🏹🍎SSまとめ
***
「やだって言ってるだろ」
「俺のこと好き勝手しといて自分は抱かれるの嫌なんだ?」
「…………」
ベッドの上の攻防は大抵サジータが勝つのだが、今日はちょっと勝手が違った。
サジータに対して馬乗りになったまま、りんごはにこにこと覆い被さろうとする。
「ひとが嫌がることは進んでしましょうってよく言うじゃん?」
「それ絶対そういう意味じゃねえだろ……」
キスしようとするりんごを、サジータは片手で押しのける。
滅多に拒絶してこない相手の珍しい様子に、りんごはちょっと驚いた。
「……マジで嫌な感じ?」
「あ~……ごめん」
そういうつもりじゃなかった、と、詫びるようにキスされる。
そのまま流されそうになる危険を予感して、触れるだけのキスに留めさせる。
「別にいいけど」
りんごは唇を尖らせながら、サジータに甘えるようにのしかかった。
「なんでそんな抱かれるの嫌がるわけ?俺が相手だから~とか言わないよね?」
「いやお前に抱かれること自体はいいんだけど」
「いいのかよ……」
サジータは苦々しい顔をしながら、視線を逸らす。
「……めんどくさいって思われるから言いたくない……」
「今更~?」
りんごは軽く笑った。
本当に、何を今更という話である。りんごがサジータを面倒だと感じたのは、一度や二度の話ではない。
「思ってないときがないから安心していいよ~、ほらほら言ってみればいいじゃん」
「ええ……めんどくさがってもう二度と会わないとか言われたらやだし……」
いや俺のこと大好きかよ。
なんだかなぁと思いながら、りんごは軽い口調で引き続きサジータにすり寄った。
「わかったわかった、言わないでおいてあげるから。サジータくんめんどくさーいとかそんなこと考えてたの~?とかもう会わな~いとか言わないって~」
「……言ったからな」
サジータは苦い顔をしたまま、唇を尖らせる。
「……お前に抱かれたあと、……お前が他の奴抱いたーとか聞いたら、嫉妬しそうで……」
「……は?」
なんだそれ。
「いや、何それ。え、何?今は俺が誰か抱いても嫉妬しないの?」
「いや、嫉妬しないというか、割り切れる……?」
サジータはかなり大真面目な表情で言った。
「別に付き合ってるわけじゃないし……セフレなんだかなんなんだかもよくわかんないし……」
「ヤることヤらずに寝ちゃう時普通にあるもんね~」
とはいうものの。
この男の思考回路が、普通にちょっとわからない。
別に嫉妬ぐらいされても構わない。いや、というか嫉妬するのか、そもそも。
嫉妬って、なんか、もっと、こう。
毒みたいに、どろどろしたものじゃないのか?
「……ちなみにさー」
りんごはサジータの胸に顎を載せながら訊ねた。
「俺が他の奴に抱かれてくるーって言ったらどう思う?」
「え、普通にやだ……」
「嫌なのかよ……」
やっぱり、ますますわからない。
割り切ってるんじゃないのか。
「……な、めんどくさいだろ」
サジータは自己嫌悪してると言いたげに顔をしかめてみせた。
「だからあんま言いたくなかったの。お前にうざがられたくないし」
「……何を今更」
うざったいと思っているなら、わざわざ会いになんか来ない。
妙に鋭いくせに、なんでこういうところだけ鈍いんだろう。
まあ、別に、だからといって。
惚れてるというわけでも、ないけど。
「え~でもやっぱサジータくんめんどくさ~い。意外と嫉妬深いよね~」
「だから嫌だったんだよ言うの……」
言わないんじゃなかったのか、と言いながら、サジータはわしゃわしゃとりんごの頭を撫でた。
「でもさあ、俺こう見えても結構一途なんだよ~?惚れた相手にはだけど~」
「俺には惚れてないんだろ」
サジータはそう言って、何故か優しく笑った。
その表情に、何故だか胸がうずいた、ような気がした。
気のせいだ。何もかも、気のせいだ。
「……ん」
りんごは誤魔化すようにして、相手の胸に頬を押しつける。
「じゃなかったら、一緒にいないし」
「なんだそれ」
笑うサジータがまた頭を撫でてくる。
こいつには惚れてない。惚れてなんかいない。
だからまだ大丈夫。
まだ、一緒にいてもいい。
「……」
ふと、視線に気が付いて、りんごは顔を上げた。
あんまり、優しい目で見ないでほしいと思った。
自分が好かれているんじゃなくて、愛されているんだと、錯覚しそうになる。
「……なに?」
じろじろ見ないでくれる、と嫌そうな顔をしてみせると、サジータはちょっと眉を上げてから、
「ん……いや、」
と、小さく微笑んだ。
「りんごは何嫌がんのかなぁって」
言葉の意味を捉えかねて、りんごは顔をしかめてみせる。
「俺の嫌がることすんの?サジータが?」
「ううん」
首を振る彼の声は、優しかった。
「絶対しない」
「…………」
思わず何も言えなくなってしまった。
何も言えなくなってしまって、りんごはただ、視線を落とす。
「……バカじゃねえの……」
「腹減ったな。夕飯何がいい?」
「……焼きそば……」
「買い物行くか」
サジータはそう言って、りんごの背中を軽く撫でた。
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「やだって言ってるだろ」
