短編集




両親が交通事故で亡くなった、幼い俺は運良く隙間に入って助かった、片足が上手く動かないことがあるけれど俺は助かった
本当に助かったんだろうか俺はあそこで両親と一緒に逝けたほうが良かったんじゃないだろうか、両親が俺のために遺してくれてたお金はがめつい親戚に盗られて引き取られた親戚の家では無視されて、時々思い出したかのように渡されるお金でご飯を食べて、都合が悪い時は邪魔だと家追い出されて夜の街を彷徨って辿り着いたのは昔の遊郭のような場所だった。

ふらふらと歩いてる俺に優しく声をかけて心配してくれた女、何回目かに会った時に君でもできるお金の稼ぎ方教えてあげる、って言ってここに誘った女はここについた瞬間

「ようこそ地獄へ」と言ってニヤリと笑ってた

ここで身体を売るのは女性だけじゃなく男性もだったし子供もいた、皆一様に暗い表情していたしずっと泣いてる子もいた、中には壊れてしまったのか表情がない人もいた俺はどうだったかな最初は何も分からず呆然としてた気がする、何もわからないまま放り込まれて客をとらされて泣いた気がする、人ならまだ怖がるだけだったかもしれない、でもここに来るのは人間じゃない、不定形だったり見えないものだったり、人の形をしたナニカ、そんなナニカに俺はただ犯された

「■■■■」
「んっ、…い"…」
「■■■■■■」
「ひぃ…や、や、こない、で」


拒否をしたって俺は逃げれない上手く動かない足と必要な栄養が取れてない身体じゃ抵抗なんて出来ない、ただ怖さと痛みに耐える、ニヤリと見えない顔が笑ってる気がする、ナカに熱いものをそそがれて行為が終わって使い捨てられるだけ

「やだ、やだぁ」

泣いたって何も変わりはしないのを知ったのはすぐだった泣いたって変わらないどころか酷くなるだけで、次第に俺は笑って誘ったほうが楽だと気付いた

「ねぇ遊んでくれる?」

と言って笑ったほうがみんな優しかった、なかには本当に文字通りに遊んでくれるモノも、いた。それは本当に稀だったけれど

俺は家とお店の行き来をずっとしてたお店に行かないという選択肢もあったけど、きっと出来なかっただろうだって、ずっと見られてたからあそこの人ならざるものは普通にそばにいて時折"遊ぼう"と語りかけてくる、誰かがいる時にそれに答えなくても何もされないけど誰もいない、人がそばにいない時に無視すれば襲われた"遊んでくれるんでしょ?"と言って
うまく断る方法なんて知らなかった俺はお店でねと言ってその場で襲われるのを回避してた、それに家にいるよりお店にいたほうが心は楽だった、彼らは俺を無視するわけではない、遊ぼうと誘ってくるしずっと見ている、それにお店の先輩にあたる人たちに「男のくせに」「ずっと笑ってて気持ち悪い」なんて言われてるのも知ってたけど、何も反応がないよりも良い、親戚の人達は俺なんか見ないから、俺がどうなってようと知ったことではないんだろ

毎日のようにナニカに抱かれてお金をもらう、ニコニコと笑って誘う日々そんな日常を過ごして、ある時行為が終わって気を失って目を覚ましたときお腹が大きくなってて驚いた、そんな俺を見て俺を店に誘った女が

「孕んだんだ男で珍しいね」
「はらんだ…?」
「子供がここに出来たってこと」

そう言って膨らんだお腹を指差してケラケラと笑う

「まぁ明日には戻ってるさ、ただお前さんが今日の相手に気に入られてたら別だけど」

女が言った通り次の日にはお腹は元通りになってた、男の俺が孕むなんてあるんだろうか、なんて思ったけどきっとあるんだろうな…相手は人じゃないんだからこっちの常識なんて通用しない…それでも俺は遊びましょうと誘うの顔に笑みを作って楽しそうに

「…おれとあそぼ?」

あそんでくれるなら入っておいで、あそんでくれないひとは外にいる人にあげるんだどうなるかは知らない、バイバイって手を振ってスッと目を逸らす、自分に影響ないならどうでもいい、叫ぶ声がしたって泣く声が聞こえたって俺には関係ない

笑って遊んでたまに孕んで、繰り返して繰り返してれば次の日になってもお腹が大きなままで体が重かった

「きゃはは!お前ついに孕んだの!本当に珍しい子だね」

そんな俺を見て愉快そうに女が笑った

「…え……」
「おめでとう!相当気に入られたんだねぇ…大丈夫さ中にはナニもいないから」
「……なにも…?」
「ただ苦しいだけさ、人の子に怪異なんて妖怪なんて産めやしない、それに薬飲んじまえば消えちまう」

そう言って放り投げられた物をキャッチして、キャッチしたものを見れば、錠剤が1つ

「それ飲みな」

言われるがままに錠剤を口の中に放りこみ、飲み込んだ
しばらく待てば吐き気に襲われてトイレに駆け込んで吐き出した

「う"ぇっげほっ、うぷっ……、はぁ、はぁ…うっ…」
「お前、確かそこそこ人気あったよなぁ?……また孕んだらこれ飲みな」

部屋に雑に置いていかれた恐らく今飲んだものと変らない薬、全て吐き終わってスッキリした頃、お腹の膨らみは無くなってて安心したのと同時に少し寂しくなった

「ははっ…ふふ…」

本当に、孕んだ、男なのに、本当に……笑える……ははっなんかもうどうでもいいや、男の俺は買われてくことなんてないずっと売れ残る、おれだけはさみしいじゃん、だからいっしょにあそぼ…


家に帰って、親戚のお兄さんに「簡単にお金を稼ぐ方法があるんですけど知りたくないですか?」と笑いかけた

「はぁ?何いってんの…?」
「俺がお金もらってないの知ってるでしょう?」
「……知ってるけど?なに?その簡単な方法で稼いでんの?」
「はい、お兄さんもどうですか?」
「……なにやってんの」
「ふふっ」

そうやって誘った、そして「こんなの聞いてない!!」て叫ぶお兄さんとそのお兄さんと遊んでるナニカに「俺ともあそびましょ?」声をかけていつも通りあそんでもらう、気付いたらお兄さんは話さなくなってて、ははっいい気味…ずっと俺のこと見てたくせにずっと、追い出されるのもお金を受け取ってないのも、犯されてるのも見てたくせに全部、全部無視してたの俺知ってたよだから俺も見てるだけ

「おにいさん」
「……」
「あははっこわれちゃた!じゃあ、バイバイ嫌いだったよ」
「…」

本当に何も言わなくなったお兄さんから目を逸らしてそこにいるナニカに目を向けて

あそびこづくりしましょ?」と言って俺は笑った

俺を引き取った人達は全員巻き込んだ遊んではくれなかったけどナニカは全部食べてくれた、だから代わりに俺が遊んであげたんだ

何度も何度も孕んで堕ろして身体は常に痛むけれどここから逃げ出せはしない、ずっと猫が笑ってるから

「ようこそ地獄へ」

ほらまた、一人地獄に足を踏み入れた
明日も明後日も地獄は続く俺の価値がなくなるまでずっと…それまで俺は言い続けるの

「遊びましょ?」





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