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彼を知ったのは、学校帰り近くを歩いている高生達の話を盗み聞いたのが始まりだった
「ねぇ、知ってる?あの坂の上に建ってる家、幽霊出るんだって」
「あーそれ知ってる、窓のところに誰かいるんでしょ!」
「そうそう!あの家、誰も住んでないっぽいのにね」
「怖いよね」
よくある話だよねって思いながらその噂の家の前まで怖いもの見たさで訪れた時に彼と会ったんだ
「こんなところに用事?」
「うわぁ!」
「あ、ごめんね驚かせちゃった、大丈夫?」
「大丈夫です!」
「そう?あ、そうだびっくりついでで申し訳ないんだけど、この家、変な噂ある?最近いろんな人が見に来るんだよねぇ」
その言葉にドキッとした、俺もその噂を聞いてここにいるわけだし、この感じからしてこの家は空き家じゃなくてこの人が住んでるんだろう、言ってええんやろうか…
「もしかして言いにくい、噂立ってる?」
「いや!えっと…幽霊が、でるって」
「あぁ!やっぱりそっかぁそれだけならいっかぁ」
勢いで言ってしまったけれど彼は特には気にしてない様子でにこにこと笑ってる
「教えてくれてありがとね、気をつけてかえるんだよ」
そうやってその時は別れたけど、何故かそこから何度か会うようになって仲良くなって彼の名前を知った。なんでか名字は教えてくれなかったけど、すちって言うんやって家でお仕事してるから家からでることもなくって昼夜逆転生活してるから彼には夕方頃にしか会えない
「ねぇすち君」
「どうしたのみことちゃん」
「なんで昼夜逆転生活しとるの?」
「んー?俺のため」
「えぇ?意味わからん」
「わからなくてもいいよ、俺が勝手にしてるだけだからさ」
「えぇー知りたい!教えてよー」
「なら、俺の名字当ててみてよ、当てたら教えてあげる」
すち君はそう言って笑った、それから思いついた名字を順番に言っていくも当たらない
「…んーわっかんない!」
「あはは!」
「ヒント!ヒントちょうだい!」
「ヒント?そうだなぁ…みことちゃんは知ってるよ」
「えーなんそれ」
「思い出して」
「がんばる!」
「みことちゃん、そろそろ時間」
「あ、ほんまや!俺かえるね!バイバイ!」
「うん、またおいで」
すち君は俺が帰る時寂しそうに笑う、そしてバイバイと手を振ってもそれには応えてくれない、なんでやろう?
夕方頃にだけ姿を見せる君、俺は夢でも幻でも君に会えるならなんだって良かった、だからこの家に住んで昼夜逆転生活を続ける。君が俺のことを思い出してくれるまで、ここでずっと待っている、いつか思い出してくれることを願って
「ねぇみことちゃん、思い出して俺の返事を聞いて…俺も大好きだよって言わせてよ」