SS
暗い海岸沿いの道を一人で歩いて、空に浮かぶ月を見た
まんまるのお月様、キラキラ光って暗闇を照らす
俺にとっては君は月で、太陽のようにずっとそばで暖めてくれるわけじゃ無いけれど寂しい時にそばにいて寄り添ってくれて優しく照らしてくれる
君は俺の気持ちなんて知らないから、知らないままでいいからそばにいて欲しかっただけなんだ。
海を覗き込めば水面に映る俺の顔は酷い顔をしていて、暗くてあまり見えないはずなのに目の下にあるくまが目立つしそれなりに手入れしてたはずの髪だってボロボロだし切るのが面倒で伸ばしっぱなしにしていたせいで長く伸びた髪は邪魔くさい
適当に履いてきたサンダルを手に持って足を水で濡らしながら砂浜を歩いて、邪魔になったから波にさらわれない位置にサンダルを置いてもう一度足を濡らす、一歩また一歩と海に向かって歩いて腰のあたりまで浸かった頃に空を見上げてポツリと呟いた
「星が綺麗ですね」
誰にも届きはしないだろうと呟いた言葉に聞き覚えのある声で返事が返ってきて驚いて後ろを見た
「綺麗だよ!!」
「え、なんでここにいるの」
「それはこっちの!セリフ!!すち君!なんで真夜中にこんなところいるん!!」
「水が気持ち良かったから」
「もう…自殺でもするんかと思った…」
「……」
「えっと否定してくれ、へん?」
「俺居なくてもいっかなって学校にも家にも居場所なんてないし、ただそこにあるのは疲れたから、それもいいなって」
「俺が地雷踏んどった…」
水に濡れることも構わずに俺のいるところまでバシャバシャと音を立てながら近づいてぎゅっーと強く抱きしめて
「なぁすち君、俺が俺が居場所になるから死ぬのが良いなんて思わないで?俺はすち君がいないと寂しいし、悲しいんよ…だって俺はすち君が好きやから」
「す、き…?」
「うん、好きやで、すち君もそうやないの?」
「…もしかしてさっきのわかったの?」
「ちょうど授業で言っとった、先生に感謝や」
「そんな偶然ある…?」
「あるんよ、なぁすち君俺ん家おいでよ、お母さんもすち君なら良いって言うだろうし逃げるのは悪いことやないよ?」
「いいの?俺、逃げてもいいの?」
「ええよ!学校も俺と一緒にいこ!」
「っうん…」
やっぱり君は俺の月だよ、そばにいて欲しいときにこうやって現れてくれるんだもの、愛してるなんて今の俺には勇気がなくて言えないけど、君を想ってることが伝わっているのならそれでいい、いつかちゃんと君に伝えるから今はこう言わせて
「みことちゃん、星が綺麗ですね」
「はい、綺麗ですね」