SS
最初に気づいたのはいつだったっけ?乗る前に1度躊躇い何でもない顔して乗り込むのに気づいたのは、扉の近くに立ってボタンを見ていることに、壁に置いてる手が少しだけ震えてることに、降りてすぐ必ずと言っていいほど御手洗に向かうのに気づいたのはいつだっけ?
「みこちゃん?突然立ち止まってどうしたの?」
「なぁすち君、今日は階段で行かへん?」
「え、それはいいけど会議室3階だけどいいの?」
「ええよ、時間には余裕あるし運動兼ねて階段でいこ!」
すち君の手を取ってエレベーター横にある階段に向かう、"そんな引っ張らなくても行くから大丈夫だよー"って苦笑いしとるのを見て、余計なお世話やったかな?なんて考えたけど、いつも乗る前不安そうというか乗りたくないって雰囲気ある気がするんだよなぁ……今俺しかおらんし聞いてみよかなぁ……
「なぁ、すち君ってエレベーター嫌いなん?」
「な、んでそう思ったの?」
「いーっつも乗る前に躊躇うやん」
「……?そう、なの?」
「そやで?もしかして無自覚でやっとるやつやったん?」
「そうなるね……そっか俺そんな事してたんだ」
「しとったねぇ、やから嫌いなんかなって」
「んーとね、恥ずかしいけど嫌いじゃなくて怖いんだよね」
階段を一段一段ゆっくりとのぼりながらそういうすち君の顔は見えない
「昔さ、エレベーターに閉じ込められちゃってね」
「えっ!?」
「幸い偶然にも大人が一緒に乗ってたから連絡もしてくれたしすぐに開いたんだけど、それ以来ずっと怖くてね、数年前の話だしそろそろ克服したいんだけど、難しくってさ」
と言ってあははっと笑うするすち君、笑い事やなくない?そんなんトラウマになって当然やろ……克服したいって言うけど生活に必須やないんやし無理に克服する必要はないやんな?無意識に反応するほどつらいのに無理にエレベーター使うのも違うやん……
「なぁそれ無理に治さんでもよくない?」
「そうかな?治さないと不便じゃない?皆と一緒に行動する時迷惑になるかもだし」
「そん時は俺が手繋いであげる!それならちょっと怖さ和らがない?」
「!!ふふ……それなら怖くない、かも」
「かも、なん!?」
「だってわかんないし?」
「そうだけどぉ……」
「次、乗る時は手繋いでね?」
「まかせてっ!」
嬉しそうに笑うすち君につられて俺も笑う、いつもお世話になっとるしちょっとした恩返しになればええな
「これからは階段使えるとこは階段でいく!」
「みこちゃん本気?結構大変だよ?」
「本気よ、本気、すち君も付き合ってよ?」
「ふふっいいよ、付き合ってあげる」