好きな人
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ナイトレイブンカレッジ
それは、世界でも有数な魔法士養成学校。
そして、その学校に存在する寮、オクダヴィネルに
私の想い人は存在する。
「いらっしゃいませ。
…おや、ユウさんではないですか。
どうしました?フロイドに御用ですか?」
この寮にはモストロラウンジというカフェが存在する。
基本的に寮に直通では行けないので、放課後はこのカフェを必ず経由する必要がある。
来店した私を案内してくれたのは、このオクタヴィネルの副寮長であり、モストロラウンジのホールを仕切るジェイド・リーチ。
彼は私の想い人に良く似ている。
何故なら、私の想い人は彼の双子
フロイド・リーチだから。
「申し訳ございません、フロイドは今席を外していまして…。
…少々、よろしくないお客様が来店してこられたのですが、
ちょうどその対応に追われていまして。
きっとすぐ戻ってきますので、こちらに座ってお待ちください。」
「いつもありがとうございます、先輩。
…今日はいつもよりお客さんの入りも少ないように見えますね…」
「えぇ、先ほど申し上げたよろしくないお客様が、なかなかに暴れまわりましてね…。
怪我をされた方もいたぐらいなので、お帰りになられた方が多くて。
…アズールも言ってましたが、今日はもう店を閉めようと思っておりますので、多少時間が取れるかと思いますよ。」
それでは、と言って離れていった。
出されたドリンクを飲みながらフロイドの帰りを待つ。
水槽の中の魚を眺めながら、お店に残る人も僕だけになったとき。
モストロラウンジの入り口が勢いよく開いた。
ガンッッッ
不意に響いた打撃音に身体が跳ねた。
振り向き入り口の方を向けば、口元に血を滲ませて不機嫌気味に入ってくるフロイドの姿があった。
「フロイド!!!モストロラウンジのドアは蹴破るなとあれほど行っただろう!!!
大事な外観に傷がついたらどうするんです!!?」
カウンターで何かの書類を目にしていたアズールが叫びながらフロイドの方へ歩いていく。
ジェイドははぁ、とため息を吐きながらアズールの後に続いた。
「あぁ??うっさいんだけど。
あれぐらいで壊れるような扉なら重金で作ればいーだろ」
「そういう問題ではないんですよ!!
ほんとに貴方という人は…。」
「まぁまぁ、アズール。
そんなに怒らないでください。
フロイドも珍しく手間取ったようですし、今はお客様もいらっしゃいます。
…フロイド、先に部屋に行ってお風呂と着替えを済ませてきなさい。
そのままでは近づいてもらえませんよ。」
はぁ?何言ってんの。と不機嫌な顔をジェイドに向ける。
そんなフロイドにジェイドは私がいる方向に手を指した。
私を見つけたフロイドが、ほんの少し表情が緩くなった気がした。
「…少ししたらオレの部屋まで来させてよ。
シャワー浴びてる。」
そう言って入ってきた入り口とは別の扉からフロイドは出て行った。
やれやれ、とアズ—ルが書類の置いてあるカウンターまで戻る。
「ユウさんがいてくれたおかげで、フロイドの機嫌がだいぶ収まりました。ありがとうございます。
フロイドの部屋まで案内しますね。」
「あ、いえ、私は何も…。」
「こちら、救急箱になります。
消毒とかはしないでしょうから、せめて絆創膏だけでも貼ってあげてください。」
そう言って救急箱を渡される。
そういえば、フロイドの部屋へ行くのは初めてな気がする。
モストロラウンジを後にして、白い廊下をジェイドと歩く。
着きましたよ、とジェイドが一つの扉の前に立った。
「こちら、この右向きのウツボが描かれたドアがフロイドの部屋です。
入ればすぐ広いワンルームになってまして、右手側にお風呂場がございます。
今頃まだシャワーを浴びている頃でしょうし、部屋の中にあるソファーでお待ちください。
僕は、アズールの手伝いをしてきますので。
ちなみに、僕の部屋は左隣、さらに隣の部屋がアズールの部屋になります。念のため、覚えておいてください。」
それでは。とジェイドはモストロラウンジへ戻っていく。
初めて目にするフロイドの部屋の前。
緊張からかなかなかドアを開ける勇気が出てこない。
ここまで来てやっぱり帰る、なんて言ったら、いくら私とフロイドの仲でもさすがに絞められる。
意を決してドアノブに手をかけた時、ガチャリ、とドアが開いた。
「えっ…」
「小エビちゃん、いつまでそこにいんの?」
見上げれば頭にタオルを被った濡れたままのフロイドが、にやにやしながら立っている。
「ふ、ふろい…どっ!?」
予想外の恰好に戸惑っていると。ぐいっ、とドアにかけていた手を引っ張られ、部屋の奥に連れていかれた。
無理やり引っ張られた反動で救急箱をドアの近くに落としてしまった。
何故かお互いの足元に落ちなかったのはフロイドのユニーク魔法のせいだろうか。
そのまますぐそばにあったベッドに倒され、フロイドが馬乗りになるように乗ってきた。
フロイドは今、頭と腰にタオルをつけているだけ。
ほぼ全裸な姿と、ぽたぽたと水が伝う肌と髪に艶っぽさを感じて思わず目を逸らしてしまう。
そうするとなんで逸らすの?と顎を押さえられてしまった。
「小エビちゃん、オレに会いに来てくれたんでしょ?
