あくび
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今日は天気がいい。
ずっと陽の下にいるにはなかなか体力が持たないと感じ、近くにある大木の下に移動した。
「はぁー、天気がいい時の木陰ってすごい涼しいですよねぇ」
「そよ風も気持ちいいですし、ついうたた寝をしてしまいそうですね」
クスクスと笑いながら大木に寄り掛かる。
横目でジェイドを見上げると、そよ風に吹かれて心地よさそうな顔をしていた。
その顔を見た私も、不思議と心穏やかになり、同じようにそよ風を受ける。
「自然っていいですよね。
私、海の波打ち際とかも好きなんですよ。
波が穏やかな時、サー…って音の中に、シュワシュワーって砂にしみていく音がすごい心地よくて。
潮風も気持ちよくて。」
「海の中もとても落ち着いていていいですよ。
水中の音も、不思議と眠気を誘う音だと思います。
そのうちアズールとフロイドを連れて、水中ではなく上の方へ遊びに行ってみましょうか。
きっと二人は海の中がいいと言い出すでしょうけど」
いいそうですね、と二人で笑いあう。
なんて心地のいい時間だろう。
浸っていたらしばらくお互い無言になっていた。
風の音と草が流れる音が程よい眠気を誘う。
目をつむってぼんやりしていると今にも寝てしまいそうだ。
ふとジェイドに意識を向けると、チラ見したと同時にずるずると肩にもたれかかってきた。
「…先輩?」
起きているか確認しようと声をかけてみる。
返事はない。
代わりにすぅ…と静かな寝息だけが返ってきた。
「…寝ちゃいました?先輩」
ん…と少し反応した気がしたが、また体勢がが崩れ膝枕になってしまう。
ぽす、と頭がひざの上に落ちる。
サラサラの髪が寝ているジェイドの髪にかかる。
目を閉じてても様になるのはさすがの容姿だと思う。
「…せんぱーい?」
声をかけてみても、返ってくるのは静かな寝息だけ。
起きないなら、ちょっとくらいちょっかいを出しても怒られないだろうか。
そう思ってそっとジェイドの頭を撫でてみる。
最初はぴくっと反応したが、その後はまた寝息をたてる。
見た目通り髪はさらさら。
撫でるたびに海のような香りが漂ってくる。
シャンプーはマリン系なんだろうか。
天気のいい日の木陰で、そよ風に吹かれながらほんのりマリンの香りに癒され、先輩であるジェイドの頭をなでる。
こんな贅沢な時間、2度とないだろうな。
だんだんと私にも眠気がやってくる。
ここで寝てしまうと誰がジェイドを起こすのか。
そうはいってもそよ風とマリンの香りで眠気は最高潮だ。
気が付いたらそのまま眠気に負けてしまった。
夕方に近づくにつれて肌寒くなってきた頃、ジェイドが目を覚ました。
「…おや…寝てしまっていました…か…」
横になる視界に疑問がよぎる。
「僕は確か…ユウさんを散歩に誘って…
あぁ、木陰で休んでいたんでしたね…
…僕は一体どういう状況なのでしょう…」
ふと手を置くとそこには太ももがある。
「これは…おやおや…。」
だんだんと状況を理解してくる。
どうやらいつの間にか寝てしまい、流れとはいえ膝枕をする形になってしまったらしい。
「…ユウさん、起きて下さい。もう夕方ですよ」
「んぅ…
…あ、先輩。起きたんですね」
目をこすりながらジェイドを見上げる。
こころなしか珍しく穏やかな表情をしているように見える。
「膝、お借りしてしまってましたね、しびれてなどはいませんか?」
「先輩全然重くなかったんで大丈夫ですよ。」
それはよかった、とほ微笑んでくる。
女子生徒がいたならきっとファンクラブができてるんだろうな。
「さ、そろそろ寮へお邪魔してもよろしいですか?
早いものだと、日の沈みかけで花を開かせる瞬間が見れるものがあるのです。」
「そうなんですか??
じゃあすぐ向かいましょう!」
差し出された手をさも当たり前のように握ってしまった。
完全無意識だったが、せっかくだったので何も言わなかった。
普段手を差し出すなんて動作をしないはずのジェイドが無意識にした行動だと知るのは数日後だった。
その後、キノコを見に行けばまさに今咲こうとしている頃で、
二人でじっくり観察した。
満点の星空の下、ぽわっと光輝く花に感激して、スマホを取り出して写真を撮った。
こっそりジェイドの写真も撮ったことは内緒である。
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