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俺と彼がまだ幼かった頃、7月7日の七夕の家で短冊を書いていた。俺は無難に"みんなと元気に仲良く過ごせますように"って書いて笹に括って、まだ字を習いたてでペンの持ち方も変なだけど一生懸命に短冊に文字を書いてる彼に話しかけた

「みことちゃん何書いてるの?」
「ひみつ!!」
「秘密なの?お兄ちゃんに内緒で教えてくれない?」
「やだっ!すちお兄ちゃんにはぜーったいひみつ!!バレたらあかんの!……みたらあかんからね!」
「そっかぁ残念、お兄ちゃん知りたかったなぁ」
「そんでもだめ!!ひみつなの!!おかーさんこれ上!うえのほうにつけて!」

書き終わった短冊をさっと胸元に持っていき見えないように隠してお母さんの方に走っていってしまうみことちゃん、何書いたんだろうなぁ気になるなぁ、見ちゃダメかなぁ駄目だよねぇ


俺が小さかった頃、七夕の短冊に書いた願い事まだ小さいクセしてませとったなぁと今考えるとそう思う。
近所のお兄さん、賢くて何でも出来て、あ母さん達にも褒められとってすごいっ!俺もこうなりたい!て尊敬の気持ちと同じくらい俺はそのお兄さんが大好きだった。彼に彼女が出来たら悔しかったしとられたくなくて恥ずかしげもなく、"お兄ちゃんは俺と一緒におるの!"って駄々をこねた、大概は"ごめんねぇ"って言われて終わりやったけどたまに彼女さんが優しくて俺が一緒にいることも許してくれたりなんかした今思うとほんま恥ずかしいことしとる……でもまぁ今はそんなことせんでもええからいいんやけど

「すち」
「どうしたのみこと?」
「なーんもない呼んだだけ」
「なにそれ?まぁいっかそれより短冊かけたの?」
「書けた!飾ってくる!」
「なんて書いたの?」
「秘密!」

幼い頃の願い事、"すちおにーちゃんとこいびとになれますように"俺もなかなか一途やよねぇ小さい頃からずっと大好きなんよな歳の差とか同性だとかあるけどそんなのは些細な事で俺はずっとすちと一緒におりたい、だから今年の願い事も変わらない

"すちと一生そばにいれますように"

自分でも重い男やと思うけど、数十年後思い続けたんやもんしょうがないよね、俺は織姫と彦星みたいに一年に一回しか会えんとか絶対に無理、だからちゃんと勉強も仕事もするよ離れ離れにされたら耐えられんもん

「すち大好き!」
「俺も大好きだよみこと」


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