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🏹🍎SSまとめ

目を覚ますと、何だか温かくて心地がいい。
石鹸の匂いと、ほんの少し汗の匂い。
目の前の男が自分を抱き締めてくれているのだと分かって、りんごは何だか腹の奥がこそばゆい気持ちになった。
サジータはいつも、朝にはこうしてりんごを抱きしめている。
他の男にこんな馴れ馴れしくされたら、うざいから止めろ離れろと言うところだが、りんごはどうにもサジータの腕を振りほどく気にはなれなかった。
嫌じゃない、というのを認めるには抵抗があった。
だって自分は相手を好きではないし、相手だって別に……別に自分を好きじゃないはずだ。
万が一好かれていたって、どうとでもなる。多分。
そうなったら捨ててしまえばいいだけだ。面倒なことになる前に、捨てて、無かったことにしてしまえばいい。

自分には、それが出来るのだから。

「……りんご?」
りんごがそんなことを考えていた、その時だった。
寝ぼけ眼のサジータが、むにゃむにゃと眠そうな口調で話しかけてくる。
「起きたのか……?まだ、すこしはやいんじゃないか」
りんごの気も知らずに、ふぁ、とサジータはのんきに欠伸した。
「おれも今日やすみだし、もうすこし寝よう……」
「…………」
今なら殺せそうだなぁ、とりんごは思った。
目の前の男はすっかり油断しきって、りんごに対して、警戒心の欠片もない。
今なら首を絞めるだけで殺せるだろう。抵抗される前になんとかするぐらいのスキルはあるし、それ以外にだって方法はある。
……だけど。
「……りんご?」
サジータはまだ目が覚めきらない様子で、りんごの頭を撫でてきた。
「どうした?怖い夢でも見たか……?」
……子供じゃあるまいし。
りんごは小さく溜め息を吐いてから、サジータの腕の中に潜り込み直す。
「なんでもな~い……」
りんごはそう言って、軽く目を閉じる。
「俺、寝るから。おやすみ」
りんごが短くそう告げると、サジータは「……そうか」と呟いてから、またりんごを抱きしめてきた。
相変わらず、彼の体温は心地よかった。
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