SS

俺に流れるこの血は本当に赤いのか、魔族の血が混じったこの体は実は真っ黒い血が流れてるんじゃないか、そう思って手首を切ったのは数え切れない

「らんらんまた切ったの?」
「あはは…つい」
「つい、じゃないよ回復力高いとは言っても痛いでしょ?」
「まぁ痛いね、じくじくする」

突然部屋に現れて切った手首を見て心配そうに声を掛けてくれるすち、そしてぽたっぽたっと落ちる血を見つめて

「あと俺は血に誘われるって言ったじゃん」
「飲む?」

俺は先程切ってしまった手首をすちに近づければ吸い寄せられるように手首に口づけて血を舐めて傷を抉る

「っい」
「あ、ごめん…思わず」
「これは俺が悪いわ」
「…もうちょっともらっていい?」
「どうぞ」

ははっと笑ってもう一度口づけて舐めて吸うすちの様子を俺は眺める、俺には魔族の中でもトップクラスの魔王の血が混じってる、魔王はすでに勇者に倒されて世界は平和だけどこの血は俺の中に永遠と残る、家族を殺した奴の血が

「ありがと…ふふっ綺麗…」
「どういたしまして」

すちはダンピールらしい、吸血鬼ではないらしい、出会ったときに言っていた、今日みたいに手首切って血を流してるときに「いらないならそれ、頂戴?」と誰もいないはずの部屋で笑っていた、驚きつつも「欲しいならあげるよ」とそう言えば「いいの?俺がなにかわかってる?」と簡単に了承がとれて驚いたのきょとん、とした顔で言ったから「知らないけど?吸血鬼とかじゃないの?まぁ全部あげるよ」とそう返せば
「え、全部はいらない…少しでいい」
「えぇ…」
「なんで残念そうなの?死にたいの?」
「死にたいわけじゃないけど、欲しいんでしょ?」
「う、まぁそうだけど…言っとくけど君が悪いんだよ!窓開けっぱなしでこんな香りさせたら誘ってるようなもんなんだから!」
「え、そうなの?」
「そうなの!ちゃんと戸締まりしなよね!」

なんでか怒られた、あの時の俺は自殺願望がちょろっとあったからなぁ、あの時すちにあってなかったら今もあっただろうな…

「らんらん?調子悪い?飲みすぎた?」
「大丈夫、すちに出会ったとき思い出してだけ」
「そう?」

あの頃とは違って今はすちがいるから死のうとは思わなくなったしこの血も嫌だけど、すちが綺麗って言うからまぁいいかとそう思えるようになったから、だから今は彼を誘うために切るんだ






簡易設定

緑 ダンピール 
所謂、吸血鬼と人間のハーフ
魔王の血は極上、桃の血に誘われ部屋に訪れた
最初は恋愛感情はなくただの美味しいご飯と認識してたけど、あんまりにも手首切るもんだから心配で出来る限りそばにいるようになる

桃 魔王
本人は魔王の血が混じってるだけ、だと思ってるけど魔王は継承式で実は次代の魔王様
緑が血を飲んでるのを見るのが好き、俺の血は綺麗に思えないけど緑が飲んでるのは綺麗に見えるなぁって思ってる


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