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クラスメイト達はいつも俺と君のことをみて俺を心配する
ずっとそばにいて大変じゃないの?
あいつお前のこと頼りすぎじゃない?なんて言うからそれに俺はいつも「大丈夫だよ」って笑うんだ、だって俺は君がいないと息が出来なくて、苦しくて、こうやって笑うことさえ出来ないんだから

俺は表情がない子だった。
小学生入ったぐらいの頃の俺は無表情で一人で本を読んでいた、最初は遊ぼう!って言って遊びに誘う人もいてくれたけど、俺は何をしても笑わないし楽しく話すわけでもなくて、ただそこにいるだけだったから次第に俺を遊びに誘う子はいなくなった、だから俺はいつも教室で何度も読んだ本のページをめくっていた、静かに椅子に座って大人しく、だってそうしてれば怒鳴られることはないし殴られることもないし、こうしてればお母さんに良い子ってまた言ってもらえるかもしれないって思ってた、でもそれは俺の都合の良い幻想でしかなかった

中学2年、声変わりをした頃だっただと思う、お母さんが突然、父の名前を呼んだ、昔事故で亡くなった父の名前、それに反応したのが駄目だったんだろう、母は俺を父と思い込み始めた。それからは家に帰れば母は俺を見て父の名前を呼び、今まで俺に一切言わなかった言葉…"好き"だって言うんだ俺を見て俺じゃない人に向けて好きって何度も、彼女の中に俺の存在はなくて、俺は、自分が誰なのかここに居ていいのか俺は生きてていいのか、わからなくなってどうでもよくなった

授業が終わってみんなが帰る頃、俺は屋上にいた、フェンスをこえた先で座って、この空が暗くなった頃に落ちてやろうと思って空を眺めてればキィっと扉の開く音がした

「えっ!?ちょっ何しとるん!?」
「空見てただけだよ」
「そうには見えへんけど!?」
「うん、嘘」
「嘘なん!?」
「ねぇさっきから五月蝿いんだけど」
「うわぁごめん!ってすち君が悪いんよ!」
「俺、名前言ったっけ…?」
「同じクラスやけど!?」

…あぁ思い出した最近きた転校生だ

「それで、何しに来たの?」
「屋上見に来ただけやけど?」
「ふーんじゃあ用済んだよね帰って」
「いや、無理でしょ!俺帰ったらすち君飛び降りる気でしょ」
「そうだけど、ため?」
「あかんやろ!俺が相談のったるからこっち戻ってきなさい」

……今日は諦めよ…すっと立ちあがってフェンスを乗り越える

「よし!で、何があったん?」
「本当に相談乗る気?」
「当然!」
「めんど…俺はどうでもよくなっただけ、ほっといて関係ないでしょ」
「関係ある!俺、すち君に一目惚れしたから!」
「……は?意味、わかんない」
「みんなのこと見て楽しそうに笑ったすち君に一目惚れしたの!」
「え…尚更わかんない…俺が笑った?見間違いじゃないの?」
「すち君笑っとったよ!」

にこにこと笑って断言する転校生、本当に俺が笑った?

「……うそ、じゃないの」
「嘘やないもん!すち君楽しいと、わかりにくいけどちょっと口角あがるし雰囲気が柔らかくなるもん!」
「そう、なんだ…」
「そやよ!」

俺、笑えてるんだ、表情なんて死んだと思ってた

「ねぇ…本当に俺のこと好き、なの?」
「好きだよ!だから自殺なんてやめて俺と付き合って!幸せにするから!」
「俺は無表情だよ、それに話したこともないのに好きなの?」
「表情はあるし、お話はこらからいっぱいすればいい!俺はすち君の優しいとこ、誰かが困ってたら助けちゃうとこ、実は教科書の裏でこっそり絵を描いてるのも、辛いの苦手で無理矢理食べてるのも全部含めて好き!」
「っなんで知ってるの…俺辛いの苦手って言ったことない、」
「見てたらわかる!」

…賭けてみようか、この人なら俺がここに居てもいいと思えるようになる?俺を認識してくれる?ずっと俺を、見ててくれる?

「ねぇみこと、だっけ、本当に俺のこと好き?」
「好き!」
「俺のこと怒鳴らない?殴らない?捨てない?無視しない?俺のことを好きって言ってくれる?」
「俺は怒鳴らんし殴らんし、絶対捨てないよ?それに無視なんてするわけないやん、言ってもええならいくらでも好きって言うよ?」
「…なら自殺やめる、だから俺の名前呼んで、好きって言って」
「そんならいくらでも!すち君好きだよ」
「…俺は、まだ好き、かわからないけど、それでもいいなら付き合ってよ」
「ええよ!俺が好きにさせるから!約束する!」

そう言ったみことちゃんはその日から俺のそばにずっといたし毎日好きって言ってくれた、気づけば俺はみことちゃんが好きになっていて、俺の唯一になってた

「あの時、死ななくてよかった」

みことちゃんお願いだからずっと俺を見てて、俺を認識して、じゃないと俺はもう呼吸が出来ないくらいに君に依存してる。
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