短編集
いつの日か味がわからなくなった、本当に突然料理の味見をしようとスプーンですくって食べた時、なんの味もしなくて、そんなわけないと思ってもう一口食べてみても結果は同じ、体調は万全で熱があるわけでもない、そして頭をよぎったのは予備殺人者といわれる彼らのこと
もしかして俺フォークになった…?
確かに最近忙しかったし好きなこともあんまり出来なくてストレスは溜まっていた、それに叶わない恋をした、から…きっとそれが原因、じゃないかな…って…ねぇ神様、俺なんか悪いことした?
いつもは楽しい料理も美味しいご飯も、あれだけ好きだった歌うこともなんだか歌う気にはなれなくて、配信もただ雑談をすることが多くなった、それを心配したのかみことちゃんがご飯に行こうと誘ってくれて、味はしないけどせっかくみことちゃんが誘ってくれたし、もう一人で悩むことに疲れちゃったからみことちゃんに俺がフォークになってしまったかもしれないと相談しようと思って行く約束してその当日、行かなきゃよかったと後悔した
「すち君こっちこっち!」
「あ、み、ことちゃん…」
「ん?どしたん?すち君」
「…神様って意地悪だな…ごめんねみことちゃん俺帰る」
「うぇ!?なんで!?」
「今日は一緒に食べれそうない、から」
甘い美味しそうな香り、恋した人から漂うその甘い香りに俺はきっと耐えきれなくなる
「ここまで来たんやからご飯行こうよ」
「行きたかったんだけど、無理そう」
「なら!なんか悩み事あるんやろ?それの相談くらいしてよ!なんかあったんやろ?」
「あったけど…」
「な!とりあえずどっか喫茶店かどっか入ろう!」
俯いてる俺の腕をとって、近くに見えた喫茶店に入って適当にコーヒーを頼んでしまうみことちゃん、そして黙っている俺とじっと俺を見つめるみことちゃん、数分後コーヒーが運ばれてきてみことちゃんが口を開く
「よし!すち君!悩みを抱えるのはよくない!だから何があったかわからんけど相談してよ」
「……うん、あのね、えっと最近俺ね…ご飯の味がわかんないの」
「え!?体調とかは大丈夫なん?」
「うん、味がしないだけ…だからね、俺フォーク、なんじゃないかなって相談したかったんだ」
「……」
俺の言葉に流石のみことちゃんも無言になってしまう、こうなるのはわかってたこれは覚悟してた、でもみことちゃんがケーキだなんて思ってなかったこの甘い香りで気づけば口の中に唾液が溢れる、その唾液を飲み込んで味のしないコーヒーを飲んで少しでもこの食べたいという衝動を誤魔化す
「すち君…もしフォークなら今キツイやろ?」
「え…?」
「俺、ケーキだよ?……だから帰ろうとしたんやない?なぁすち君どうなん?」
「…なんで…ケーキだって」
「俺自覚はあるんよ、昔言われたから気をつけなよって…すち君フォークなんやね?」
みことちゃんは確信を持ったようにそう告げる、それに俺はもう頷くことしか出来なかった
「そっか…なら場所変えよか」
「え、どこいくの」
「俺ん家」
「は?え?」
みことちゃんは俺の言葉を待たずに喫茶店に入ってきた時と同様に俺の腕を引っ張ってささっと会計して店をでた
「ちょっと!みことちゃん!俺のこと気づいたんでしょ!」
「うん」
「2人になるのはまずいって!ねぇ!」
「ええの、とりあえずついてきてよ大丈夫だから」
「大丈夫じゃないって!」
「ええから、ええから、俺ん家あと少しでつくから」
俺の言葉なんて聞かずに腕を掴んだまま歩いていくみことちゃん、なんで気づいたんでしょ?俺がフォークだってわかったんでしょ?なら逃げてよお願いだから俺が酷いことする前に
ガチャッ
「ただいまー」
「ねぇ、みことちゃん!駄目だって!俺襲っちゃうかもしれないんだよ!」
「ええで」
すち君がフォークになった、すち君には悪いけど神様ありがとうこれで俺のもんに出来る
「そのために帰ってきたんやもん、俺のこと食べなよすち君」
「なんで…そんなこと言うの…」
「俺なすち君のこと好きなんよ、すち君も俺のことを好きやろ?」
「え…」
「俺、結構そういうのには敏感なんよね気付いた時は嬉しかったなぁ、いつ告白しようかなぁとかすち君から告白されるのかなどうかなぁとかどうしたら俺だけ見てくれるのかなぁどうやったら俺のもんに出来るかなって色々考えたんよ、そんでなぁ俺ケーキやからさ、すち君がフォークだったら俺のこと食べてくれれば、他の味なんて忘れて俺の味だけ覚えてくれたりするんかなぁって」
「何言ってるの…」
「食べるのは全部やなくていいんよ、別に俺やって死にたいわけやないし、これからずっと俺の味だけにしてほしいだけ」
バンッ
「逃さへんよ」
「ひっ!」
「あ、ごめんな驚かせちゃった」
すち君がそっと後ろ手で玄関の扉に手をかけようとするから慌てて扉に手をついたら大きな音が出ちゃってすち君から小さな悲鳴があがる
「みこ、とちゃ」
「怯えんでよ」
「な、…っ、、」
扉に背を預けてズルズルと滑り落ちてく身体、必死に俺の香りを嗅がないように口と鼻を塞ぐように手で抑えるすち君の手首を掴んで引っ張り上げて抱きしめる
「んんっ!」
「我慢せんでいいよ?あぁでも先に聞きたいなぁ…すち君俺のこと好き?教えてよ」
「っ…」
「諦めたらええのに……そうや」
息を吸ってしまわないようするすち君に顔を寄せて触れるだけのキスをすれば驚いたように目を見開いた、そして驚いた拍子に息を吸ってしまったのか、浅く息をしながら瞳を彷徨わせてるすち君の名前を呼んでもう一度キスをする、今度は舌をいれて俺の唾液を流し込んでから離れる
「すち君、こっち見て」
「みこ…!んっ!んん、あ、あ…」
「ろう?美味しい?」
「……あ……ん…あまい…おいし……」
甘さに酔ったのかとろんとした顔でもう一回と今度はすち君からキスをしようとしてくるのを俺は止めて先程言った言葉を繰り返す
「すち君俺のこと好き?」
「…すき、すきだからいやだったのに、なんで、」
「俺は好きな人に食べてもらいだけやで?すち君に食べて欲しいだけ、俺でいっぱいにしたいだけ」
「……みことちゃん責任とってよ…おれこんなの覚えたら、もう耐えれないじゃん」
「ちゃんと責任とったるから安心してよ、すち君まだ食べるやろ?」
「たべる」
そう言ってすち君はキスをしてきて舌を自分からいれて俺の唾液を舐める、そして軽くだけど舌を噛むちょっと痛いけどこれでいい、これですち君は俺を覚えた、すち君がフォークだって知ってるのは俺だけやろうしすち君は人を傷つけたがらないだろうから、すち君が知ってるケーキの味は俺だけ、俺だけのフォーク離してなんてあげないずっと俺を食べて
「みことおいしい…もっといい?」
「いいよ、たくさん食べて」
これで俺のもん