あくび
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ふぁ〜… 。
私の横でめずらしく大きなあくびをしたのは、私の先輩、ジェイド・リーチ。
大きなあくびですね、寝不足ですか?と問えば、
お見苦しいところをお見せしました、と口元を押さえた。
「昨日、徹夜で作業をしてしまったからでしょうか…。
いつもなら耐えられるのですが。」
「ジェイド先輩が徹夜ですか…。
珍しいですね?」
次の教室へ繋がる廊下を歩きながらジェイドの様子を伺う。
あ。もしかして。
「”山を愛する会”関連ですか??」
そう聞けば、驚いたジェイドは足を止めた。
図星だったようだ。
当たりですね??とジェイドの顔を覗き込む。
「昨日、私の寮の近くに夜なのに青く光ってる花があるのを見つけて。
近くにキノコみたいなのもあったから、もしかしたらジェイド先輩見てるかなーって思ったんです。」
「本当ですか…!?あれは山にしか生えていたのを見たことがなかったので、山しか生息していないと思っていたのに…。」
「へぇ、珍しい植物だったんですね?」
新しい情報を得てうれしいのか、ほんのり頬が赤くなっている。
「えぇ、夜にしか花を咲かせない、珍しいキノコなんです。
キノコなのに花を咲かせるというのも珍しくて、これは是非とも菌や花粉の採取をしなければと思い、夜な夜な山に登って花を探していたのです。」
ですが…とジェイドは言葉を繋ぐ。
「昨日の山では、キノコはあったのですが花を咲かせてる姿は見かけなかったんです…。
ユウさんが言った通り、夜に光るので目立たないわけがないので、咲いていればすぐわかるのですが…。」
肩を落とし悲しそうにする。
こんな先輩は初めて見た。
よほど珍しいキノコだったのだろう。
「それで、日が昇るまで山に籠って徹夜してしまったんですねえ…」
なにか私にできることはないかと考えてみる。
できることがあるとすれば、寮に招待することくらい…。
「あぁ、お気になさらないでください、また今日も山へ登るつもりですので。」
「えっ
それじゃあ、もしかしたら今日も徹夜になっちゃうんですか!?」
キノコのためなら何でもありませんよ、といってにこりと微笑んでくる。
いくら先輩でもそれはさすがに倒れてしまう。
確実にキノコを観察できて、ジェイドを休ませる方法。
「…先輩。
今夜、オンボロ寮へ来ませんか?
咲いて光るかはわかりませんが、確実にここにあったって言えますし、
それならわざわざ徹夜しなくても大丈夫ですよね?」
「!
いいのですか?」
「先輩がまた徹夜して寝不足になったら、アズール先輩から苦情が来そうですしね。」
モストロラウンジに影響が及ぶとアズールは心底不機嫌になってしまう。
本人にそのつもりはないのだが、明らかに空気が変わるのだ。
「…そうですね。
今日ばかりはお言葉に甘えましょうか。
甘えるついでに、この後の授業を僕と一緒にさぼっていただけませんか?」
はい?
「え、珍しいですね…」
「さすがに徹夜明けだとどうしても授業が子守歌に聞こえてしまって…
まともに集中できる気がしないので、集中できないのならいっそサボってしまおうと思いまして。
それにユウさんにお付き合い願いたいのです。
今日の遅れの分は、後で取り戻せるように僭越ながら教えさせていただきます。」
悪い話ではないな、なんて思いつつ、じゃぁいいですよ、と2つ返事で受けてしまう。
次の教室に向かっていたはずの二人は、花壇のある庭園へ足を向けた。