SS


「誘拐したけど、どうするよ?」
「身代金要求だろ」
「そりゃあそうだけど、なんかやけにこいつ大人しくねぇ?」
「怖がってんだろ?」

目を覚ますと知らない場所、知らない人間……またかぁ……
俺の運の無さってどうなってんだろ、確かに幼い頃は実家は金持ちだし俺はか弱い美少年だったしで狙い目だっただろうけど、今の俺はちょーっと顔の良い普通の男子高校生なんだけど攫いにくいとは思わないのか………結果攫えてるんだからいいのか?

「そんなことより足つく前にとっととやるぞ」
「そうだな」

俺が目を覚ましてることに気づいてないのか2人で話しながら犯行をすすめる誘拐犯、俺が焦ってないのもあるけどなんか緊張感ないなぁ……暇だし電話をかける誘拐犯の様子でも見てるか……

「"はい、桃瀬です"」
「お前の息子は預かった、返して欲しくば3000万用意しろ」
「"イタズラ電話でしたか……最近多いんですよねぇ"」
「イタズラじゃねぇ」
「"簡単に攫われるような育てかたしておりませんが、そういうなら証拠でも見せてください"」
「いいだろう……声、聞かせてやるよ、それでわかるだろ」
「"そうですね、特徴ありますからね"」

「おいっ、あ”?起きてんじゃねぇか、なんでもいいから喋れ」

そういってスマホを向けられる、俺口縛られてるから喋れないんだけどな?こいつアホか?

「"おい、らん?そこいるか?"」
「う!」
「"マジで誘拐されてやがる……マヌケなやつ"」
「うんん!!」
「"マヌケにマヌケって言って何が悪い、お前どこいんの?"」
「う、うー?ううんうう!」
「"あぁはいはい、あの辺な"」

「は!?なんで今のでわかんだよ!!」

電話に出たのはいるまで呆れた声で話す、さらりとどこいるなんて言うから素直にいったけど……たぶん恐らくきっと全く伝わってないが、いるまのわかった風な言葉に驚く誘拐犯……やっぱりアホだなこいつら………俺どこいるかわかんないのに言えるわけないじゃん

バァンッ

大きな音を立てて扉が勢いよく開き、恐らく足で蹴り開けたんだろう片足をあげた状態のいるまが俺を見るなり罵倒する。

「お、ここか、あーあ芋虫みてぇに縛られてら、このマヌケあれほど帰り道は気をつけろつったろ馬鹿か」
「うう!!」
「何言ってるかわかんねぇ」

「「わかんねぇのかよ!!!」」

「いや、わかるわけなくね?うーうー言ってるだけだろこいつ」
「っいったぁぁい!!いるま!もうちょっと優しくテープ剥がして!!」
「うるせぇマヌケ何回攫われる気だ、その度救助しに来る俺の気持ち考えろよ」
「はい、すいませんでした………いつもお世話になっております」

「「あ!」」

誘拐犯が驚いてる間にスタスタと俺に近づき勢いよく口に貼られてたテープを剥がし縛られてた紐を解きながら、いつも通りの会話をする、あ!じゃないよ油断しすぎだろコイツら誘拐犯の自覚あるのかな?

「安全確保できたので警察の皆さんどうぞ」

いるまの声で隠れていたのか扉の奥から警察が続々部屋に入ってきて誘拐犯を捕まえるのを俺は気にせずいるまに話しかける

「いつ呼んだの?」
「あー電話来る前?」
「なんで誘拐されてるの気づいてんの……」
「お前が誘拐されまくるからだろうが」
「うぅ……じゃあなんで居場所わかんの!」
「この前あげたやつ」
「え?」
「キーホルダー」
「くまちゃんの?」
「それ、発信機」
「はぁ!?」

最近もらったくまのキーホルダー、いるまが珍しくプレゼントなんてしてくれるから嬉しくて付けてた……なんで、なんで

「言ってくれないの!言ってくれれば位置共有アプリぐらいいれるよ!!」
「……そうじゃねぇ」
「え?俺の行動監視したい訳じゃないの?」
「ちげぇよ……」
「じゃあなんで?」

俺がそう聞けば、少し間を置いて

「誰にもとられたくねぇだけ」

とだけ言って早足で歩きだした……そういうとこ!!なんで!いつも素直に言ってくれないの!

「いーるま!」
「んだよ……」
「好きだよ!」
「……俺も好きだよ」



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