔をする。
「おっきいお風呂って、刺青してるひと入っちゃだめなんだっけ?」
「えっ、そうなの!?」
驚くみどりに、クロトガは軽く肩をすくめてみせる。
「だから言っただろ、入れねえって。いいから二人で行ってこいって」
「ええー、別に気にしなくて良くない?」
みどりはようやくクロトガの腕から離れたかと思うと、片手で自分の前髪をかき上げてみせた。
「俺だって眉ピ空けてるしさぁ、ほらほら!」
みどりの左眉に光るピアスを見て、クロトガは呆れたような顔をする。
「お前……親から貰った体は大事にしろよ」
「それクロトガくんが言う~?!」
「大体、タトゥーとピアスは違うだろうが」
「ええ~……」
「二人ともいいなぁ……」
二人のやりとりを見ていたモチが、羨ましそうに言った。
「おれもそういうの付けようかな」
「「……いや、それはちょっと」」
みどりとクロトガの声が、思わず重なる。
「俺が言うのもなんだけど、これけっこ~痛いよ?安定するのに大分かかったし」
「そうなの?」
モチは背伸びして、みどりの眉ピアスを見せてもらう。
「あ~、確かにちょっと痛そう?」
「俺自分で開けたんだけどさー、気付いたら血とか出ててちょーびっくりした!」
前髪をかきあげたまま、みどりがあっけらかんと笑った。
クロトガは軽くこめかみを押さえて、
「あー……モチには今度、タトゥーシールとか探してやるよ。フクで隠れる位置に貼れるやつな」
「わ~!やった~!」
「えっ俺には?!」
「眉ピしてんじゃねえのかよ……」
呆れた表情を浮かべるクロトガに、みどりは納得いかないと言いたげに、
「ピアスとタトゥーは違うじゃん??」
「それはさっきオレが言ったんだろうが……」
「わかった、わかった。じゃあこうしよう」
みどりは突然、何やら真剣な表情になると、きりっとした良い顔で言った。
「スパ銭行かないんなら腰のタトゥー見せてください」
「…………」
クロトガは黙ってみどりの胸ぐらを掴む。
「アーーーーーーー!!!!!暴力反対!!!モチくん助けて!!!!!!!!」
「ちょっと待ってね~」
モチは何かを思いついたらしく、取り出したイカフォンを、ぽちぽちと操作し始める。
クロトガはじたばたするみどりを放してやってから、モチの様子を覗き込みに行った。
「何してんだ、モチ」
「ん~……あ!」
モチはぱっと嬉しそうな顔をして、画面から顔を上げ、クロトガを見上げた。
「クロトガくん!クマサンに教えてもらったとこ、タトゥー入ってるイカも大丈夫だって~」
「…………」
モチは無邪気な表情で、にこにこと笑っている。
何とも言えない顔をするクロトガに、いつの間にか横にやってきていたみどりが、にんまりと笑ってみせた。
「行くしかなくな~い?」
「ちくしょう、にやけやがって……」
クロトガはみどりの脇腹を、軽くこづいてやった。
***
かぽーん……
「あ~……良いお湯だね……」
「良いお湯だね~」
「…………」
かくして結局スーパー銭湯に連れてこられたクロトガは、大人しく湯船につかることになった。
お湯の温度はちょうどいいし、やたらと混んでいるわけでもないし、真新しくて綺麗で、とにかく快適な空間ではある。あるのだが。
「…………」
「どしたの~クロトガくん」
腕組みをしたまま、憮然とした表情のクロトガに、モチが不思議そうな顔で話しかける。
クロトガは表情を変えないまま、
「落ち着かねえ……」
「もしかして銭湯初めてとか~?」
頭にタオルを載せたみどりが、湯船の縁に寄りかかりながら言った。
「俺もあんま来たことないけどさ~、でっかいお風呂楽しくない?」
「いや……」
クロトガは小さく首を振った。
「……落ち着かねえ……」
低い声でそう言うばかりのクロトガに、モチは「そっかあ」と、納得したようにうなずいた。
「じゃあ、あったまったら出よっか~」
「あったまるまで話しようぜ!」
みどりは相変わらずのテンションで、「そういえばさ」と早速話題を持ち出し始める。
「クロトガくんとこないだ一緒に歩いてた子って誰?もしかしてカノジョ?」
「……は?」