待たせてごめんね。ちょっと時間かかっちゃった」
「べ、別に待ってなんか…
そ、それより、髪!
ちゃんと拭かないと風邪ひいちゃう!」
えぇ~?と不満げに眉をしかめる。
大丈夫だもん、と言って耳元に顔をうずめてきた。
そして。
「風邪ひいたら、小エビちゃんが看病してくれるんでしょ…?」
と囁いてきた。
ゾクリ、と背中が震える。
低く艶っぽい声に思わず心臓が高鳴ってしまった。
今私の顔はフロイドで言うならまさにゆでだこのようだろう。
何とか恥ずかしさに耐えて言葉を出す。
「馬鹿なこと言わないでっ…ッ!
それに口元怪我してる…せめて絆創膏…んンッ」
口元の傷に視線を向けながら処置を求めるが、その願いはフロイドの口で塞がれた。
細長くなった舌の先端が私の舌に絡んでくる。
ざらざらとした感触が頭の中に響いてとてもフワフワする。
次第に酸素も減り始めて、フロイドの胸元を叩いて酸素を求める。
ぷは、と口を離されると、酸欠で呼吸が荒くなった。
酸素を求めた口は完全に閉じられないまま、小さな隙間を作る。
その隙間がフロイドを煽るのか、フロイドがにやりと口角をあげた。
「あは。小エビちゃん、こんな短いキスでそんななるんだぁ。
そんなんでこの後耐えれんの?」
そう言って首元に顔をうずめれば、息を吹きかけられてぞわぞわと鳥肌を立てさせる。
その行動に思わず小さく声が出る。
「っ…ぁっ
~っ、ふろいど、まって…ひぁ」
かぷり、と歯を立てない甘噛みを首元に受ける。
背中に伝わるぞわぞわとした感覚は抜けるどころか増加するばかりで、逃げ場のない感覚に戸惑いつつ恥ずかしさのあまり口元を腕で隠した。
「なんで隠すの?
だぁめ。ちゃんと声聞かせて?ユウ」
「あ、やだ…っ!」
腕を掴まれ横に押さえられる。
名前まで呼ばれれば身体の内側からゾクリ、と何かが這い上がってきた。
ドキドキする。
息が上がる。
恥ずかしさで頬と目元は熱くなり、どうしていいかわからない感情に涙目になる。
それを目にしてもフロイドは止まらないし、ちょっかいは増していく。
なんならもっと激しくなっていく。
「オレさぁ、さっき何人か絞めてきたから、まだ昂ってんだよね。
だから止めてって言ってもやめてあげらんないし、そんな目で見られたらもっと昂るし、今日は優しくしてあげらんないから、覚悟してね…?」
左耳に付いたピアスが揺れるたびにキラキラと輝く。
フロイドの顔は普段と変わりない、ニヤついた表情をしているが、ほんのり頬が赤みを帯びている。
もうどうにでもなれ、と抵抗を諦めて手の力を緩めた。
それに気を許したフロイドは、獲物が逃げないと確信し、ペロリと舌なめずりをしながら私を愉しんだ————
深海でも陽の光が差し込んでくる。
本来ならありえないが、この世界では普通のことなのだろう。
顔に当たる光で目が覚めれば、私はフロイドの腕の中だった。
腰が重い。
身体がだるい。
昨日はひたすら愛された。
普段も激しい方だが、数人絞めたせいか本当に昂っていたようで、通常よりも激しさを増して愛された。
近くに置いてあるスマホに手を伸ばし、時間を確認する。
まだ起きなければいけないような時間ではないようだ。
起こさないように寝返りを打ち、すやすやと寝息を立てるフロイドに向き合う。
口元の傷はほんのり血の跡が滲んでいた。
起きたあら絆創膏を張らなければ。
いつもはあんなににやにやしていて何を考えてるかわからない表情をしているのに、こうして寝ている姿はまるで幼い子供のようだ。
少し開いた口が妙に色っぽくて、気が付いたらそっと口づけていた。
ゆっくり離れると、ん…、とフロイドが身をよじる。
少し意識が戻ってきたのか、ほんのり薄目を開けて僕を見た。
「んぁ…こえびちゃんだぁ…ふふ…かわいー…。」
にへ、とはにかみながら、私の頬に手を当てて撫でてきた。
思わずほおずりしたくなる。
人肌にあったかいその手のひらにまた眠気を誘われる。
フロイドはいつの間にか残っていた眠気に意識を奪われていた。
瞼が重い…。
暖かい…。
もう少しだけ、このまま寝てしまおうか。
そう思って、フロイドの胸元に顔をうずめる。
フロイドの匂いとぬくもりに包まれながら、我慢ができなくなった眠気に意識を手放した。
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