SS


出会ったときから我慢してた
いい匂い、甘くてとろけそうな香り
香りを嗅いだ瞬間から食べたいという欲があふれる、それを理性で押し殺す、彼を傷つけたくはないから

「みことちゃん?どうしたの?」
「え…」
「なんかさっきから俺のこと見てない?」
「俺、そんなにすち君のことみてた?」
「見てたよー?なんか心ここにあらずって感じだったけど、もしかして具合悪い?」
「ううん平気やよ!……あまい…」

そこまで言って慌てて口を閉じた、やっばい心の声漏れた!

「みことちゃん?」
「な、なんでもないよ!」
「本当に?熱とかない?」

そう言って俺のおでこに手をあてるすち君
ちかい、近い、近いよ!あまい、美味しそうな香りがする、たべたい、だめ…がまんしなきゃ

「ねぇ、みことちゃん」
「な、なに?」
「みことちゃんってフォーク?」
「うぇ!?なんで、そう思うん?」
「それ、砂糖はいってないんだよね」

指さしたそれは家についた時にいれてくれたコーヒーで、俺が砂糖入れるのを知っているすち君が砂糖いれてあるからねって言ったから気にせずに飲んでいた

「違ったら謝ろうって思ってたんだけど、やっぱりあってたんだね」
「すち君…なんで…」
「俺、自分がケーキって知ってるんだ。だから不思議だったんだよね、なんで俺のこと食べないの?」

なんで?と本当に不思議そうに首を傾げる、なんでって聞きたいのはこっちで、なんで食べられたがってるの?

「ねぇ食べてよ」
「嫌や!」
「なんで?俺、美味しそうじゃない?」
「美味しそうだけど!」
「ならっ」
「嫌だよ!俺すち君傷つけたくない!」
「え…」
「初めて会った時から甘い香りするしずっと食べたいって思ってるけど!俺はすち君のこと好きだから傷つけたくない!」
「……好きって本当?」
「あ、」
「ふふっ本当なんだ…それって恋愛感情としての、好き?」
「そう…です…こんな形で伝えるつもりなんてあらへんかったのに!!」

俺の馬鹿!墓まで持ってくつもりだったんに!勢いで言っちゃったよ…

「みことちゃん、俺のこと好きなら俺を食べてよ」
「…なんで?」
「俺もみことちゃんのこと好きなんだ…きっと叶わないからそれなら食べてもらおうと思ったのにさ」
「ほんまに?え…これ夢やった?」
「夢じゃないよ」

そう言って笑うすち君からは今まで以上に甘い香りがした

「すち君…たべて、いい?」
「いいよ、ぜーんぶあげる」

理性なんてかなぐり捨てて、俺は本能のままに唇に噛みついた
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