クロトガは呆気にとられたような表情で、みどりの方を見た。
「なんかめっちゃ仲良さそうだったじゃん。二人でなんか話ながら歩いててさ~」
「……待て、どんな女だ」
眉をしかめるクロトガに、みどりは思い出すように視線を上げる。
「えーと、アシメゲソで目がくりっとしか可愛い感じの子?」
「…………」
心当たりはある。というか一人しかいない。
あいつがカノジョとかふざけるなよと、クロトガが言いかけたところで、
「もしかして、イリコちゃんじゃない?」
と、モチがみどりの真似をして頭にタオルを載せながら言った。
「え、モチくん知ってんの?」
「うん~、こないだクロトガくんとナワバリしたときに会ってねえ」
そう言いながら、モチは自分のほっぺたを両手で持ち上げてみせる。
「いっぱいモチモチされたよ」
「モチモチ」
「モチモチ」
「モチモチ……」
みどりは、おもむろにモチのほっぺたを持ち上げた。
「うわモチくんのほっぺたすっごいモチモチじゃね?!!ねえクロトガくんすっごいよこれ!!!」
「ふふふ~」
「……お前ら、遊んでてのぼせんなよ……」
クロトガは呆れたように言いながら、肩までお湯に浸かった。
「んでどうなの?付き合ってんの?」
「ふざけんな、ただのチームメイトだよ」
にやにやと笑うみどりを、クロトガはぎろりと睨む。
「言っとくがもみ……イリコに会っても変なこと言うなよ。マジでぶっ飛ばすからな」
「へっへ~ん、でも俺何だかんだで今までクロトガくんに殴られたことな、あっごめんなさい俺が悪かったです拳を振りかぶらないで」
「あったまってきたねえ~」
頭にタオルを載せたまま、モチがマイペースにそう言って笑った。
しばらくして湯船から出た三人は、瓶詰めのドリンクをそれぞれ買って飲み干す。
「ぷっはー!!!生きてるって感じする~!」
「おいしいね~」
「飲んだら帰るぞ」
クロトガは一気にコーラをあおると、空き瓶をゴミ箱に放り捨てた。
みどりは不満げな表情で、
「ええ~、もうちょっと遊んでこーよ~」
「オレは風呂までしか付き合わねーぞ」
「じゃあまた今度来よう~」
モチがメロンソーダを飲みながら、二人に向かってそう言った。
「おれプール行ってみたいなぁプール」
「あっ、いいなプール!」
みどりがぱっと顔を輝かせて、ソーダを持ったまま話題に飛びつく。
「じゃあ今度水着持って集合な!おやつは三百円まで!」
「わ~い!」
「…………」
どんどん勝手に話が進む。
今更行かないと言うのも面倒になってきて、クロトガは溜め息で返事をした。
「あ、そうだ!今度友達連れてきていい?」
みどりがはしゃいだような表情で、二人に向かってそう訊ねる。
「ハチっていうんだけどさ~」
「……ハチ?」
知り合いと同じ名前を聞いて、クロトガはちょっと怪訝そうな表情を浮かべた。
「あれ、話したことなかったっけ?タっ……クロトガくんと同じ感じの髪型なんだけどさ」
「…………」
ハチという名前のタコなら、クロトガも知っている……が、恐らくみどりの言っているタコとは別のはずだ。
よくある名前なのだろうかとクロトガが考えていると、モチが嬉しそうな顔をして、
「あ、じゃあおれも今度友達連れてくるよ~。ロジくんっていうんだ~」
「……好きにしろ」
クロトガは考えるのを止めて、ぶっきらぼうにそう言った。
地上に出てきたタコも好きではない……というか嫌いだが、彼らにいちいちそれを言うこともない。
そう思っていると、突然みどりが思いがけないことを言い出した。
「クロトガくんも友達連れてくれば?」
「……は?」
みどりの言葉に、クロトガは思わず目を丸くする。
「そのイリコちゃんて子でもいいけどさ、せっかくだから男子で集まってなんかやろーぜ!そんでみんなで遊んだら絶対楽しいって!」
「……友達っつってもだな……」
クロトガは困惑しながら、視線を揺らす。
イカにも、タコにも、友達なんていない。
そんなことに付き合ってくれる知人に、心当たりも―――。
「…………」
「クロトガくん?」
「……考えとく」
クロトガは、呟くようにして言った。
