SS
朝、いつも通り早めの電車に乗る、本当は寝てたいんだけど早めに起きないとぼやっとしてる間に遅刻しちゃうから俺は諦めて満員電車に乗って、ドア付近に立って今日はいないといいなぁと思いながらつり革を掴む
「っ…」
あぁもう…今日もか…最近俺の近くに陣取る男ジロジロとこっち見て、時々その男の手が脚を触ろうとするからその度に移動してる、男の脚なんか触ってもいいことないだろうに本当に気持ち悪い、そして今日も脚に手が伸びてきたのが視界に見えたから逃げようと思ったら、いつも以上に満員で逃場がない…やばい…必死に視線を周りに巡らせるものの移動できる場所はない
横目で男の顔を見ればニヤニヤしてて腹が立つまだ数駅あるんだけど…
ゆっくりと忍び寄る手が脚に触れ撫でて、その手がお尻に…楽しむように動く手が気持ち悪い……そして嫌なことに気づいた、俺の周りにいる奴ら全員グルだ……全員ニヤついてる…本当に最悪
今日は少し遅めの出勤、ちょっと寝坊しちゃったんよなぁ…俺満員電車嫌いなのに…失敗したなぁ…ギュウギュウ詰めの車内で人に押されたりもたれ掛かられたりしながら2駅先までの辛抱やと、そう思ってれば車内にうちの生徒らしき人物を見つけた、それもなんか状況が…痴漢っぽいんやけど…しかもあれ緑谷君やないか?普段優しい表情をしている彼がつり革にも捕まらず嫌そうな顔して鞄を胸のところで抱えて、小さな声で
「ゃめ…て、だれか」
…痴漢確定やな、車内を人を掻き分け彼の眼の前に行き自分の胸へと引き寄せる
「あんた…何やっとん?」
「…せんせぇ?」
驚いた顔をする緑谷君、俺の顔を見て安心したのかちょっと表情がやわらぐ緑谷君に「大丈夫やからね」と声をかけてから、痴漢に視線を映す
「あんた俺の生徒になにしとん?このあと駅員室いこか」
「何にもしてねぇよ」
まぁ…認めへんよな、あんまり聞きたくはないんやけどされた、本人から聞くんが一番早いんよな……
「緑谷君、ごめん…痴漢されとったよな」
「…はい」
ひとこと謝ってから聞けば素直にはい、と答える緑谷君
「いこか駅員室」
逃げ場のない車内、痴漢の手首を俺はがっちり掴み逃さないようにしていれば、不安そうに俺のそばに立つ緑谷君。女子生徒達からは格好いいと言われる緑谷君が俺のそばに立って離れないようにしとるのが、なんか…可愛い……いまほんなこと考えとる場合やない、とりあえずコイツ駅員室連行してメンタルケアやろ、しっかりしろ俺
抵抗したって無駄なんだから助けなんて求めても意味ないってわかってたけど漏れてしまった声、それに気づく人なんてきっといないし気づいても無視するんだろうなって諦めてれば、突然腕を引っ張られてぽすっと誰かの胸に倒れ込んで上を見上げれば、浅黄先生……なんで?この時間に先生見たことないのにと今の状況を忘れてじっと先生の顔を見て…少し安心した助かったとこの気持ち悪い手から離れることが出来るって
無事に痴漢を駅員室に連行して部屋を出る際に捕まえたやつ以外にも痴漢仲間みたいなのがいることを駅員さんに伝えてから部屋を出れば、驚いた様子の先生が俺を見ていた
「他にもおったんか…」
「はい、でも手を出されたわけじゃないので…」
「そっか…これ初めてやない?」
「初めてですよ手を出されたのは」
「手を出されたんは、か……しばらく一緒に登校しよか?」
「え…?」
「あーでも時間あわへんか…」
「先生…?」
「ん?どうしたん?」
「時間があえば一緒に登校してくれるの…?」
「流石に心配やからなぁそれに怖かったんやろ?」
怖かった……そう言われてなんだか泣きそうになった、うん…俺は怖かったんだな気持ち悪いとしか思ってないつもりだったけど怖かったんだ…言われて気づいて今更一人でいるのが怖くなってきた
「先生って何時のに乗るんですか…?」
「さっき乗っとった電車の一本前に普段は乗っとるよ」
「なら…俺もそれに乗ります」
「朝早いよ?寝るの好きやなかったっけ?」
「寝るのは好きです。でも…先生がいいなら同じ時間のに乗っていいですか?」
「ええよ、これ贔屓っていわれてまうかな…?ええか先生が怒られたら助けてね」
「わかりました。それで浅黄先生?」
「ん?何?」
「俺はまだ時間ありますけど先生は時間大丈夫ですか…?」
「……まずい!!!遅刻する!緑谷君また学校でな!俺は走るから!!」
腕時計で時間を見て、顔を青くさせて慌てて学校へ走り去る先生
「……先生走るの早いなぁ…」
痴漢にはもうあいたくない怖かったしあんな気持ち悪いのは懲り懲りだ、でも先生の格好いいところが見れたのはラッキーだったかもしれないな、なんて先生の後ろ姿を見ながら俺はそう思った