「俺のこと好き勝手しといて自分は抱かれるの嫌なんだ?」
「…………」
ベッドの上の攻防は大抵サジータが勝つのだが、今日はちょっと勝手が違った。
サジータに対して馬乗りになったまま、りんごはにこにこと覆い被さろうとする。
「ひとが嫌がることは進んでしましょうってよく言うじゃん?」
「それ絶対そういう意味じゃねえだろ……」
キスしようとするりんごを、サジータは片手で押しのける。
滅多に拒絶してこない相手の珍しい様子に、りんごはちょっと驚いた。
「……マジで嫌な感じ?」
「あ~……ごめん」
そういうつもりじゃなかった、と、詫びるようにキスされる。
そのまま流されそうになる危険を予感して、触れるだけのキスに留めさせる。
「別にいいけど」
りんごは唇を尖らせながら、サジータに甘えるようにのしかかった。
「なんでそんな抱かれるの嫌がるわけ?俺が相手だから~とか言わないよね?」
「いやお前に抱かれること自体はいいんだけど」
「いいのかよ……」
サジータは苦々しい顔をしながら、視線を逸らす。
「……めんどくさいって思われるから言いたくない……」
「今更~?」
りんごは軽く笑った。
本当に、何を今更という話である。りんごがサジータを面倒だと感じたのは、一度や二度の話ではない。
「思ってないときがないから安心していいよ~、ほらほら言ってみればいいじゃん」
「ええ……めんどくさがってもう二度と会わないとか言われたらやだし……」
いや俺のこと大好きかよ。
なんだかなぁと思いながら、りんごは軽い口調で引き続きサジータにすり寄った。
「わかったわかった、言わないでおいてあげるから。サジータくんめんどくさーいとかそんなこと考えてたの~?とかもう会わな~いとか言わないって~」
「……言ったからな」
サジータは苦い顔をしたまま、唇を尖らせる。
「……お前に抱かれたあと、……お前が他の奴抱いたーとか聞いたら、嫉妬しそうで……」
「……は?」
なんだそれ。
「いや、何それ。え、何?今は俺が誰か抱いても嫉妬しないの?」
「いや、嫉妬しないというか、割り切れる……?」
サジータはかなり大真面目な表情で言った。
「別に付き合ってるわけじゃないし……セフレなんだかなんなんだかもよくわかんないし……」
「ヤることヤらずに寝ちゃう時普通にあるもんね~」
とはいうものの。
この男の思考回路が、普通にちょっとわからない。
別に嫉妬ぐらいされても構わない。いや、というか嫉妬するのか、そもそも。
嫉妬って、なんか、もっと、こう。
毒みたいに、どろどろしたものじゃないのか?
「……ちなみにさー」
りんごはサジータの胸に顎を載せながら訊ねた。
「俺が他の奴に抱かれてくるーって言ったらどう思う?」
「え、普通にやだ……」
「嫌なのかよ……」
やっぱり、ますますわからない。
割り切ってるんじゃないのか。
「……な、めんどくさいだろ」
サジータは自己嫌悪してると言いたげに顔をしかめてみせた。
「だからあんま言いたくなかったの。お前にうざがられたくないし」
「……何を今更」
うざったいと思っているなら、わざわざ会いになんか来ない。
妙に鋭いくせに、なんでこういうところだけ鈍いんだろう。
まあ、別に、だからといって。
惚れてるというわけでも、ないけど。
「え~でもやっぱサジータくんめんどくさ~い。意外と嫉妬深いよね~」
「だから嫌だったんだよ言うの……」
言わないんじゃなかったのか、と言いながら、サジータはわしゃわしゃとりんごの頭を撫でた。
「でもさあ、俺こう見えても結構一途なんだよ~?惚れた相手にはだけど~」
「俺には惚れてないんだろ」
サジータはそう言って、何故か優しく笑った。
その表情に、何故だか胸がうずいた、ような気がした。
気のせいだ。何もかも、気のせいだ。
「……ん」
りんごは誤魔化すようにして、相手の胸に頬を押しつける。
「じゃなかったら、一緒にいないし」
「なんだそれ」
笑うサジータがまた頭を撫でてくる。
こいつには惚れてない。惚れてなんかいない。
だからまだ大丈夫。
まだ、一緒にいてもいい。
「……」
ふと、視線に気が付いて、りんごは顔を上げた。
あんまり、優しい目で見ないでほしいと思った。
自分が好かれているんじゃなくて、愛されているんだと、錯覚しそうになる。
「……なに?」
じろじろ見ないでくれる、と嫌そうな顔をしてみせると、サジータはちょっと眉を上げてから、
「ん……いや、」
と、小さく微笑んだ。
「りんごは何嫌がんのかなぁって」
言葉の意味を捉えかねて、りんごは顔をしかめてみせる。
「俺の嫌がることすんの?サジータが?」
「ううん」
首を振る彼の声は、優しかった。
「絶対しない」
「…………」
思わず何も言えなくなってしまった。
何も言えなくなってしまって、りんごはただ、視線を落とす。
「……バカじゃねえの……」
「腹減ったな。夕飯何がいい?」
「……焼きそば……」
「買い物行くか」
サジータはそう言って、りんごの背中を軽く撫でた。
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