***
「はいはいおれですよ~。おっ、クロくんやん!どないしたん急に。え?遊びに?最近できたフレンドと?え~、楽しそうやん、いいねいいね……え?おれも一緒に?いやいやええけども!珍しいな~、おれ誘ってくれるなんて……ん?ああ、はいはいわかってますよって。余計なことは言わんからに……いやいやおれは嬉しいさかいに、気にせんでいいよ~。はいはい、そんじゃあ日付とか決まったら教えてね。うん、ありがとー!ほんじゃまたな~」
電話を終え、マサバはイカフォンの画面を見ながら、思わず微笑んだ。
「どうしたの?」
「んー……クロくんから電話やったんやけどね」
不思議そうな表情を浮かべるアオに、マサバはにこにことしながら説明する。
「今度フレンドと遊ぶから付き合わんかって誘われてん」
「……クロトガが?フレンドと?」
「そ。びっくりやろ?」
口ではそう言うマサバだが、彼はひたすらに嬉しそうな顔をしていた。
アオはしばらくぽかんとしてから、そっと目を細める。
「……嬉しそうね、あなた」
「ん?うん、そやね」
マサバはにへらっと笑ってみせる。
「友達が楽しそうなんは、ええことやん?」
「……そうね」
アオは小さくうなずいて、それ以上何も言わなかった。
***
「リグマって行くなら4人だよな?ハチ一緒に行ってくれっかな~」
「そういえばおれも行ったことないなあ~」
「行くならお前らがXまで上がってからな」
「え゛」「えっ」
「じゃねえとリグマは付き合わねえぞ」
「も、モチくん……!!」
「う~ん、一緒にがんばろっかみどりくん」
「どうせリグマじゃ四人しか行けねえだろ。人数いるならレギュラーかプラベだな」
「あ、プラベって八人じゃなくてもいいんだ!」
「とりあえずオレの知り合いは確保したから、あとはお前らの……トモダチとやらと予定合わせてこいよ」
「クロトガくんのおともだちってどんなひと~?」
「……眼鏡」
「えっそこ??他にないの??」
「うるせぇな、タトゥーシール買いに行くんじゃねえのか」
「あ、そうそう!おれね~クロトガくんがしてたみたいなかっこいいやつがいいな~」
「俺も俺も!こう、腕にどかーんて貼りたい、どかーんて!!」
「……ったく……しょうがねえな……」
<……おわり?>
温かな空気に包まれ、ゆっくりと体を休め、ひとときの憩いを味わう。
遊ぶ場所もあれば食事を楽しむ場所もある、まさに夢のような施設といえば、そう―――
スーパー銭湯である。
みどりとモチに挟まれ、その前まで連れてこられたクロトガは、何故こんなことになったのかと、今日の流れを思い出していた……。
***
いつものようにバイトを終えたボーイ三人は、ぞろぞろと船から下り、商会の中にある更衣室へと向かっていく。
その足取りは重いが、気持ちは軽い。なんせ苛烈なシフトのおかげで、今日もたっぷり稼げたわけなのだから。
とはいえ、彼らの表情に疲労は色濃く、すっかりバテているのが見てとれた。
「バケツ二つでどうやってバクダン狙うんだよ……」
クロトガは余ったスペシャルパウチをやれやれと外し、
「でもおれ、ヒッセン持てて楽しかったなぁ」
モチはスペボウをレプリカに被り直し、
「てかさーあのブキ編成でグリル来るとか辛すぎね?」
みどりがツナギを脱ぎ、ロッカーに突っ込む。
「ヒカリバエの時はまだ良かったけどな……もうバケツ持ちたくねえ」
クロトガはスペボウを脱ぐと、ダテコンタクトをさっさと入れ直した。
「やっぱチャーなきゃダメだな。いっそスコープこねえかな……」
「いやシャケでスコープ持ちたいとかいうのクロトガくんくらいでしょ……絶対おかしいって……」
みどりがいかにもドン引きと言いたげな顔をしてから、
「俺がチャー苦手だから持ってくれるのは助かるけどさ~……あ、そういえばローラーあるシフトって次?」
「だな……あ、パブロあるからオレ不参加な」
「ええー!!!」
「そういえばさ~」
一足先に着替え終えたモチが、二人の着替えが終わるのを待ちながら、ふと思い出したように言う。
「クロトガくん、スペシャルがハイプレだとちょっとだけテンション高いよねえ~」
モチにそう言われ、クロトガはジャケットを羽織りながら、ちょっと顔をしかめた。
「……悪いか?」
「ううん?好きなんだな~と思って」
モチは悪気のない顔でそう言って、首を傾げてみせる。
「へえ~クロトガくんハイプレ好きなんだ~覚えとこ~」
にやにやと笑うみどりを、クロトガは赤い瞳で睨んだ。
「忘れろ。今すぐ忘れろ」
「否定しないんだ~、あっ蹴らないで暴力反対!!」
「おれは、どのスペシャルでもいいんだけどさ~、こう……」
じゃれ合う二人をよそに、モチは体の前で、わちゃわちゃと手を動かす。
「フクの隙間に、こう、パウチを詰めて……四つぐらい持っていきたいなって……」
「わかる」
「それはわかる。めっちゃわかる」
クロトガもみどりも同意し、モチは「だよねえ~」とのんびりうなずいた。
「パウチもだけどさー、インクタンクの容量もっと欲しくない?特にヒカリバエのときとかインク回復してる暇ないって」
「それはちゃんとインク管理しろ」
「クロトガくん相変わらず俺にだけ冷たくない!?なんで!?」
「あーあーウルセェウルセェ」
喋りながら、二人も着替え終える。それを見て、待っていたモチはぱっと顔を輝かせた。
「わーい、一緒に報酬貰いにいこ~」
「……先に行ってても良かったんだぞ」
クロトガが少し遠慮がちに言うと、モチはへらりと笑ってみせた。
「おれが待ってたかったから気にしないで~。またカプセル落としちゃうかもだし……」
「ん……わかった、また手伝ってやるよ」
「今日もいっぱい貰ったもんな!報酬で何買おっかな~」
三人がぞろぞろと更衣室から出ると、
『やあ、キミたち。お疲れさま』
木彫りの彫像から声がして、三人は横並びになるように、その前に立った。
この謎の仕事場……もとい、ホワイトで健全で、ナイスが飛び交う良い職場を取り仕切る、クマサンからの音声だ。
『報酬を渡すついでに、ちょっと頼まれてくれないか』
「どうしたの?」
「なになに?なんかあった?クマサン」
「……」
『実はね……』
クマサンの話し始めた内容に、ボーイ三人はそれぞれ、思い思いの表情を浮かべた。
***
「オレは行かねえぞ」
「えーーーーーーー!!!!!!!!」
クマサンから貰った『スーパー銭湯・クマサン』のチケットを握りしめたまま、みどりはショックだと言わんばかりの表情で叫ぶ。
「うるせえぞ緑頭……」
「だ、だってさー!せっかくクマサンがチケット三枚くれたんだし……クロトガくんも一緒に行こうって!」
みどりは両手でぐいぐいクロトガの腕を引っ張る。が、クロトガは微動だにしない。
モチも手伝って……ではなく、仲間に混ざろうと腕を引っ張るが、やはりクロトガは動かなかった。
「あのクマサンが開いたスーパー銭湯なんて、怪しいにもほどがあんだろ……」
「ええ~、でも楽しそうだよ」
モチのポケットからは、クマサンから渡されたスーパー銭湯のパンフレットが覗いている。
銭湯はもちろん、サウナ、休憩どころ、レストラン、プール(イカ用)、ゲームセンター、などなど……ちょっとしたレジャー施設並のラインナップが書かれていたのは、さっき三人で見たばかりだ。
いったいいつの間にこんなの建てたんだ。いや本当に。
「最近オープンしたって話だしさ、建物も綺麗だって言ってたじゃん!」
「オレはそういう話をしてるんじゃなくてだな……」
「いつもバイト終わったらハイ解散!ってなってるしさ!」
言葉の合間合間にも、みどりはぐいーっとクロトガの腕を引っ張る。
「俺はもうちょっとクロトガくんと遊びたいんだって~!」
「あのなぁ……」
駄々をこねる子供のような動きをするみどりに、クロトガは呆れたような視線を向けた。
「オレは遊びでバイトやってるわけじゃねえんだぞ」
「じゃあバイト終わったし遊んでください!!!」
「やだ」
「俺もやだーーー!!!!!」
最早みどりはなりふり構わないつもりらしく、クロトガの腕にしっかりとしがみついている。こいつ最近遠慮無くなってきたなぁと思いながら、クロトガは黙ってみどりを引き剥がそうとした。
それを楽しそうに眺めていたモチだったが、ふと思いついたような顔で、
「もしかしてクロトガくん、お風呂嫌い?」
「……いや、そういうわけじゃねえけど……」
そう言われて、クロトガはちょっと眉をしかめた。
「嫌いなら無理しなくてもいいよ~、お風呂はおれとみどりくんで行ってくるし……」
「いやちゃっかり風呂以外行くの確定にすんな」
「あ、ばれた?」
えへへ、とモチが頭をかいていると、みどりが勢いに任せろといわんばかりに、
「カラオケもあるって!!!!!」
「いや行かねえっつってんだろ……」
クロトガは溜め息を吐いてから、やがてバツが悪そうな表情をしてみせる。
「……入れねえんだよ」
「え?」
「入れないって、何が?」
「……風呂」
クロトガの言葉に、みどりとモチは顔を見合わせる。
「でもタッ……インクリングでも入れるようになってるって、クマサン言ってたじゃん?」
「おぼれたりしないから大丈夫だよ~」
「いや、そうじゃなくてだな……」
何故か励ますように言う二人に対して、クロトガは言いづらそうにしながら、
「……タトゥー入れてんだよ、体に」
「「タトゥー」」
みどりとモチは思わず呟く―――と、同時にわっと顔を輝かせた。
「えっ、めっちゃイカしてんじゃん!!どこに入れてんの、見たことないけど!!」
「わー!どんなのどんなの?」
目を輝かせて食いつく二人に対し、クロトガはちょっと目を丸くしてから、軽く唇を尖らせる。
「……サメモチーフのやつ……腰んとこに入れてる」
「「わー!!!」」
「…………」
引き続きテンションの上がるボーイ二人に、クロトガはほんのちょっとだけ、照れくさそうな表情を見せた。
「いいなー!!えってかマジで見たことないんだけど!」
「基本インナー脱がねえからな……あんま見せるもんでもねえし」
「あ、でもそっか……」
みどりと一緒に盛り上がっていたモチが、はっと気付いたような顔をする。
「おっきいお風呂って、刺青してるひと入っちゃだめなんだっけ?」
「えっ、そうなの!?」
驚くみどりに、クロトガは軽く肩をすくめてみせる。
「だから言っただろ、入れねえって。いいから二人で行ってこいって」
「ええー、別に気にしなくて良くない?」
みどりはようやくクロトガの腕から離れたかと思うと、片手で自分の前髪をかき上げてみせた。
「俺だって眉ピ空けてるしさぁ、ほらほら!」
みどりの左眉に光るピアスを見て、クロトガは呆れたような顔をする。
「お前……親から貰った体は大事にしろよ」
「それクロトガくんが言う~?!」
「大体、タトゥーとピアスは違うだろうが」
「ええ~……」
「二人ともいいなぁ……」
二人のやりとりを見ていたモチが、羨ましそうに言った。
「おれもそういうの付けようかな」
「「……いや、それはちょっと」」
みどりとクロトガの声が、思わず重なる。
「俺が言うのもなんだけど、これけっこ~痛いよ?安定するのに大分かかったし」
「そうなの?」
モチは背伸びして、みどりの眉ピアスを見せてもらう。
「あ~、確かにちょっと痛そう?」
「俺自分で開けたんだけどさー、気付いたら血とか出ててちょーびっくりした!」
前髪をかきあげたまま、みどりがあっけらかんと笑った。
クロトガは軽くこめかみを押さえて、
「あー……モチには今度、タトゥーシールとか探してやるよ。フクで隠れる位置に貼れるやつな」
「わ~!やった~!」
「えっ俺には?!」
「眉ピしてんじゃねえのかよ……」
呆れた表情を浮かべるクロトガに、みどりは納得いかないと言いたげに、
「ピアスとタトゥーは違うじゃん??」
「それはさっきオレが言ったんだろうが……」
「わかった、わかった。じゃあこうしよう」
みどりは突然、何やら真剣な表情になると、きりっとした良い顔で言った。
「スパ銭行かないんなら腰のタトゥー見せてください」
「…………」
クロトガは黙ってみどりの胸ぐらを掴む。
「アーーーーーーー!!!!!暴力反対!!!モチくん助けて!!!!!!!!」
「ちょっと待ってね~」
モチは何かを思いついたらしく、取り出したイカフォンを、ぽちぽちと操作し始める。
クロトガはじたばたするみどりを放してやってから、モチの様子を覗き込みに行った。
「何してんだ、モチ」
「ん~……あ!」
モチはぱっと嬉しそうな顔をして、画面から顔を上げ、クロトガを見上げた。
「クロトガくん!クマサンに教えてもらったとこ、タトゥー入ってるイカも大丈夫だって~」
「…………」
モチは無邪気な表情で、にこにこと笑っている。
何とも言えない顔をするクロトガに、いつの間にか横にやってきていたみどりが、にんまりと笑ってみせた。
「行くしかなくな~い?」
「ちくしょう、にやけやがって……」
クロトガはみどりの脇腹を、軽くこづいてやった。
***
かぽーん……
「あ~……良いお湯だね……」
「良いお湯だね~」
「…………」
かくして結局スーパー銭湯に連れてこられたクロトガは、大人しく湯船につかることになった。
お湯の温度はちょうどいいし、やたらと混んでいるわけでもないし、真新しくて綺麗で、とにかく快適な空間ではある。あるのだが。
「…………」
「どしたの~クロトガくん」
腕組みをしたまま、憮然とした表情のクロトガに、モチが不思議そうな顔で話しかける。
クロトガは表情を変えないまま、
「落ち着かねえ……」
「もしかして銭湯初めてとか~?」
頭にタオルを載せたみどりが、湯船の縁に寄りかかりながら言った。
「俺もあんま来たことないけどさ~、でっかいお風呂楽しくない?」
「いや……」
クロトガは小さく首を振った。
「……落ち着かねえ……」
低い声でそう言うばかりのクロトガに、モチは「そっかあ」と、納得したようにうなずいた。
「じゃあ、あったまったら出よっか~」
「あったまるまで話しようぜ!」
みどりは相変わらずのテンションで、「そういえばさ」と早速話題を持ち出し始める。
「クロトガくんとこないだ一緒に歩いてた子って誰?もしかしてカノジョ?」
「……は?」
クロトガは呆気にとられたような表情で、みどりの方を見た。
「なんかめっちゃ仲良さそうだったじゃん。二人でなんか話ながら歩いててさ~」
「……待て、どんな女だ」
眉をしかめるクロトガに、みどりは思い出すように視線を上げる。
「えーと、アシメゲソで目がくりっとしか可愛い感じの子?」
「…………」
心当たりはある。というか一人しかいない。
あいつがカノジョとかふざけるなよと、クロトガが言いかけたところで、
「もしかして、イリコちゃんじゃない?」
と、モチがみどりの真似をして頭にタオルを載せながら言った。
「え、モチくん知ってんの?」
「うん~、こないだクロトガくんとナワバリしたときに会ってねえ」
そう言いながら、モチは自分のほっぺたを両手で持ち上げてみせる。
「いっぱいモチモチされたよ」
「モチモチ」
「モチモチ」
「モチモチ……」
みどりは、おもむろにモチのほっぺたを持ち上げた。
「うわモチくんのほっぺたすっごいモチモチじゃね?!!ねえクロトガくんすっごいよこれ!!!」
「ふふふ~」
「……お前ら、遊んでてのぼせんなよ……」
クロトガは呆れたように言いながら、肩までお湯に浸かった。
「んでどうなの?付き合ってんの?」
「ふざけんな、ただのチームメイトだよ」
にやにやと笑うみどりを、クロトガはぎろりと睨む。
「言っとくがもみ……イリコに会っても変なこと言うなよ。マジでぶっ飛ばすからな」
「へっへ~ん、でも俺何だかんだで今までクロトガくんに殴られたことな、あっごめんなさい俺が悪かったです拳を振りかぶらないで」
「あったまってきたねえ~」
頭にタオルを載せたまま、モチがマイペースにそう言って笑った。
しばらくして湯船から出た三人は、瓶詰めのドリンクをそれぞれ買って飲み干す。
「ぷっはー!!!生きてるって感じする~!」
「おいしいね~」
「飲んだら帰るぞ」
クロトガは一気にコーラをあおると、空き瓶をゴミ箱に放り捨てた。
みどりは不満げな表情で、
「ええ~、もうちょっと遊んでこーよ~」
「オレは風呂までしか付き合わねーぞ」
「じゃあまた今度来よう~」
モチがメロンソーダを飲みながら、二人に向かってそう言った。
「おれプール行ってみたいなぁプール」
「あっ、いいなプール!」
みどりがぱっと顔を輝かせて、ソーダを持ったまま話題に飛びつく。
「じゃあ今度水着持って集合な!おやつは三百円まで!」
「わ~い!」
「…………」
どんどん勝手に話が進む。
今更行かないと言うのも面倒になってきて、クロトガは溜め息で返事をした。
「あ、そうだ!今度友達連れてきていい?」
みどりがはしゃいだような表情で、二人に向かってそう訊ねる。
「ハチっていうんだけどさ~」
「……ハチ?」
知り合いと同じ名前を聞いて、クロトガはちょっと怪訝そうな表情を浮かべた。
「あれ、話したことなかったっけ?タっ……クロトガくんと同じ感じの髪型なんだけどさ」
「…………」
ハチという名前のタコなら、クロトガも知っている……が、恐らくみどりの言っているタコとは別のはずだ。
よくある名前なのだろうかとクロトガが考えていると、モチが嬉しそうな顔をして、
「あ、じゃあおれも今度友達連れてくるよ~。ロジくんっていうんだ~」
「……好きにしろ」
クロトガは考えるのを止めて、ぶっきらぼうにそう言った。
地上に出てきたタコも好きではない……というか嫌いだが、彼らにいちいちそれを言うこともない。
そう思っていると、突然みどりが思いがけないことを言い出した。
「クロトガくんも友達連れてくれば?」
「……は?」
みどりの言葉に、クロトガは思わず目を丸くする。
「そのイリコちゃんて子でもいいけどさ、せっかくだから男子で集まってなんかやろーぜ!そんでみんなで遊んだら絶対楽しいって!」
「……友達っつってもだな……」
クロトガは困惑しながら、視線を揺らす。
イカにも、タコにも、友達なんていない。
そんなことに付き合ってくれる知人に、心当たりも―――。
「…………」
「クロトガくん?」
「……考えとく」
クロトガは、呟くようにして言った。
***
「はいはいおれですよ~。おっ、クロくんやん!どないしたん急に。え?遊びに?最近できたフレンドと?え~、楽しそうやん、いいねいいね……え?おれも一緒に?いやいやええけども!珍しいな~、おれ誘ってくれるなんて……ん?ああ、はいはいわかってますよって。余計なことは言わんからに……いやいやおれは嬉しいさかいに、気にせんでいいよ~。はいはい、そんじゃあ日付とか決まったら教えてね。うん、ありがとー!ほんじゃまたな~」
電話を終え、マサバはイカフォンの画面を見ながら、思わず微笑んだ。
「どうしたの?」
「んー……クロくんから電話やったんやけどね」
不思議そうな表情を浮かべるアオに、マサバはにこにことしながら説明する。
「今度フレンドと遊ぶから付き合わんかって誘われてん」
「……クロトガが?フレンドと?」
「そ。びっくりやろ?」
口ではそう言うマサバだが、彼はひたすらに嬉しそうな顔をしていた。
アオはしばらくぽかんとしてから、そっと目を細める。
「……嬉しそうね、あなた」
「ん?うん、そやね」
マサバはにへらっと笑ってみせる。
「友達が楽しそうなんは、ええことやん?」
「……そうね」
アオは小さくうなずいて、それ以上何も言わなかった。
***
「リグマって行くなら4人だよな?ハチ一緒に行ってくれっかな~」
「そういえばおれも行ったことないなあ~」
「行くならお前らがXまで上がってからな」
「え゛」「えっ」
「じゃねえとリグマは付き合わねえぞ」
「も、モチくん……!!」
「う~ん、一緒にがんばろっかみどりくん」
「どうせリグマじゃ四人しか行けねえだろ。人数いるならレギュラーかプラベだな」
「あ、プラベって八人じゃなくてもいいんだ!」
「とりあえずオレの知り合いは確保したから、あとはお前らの……トモダチとやらと予定合わせてこいよ」
「クロトガくんのおともだちってどんなひと~?」
「……眼鏡」
「えっそこ??他にないの??」
「うるせぇな、タトゥーシール買いに行くんじゃねえのか」
「あ、そうそう!おれね~クロトガくんがしてたみたいなかっこいいやつがいいな~」
「俺も俺も!こう、腕にどかーんて貼りたい、どかーんて!!」
「……ったく……しょうがねえな……」
<……おわり?>